【観戦記】浦和 3-2 G大阪
体調が良くない時はえてして思考がネガティブモードに陥りがちなものだ。
早い時間帯に失点。動揺するレッズはチームを立て直す暇も無く立て続けに失点を重ね、今季無敗を誇るホーム埼玉スタジアムでまさかの0-3の完敗。そんな悪夢が何度も脳裏に浮かんでは消え、消えては浮かんでいた。
だが、それは全くの杞憂だった。浦和の選手たちは思いのほかずっとずっとしたたかだった。
立ち上がりは普段どおりだった。少なくともFC東京戦ほどの堅さは感じられなかった。得失点差で優位に立つ浦和は時間を使いながら巧妙にゲームを進めていた。
もちろん普段どおりというのは必ずしも褒め言葉ではない。浦和の立ち上がりは往々にして芳しくないからだ。立ち上がり早々ワシントンが絶好機を逸してからゲームはガンパペースになった。坪井と堀之内を欠いてDF陣は揃いも揃ってスピードが無い。遠藤を欠くガンバはロングパス一本で快速FWを走らせて浦和左サイドのスペースを突く場面が目立ち、アレやネネはその対応に忙殺された。まだ家長のドリブル攻撃は脅威的で右サイドから際どいクロスを送られもした。
前半21分、案の定浦和は左サイドで播戸の突破を許して失点。マグノアウベスへのマークもずれ、マグノがヒールで流し込んだボールは山岸をあざ笑うかのようにころころとした軌道を描いてゴールに転がり込んだ。
早い時間帯での失点。浦和が最も恐れていたシナリオが現実のものになった。後で聞くところによれば、さすがに選手達もこの失点には多少の動揺があったようだ。アレやネネの出来は芳しくなく、集中力を欠いているようなプレーすら散見されるに及んで、ほんの少しだがスタジアムに重苦しい時が流れた。時間にして6分。この日最も辛い時間帯だった。
だがその暗雲を振り払ったのは浦和の10番を背負う漢、ポンテだった。右サイドでワシントンからのパスを受けてエリアへ向けて突進。決して足が速いとはいえないポンテだが前方に立ちはだかるシジクレイを巧みな足技であっさり交わし、エリア内ながら角度の無い位置からここしかないコースに撃ち込んだ。攻撃参加人数は少ないながら圧倒的な個人技で得点をもぎ取る浦和。今年の浦和を象徴するような同点劇だった。
さらに前半終了間際、リーグ制覇の帰趨を左右する得点を手にしたのは浦和だった。ここでもキーとなったのはポンテ。啓太のパスを受けてエリア内へ進入。二人のマークを受けながらも中央で待ち受けるワシントンへきっちり折り返した。今季負傷による長期離脱もあって満足な活躍ができなかったポンテ。守備をさぼることでチームメイトから叱咤さえ受けたこともあった。しかしこの日見せたポンテのパフォーマンスは長年ブンデスリーガで活躍してきた誇りを取り戻すに十二分なものであった。
浦和1点リードで前半終了。ガンバの逆転優勝はもはや絶望的になり、さらにシジクレイの負傷離脱という不運が追い討ちをかけた。ガンバには浦和の誇る前線のツインタワー-闘莉王とワシントンを阻むものは既に無く、浦和に3点目が入るのは半ば必然だったといっていいだろう。埼スタには予想以上のビジターが訪れたが、もともとか細かった彼らの声はこの失点で完全に消え失せた。
ガンバは闘病明けの遠藤を投入。ギドは不可解なことに左WBに達也を投入したが、これは案の定何の役にも立たず、ガンバの反撃を許す一因となった。3年に及んだギド政権下で最大級の愚策。既に事実上リーグ優勝が決定したので、ファンサービスのつもりで達也を投入したとしか解釈のしようがない全く不可解な起用だった。本職の相馬の苦悩はいかばかりか。
大勢になんら影響はないとはいえCKからガンバに2点目を許し、ギドは慌ててポンテに代えて坪井、さらに平川に代えて岡野を投入。達也は前線に上がって岡野共々カウンターで大いに見せ場を作ってくれるものと期待しては見たものの、そんな気配は微塵も無く、今季お決まりの最終ラインでのベタベタ守備。岡野がエリア内でクリアに回る一幕もあり、観客席から「クリア!クリア!」と糞弱かった往時を想起させる悲鳴さえ飛び交う中、なんとかかんとか凌ぎきって試合終了。シュートわずかに9本。攻守とも至って不恰好だが結果だけはしっかり残す、これまた今季を象徴するようなゲームでリーグを締めくくった。
3点以上取らないといけないガンバは3点取られて敗戦。加地・明神を補強して昨年より格段に守備力が上がったが、浦和との守備力の差は埋め切れなかった。選手層は浦和に見劣りはしないはずだが、主力として期待したはずの外国人選手を干したのは自殺行為といわれても仕方あるまい。
終わってみれば勝ち点72。2位の川崎に勝ち点差5。どんぐりの背比べに過ぎなかった昨年より格段にレベルの上がった優勝争いを見事に制した。失点はリーグでダントツに少ない28。しかもホーム無敗。面子からすれば実にお寒い試合内容ながら、ギドは徹底して結果に拘って堂々たる成績を上げた。結果が全てを癒した。
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