【観戦記】浦和 3-1 FC東京
いやぁ、こんなに愉快な気分で埼スタを後にするっていつ以来でしょうね? FC東京(以下「瓦斯」)の出来があんまりだったとはいえ、フィンケ監督と共に長い旅に出てからわずか2試合目にして勝利。しかも内容で優に相手を凌駕しての快勝。鹿島戦の完敗で射した陰を払拭して余りある良い勝ち方でした。
優秀な監督がチームを正しい道に導いていたとしても、それが直ちに勝ちに繋がるとは限らないのがフットボールの難しさ。勝てない試合が続けば、信じていたはずの道にもどうしても疑念が生じます。そしてその疑念を外野が囃したて、さらに疑念が広がったりします。
それゆえ相手の状態がどうあれ早めに結果が出た、しかもセットプレーでぽこっと1点取って勝ったわけではなくフィンケがやろうとしているサッカーが結実した形で勝ち点3を得たのはフィンケがチーム作りを進める上で極めて大きいと思います。
02年オフト改革時のリーグ戦初勝利は第5節(広島戦)。もちろん当時と比べれば選手のレベルが上っていますから当然といっては当然なんですが、予想以上に早く、しかも内容を伴った結果が出て本当に良かった。雨上がりに虹こそ架かりませんでしたが、昨年来(いやそれ以前からか・・・)長く降り続いた浦和の雨がようやく上った。そんな感じのする勝利でした。
パスサッカー、繋ぐサッカーを指向するチーム同士。撃ち合いになるか、あるいは潰し合いになるかはともかく拮抗した試合になるだろうと思ったのですが、瓦斯の中盤が弱すぎて話になりません。
昨年の浦和は瓦斯に連勝とはいえボールを支配されている時間が長く、決定力の差でまさに「勝っただけ」という試合内容。その瓦斯相手に先週鹿島に手も足も出なかった浦和がどの程度通用するかが見物だったのですが、何のことはない前半半ばから浦和がほぼ一方的にボールを支配。
ボール奪取能力に定評があったはずの今野や、豊富な運動量が売り物だったはずの羽生は全く存在感を見せられず。瓦斯はボールを奪っても浦和のプレスを交わせずに簡単にボールを奪い返され、ボールを回されまくったあげく時間の経過ともに消耗。浦和が何度かチャンスを掴み、ダメ押しとなるポンテの3点目が入ったのは必然ともいえる試合展開。
主力選手に怪我が相次いだとか、コンディションが十分でないとか色々言い訳はあるでしょうが、主力選手は昨年と変わっていないのに、瓦斯と同じパスサッカー、繋ぐサッカーを掲げたばかりでよちよち歩きの浦和にいきなり追い越されるって城福の一年はいったい何だったのか?と感じざるを得ない試合でもありました。
で、昨年浦和をこきおろした城福が試合後何と言うかが楽しみだったわけですが、
内容は、個々のプレーについては色々あるが、トータルで見たときにボールをまわされて翻弄されたという印象。ボールを奪ったときに、自分たちが保持しないといけないところでもすぐ奪われてしまったという意味では、全体として非常に悔しいがフェアな結果だと思う。しっかり自分たちの課題を抽出し、切り替えて次に向かいたいと思う(J's Goal)
と実に殊勝。「浦和のどこがムービングなんだ?これでは日本の為にならない」とか「試合には負けたが、自分達のほうがラブリーだった」とか、そういうのを期待していたんですがねぇ・・・
【浦和】
---達也--エジ---
原口-------ポンテ
---阿部--啓太---
細貝-闘莉王-坪井-暢久
-----都築-----
57分:原口→高原
78分:達也→直輝
86分:エジ→堀之内
【瓦斯】
--カボレ--近藤---
羽生--------鈴木
---今野--梶山---
長友-茂庭--平松-徳永
-----権田-----
58分:鈴木→大竹
60分:近藤→赤嶺
66分:羽生→石川
フィンケは金曜日の練習で試した通り細貝を左SB、暢久を右SBに起用。暢久は天来の器用なところを見せて対面の長友を完封した一方、細貝は左に張り出しているボランチといった感が否めず。
細貝は前で積極的にボール奪取できているうちは良いのですが、徳永に抉られて失点に絡んでしまったり(もっともこれは2人のプレッシャーを受けながら絶妙なところへパスを通した梶山を褒めるべきかもしれませんが)、石川へのマークが外れてどフリーでバー直撃弾を撃たれたりと微妙な出来。もっとも急増ゆえ仕方ないとは思いますが、SBの人材不足にはしばらく悩まされそうです。
FWを高原からエジに代えたのも練習から予想された通りでしたが、これは効果てきめん。スリムエジは昨年とは別人。ポンテのクロスを受けての2点目もさることはながら、味方が不用意にボールを奪われた際の献身的な守備に光るものがありました。さらに回りを使うのが存外上手い。回りを使うなんて新潟時代には思いもよらないプレーでしょうから、フィンケの指導の賜物なんでしょうなぁ・・・ 昨年のようにあっさりとボールを失う場面がほとんどないのは回りのサポートが早いからでしょうけど、それがエジの上手さを引き出す順回転。
試合はポンテCK→阿部のボレーで浦和が早々と先制。左を崩されて同点に追いつかれたものの、時間の経過と共に浦和のショートパスが繋がりだして(っちゅーか、立ち上がりはむしろエジや達也へのロングパスが目立ったような・・・)浦和優勢で前半終了。ただ繋ぐ意識が強すぎるのか、シュートを撃てそうな局面でもう一手間かけ、それに誰も反応できなかったり、相手にひっかかったりして結局シュートで終れない場面が非常に目立ちました。
原口は盛んにポンテとポジションを代えながら攻撃に絡んではいましたが、ボールを持つを簡単に達也に預けてしまいます。それがこのチームのやり方と言ってしまえばそれまでですが、結局ドリブルで仕掛けるのはいつも達也(しかも鹿島戦同様、キレが今一つ・・・)では相手も対応しやすいような・・・でもこの辺りのコンビネーションは時間が解決してくれるのでしょう。原口がしょっちゅうボールに絡んでいるというのは受け手としてそれなりの仕事をしているゆえなんでしょうけど。
後半は今野が傷んでいる隙を付いて闘莉王→ポンテ→エジでゴール。そして早くも電池切れっぽい原口に代えて高原を投入。
---エジ--高原---
達也-------ポンテ
---阿部--啓太---
細貝-闘莉王-坪井-暢久
-----都築-----
高原は決定的な仕事こそ出来ませんでしたが、動きそのものは鹿島戦より良くなっていたような・・・一方左SHに下がった達也ですが、ゴールから遠い位置にいる達也ってパスを出せないのでイマイチですな。今のところ原口が90分持たないのは明白なので、アレックスなり梅崎なりが戻ってきて欲しいところ。
突き放されて3人を相次いで代えて来た城福に対し、フィンケはお疲れっぽい達也に代えてなんと直輝を投入。
---エジ--高原---
--直輝-----ポンテ
---阿部--啓太---
細貝-闘莉王-坪井-暢久
-----都築-----
1点差で若い選手を投入するのは非常に勇気が要りますが、これがズバリ的中。お疲れでスカスカになった瓦斯の中盤を直輝が自由自在に動きまくります。いきなりパスミス(上ってきた2選手との呼吸が合わず、その後ろにパスを出してしまう・・・)でカウンターを喰らったのには肝を冷やしましたが、その後も中央に近いポジションどりで攻撃の要として機能。
誰もがびっくり仰天の坪井左サイドオーバーラップからのクロスを受けて中央でどフリーの直輝がゴール!!!と誰しもが思ったでしょうが、直輝はなぜか右でフリーのポンテへのパスを選択。ポンテがニアをぶち抜いて直輝の選択が間違っていなかったのを証明しましたが、ポンテじゃなかったら難しかったかも・・・
ダメ押しともいえる3点目を取った後、フィンケはなんと堀之内を投入。
--高原---ポンテ--
-----直輝-----
-阿部--堀之内-啓太-
細貝-闘莉王-坪井-暢久
-----都築-----
堀之内投入後はこんな感じでしょうかね? フィンケって育成は上手くて、試合前の準備も抜かりないけど、スタメン選手をピッチに送りだしたらそれで仕事はお仕舞いで選手交代は下手かもしれんなぁと思っていたのですが、それは杞憂もいいところ。交代枠はきっちり使うし、交代そのものに違和感もなく、しかも結果が出る。いやはや恐れ入りました。
試合後にフィンケは
堀之内は非常に大切な、チームの中でも非常に認められている存在だと思いますし、彼にも定期的にこのような短い時間であろうとピッチに送り出すことによって彼のボール感覚、そして試合勘を失わないようにしたいと思っています(浦和公式)
なーんてこと言ってますが、単に阿部を左に出して最大の弱点である左サイドの穴を塞ぎに行っただけじゃないかなって?
後半33分から途中出場した山田直は「監督が興奮してドイツ語で指示されたので(コーチ兼通訳のモラス)雅輝さんが来るまで何を言っているか分からなかった」と説明(スポニチ)
って、経験豊富なフィンケも相当テンパってたみたいだし。
長い目で見ないといけないって誰しも判ってはいるけど、そうはいっても勝たないといけない。結果を出さないといけない。
就任2戦目にして勝利。
勝って本当に良かった。ファン・サポーターのためにも、新任監督のためにも、選手・スタッフのためにも。
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