広島戦補遺
あろうことか降格ラインを彷徨うどころかチーム存亡の危機に晒されている大分にホームで惨敗。
もう何度となく言われてきたような気もするが、いよいよ後がなくなったどころか、あとは勝ちに勝ちまくって、しかも多少の僥倖を待つしかなくなった浦和。昨夜ガンバが柏に敗れるという波乱があって、ちょっとだけ運が向いてきたような機運が漂う中、遠い広島の地で浦和は実に粘り強く闘った。守備は堅いがそれほど得点力のない広島と4-3の激闘になるとは全く予想しえなかったが、そんな予想外の展開となった試合をよく物にした。
ビックアーチは快晴の予報だったにも関わらず、ゲーム後半に急に黒雲がスタジアムを覆って一転豪雨に。選手も多少面食らったのか、激しい点の取り合いとなった後はぐだぐたの様相となったが、浦和は終始攻撃の姿勢を崩さないまま、相手の攻勢をよく凌ぎきったと思う。3失点はいずれもややいただけないもので、良い内容とは言いがたい試合だったけれども、もう内容をとやかく言うべき段階ではないだろう。
何が何でも優勝戦線に残る。言い古された表現だが、この試合はその気持ちが広島よりちょっとだけ強かったのだと思う。後半負傷交代した闘莉王。ベンチが堀之内を用意しているにも関わらず、「俺は大丈夫だ!」と言わんばかりに何度も担架投入を制していた闘莉王。
結局ベンチの判断で無理やり闘莉王を交代させた形となったが、セットプレーでネネが決めた時にはなんと怪我だったはずの闘莉王が飛び上がって喜び、ネネに抱きついている。その熱さが仇になってしまうこともしばしばだが、前節己が欠場した試合のあまりの不甲斐なさで、今日もまた熱くなってしまったのだろう。この熱い漢が、ともすれば止まりそうになるレッズイレブンの足を最後まで後押ししていたのだと思う。
試合のポイントは前半。小村を出場停止で欠く広島は何を思いついたのか、森崎和を中央に配する3バックで浦和に臨んできたが、これが全く機能しなかった。今日の浦和は前半久しぶりに高い位置から両ボランチがプレスをかけるだけでなく、DF陣も積極的に前でボールを奪うようにしていた。これにより広島の中盤を壊滅状態に追いやることに成功しただけでなく、高い位置から達也にボールを配給し、サイドからの崩しで再三チャンスメークに成功。達也自身が何度か枠内シュートを放ち、サイドからのクロスを永井が、そしてポンテが決めて2得点。広島は達也を全く捕まえられず、この3バック採用が今日の敗因とって差し支えない。
残念ながらその状態を放置しておくような小野監督であろうはずがなく、後半は森崎和をボランチに上げて4バックへ移行。これで達也が突くべきスペースが消され、レッズは前半ほどチャンスが作れなくなってしまった。最初から4バックで来られたら勝敗はともかくこの試合の様相は全く異なったものになったと思う。だがチャンスは少なくなったものの、カウンターから永井が右サイドを駆け抜けて上げたクロスが何と相手のオウンゴールを誘って3点目(ノープレッシャーに近い状況下で森崎和が犯した信じがたいミス。これは凹んだでしょうなぁ・・・)。さらにCKをネネが頭で合わせて4点目と常に浦和が先行する形でゲームは進んだ。
これだけ点が取れれば、昨年とは打って変わって守備的なチームに変じた浦和の楽勝パターンのはずだが、非常に意外なことにこの試合はもつれにもつれた。1失点目は浦和右サイド深い位置からのスローインをDFがクリアミスして(?)裏に抜けてしまったところを中央の佐藤に飛び込まれるという間抜けなものだったが、これは情けないながらもやや偶発的な失点なのでまだ救いようがある(録画で見たら坪井と闘莉王が同時にガウボンに競りに行ってしまって、おまけにネネはボールを見てしまいました。大間抜けです。)。
さらに2、3失点目は全くいただけない。左サイドへからいとも簡単にクロスを上げられ、同じく佐藤寿人にGKの鼻先で合わされるといったもの。広島の典型的な攻撃パターンにも関わらず、サイドの選手への詰めが甘くて2度も同じ手を食らってしまうのはいかがなものか。今日はそれほどいい形ができなかったが、広島の攻撃はサイドにワイドに振ってからのクロス攻撃が持ち味。引き合いに出して申し訳ないが、広島のクロスは暢久や平川のそれではなく、ポンテ並みの精度で飛んでくる。その出し手をフリーにしては殺られるのも必定。その失点パターンの情けなさだけを取り上げれば、この試合を勝てたのも一つの僥倖というべきなのかもしれない。
1点差に迫った広島は前線の選手を代えて反撃に転じるも、一度都築のファインセーブに阻まれたビックチャンスがあったくらいで、後は大したこともなし。スーパーサブとしての前田俊介の活躍が怖かったが、彼くらいしか控えに怖い選手がいないのが広島の限界なんだろう。
そしてこの日のもう一つのポイントは後半の豪雨だ。1点差に追い上げられ、苦しい時間帯に突然降り始めた豪雨。天気予報は晴れで観客の大半は雨具の用意は全くなく、ただ見ているだけでも集中力が殺がれがちになる中、さすがの選手たちも少々面食らったのか、双方ミスの多いぐたぐだの展開となった。だがその展開はリードしている浦和を利することはあっても、決して損になるものではなかった。
桶狭間の決戦直前に降り始めた豪雨が信長の逆転劇を利したように、この日の豪雨が浦和の奇跡に利あらんことを祈るばかりである。
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