【観戦記】11年第9節:浦和 0-2 横浜M
・昨年浦和が中長期的なチーム改革の意思・意欲を簡単に捨ててしまった時点で、今後浦和と共に茨の道を歩むことを覚悟したつもりでしたが、想像以上に厳しい道になってしまいました。茨どころか有刺鉄線が張り巡らされた道であり、ところによっては高圧電流さえ通っているかもしれません。
・前節仙台戦と比べれば前半は遥かにマシで、この内容なら多少希望を持って試合観戦できるかと思ったのですが、90分を通じてみれば何のことはない、どっぷりと横浜M(以下「鞠」)の掌の上で踊らされただけ。岡田時代を髣髴させるような超現実的な戦術を採用した木村監督のゲームプランどおりに試合が進んでしまいました。
・ただ、鞠の思惑通りに試合が進んで、かつ鞠の狙い通りにセットプレー一発で敗れただけであれば、仙台戦よりはマシな内容だった以上さほど落ち込まなかったでしょう。この試合で何が残念だったかといえば、先制を許した後のペトロビッチ監督の選手交代が自殺行為のようにしか見えなかったこと。
・仙台戦の選手交代も不可解でしたが、ペトロは思惑通りに試合が進まなかった場合の修正が効かない様子。バランスを崩して前がかりになるというよりも、単に自爆スイッチを押しているようにしか見えないのが非常に残念でした。そしてこの性癖は先々選手の戦術理解が進んでも、折につけて顔を覗かせるのではないかと・・・
・前半は立ち上がりこそイーブンの戦いでしたが、10分過ぎくらいから自陣に引いて守る鞠を浦和が攻め倦むの展開に。但し、仙台戦と違ってロングボールはほとんど使わず、ショートパス&ドリブルを多用した攻撃。エジのポストプレーはそれなりに機能。マルシオも積極的にWGをフォロー。SBも盛んに攻撃参加と、WG単騎突破頼みではなく、多少サイドに人数を裂いて敵陣を崩す工夫が見られました。
・面白かったのは柏木の位置。この日の位置は明らかにマルシオより低く、4-2-1-3に近い陣形。柏木を経由してサイドチェンジしたり、サイドでキープして中央に柏木を突っ込ませるなど、この辺りも中央を固める工夫なのかなと思いました。
・ただ「動いてナンボ」の選手を中央に据え置きで使うのはもったいないというかなんというか・・・ 選手のポジションをあまり変えない今の戦術では柏木や直輝のような「流動的な選手」は生かしようがないみたい。柏木よりも暢久のスルーパスのほうが効果的だった(わずかに長すぎてチャンスにはなりませんでしたが)ことに象徴されるように、柏木はパサーじゃないんで後方に置いてもあまり意味がないような・・・
・浦和がサイドに多少人数を裂いたところで攻撃のリズムはほぼ一定ですし、一気にサイドを変えることもありません。おまけに左右のポジションチェンジは皆無ですから、守っている側は変に浦和の動きについて行かずに自分のポジションをしっかりキープしていれば全く問題なし。
・浦和は昨年よりシュート意識が強くなっているので、前がかりになっているところでボールをとられてカウンターを食らうような場面は激減しましたが、その分チャンスもなくなっています。結構シュートを放ちましたが、枠内シュートは数えるほど。もっとも惜しかったのは前半のマルシオのミドルシュートかなぁ?サイドを深く抉っての原口や達也のシュートはいずれも角度がありませんでした。後半立ち上がりの原口のシュートはお決まりの「GKぶち当て」。
・精度の良くない山岸のキックに見切りをつけたのか、この試合では最後尾からのビルドアップを織り交ぜていました。確かにロングボールならスピラに蹴らせたほうがはるかにマシ。
・仙台戦よりマシとはいえ閉塞感漂う攻撃に比べ、前半の守備は完璧。DFラインを積極的に押し上げて前目及び中盤のプレスも十二分に機能し、鞠の中盤を封殺。ヒヤッとしたのは中村→渡邉で左サイドを破られて折り返しをどフリーの兵藤に撃たれた場面くらい。
・鞠の攻撃時は中村がボランチの位置に引いて谷口を最前線に突入させるパターンが目立ちましたが、中村を潰しておけば全く問題なし。鞠の2トップは共にポストプレーがそんなに得意ではありませんし、たまにFWにボールが入ってもスピラが獅子奮迅の働きで潰しまくりました。スピードがないスピラの裏を狙っているのは明白でしたが、ボールの出しどころを潰してしっかり対応。
・ところが、前半あれだけ完璧に機能していた守備が後半急失速。DFラインが下がってしまって鞠の中盤に自由を与えるようになったらもういけません。浦和のサイドを深く抉られてヒヤリとすること二度、三度。ペトロは「1本のFKで流れが変わってしまった」と嘆いていますが、嘘八百もいいところ。失点のにおいはFKでやられる前にプンプン漂っていました。
・失点は浦和左サイドで中村を倒してFKを与えたところから。それまで全くいいところがなかった渡邉にきっちり合わされて失点。セットプレーに弱いのはCB永田を補強しても直らないの??? もっとも失点場面で渡邉についていたのは暢久で、ヘッドが暢久に当たって微妙に軌道が変わる不運・・・
・後半沈滞気味の浦和の攻撃を活性化させるべくペトロが放った一手が大悪手。キレの感じられない達也を下げるのは妥当でしょうが、代わって入ったマゾーラが不発どころかマイナス材料に。鞠守備陣が複数人で待ち構えているところに自分勝手なドリブルを仕掛けて、どうにもならなくなって自陣へ向かってドリブルしだしたのは失笑を禁じえず。ただでさえ組織性に乏しい今の浦和の攻撃にこんな選手を入れては約束事もへったくれもありません。体力がないのは名古屋戦で実証済みですし、現時点では勝っている場面で残り5分でのカウンター要員にしか使い道がないのでは?
・さらに先制されてからの交代がこれまた謎。それまで抜群の出来だったスピラを下げて高崎投入。試合後の監督の話ではスピラは体調不調だったようですが、高崎に何を期待しているのか全く不明なまま時間が経過。原口の疲労も顕著でしたが、なぜかセルは投入されず。
・前目に置いてナンボの柏木&マルシオは後方に下がり、マゾーラは自爆的なドリブルを繰り返し、原口は完全に消耗。2トップはボールロストを繰り返すって、まるで敗退行為なんですが、これ。チャンスらしいチャンスはほとんどなく、中盤が完全に崩壊して大ピンチを招く始末。
・ロスタイムにはCKのチャンスからものの見事にカウンターを食らって致命的なし2失点目を献上。この時点で観客がどっと席を立ちましたが当然の反応でしょう。雨が降り出しましたし、節電ダイヤでSRはやたら混むようになりましたし・・・ 閉塞感漂う試合内容で試合終了を待たずに席を立つ人が多いって昨年よくあった光景ですが、今年また繰り返されるとはフロントはショックでしょうなぁ・・・まぁ自業自得としか思いませんが。
・山岸の反応にも疑問符が付くプレーでしたが、その前に決定的な場面を2度ばかり防いでおり、最後の場面だけ取り上げて批判するのはどうかと。
・今期マルシオを獲得してセットプレーの得点増を期待しましたが、ここまで全く効果なし。強力なCB2枚を擁する鞠相手に単純にCKを蹴っても意味がないので、ショートコーナーを多用していましたが、得点の可能性があったのはスピラにあった一回だけだったような・・・
・「俺たちは弱い」 この事実を踏まえてチームを立て直さないとダメでしょうなぁ・・・ ビッグクラブを気取って主導権だの攻撃的だの、そんな幻想に囚われているうちは建て直しは容易ではないと思いますね・・・
原口---エジ---達也
-----丸塩-----
---柏木--暢久---
宇賀神-永田-摩周-峻希
-----山岸-----
69分:達也→マゾーラ
75分:スピラノビッチ→高崎
---小野--渡邉---
兵藤--------中村
---小椋--谷口---
波戸-中澤--栗原-小林
-----飯倉-----
得点:70分 渡邉、90+4分 大黒
65分:小野→大黒
77分:中村→狩野
85分:渡邉→キム・クナン
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