【観戦記】11年第33節:福岡 1-2 浦和
最前線の攻撃拠点として良く機能していたセルを負傷で失ってから試合は完全に福岡ペース。案の定福岡に先制点を許してから、前半ロスタイムに柏木のゴールが決まるまでの約20分間。今シーズン浦和が最もJ2に近づいた時間帯でした。
試合が終わってみれば、福岡の猛プレスは当然のごとく終盤息切れしてしまいましたから浦和がどこかで勝機を見出すのはさほど難しくなかったのかもしれません。但し、それは浦和がノーマルな状態であればこそであって、この試合を落とすと降格の危険性が高まってしまうというとてつもないプレッシャーを受けた浦和が1点ビハインドのまま終盤に入って、相手の足が止まったところを冷静に突けたかどうか甚だ疑問。
勝敗を決したのは梅崎のPK獲得であり、かつマルシオのPK成功でしたが、この試合でも最も価値があったのは前半終了間際の柏木の同点ゴールでしょう。柏木は窮地に立った浦和を救うべくこの試合もチームの先頭に立って奮戦してくれました。
福岡の試合を見るのはホーム福岡戦以来初めてでしたが、監督交代後も芸風は全く変わっていないようで、試合開始と共に全軍が前から前から猛チェース。
これに対して浦和は中盤でパスを細かく繋ぐことに拘らず、最前線のセルなり、高い位置に張っている梅崎なりにロングボールを入れ、最前線に出来た基点を2列目がフォローする形で対応。セルのボールキープ力に福岡CB陣は苦しめられ、浦和は序盤それなりに攻撃の形を作れていました。
また守ってはマルシオがやや福岡のボールの奪いどころとして狙われていた感はありましたが、サイドチェンジをカットされてシュートまで持っていかれたのが危なかったくらいで、それ以降は福岡の猛チェースをいなすことに成功。
従って試合の入り方は悪くないどころか良いくらいだと思いましたが、ロングボールに反応して福岡DFラインの裏に飛び出したセルがGK神山と交錯して負傷し、そのまま退場。選手構成が非常にいびつで、使えない選手がゴロゴロいる反面、代えの効かない選手が何人もいる浦和ですが、よりによってこの重大な試合で代えの効かない1トップを失ってしまいました。降格するチームには往々にして不運が付きまとうもの。正直そんなフレーズが脳裏を過ぎってしまいました。
突然の出場を命ぜられた達也は全く機能せず、浦和は攻撃の術を失ってボールの支配権は一転して福岡へ。セルを失ってからわずか4分、浦和右サイドで福岡にボールを繋がれたあげく、岡本に先制ゴールを許してしまいました。守備の人数は足りているし、守備網を崩されているわけでもありませんが、岡本にプレッシャーをかけている人は誰もいないというかなり情けない失点・・・
その後も福岡の攻勢は続き、啓太の右横のスペースに後方から飛び出してきた選手への対応が後手後手になってしまう一幕も。一方浦和の攻撃は依然として体をなしていませんでしたから、福岡1点リードのまま前半終了、あるいは福岡に追加点が入って前半を終えてもなんら不思議はない試合展開。それゆえ、予期せぬところから飛び出した柏木の同点ゴールは極めて貴重でした。
奇跡的に同点に追いついた浦和は後半再びロングボール主体に攻撃体勢を取り戻し、SH梅崎はもちろん、SB平川も盛んに福岡最終ラインの裏に飛び出させてチャンスメーク。敵陣深くでボールキープに成功すると達也はもちろん、2列目も積極的に飛び出してぶ厚い攻撃を仕掛けました。
ただ当然ながら攻守のバランスは崩れがちで福岡のカウンターを食らうことも。特に浦和右サイドでどフリーになった松浦にシュートを撃たれた場面は失点を覚悟しましたが、シュートはわずかに枠の外。
後半立ち上がりはどちらに追加点が入ってもおかしくない試合展開になりましたが、先に追加点を得たのは浦和。ロングボールに反応して福岡最終ライン裏に抜け出た梅崎を愚かにも末吉がエリア内で露骨に倒してしまい、一発退場&PK。PKをマルシオがきっちり決めて浦和逆転。PKは一度マルシオが決めたものの、なぜかやり直しになりましたが、浦和の誰かがエリア内に早く飛び出したのでしょうか?
もともと前半飛ばしすぎで後半失速する傾向がある福岡は、ボランチの一人を失って中盤が完全に崩壊。パスミスも増えて浦和はカウンターでチャンスの山を築きましたが、シュート精度を欠いたり、クロスが誰にも合わなかったりして追加点ならず。
とはいえ、相手は一人少ない上に足が止まり気味。じっくりボールを回して1点差を守りきることはさほど難しくないはずですが、柏木が終盤軽率なボールロストでピンチを招くなどどうも最後までピリっとせず。
監督も監督で、選手交代で守りきるのか追加点を取りに行くのか、方針を明示せず。攻守にわたって何もしていない原口ではなく途中投入の達也に代えて原を入れたのには驚きましたが、暢久投入を最後まで躊躇ったのは何故なんだろう?
勝っているチームの逃げ切り方があまりにも不細工で、試合内容は所詮15位と17位のチームの試合でしかないのかもしれません。それでも浦和は逆転してからGK加藤がヒヤッとする場面は一度もないまま無事逃げ切り。16位甲府との得失点差を考えれば事実上J1残留確定に漕ぎ着けることに成功。
良いことは何一つとしてない、辛くて苦しいだけの一年でしたが、「降格」という最大級の罰だけはなんとか受けずに済みそうです。
-----セル-----
原口-柏木--丸塩-梅崎
-----啓太-----
野田-永田--坪井-平川
-----加藤-----
得点:45+2分 柏木、63分 マルシオ(PK)
28分:セル→達也
86分:達也→原
90+3分:柏木→暢久
---岡本--高橋---
松浦--------成岡
---鈴木--末吉---
金--小原-マコ-田中佑
-----神山-----
得点:32分 岡本
HT:高橋→中町
74分:鈴木→城後
81分:田中佑→山形
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