【観戦記】鹿島 0-1 浦和
自らのミスから何度か鹿島にビッグチャンスを献上して冷や汗をかきましたが、やりたいサッカーをどれだけ具現化できていたかという観点からすれば浦和の完勝。点差以上の実力差が感じられたゲームでした。
*2日深夜のJ-SPORTSを見て適宜追加修正します。
<スタメン>
-----永井-----
--伸二---ポンテ--
長谷部-------暢久
---啓太--阿部---
--坪井-釣男-ホリ--
-----都築-----
ワシントン欠場。スタメンはおろかベンチにも入らず。
現地ではてっきり怪我持ちなので無理をさせなかったと思っていたのですが、帰宅後にニュースを見ると怪我ではなく「規律の問題」だったとのこと。上海申花戦でも途中で交代を告げられた時に(ペルシク戦ほどあからさまではなかったにせよ)不満げな素振りを見せていましたし、監督との間で何かあったのはほぼ間違いないところ。上海戦でシトンがFKを蹴った時非常に嫌な予感がしたのですが、その通りになってしまいました。現在のシトンよりもはるかに存在感の大きかったギドですら容赦なくベンチスタートを命じたオジェックですから、こうなるのは致し方なし。
軽度の肉離れから復帰した永井が代わりに1トップ。上海戦で負傷した伸二も元気にスタメン出場。オジェックは上海戦で全く機能しなかった坪井右SBの4バックは早々と放棄して3バックに回帰し3-6-1の布陣。本職不在の左WBにはなんと長谷部を起用してきました(もっとも伸二と頻繁にポジションチェンジをして、サイドに張り付く様子は全くありませんでしたが)。
ベンチにはなんとセルが入って酒井がアウト。ベンチにも入れない酒井や細貝は納得できないでしょうが、守備的な選手だらけだったベンチの面子もやっと攻守のバランスが整ってきました。
鹿島はいつもの4-4-2。但し中盤は野沢・中後の2ボランチでしょうか?
立ち上がり早々中盤のミスから興梠に抜け出されていきなり都築と1対1。相手のミスにも助けられて事なきを得ましたが、これを決められていたらその後メロメロになったかもしれません。
しかしその後は中盤で優位に立つ浦和のペースでゲームは進行。浦和はそもそも中盤を厚めに構えているのと、1対1で負けないどころかポンテのように複数人に囲まれても容易にボールを失わない選手がいるのが大きい模様。テンポ良くボールを回し、適宜サイドに振りながら相手の隙を伺います。不慣れな左WBに起用された長谷部はあまり機能せず、浦和の攻撃はやや右サイドに偏っていましたが、それでも何度か良い形を作り出しました。鹿島は結局ファウルで止めてしまう場合が多く、幾度か危険な位置で浦和にFKを与えましたが、残念ながら浦和は今日もセットプレーで得点は掴めず。
浦和は良い形を作っても1トップでエリア内のターゲットが薄く、しかもそのFWはストライカーとしては物足りない永井なのでなかなか決定機にまでたどり着かないのは致し方ない(前半の決定機は中央で永井のポスト→ポンテシュート!ぐらいか)ところ。しかし同じように何度も良い形を作りながら決定機にまで持って行けなかった川崎戦と違って閉塞感をほとんど感じませんでした。それは同じような形を作っても最後はシトンが強引に決めにいっては潰されるの繰り返しだったここ数戦と、シュペールな能力を持つFWが不在な分各選手が連動して相手を崩そうとする意図が非常にはっきり見えたこの試合との差だったと思います。
連動性という意味ではこの日際立ったのが阿部の攻撃参加。啓太と並ぶ2ボランチはゼロックス杯では双方守備的に構えてしまい、結局90分を通じて阿部が何をやっているのかわからないという惨状でした。しかしこの日は久しぶりのボランチにも関わらず基本的に啓太が後、阿部が前という役割分担がしっかり出来ていて、阿部は頭数の足りない最前線を補うべく果敢に攻撃参加。その努力は得点に結びつくことはありませんでしたが、阿部がボランチとして千葉時代のパフォーマンスを取り戻したように思いました。
方や前半の鹿島は浦和のセットプレー崩れからカウンターを仕掛けたのが2度あり、また浦和のミスで暢久の裏を突いた場面も1度ありましたが、それを決められず。鹿島はその最大の特徴であるSBの攻め上がりが少ないように見受けられましたが、中盤でボールをキープできない以上やむを得ないのでしょう。
後半も立ち上がり早々坪井と闘莉王の連携ミス、さらに飛び出した都築のミスも重なって鹿島にビッグチャンスを与えてしまいましたが、鹿島はまたしてもこれを決められず。しょーもないミスで鹿島に何度も絶好機を献上したあたりはきっちり反省してしかるべきだと思いますが、これはたぶん疲労からくる集中力不足で選手を責めるのは可哀想なような・・・
さらに中盤で不用意にボールを失って暢久の裏を突かれ、浦和は絶体絶命の大ピンチに陥りましたが、マルキ?のシュートはポストを直撃。跳ね返りに詰めていた興梠はなんと空振り。さらに後方からの野沢のシュートは枠外。この場面ばかりは運が良かったとしか言いようがありません。
連戦かつ上海帰り。時間の経過とともにガス欠になるのが明白な浦和は一刻も早く先制点が欲しいところですが、この日何度も見せていたサイドからの攻撃がついに結実。左サイドに飛び出した啓太が落ち着いて逆サイドでフリーになっていた暢久にパス。暢久はこれまた冷静に中央に飛び込んできたポンテにパス。そして決めるべきチャンスをきっちり決めるポンテ。両サイドを使った完璧な崩し。いやぁ久しぶりに良いものを見ました。個人能力に頼ることなく、複数人でゴールを陥れるこういう攻撃パターンをオジェックはもっともっと作りたいのでしょう。
今年の浦和は昨年と違って先制しても全く安心できないのですが、この日は昨年の勝負強さを取り戻した感も。案の定前目の選手は先制直後にはヘロヘロになってしまい、カウンターのチャンスと思われる場面でも無理せず中盤でボールをキープ。最前線でポストプレーをこなすのが精一杯で全く動けなくなった永井を早めに岡野に代えて積極的にカウンターを狙う選択肢もあろうかと思いますが、リードしながらも攻守に中途半端で結局同点弾を浴びた新潟戦や大分戦と違ってこの日ははっきり守りきるという意図がチームに浸透していたように伺えたのでそれはそれで良いのでしょう。
実際先制後はセットプレーで危ない局面もありました(野沢は相変わらず良質のボールを蹴ってきます)が、ミスの目立つ鹿島に流れの中から守備陣を崩される場面はほとんどなし。それゆえ選手を代えづらいのかもしれませんが、後半行方不明になっている長谷部(それゆえ左サイドは途中からほとんど坪井一人で守っていたような・・・)をそのまま放置したのは謎でしたし、前線で動けなくなっている永井・ポンテ・伸二を残り5分まで3選手とも引っ張るのも今度の連戦を考えれば大いに疑問。オジェックもギド同様目先の勝ちにちょっと拘りすぎなような・・・でもようやく交代枠を3枚使い切って時間稼ぎ。セルは今季初出場。
鹿島は最後にパワープレーを仕掛けてきましたが、闘莉王が聳え立つ浦和の堅陣を崩すには至らず。最後に3度ばかりあった明らかに飛距離不足のロングスローには失笑を禁じえませんでした。
まぁ鹿島の決定力不足に助けられたと試合といっても差し支えありませんが、鹿島は最も得意とする「ボールポゼッション&SBが頻繁に攻撃参加して好機を伺う」という形は最後の15分くらいまでほとんど作れなかったわけですし(支配率の数値で鹿島が優位なのはおそらく浦和先制後に圧倒的に差がついたため)、往年の鹿島なら間違いなく決めてきたであろう「相手のミスによって生じた絶好機」を何度も外していたのもおそらく偶然ではありません。また上海帰りの浦和に対し、運動量で優位に立てないというのも相当情けない。その結果が12位という順位。
一方浦和はくだらないミスが多くて幾度もピンチに陥ったのも事実ですが、ワシントン不在が逆に良い方に転んでチームの連動性が劇的に改善し、「個人ではなく組織で相手を崩す」オジェックの志向するところがはっきり見えたという意味では素晴らしい内容だったと思います。
やりたいことが出来つつあるチームと大して出来なかったチーム。結局のところ決定力の差以上にこの差が命運を分けたのではないでしょうか?
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