【観戦記】08年第33節:G大阪 1-0 浦和
とうの昔に求心力は失われ、かつ既に解任が決まっている監督にだらだらと指揮を取らせたところで何も良いことはありません。
そんな悲惨な状況下でも選手達はプロですから、試合になれば本能的に闘争心を掻き立ててなんとか相手を倒そうとするでしょう。でも、組織的な動きが見られないチームはいくら個々人が頑張ってもたかが知れています。おまけにただでさえ攻守のバランスが悪くて、まさに砂上の楼閣に等しいチーム状態であるにも関わらず、満足に動けない選手が再三気まぐれに攻撃参加していては攻守のバランスなんて保てるはずがありません。
前半終了間際に山崎が退場になったために、後半立ち上がりから半ばまで浦和が一方的に攻めましたが、その時間帯ですら決定機は僅少。それ以外の時間帯はカウンターから大ピンチになった局面は何度もありましたから、本来2-0、ないし3-0で負けていた試合を運良く1-0で凌いだ、それくらい絶望的な試合だったと思います。
監督解任決定後も指揮を採り続けると判ってから、残り試合は浦和の死に様を見届ける場になるだろうと覚悟はしていましたが、ある意味実に見事な死に様でした。起死回生の可能性を一片も感じさせない、誠に天晴れな死に様。一縷の生還の望みすらあざ笑うかのように繰り広げられる失態の数々。
生きながらにしてして死んでいる浦和を埼玉スタジアムでもう一度見る。それは浦和の盛大な葬式そのものなんでしょう。
-----エジ-----
達也---ポンテ--セル
---啓太--細貝---
阿部-闘莉王-坪井-平川
-----都築-----
73分:達也→梅崎
-----山崎-----
遠藤---ルーカス--佐々木
---橋本--明神---
安田-山口--中澤-加地
-----藤ヶ谷----
84分:佐々木→武井
長期的な展望を立てる必要すらなくなって(っちゅーか、もともとそんなものを持ち合わせていないのでしょうが)、ある意味やりたい放題状態のゲルトは、またも4-2-3-1の形だけ固執してメンバーを入れ替える策を敢行。前回清水戦からのメンバー変更は相馬に代えてエジ。闘莉王をCBに下げて細貝をボランチに据え、右SBに平川を据えたのはいいのですが、左SBはなんと阿部。一応代表でテストされているので阿部個人としては全くの素人ではないですし、札幌戦以来試行錯誤を続けた中では最もマシだろうと思われましたが、やはり練習していないものは機能しようがなく、現実の厳しさを思い知らされるだけでした。
ACL優勝を成し遂げたのと引き換えに疲労困憊でズタボロのガンバ。まるで「浦和のように動けない」ガンバ。こんなに酷い状態のガンバを見たのは久しぶりで、浦和はいつものようにガンバに中盤を制圧されることもなく、むしろ出足の悪いガンバを尻目に前半からポゼッションで優位に立ちはじめます。
ただこの「ポゼッション」というのが曲者。浦和は文字どおりボールを持っているだけで、全くガンバの守備陣をこじ開けることができません。ボールポゼッションがなんら試合支配に繋がらない典型。サイドの縦のポジションチェンジがない、前目に攻撃陣を多く配置しただけの「なんちゃって4-2-3-1」が通用するのはやはり札幌だけですね。チャンスは時折セルや達也が個人技で斬り込むくらい。止まっている選手の足元から足元へ、まるで「信号よし!」と指差確認しながらゆるゆるとボールを繋ぐだけ。思い出したようにサイドチェンジするのは良いのですが、相手の手薄なサイドにボールを振ったところで今度は中が薄い。
またそれ以前に攻守の切り替えが遅いのが致命的。常に相手の守備陣形が整ってから攻めている按配で、これでは相当連携を深めないとなかなか相手を崩せません。
で、膠着状態を打開すべく闘莉王が再三最終ラインから攻撃参加。残念ながらこれは自殺行為そのものでした。攻撃参加が実を結ぶよりも、攻守のバランスが崩れてカウンターを食らう危険が高まる可能性のほうが遥かに高かったからで、シュートで終われずにカウンターを食らうだけならまだしも、攻め上がる途中でドリブルをカットされてカウンターを食らうという重営倉行きの失態すら散見されました。膝の状態が相当悪いのか、上がったら戻れないどころか肝心の守備ですら機能しているとは言いがたく、この日の闘莉王はとてもスタメンで使える状態ではありませんでした。ゲルトと闘莉王の蜜月。これが浦和を死に至らしめた一因であるのは間違いありません。試合終了後、セルの守備が緩慢なことについて都築と言い争いがあったそうですが、都築が真っ先にがなりつけるべきはセルではないでしょうに。
闘莉王が攻撃参加した穴はボランチのどちらかが埋めていましたが、攻守の切り替えが遅いもので中盤に開いた穴を埋める選手がいない。従って相手のSB、特に加地が上がってくるとサイドで数的優位を確保して守ることができず、阿部が加地と1対1を強いられたあげく(酷い時は阿部が2人見ていることも・・・)にクロスを送られて大ピンチという場面が3度ばかりありました。本来ならそのクロスを闘莉王がなんとか弾きかえしているはずですが、そんな場面はほとんどなく・・・ この日の決勝点もそのパターン。むしろ1失点で済んだのは天佑だったとしかいいようがありません。
それでも山崎が愚かにも露骨なハンドで2枚目のイエローをもらって退場になり、数的有利になった後半は阿部の攻撃参加が活発になって攻めに攻めたのですが、所詮「各駅停車」を乗り継いでいるだけの、緩急の「緩」しかない攻撃、相手に応対する時間をたっぷり与えている攻撃ではガンバクラスの相手には通用しません。ガンバは数的不利&動けないとはいえ、カウンターやセットプレーでなんとかすれば良いという方針ははっきりしていますから、浦和の攻撃をセーフティーファーストでひたすら凌いでチャンスを待つしぶとい戦いぶり。
セルがドリブルで2、3人引きつけて頑張っているのは判りますが、回りと全く連動していないがゆえに相手守備陣に穴を開けられないのがなんとも歯がゆい。なんか新加入の選手が一人で張り切っているようにしか見えないんですが、チーム全体に共有された攻撃の形・意図がないのですからセルの責めに帰することはできません。
そしてかろうじて浦和優勢の礎となっていた「数的優位」が、エジの愚行でパーになってからは浦和は死を待つばかり。達也→梅崎でセルをFWに上げた采配はまずまずでしたが、やはり決定機を掴むには至らず(梅崎が自分で撃てそうな局面でクロスを選択してしまうのには参りましたが・・・)、最後はガンバの狙い通りカウンターに屈してしまいました。これほど強さを感じないガンバに事実上惨敗を喫してしまう浦和はもはや屍そのもの。
勝たないと優勝どころか、3位すら危うくなるにも関わらず、交代は結局達也→梅崎のみ。勝ちに行くなら啓太や平川を代えて攻撃的な選手を入れる手はあったはずですが、脳死状態のゲルトにそんなことが思いつくわけもなく・・・っちゅーか、3位を確保することすらもはや義務ともなんとも思ってないのでしょう。
社長はもはや来季のことしか関心がなく、弱化本部長は事実上更迭、解任された監督はお気楽モードで勝手気ままに暴走。せめてチームキャプテンがしっかりしてくれれば良いのですが、暢久はなぜかスタメンから外され(まぁ元々危機管理を期待できるキャプテンではありませんが・・・)、代わりに監督の絶大な信認を受けてキャプテンマークを巻いている選手はバランスもへったくれもなくこれまた勝手気ままに暴走。
戦力がリーグ平均以下だった90年代よりも深い闇が今の浦和を包み込んでいます。
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