【観戦記】09年第3節 磐田 1-1 浦和
残念ながら「前節の快勝はFC東京があまりにも不甲斐なかっただけだ」という仮説を実証したかのような試合内容&結果。磐田は開幕から連敗、しかも大敗続きとは思えない素晴らしいパフォーマンスを見せ、よちよち歩きの浦和の攻勢を見事に封じこめました。
もっとも磐田の決定機は2回しかなく、内容は浦和優勢といって差し支えないと思います。しかし磐田は数少ない決定のうちの1回を決めたのに対し、浦和は達也がGKとの1対1を決められないなど決定力を欠いて、結局エジの同点弾のみ。中盤をタイトにしてしっかり守ってくる相手にはまだまだ力不足といった印象が強く、下手に勝って問題が先送りされるよりも、問題点をあぶりだせた上に勝ち点1がついてきたので、ある意味「収穫の大きい引き分け」なのかもしれません。
大敗続きの磐田との引き分けには厳しい意見も多いようですが、この試合を見る限り磐田は絶望的に弱いわけではありません。少なくともチームとして完成度の低い今の浦和では中盤を制圧するのは難しい相手でした。しかし概してDFラインが浅いので裏を取られやすく、先制ないし逆転されて攻勢に出ざるを得なくなるとカウンターを浴びやすいため大量失点に繋がりかねない。ところがこの試合は磐田が先制し、その後もなんとか同点で持ちこたえました。
久々に磐田に帰ってきた柳下監督は4バックへ移行するにあたって守備の整備を最優先とし(2試合で10点も取られれば当たり前といえば当たり前ですが)、攻撃は徹頭徹尾ジウシーニョ頼み。フィールドプレーヤー8人で守って、1人が攻守に動き回って、1人(前田)は休んでいる。また攻守ともジウシーニョの負担がでかすぎ、しかもサブの面子がイマイチなので選手交代による局面打開も難しく、試合展開が尻すぼみになりやすい。そんなところでしょうか。
-----エジ-----
達也---ポンテ--高原
---啓太--阿部---
細貝-闘莉王-坪井-暢久
-----都築-----
63分:達也→細貝
---前田--ジウ---
-西-------太田-
---ロド--山本康--
駒野-茶野--那須-犬塚
-----川口-----
76分:西→村井
79分:太田→岡田
89分:ジウシーニョ→萬代
原口が風邪を引いたらしく、前線には高原が復帰。それ以外はFC東京戦と同じスタメン。フォーメーションは前半は4-2-3-1、後半はポンテが右に張る局面が多かったので事実上4-2-2-2だと思います。3人のFWは例によって頻繁にポジションを変えてきます(もっとも頻繁なポジションチェンジの過程でしばしば選手同士が被ってしまうあたりに完成度の低さを露呈。)ので、フォーメーション図は気休め程度。
で、前節後半の再現と行きたかったところですが、前半良かったのはポンテのスルーパスを受けて達也がDFライン裏に飛び出してからの10分くらいですかね。後はほとんど良いところなし。ボールの出しどころがなくてDFライン間でボールをチンタラ回し、思い出したようにFWへ蹴りだして跳ね返されるという、昨年よく見た光景が延々と続きました。
磐田の中盤の守備が良いからなんでしょう。積極的にラインを押し上げてコンパクトな陣形を維持。ポンテにボールが入ればファウル覚悟で激しくチェック。SHにボールが入れば2人掛りでプレス。ボランチには後ろからジウシーニョが襲い掛かってきます。
ただDFラインが高いので一発で裏を取られる危険があり、実際何度がそれを喰らっているのですが、浦和はそのチャンスを決められず。ポンテが激しくマークされているのでボランチのどちらかが精度の高いスルーパスをFWに供給できると磐田の守備を簡単に崩せそうなものですが、阿部&啓太のコンビはそういう仕事がイマイチ。むしろ闘莉王のロングフィードが目立つほど。
中盤がタイトな相手に対して浦和のパスワークは機能せず、縦パス一本で崩そうとしても精度の高いパスが出せるのはポンテのみ。今日の浦和の攻撃は勢いポンテ頼みになってしまいました。そういうサッカーを止めるはずだったんですけど、パスワークが機能しないと旧来のサッカーに戻ってしまいますねぇ・・・あまりにも負担がでかすぎてポンテは終盤ヘロヘロになってミス連発。相手の執拗なチェックにイライラして副審に当たる場面も。
細貝からのクロスをエジがヘッドで決めた場面。頭部に裂傷を負っているためか、あるいは単に前でボールが収まらないので上るに上がれないのか攻撃参加を自重気味だった闘莉王がこの時間帯は珍しく攻撃参加して最前線でボールに絡んでいました。そして、その間に得点が入ったのはポンテ以外のボールの収まりどころが出来たのと無縁ではないと思います。まぁ終始それに頼っていると昨年の繰り返しになるんですが。
後半は磐田の中盤のプレスも効かなくなってDFラインが下がり、浦和のサイド攻撃が実りはじめます。消耗の激しい達也に代えてフィンケはセルを投入(てっきり相手の脅威にも何にもなっていない高原を代えると思ったんですけどねぇ・・・)。しかし残念ながらセルは全く機能せず。達也に代わってそのまま左SHに入り、あまり前線には顔を出さない感じでしたが、ボールを持ったら随分と低い位置からでもドリブルを仕掛けようとします。確かにセルの持ち味は重心の低いドリブルなんですが、まずは誰かに預けてリターンパスをもらいながら相手の右サイドを崩すというのがフィンケの嗜好なんじゃないかなぁ?
また達也やエジが懸命にSBをフォローしているのと比べると、セルは守備貢献がいかにも物足りない。セル投入後、2回左サイドが炎上して一発ポスト直撃弾を喰らってしまいました。原口の守備貢献度もイマイチですが、フィンケのやろうとしているサッカーへの馴染みやすさはセルより確かに上。
セル投入後同点に追いついたものの、その後はベタ引きになった磐田を攻め倦んで膠着状態。フィンケもさすがにこの状態で原口や直輝を使う勇気はない様子。最後の闘莉王大作戦も実らず、交代枠を2つも余らせて試合終了。磐田の両サイドを結構崩してはいましたが、磐田は2試合で10失点が嘘のように最終ラインがなんとか持ちこたえました。
磐田の攻めは徹頭徹尾ジウシーニョ頼み。中盤でボールを奪ったら早めに前線へ送る攻めが目立ちましたが、前田がこれといった仕事ができない(というか簡単にボールを失ってしまう)ので、いきおいジウシーニョ一辺倒。坪井がボールを持つとジウシーニョや西が激しく突っかけてきます。その前フリが効いたのかどうか、右サイドで一瞬暢久・啓太・坪井がお見合いをした格好になり、その間隙をついてジウシーニョが坪井と入れ替わるようにエリア内に突進してそのままゴール。前半の磐田のチャンスはこれ一回しかなかったのですが、それをきっちり決められました。
守備的に戦っている相手に先制を許すと難しい試合になる。当たり前の事実を確認したような試合でもありました。この場面のみならず、前節に続いて右SBに入った暢久は前節の出来とは一転して集中力を欠いたようなプレーが散見されました。フィンケのやろうとしているサッカーは極論すれば「ボールを取られない」ことを前提にしていますから、寝ていて不用意にボールを取られると非常にしんどいですわ・・・
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