圧倒的にボールを支配し、再三サイドを崩しているものの決定機どころかシュートに持ち込めず、あろうことか相手にカウンターのチャンスを与えてしまうというここ数試合続く浦和の課題は解消されず。
それどころか直輝の出場停止による打撃はかなり大きく、浦和の前線は流動性を著しく欠いてしまいました。具体的に言えば直輝がいる時と比べて後方からボールを引き出す動きが少なく、「人もボールも動かない」時間帯が長く続きました。
闘莉王の負傷退場で細貝がCHに上り、細貝が盛んに動くことでいったんは停滞感が解消したのですが、後半細貝がフェードアウトすると共に浦和の攻勢は再び沈滞。後半半ばからは攻撃陣がてんでバラバラにドリブルで突っかけ、ボールを取られると守備に戻れずに後は守備陣よろしく!といったまるで昨年のような試合に。
電池切れのセル・原口に代えて峻希・林を投入。双方疲れて中盤がスカスカになったものの、先に足が止まったのは浦和。峻希も林も良い形でボールを持っても周囲のサポートが遅く、大宮守備陣に数的優位を作られて苦戦していましたが、終盤には大宮の足も止まってロスタイムに浦和猛攻。しかしシュートは一本も枠内に飛ぶことはなく1-1のドロー。こういう展開になると戦術もへったくれもなく、「理外の理」で点を取ってしまう闘莉王の負傷退場が惜しまれます。
結局ポンテが欠場して以降ナビスコ杯も含めて4試合1勝もできず。「押し込んではいるが点が取れない」のは攻撃陣に故障者が続出しているという「人の問題」なのか、あるいはより根深い「組織の問題」なのか。達也やポンテが戻ってくると期待される中断期間明けにその答えが明確になることでしょう。
---高原--エジ---
原口--------セル
---啓太--阿部---
細貝-闘莉王-坪井-暢久
-----都築-----
20分:闘莉王→アレックス
73分:セル→峻希
80分:原口→林
この試合面白かったのは闘莉王負傷退場後~前半終了まで(それとロスタイム)。
浦和は押しているけれども攻めきれないというもどかしい立ち上がり。縦パス一本で抜け出た左SBパクへの対応を暢久が誤り、クロスをクリアしようとした坪井が不幸にもオウンゴール(記録上はパクのゴールみたいですが・・・)。これで試合はカウンター狙いしかない大宮のペースに。
悪いことは続くもので、怪我でナビスコ大分戦を休んだ闘莉王がどこかしら傷めて自ら交代を要求。そこでフィンケはすかさずアレックスを投入。
---高原--エジ---
原口--------セル
---啓太--細貝---
アレ-阿部--坪井-暢久
-----都築-----
本来のポジションに戻った細貝がまさに「水を得た魚」のように動きまくって停滞気味だった浦和の前線に活気が戻ります。直輝の仕事のごく一部を細貝が代わって担っているかのよう。
CKからマトのバー直撃弾があった後のカウンターのチャンスから左サイドを駆け上がったアレックスからクロス→ファーのエジが粘って中央に走りこんだ細貝がゴールと胸の空くようなゴールが決まりました。細貝の最適ポジションはやはりCH。持ちすぎ感の強いアレックスがフィンケの志向するサッカーに合わず、永田・野田がトップに上げられるレベルにはない以上、左SB(できれば両サイドともこなせるのがベストですが・・・)を補強して、この日再三パスミスを繰り返していた啓太の代わりに細貝をCHに上げるのが最適かと。
でも惜しむらくは細貝の大活躍は前半終了まで。浦和は前半デニスマルケスが全く守備ができないことに目を付けたのか徹底的に大宮左サイドを攻め、深く抉ることには成功しましたが、眼前に聳えるマトを抜く工夫がありません。好調時なら間違いなく薄くなった大宮右サイドに大きく展開してアレックスの突破力を生かすはずなんですが・・・
何の役にも立っていないデニスマルケスを張監督は早々と諦めて後半頭から土岐田を投入。これで大宮の明確な穴はなくなり、浦和の攻撃は左右バランスが取れたものになったというか、どちらも攻めきれなくなってしまいました。一度右サイドからのセルのクロスが高原に合ったのですが・・・ ナビスコ大分戦で再三醜態を晒した高原。何ゆえフィンケ監督が全くいいところがない高原をここまで重用するのか正直理解しかねますが、直輝出場停止で久々にスタメン出場の機会を得たこの日もさっぱり。
高原にボールが渡った時点で十中八九浦和の攻撃は終了。高原が浦和の攻勢の終点であり、それは同時に大宮のカウンターの起点。ほとんどファウルを取ってもらえない高原のコケ技がこの日も冴えわたりました。
大宮は前半放置状態だった浦和の両CHに厳しくプレスを掛けてくるようになり、細貝も前半やや飛ばしすぎたか、明らかに攻撃参加度合いが減って試合は再び膠着状態。その後は攻撃陣が「やあやあ我こそは」を繰り返すだけで、フィンケの教えもどこへやら。最初から最後まで大して動かない高原、電池切れが著しいセル&原口、そしてこれまで攻守に頑張っていたエジも今季出ずっぱりでさすがにお疲れのようで、後半半ば以降は中盤スカスカ。相手が強ければこの時点で失点してそのままズルズルと負けていたでしょう。
とはいえ、ここで点が取れないのが大宮の実力といって然るべきで、峻希・林を投入してから再び浦和ペース。峻希をスタメンで見たかったところですが、周囲のサポートが遅くなるとフィジカルに劣る峻希&林はかなり辛そう。でもこれまで何度かベンチ入りしながら一向に出番が回ってこなかった林がついにデビューを果たしたのは、細貝CH転用と並んでこの試合の数少ない収穫だったと思います。
---藤田--石原---
デニス-------藤本
---金沢--橋本---
パク-マト--片岡-波戸
-----江角-----
HT:デニスマルケス→土岐田
62分:藤本→内田
88分:金澤→福田
大宮は普段は前から積極的にプレッシャーを掛けてくるはずですが、ボールが取れないので早々と諦めてしまったのか、あるいは意外な形で先制点が転がり込んできたのでしんどいことは止めたのか、後半一部の時間帯以外はそれほど前で積極的にボールを取りに来ませんでした。浦和が後方でボールを回している時はDFラインを積極的に上げてきますが、基本的にはリトリートして守備。
で、攻撃はというと深い位置(それが往々にして高原のボールロストなんですが・・・)でボールを奪って縦ポンで前線へ。CB阿部が応対を誤る場面が2度ほどあってヒヤリとはしましたが、まぁJ1レベルでこの形で点が入るなんてFWがエメルソンクラスじゃないとしんどいような・・・ 一度だけSH土岐田がFWと入れ替わって前に出て決定的な場面を作りましたが、ああいう形をどんどん作らないと。
今の浦和のように極端に前に出てくるチームには嵌りやすいスタイルだけど、この先J1で勝ち点3を拾うのは難しいんじゃないかなぁ・・・