【観戦記】10年第26節:浦和 2-0 C大阪
シュート数6対10、CK数3対11という数字が示す通り、浦和が劣勢の時間帯が長く続いたしんどい試合でした。
しかし、わずか6本しか撃っていないシュートで2点を上げての完封勝ち。20本近くシュートを撃ちながら1点も取れない試合が非常に多かったことを思えば感慨もひとしお。相手エリア内で峻希がボールを奪い返してから原口→達也→エジときっちり繋いで先制。そして長い時間押し込まれて苦しい中、原口が左サイドから得意のカットインでのゴラッソ!
得点場面はいずれも見事なものでしたが、この日褒めるべきはむしろ守備陣の奮闘。特にCB暢久の出来は秀逸でした。
驚異的な攻撃力を誇るC大阪(以下「桜」)攻撃陣ですが、なんだかんだといっても最も怖いのは1トップのアドリアーノ。キープ力があり、スピードがあり、2人がかりでもなかなか止められない。そしてアドリアーノにボールを持たれると、3シャドーが蠢動して非常に面倒。従ってアドリアーノをどう抑えるかがポイントでしたが、そこで暢久が獅子奮迅の働き(もっとも本人は例によって例のごとく飄々とした表情のままでしたが(笑))。アドリアーノはポジショニングに難があるのか、暢久のラインコントロールで何度となくオフサイドにかかっていましたし、1対1でも暢久には完敗。前半坪井が後方から倒してしまった場面(こぼれ玉を拾った清武のシュートはわずかに枠外)と、後半サヌがぶち抜かれた場面が非常にヤバかったのですが、アドリアーノ自身にには決定機を許さず。
アドリアーノさえ抑えておけば、3シャドーが厄介とはいえ中央に偏りがちな桜の攻撃は両サイドが絞ってバイタルエリアを固めてしまえば問題なし。桜もSBやマルチネスが盛んに空いたサイドのスペースに進出してはきますが、サイドからのハイクロス攻撃はないに等しく、サイドチェンジを繰り返すとかピッチをワイドに使う発想に乏しいのが浦和にとって幸い。4人×2で作る浦和の守備ブロックはなんとか破綻せずに最後まで持ちこたえました。両SHの守備が心もとない分、暢久と柏木が2人分、細貝が1.5人分くらい働いている気もしますが。
終ってみれば桜の決定機は前半CKから山岸の弾き損ねがポストに当たった場面だけ。それ以外には後半乾に際どいシュートを2本撃たれたくらいで、シュート数、CK数の差の割にはチャンス自体に大差があったわけではなく、スコアどおり浦和完勝といって差し支えないのかもしれません。
-----エジ-----
原口---達也---峻希
---細貝--柏木---
サヌ-坪井--暢久-平川
-----山岸-----
25分:達也→高崎
66分:サヌ→宇賀神
77分:高崎→堀之内
得点:14分 エジミウソン、79分 原口
終ってみれば完勝とはいえ、浦和劣勢の時間帯が長かったのは確か。そしてその主因は残念ながら達也の負傷退場に代わって投入された高崎にあると言わざるを得ません。攻撃力のあるチームに対して先制後に投入された以上、守備を重視した動きになってしかるべきところ、守備面での貢献はほぼゼロ。フォアチェックを怠らない達也とは対照的で、必然的に浦和の中盤、特に柏木や細貝の負担が激増。元来守備意識の低かった原口すら上手いとは言いがたいながらも守備に奔走しているのと見ると、高崎の守備意識の低さには心底がっかりさせられました。
守備はエジに任せて最前線でポスト役になってくれればまだ良いのですがそれも敵わず。ハイボールに対しては間違った場所で間違ったタイミングでジャンプ。しかも得意のはずのDFライン裏に抜けるプレーも完璧に封じられ、この日は良いところなし。桜が攻撃的な選手を2枚代えたところで、堀之内を投入して守備固めに入ったフィンケが下げたのはへろへろの原口でも峻希でもなく、途中投入の高崎だったのは至極当然。フィンケは試合終了後「戦術的な交代だった」と高崎を庇いましたが、懲罰的な意図を含んでいるのは明白かと。
また不出来だったのはサヌも同罪。ブルキナファソ代表として試合をこなし、長旅後の出場なのでコンディションが良かろうはずがないと思ったら案の定。守備が拙いのはもはや目を瞑るしかありませんが、この日はドリブルで攻めあがってはボールロストを連発。宇賀神も怪我明けで無理をさせられない以上、サヌのスタメン起用はやむを得ない選択なのでしょうが、どう見てもスタメンが妥当と思える出来ではありませんでした。後半アドリアーノにぶち抜かれそうになってイエローをもらい、かつ負傷してしまいましたが、サヌには申し訳ないながら良い時間帯での「名誉の負傷」でした。
-----アド-----
--乾--家長-清武--
---マル--アマ---
丸橋-上本--茂庭-高橋
-----松井-----
75分:アドリアーノ→播戸
75分:清武→小松
86分:上本→藤本
桜が芸風を一新して失点が激減した理由を探りながら試合を見ていたのですが、守備ブロック自体はそんなに堅いようには見えず。割りと簡単にバイタルエリアに入られるものの、最終ラインでなんとかシュートを撃たせずに堪えているといった印象。前線はキープ力がある選手だらけで、しかもシュートで終る意識が高いせいか、攻撃の最中に変な形、変な位置でボールを失わない(ここは浦和と好対照)上に、攻守の切り替えが早い。さらにいえば達也が早々と負傷交代に追い込まれたのに象徴されるように、ダーディーなプレーを平気で仕掛けてくる。失点が少ない理由はそんなところでしょうか。かつての大分同様、何かの拍子で堅守が瓦解するような・・・
終盤上本のラフプレーに対して珍しくぶち切れたエジが「怒りのフォアチェース」を繰り返していたのが妙に心に残りました。
| 固定リンク