チャンピオンを決める試合は、他のどんな試合にもまして結果が全て。従ってその内容を振り返る意義はほとんどないようにも思いますが、優勝記念碑代わりに駄文を垂れ流しておきます。
等々力での激闘から中2日。アウェーセパハン戦、川崎戦とも引分け御の字という試合内容で、おそらくオジェックはこの試合も0-0で凌ぎきる算段だろうと思いましたが、蓋を開けてみれば浦和の試合運びは思ったより積極的。しかも前半のうちに先制、苦しかった後半に追加点を上げる理想的は流れに。守ってはいくらセパハンに押し込まれようとも決定的なシュートは撃たせないという、これまた危なっかしいように見えていつも通りの「瀬戸際防衛」が奏効。
終わって見ればどこからどう見ても完全に浦和の勝ちパターンでした。セパハンも決勝に勝ち残るチームですから決して弱くはなく、フォーメーションを変幻自在に操ってカウンター主体に浦和守備陣に迫りましたが、どうも決め手を欠く印象。その点ではここ一発を決めてくる城南一和のほうがはるかに手強かったかと思います。
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<スタメン>
--シトン---永井--
-----ポンテ----
平川--------阿部
--長谷部--啓太---
堀之内--闘莉王-坪井-
-----都築-----
「うちの選手達は若いですし、当然プロの世界で生きています。さらに健康的な生活を送っています。そういう選手達です。これは研究などで発表されているが、そのような選手達は48時間の休養があればしっかりと体を戻るということになっている。」というのが川崎戦後の記者会見で開陳されたオジェック理論。オジェックはまたしてもスタメンをいじることなく、川崎戦そのまんまのスタメンで決勝戦に臨んできました。途中まで採用していた「FW3人のローテーション」すら止めてしまったのは単純に達也の足の状態がよくないのでしょう。
0-0でも構わない浦和ですが、冒頭でも述べた通り試合運びは意外にも積極的でした。とにかく点を取らないといけないセパハン。FWカリミがなぜかベンチスタートだったり、中盤のキーマンであるナビドキアがなぜかFWにいるなど不可解なところもありましたが、フォーメーションは4-4-2(4-4-1-1に近いか?)。浦和はセパハンの手の内がある程度予想通りだったのか、様子見を決め込まずに勝負に打って出たのでしょう。
開始早々から長谷部やポンテがシュートを放ち、ポンテFK→闘莉王ヘッドが決まったかと思いましたがこれはGKの片手一本で阻まれ得点ならず。
その後も浦和がやや優勢ながらも得点機は作れず試合は膠着状態。セパハンは引いてカウンター狙い。浦和がセパハンの堅陣を攻め倦んで不用意にボールを失うと素早く攻守を切り替え、手数はかけないが人数はかけて浦和に襲い掛かってきます。坪井が珍しく右サイドを駆け上がって敵陣深くまで侵入したものの、案の定何の役にも立たずにボールを奪われて逆襲を食らった場面なんぞセパハンの思う壷でしょう。
ただセパハンの前半の攻めはいたって淡白。ボールを奪うといきなり最前線にボールを放り込んでくる場面が非常に目立ちました。精度も悪く、その悉くがパスミスになったり浦和DFに跳ね返されたりしていましたが、このロングボール攻撃の意図は少々図りかねました。浦和のDFラインを下げ、浦和の陣形を間延びさせて中盤が薄くなったところでミドルシュートを撃つのが狙いなのかなぁと邪推しておりましたが果たしてそうかどうか。
ともに攻め倦みの状態で時間がだらだら過ぎるのは浦和にとって好都合なのですが、先制点は幸運な形で浦和に転がり込みました。セパハンDFの裏を狙っていた永井。永井の位置はオフサイドだと思いましたが、ポンテからのパスが相手に当たったのが幸い。いきなりGKと1対1になって見事なゴール!!!
先制されたセパハンは早々と温存していたはずのカリミを投入してきましたが闘い振りはさほど変わり映えせず、都築と闘莉王が交錯してポロリというトホホな場面があったくらいで点を取られる気配はなし。もっとも点を守りたい浦和も前線の2人の動きが悪く、ほとんど守備をしてくれないのには参りました。ボールを奪ってからの動き出しもこれまた悪く、前目では一人攻守に奔走しているポンテがやや苛立っていた感も。
<後半開始>
--シトン---永井--
-----ポンテ----
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-長谷部-啓太--阿部-
平川堀之内-闘莉王-坪井
-----都築-----
策士ボナチッチは第1戦に続いて後半からフォーメーションを変更。4-4-2から3-4-3に代えて前を厚くしてきました。しかも後半頭から2人目の選手を入れるおまけ付き。このオッサンはオジェックと対照的にとにかく滅茶苦茶選手交代が早い。59分には3人目のカードを切ってきました。
第1戦は浦和がこのフォーメーション変更に面食らって、マークを掴み切れないうちに同点弾を食らった側面がありました。
しかし同じ手を2回食らわないあたりはさすがオジェック。セパハンの3トップに対して平川の位置を下げて4-4-2で対応。シーズン前半に4バック移行を試みてとうとう諦めてしまったようにも見受けられましたが、極めて重要な局面で柔軟性を発揮。勝ち点が伸びずに苦しんだあの試行錯誤の期間も無駄ではなく、最後の最後でチーム力アップに繋がりました。
前目の人数を増やしたセパハンは前半とは打って変わって両サイドから細かくパスを繋いでネチネチと攻めて来ます。エリア内に侵入してもなお繋いでくる感じ。足が止まりぎみの浦和は相手の圧力に抗しきれずにDFラインがズルズルと後退。セパハンは足元が巧くてなかなかボールが奪えず、浦和守備陣は粘り強く応対してシュートを撃たれる直前でドッカーンと蹴り出すのが精一杯。
4バックに移行した時に守備が得意な阿部ではなく、攻撃が得意な平川を下げたのがやや謎でしたが両FW、特に永井のボールキープに期待できない状態だったのでスキルフルな阿部を前に出して、DFから蹴り出されるボールを拾わせようとしたのかなぁ・・・
ボールさえ拾えればセパハンの中盤はスカスカなのでいくらでもカウンターが狙え、実際何度かカウンターの形が出来たのですが、ボールが足についていない感があったものの潰れ役として機能しているワシントンはまだしも永井の消耗は見ていて気の毒になるほど。永井には「オジェック理論」が当てはまらない(「健康な生活」を送ってないとかw)のではないかと思いたくなるほどの散々な出来で何度もチャンスでボールロスト。そしてまた逆襲を食らうの繰り返し。
ただ浦和は防戦一方に見えながら決定的なシュートは一本も撃たせていない。セパハンはどんなに攻め込みながらも、結局のところミドルシュートを放つだけ。際どいものは何本もありましたが悉く枠外。「放っても、放っても、あーあー枠の外」といういわゆる奥飛騨慕情さざんかの宿状態。結局この日は都築の好セーブに助けられたようなシュートは一つもなかったかと。決定力のなさは第1戦で判ったセパハンの弱点の一つで、この日もその弱点が露呈してしまいました。
セパハンは浦和城本丸の固い防御に苦しんでいるうちに、浦和に待望の追加点。右CKが流れて、左から闘莉王のクロス→シトンがエリア内でポストで落としたところをどフリーで永井がシュート! これはGKに弾かれましたが逆サイドに詰めていた阿部がヘッドで押し込んでゴール!!!
しっかり前に詰めてゴールを決めた阿部を誉めるべきでしょうが、なにより驚いたのが永井のシュート。貴重な1点を取ったがその後全く何もしていないに等しかった永井。万が一負けていれば間違いなく批判の矢面に立っていたであろう永井。その永井がここぞというところでまたしてもしっかり得点に絡みました。
ガンバ戦@万博、マリノス戦@日産、今季しんどい試合、負けても不思議はない試合に限って永井が点を取る。
絵になる奴はやっぱり美味しいところを持ってゆく。
そういう星の下に生まれているのだ。
散々悪態をついたワシが悪うございました・・・orz
こうなると浦和は必勝モード。千葉戦のようなこともありますので油断は出来ませんでしたが、オジェックは遅まきながら永井→達也、ポンテ→内舘とへろへろの前目の選手を順次交代。そして最後はファンサービス臭いワシントン→岡野という交代も見せて楽々逃げ切り。得点機をしっかりものにし、随分シュートは撃たれましたが終わって見れば完封という実に浦和らしいゲーム内容でACLチャンピオンの座に立ちました。
P.S.
試合終了後のセレモニー。堀之内は試合中に交錯して傷んだ足をぐるぐる巻きにして場内一周。この状態で90分出ていたのか・゚・(つД`)・゚・