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2008.06.12

制裁文を読む

先日Jリーグから発表された「浦和レッズ/ガンバ大阪サポーター衝突トラブルの件」に関する制裁内容を、閉門蟄居の身ながらJリーグ規約と照らし合わせながら読んでみました。

少々長くなりましたが、ご関心のあるからはお付き合い願います。

浦和及びG大阪が課せられた制裁及びその根拠条文は以下の通り。

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(1)制裁の種類および内容等

当該クラブ   浦和レッズ
 (1)制裁の種類および内容 :
   譴責(始末書提出)
   制裁金 2,000万円
 (2)適用条項 :
   『Jリーグ規約』第51条〔Jクラブの責任〕第2項
   『Jリーグ規約』第148条〔チェアマンによる制裁および調査〕第1項
   『Jリーグ規約』第149条〔制裁の種類〕第1項第1号、第2号
   『Jリーグ規約』第157条〔1億円以下の制裁金〕第2号

当該クラブ   ガンバ大阪
 (1)制裁の種類および内容 :
   譴責(始末書提出)
   制裁金 1,000万円
 (2)適用条項 :
   『Jリーグ規約』第51条〔Jクラブの責任〕第4項
   『Jリーグ規約』第148条〔チェアマンによる制裁および調査〕第1項
   『Jリーグ規約』第149条〔制裁の種類〕第1項第1号、第2号
   『Jリーグ規約』第157条〔1億円以下の制裁金〕第2号

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浦和が2000万円の制裁を課せられた直接の根拠となっているのは規約第157条〔1億円以下の制裁金〕第2号

第157条〔1億円以下の制裁金〕
次の各号のいずれかに該当する場合は,1億円以下の制裁金を科す.
(2) 第51条〔Jクラブの責任〕各項の義務を怠り,選手,チームスタッフ,実行委員,運営担当,広報担当,審判員または観客等を死傷させた場合

で、第51条〔Jクラブの責任〕各項とは何かというと

第51条〔Jクラブの責任〕
①ホームクラブは,選手,チームスタッフ,実行委員,運営担当,広報担当,審判員および観客等の安全を確保する義務を負う.
②ホームクラブは,観客が試合の前後および試合中において秩序ある適切な態度を保持するよう努める義務を負う.
③ホームクラブは,前2項の義務の遂行を妨げる観客等に対して,その入場を制限し,または即刻退去させる等,適切な措置を講ずる義務を負う.
④ビジタークラブは,サポーター対応担当(運営担当,セキュリティ担当との兼務可)をアウェイゲームに帯同し,第2項に基づくホームクラブの義務の履行に協力するものとする.

浦和は第51条2項、G大阪は同4項違反を問われています。

なお、制裁文に併せて記されている第148条1項、第149条第1項はチェアマンが各クラブに譴責及び制裁金を課すことができる根拠を記したものです。Jリーグ規約では「無観客試合」という制裁はないこと、また「勝ち点剥奪」もその運営規程が整備されていないところから察してその発動は今のところ想定されていないと思われることは先に論じたとおり。

第148条〔チェアマンによる制裁および調査〕
①チェアマンは,JクラブまたはJクラブに所属する個人(選手,監督,コーチ,役員その他の関係者を含む.以下同じ)が,本規約または本規約に付随する諸規程に違反したときは,制裁を科すことができる.

第149条〔制裁の種類〕
①Jクラブに対する制裁の種類は次のとおりとし,これらの制裁を併科することができる.
(1)譴責    始末書をとり,将来を戒める
(2)制裁金   1件につき1億円以下の制裁金を科す

で、両クラブとも規約第157条第2号に基づいて最大1億円の制裁金を喰らう可能性があったにも関わらず、なんで各2000万円、1000万円で済んでいるのか誰しも疑問に思うところでしょうが、私は以下のように邪推しました。

規約第51条違反に関連する制裁金の規約をよく読むと以下のような条文があります。

第159条〔2,000万円以下の制裁金〕
次の各号のいずれかに該当する場合は,2,000万円以下の制裁金を科す.
(9)第51条〔Jクラブの責任〕第1項,第2項または第3項に違反した場合

第160条〔1,000万円以下の制裁金〕
次の各号のいずれかに該当する場合は,1,000万円以下の制裁金を科す.
(5)第51条〔Jクラブの責任〕第4項に違反した場合

規約第157条2号は、ホームクラブ/アウェークラブが第51条各項に違反した結果、死傷者が出てしまった場合に適用される規定。本事件でも負傷者が1名出ているので当条項が適用されるのは仕方ありません。ただこの怪我人は制裁文にも記されているように

「スタンドでは、選手に対して異議を述べるなどしていたガンバ大阪のサポーター1名がスタンドの最前列に詰め寄った他のガンバサポーターに押され、スタンドから3メートル下のスタジアム内の溝に転落して怪我を負った。」

と記されているように、半ば自爆行為。浦和レッズ/ガンバ大阪サポーターの衝突トラブルに全く無関係というわけではありませんが、深い因果関係はありません。Jリーグはこの事実認識のもとに、浦和は実質的に第159条9号相当、G大阪は第160条5号相当であり、かつ、「一連の騒動はサッカースタジアムが危険であるとの印象を社会に与えてしまった。」ことに鑑みて同条文の上限にあたる制裁金を課したのかなぁとも考えられます。

但し、このロジックが弱いのは本事件と類似した05年4月「柏vs名古屋」の乱闘事件で柏に課せられた制裁金がわずか1000万円で済んでいること。同事件に関するJリーグの制裁文が見当たらないのですが、こちらはサポーター間のトラブルによる直接の負傷者が出ているので規約第157条2号が間違いなく当てはまりますが、今回の事件との均衡を考えると柏の制裁金が少なく、しかも事件の発端とされる名古屋に制裁がないのは謎なんですな。

従って今回の事件ではトラブルに直接起因する負傷者こそ出ていないものの、「柏vs名古屋」とは違ってマスコミに大々的に取り上げられ、「一連の騒動はサッカースタジアムが危険であるとの印象を社会に与えてしまった。」ことに鑑みて浦和には前回の倍、G大阪は柏と同じとし、その金額にはさしたる根拠がないのかもしれません。

まぁ幸いにもこれまでJリーグではどういうトラブルを起こしたらいくらという前例がほとんどなく、制裁金の多寡の根拠を考えること自体意味がないのかもしれませんが。

今回は制裁金の根拠について考察しましたが、制裁文にはもう一つ疑問があります。すなわち浦和が問われたのは第51条〔Jクラブの責任〕第2項であり、第3項違反は問われていないこと。

<再掲>
第51条〔Jクラブの責任〕
①ホームクラブは,選手,チームスタッフ,実行委員,運営担当,広報担当,審判員および観客等の安全を確保する義務を負う.
②ホームクラブは,観客が試合の前後および試合中において秩序ある適切な態度を保持するよう努める義務を負う.
③ホームクラブは,前2項の義務の遂行を妨げる観客等に対して,その入場を制限し,または即刻退去させる等,適切な措置を講ずる義務を負う.

これ、今後の浦和の試合運営を考えるにあたって非常に重要だと思うのですが、本件に関してはまたの機会に譲ります。

P.S.

制裁金2000万円を払うために浦和はいくら売上を伸ばさないといけないかというのも考察に値する問題です。公表されている決算諸表から売上高利益率を計算して、そこから逆算するというアプローチは浦和の場合(というか、上場していないスポーツクラブの場合大概そうでしょうが)あまり意味がありません。というのは、浦和は株式会社の形を取っているもののフツーの会社と違って収益を上げることが目的ではなく、利益相当分をレッズランド等地域へ還元しているので、実際の収益よりPL上に出てくる利益は少ないと考えられるから。

もっとも、緩衝帯が倍になり、警備費が嵩むことを含めて今回の制裁は浦和の経営に打撃なのは間違いありません。浦和のファン・サポーターにできるのは、どんなにクソ試合が予想されようともせっせとスタジアムに足を運び、どんなにセンスに疑問が持たれようともせっせとグッズを買うことしかないと思います。

試合内容共々苦難の時期を迎えましたが、共に闘いましょう。

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