【観戦記】09年天皇杯2回戦:松本山雅 2-0 浦和
「この面子でパスサッカーだの、コンビネーションサッカーだのなんて所詮無理があるよね。」
これまで何度となく脳裏を掠めては、その度に振り払ってきた悪魔の囁き。でもそれは悪魔の囁きどころか真実を伝える神の声なのかもしれない。そう思わざるを得ない、ただただ情けない試合でした。
代表召集で闘莉王と阿部を欠いているとはいえ、前目の選手はセルと高原を欠くくらいでほぼ健在。しかも3つも下のカテゴリー相手に面子を落とすことなく、考えうる限りでの「ベストメンバー」でスタメンを構成。そしてその結果は相手に力の差をみせつけるどころか、相手の狙いにどっぷり嵌り込んでの衝撃的な敗戦でした。
松本山雅の勝利は浦和のミスで偶然転がり込んだ点を守りに守っての偶発的なものではなく、浦和は立ち上がりに往々にして集中力を欠くこと、がカウンターに極めて脆いこと、そしてエリア内中央を固めてしまえば浦和はそれを打開する術がないことを知り尽くしてのように窺えました。
そしてその「浦和3悪」が3つとも炸裂。地域リーグのチーム相手にこの試合内容じゃ、そりゃJ1では7連敗だの、8連敗だの喰らうのは当たり前だわなぁ、と妙に納得。
また情けなかったのはパスサッカーだの、コンビネーションサッカーだのが機能しなくても、最後は個人能力で何とか相手をねじ伏せてしまうような勝ち方(フィンケは全く喜ばないでしょうけど・・・)でも良かったはずなのに、物悲しいことに個人能力で明らかに相手を凌駕している選手も少なかったこと。「浦和は個人能力の高い選手が揃っているが戦術がない」と揶揄された時期もありましたが、この試合を見ると個人能力が高い選手なんてもう何人もいない。戦術が浸透するより早く個人能力が劣化してしまった選手だらけという感。そりゃJ1では7連敗だの、8連敗だの喰らうのは当たり前だわなぁ、とまたまた妙に納得。気の毒なんであえて名を秘しますが、即刻お引取り願いたい選手もちらほら。でもその中にまだ契約が残っている選手がいるっちゅーのがアレですなぁ・・・
駒落ちだとか、スケジュールがタイトだとか、そういう言い訳が一切きかない惨敗。良い風に解釈すれば、これで来季は大幅に手駒を入れ替えて闘う決断が取りやすくなるというもの。
逆に言えば契約の関係で使い物にならない選手を残さざるを得ないとか、金がないだとか、良い選手が来てくれないだとか、良い選手もなんもそもそも信藤TDにコネがないだとか、そんなこんなの理由で来年も面子が今年とそんなに変わらないとしたら、おそらく浦和は「3悪」を引きずったまま。いや個人能力の劣化がさらに進む分、もっと悲惨な目に遭うかも。今年と違って前半の貯金は期待できそうにありませんから残留争い行きは必至。2年目にして結果を出せないフィンケは、そのサッカーの完成を見ることなくあえなく期中解任。そしててっとり早く勝ち点を稼ぐために「伝統のカウンターサッカー」に回帰。そういうシナリオが容易に目に浮かびます。
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---エジ--達也---
原口-------ポンテ
---直輝--啓太---
細貝-坪井--暢久-平川
-----山岸-----
HT:平川→堀之内
61分:達也→梅崎
75分;原口→近藤
90分を振り返ってみると、前半が全てでした。松本は縦パス一本で浦和DF陣の裏へ快足FWを走りこませる狙いが明白。立ち上がりから何度か惜しい場面があり、その度に「松本、やるじゃん!」てな感じで赤サポがどよめいていましたら、失点は半ば必然。あんなにミエミエの作戦なのに、まんまとそれを喰らってしまう浦和は万死に値します。
こうなると松本は全員自陣に引いて「穴熊作戦」。浦和は失点するまで原口や達也がドリブルで仕掛けて遠目から枠内シュートを放っていましたが、残念ながら楽々GKが処理できる範囲内。
失点後は丹念にパスを繋いで攻めてはいましたが、その攻めに緩急がなく、おまけにパスミスが頻発。さらに致命的だったのが右SBに入った平川の出来。浦和はポンテや原口を中心に浦和左サイドで相手を引きつけ、それから何度も逆サイドでどフリーになっている平川にボールを展開。ここまでは理想的なんですが、平川はどフリーでボールを受けているにも関わらず、アバウトなクロスの放り込みに終始。エリア内中央で待ち構えるエジは松本のCBに全く競り勝てず、おまけにポストプレーすら満足にこなせず。情けないプレーの連続だったこの試合で、この二人の惨状は情けなさの度合いにおいて群を抜いていました。
2度ほど相手と交錯して倒れこむ場面があったせいかどうかは判りませんが、フィンケは前半で平川を諦めて堀之内を投入し、暢久を右SBへ。しかし眠れる暢久は相変わらず眠ったままで、プロとしての矜持を見せられず。左の細貝は前半で消耗してしまったのか攻撃参加が不活発になり、前半のような「左でためを作って空いている右へ振る」といった展開も見られず。
明らかにキレがない達也に代えて早めに梅崎を投入したのは最善策と思われたものの、その梅崎が達也に輪をかけて悪い。ドリブルで相手を振り切れない上に、視野が狭くて周囲も生かせず。千葉戦の失敗が尾を引いているのだとしたらかなり心配。
結局後半は暢久のループ気味のパスを受けてエリア内に飛び込んだ直輝のシュートが惜しかったくらいで、その他は苦し紛れのシュートが何本かあったくらい。後半の浦和の攻撃は完全に手詰まりに陥り、エリア内の蹴りあいでゴールまであと何10センチに迫った場面も2度ばかりありましたが、ラグビーやないっちゅーねん。
そうこうしているうちに浦和の焦りと攻め疲れの色が濃くなり、原口のボールロストを切っ掛けに怒涛のカウンターを喰らってジ・エンド。失点の切っ掛けを作ってしまった原口は、なんとか取り戻そうと必死に戻ったものの、それもあっさり交わされて恥の上塗り。直後に近藤と交代を命ぜられましたが、フィンケの懲罰かな? 原口は相手に何度か厳しいチャージを受けて冷静さを失っていたようにも見えましたが。
ただこの交代はタオルを投げてしまったようなもの。今季初出場の近藤は地域リーグ相手ですら通用せず、再三相手にカウンターのチャンスを与える始末。前目に上がった堀之内はこれまた気の毒なほどの狼狽振り。
ロスタイムも何の波乱もなく、そのまま試合終了。福岡に負け、湘南に負け、そして愛媛に負けと次々とJ2チーム相手に天皇杯初戦敗退伝説を積み上げてきた浦和ですが、ついに不滅の金字塔ともいえる地域リーグ相手の敗戦を記録。
それでこそ浦和。
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