【観戦記】15年CS準決勝:浦和 1-3 G大阪 ~ 凄まじい喪失感が漂う敗戦だが、不運で片づけていては前へ進めない。
・負けたら終わりという一発勝負のためか、118分に藤春のゴールが決まるまでは緊張感漂う文句なしの好ゲーム。もっとも好ゲームと言い切ってしまえるのはおそらく勝ったG大阪サポと単なる第三者であり、敗れた浦和サイドは喪失感が凄まじすぎて試合内容を褒めたたえる余裕なんてない方がほとんどだと思います。
・今年の年間チャンピオンはどこから見ても広島であることは明々白々。浦和もACL出場は決まっており、CSに勝てば賞金は増え、ACLストレートインも確定するけれどもそれ以上のものがあるとは思えない。多くの人にそんな思いが去来するせいか、スタジアムの熱量は終始低いまま。スケジュールに無理がありすぎることも手伝って、観客数も4万ちょっととビッグマッチにしては低調。そういうのも微妙に選手達に伝染しちゃったかなぁ・・・
・勝って得られるものは少ないけれども、いざ負けたとなると年間勝ち点で9も下のチームに年間順位で抜かれてしまう、この一年はなんだったのかという喪失感は思いの外凄まじかった。よって、冷静にこの試合を振り返るのは難しいのだけれども、この敗戦は運で片づけられない、浦和が今後も繰り返してしまうであろう要素が見え隠れしていたのは間違いないと思います。
・120分を通じて浦和が仕掛け、G大阪がカウンターを狙うというお馴染みの構図。負けたら終わりなので浦和は必要以上にリスクをかけることなく、かといって万博での一戦のようにリスクコントロールとは名ばかりの腰が引けた闘いぶりでもなく、がっぷり四つのまま前半終了。今年のホームゲームとよく似た、終盤までスコアレスのままもつれそうな試合展開、試合内容でした。
・ゆえに、こういう試合はよりしょーもないミス、より致命的なミスをしたほうが負け。後半開始早々、那須→森脇の縦パスを大森にカットされてからのカウンターで失点してしまいましたが、あんな深い位置でボールを奪われてはひとたまりもありません。そして残念なことに最終ラインでのミスによる失点は浦和で再三見られる光景で、この敗戦を不運で片づけてはいけない主因はここにあると言ってもいいでしょう。
・先制点を奪われるとミシャが早々に選手を代えて反撃を試みるのもよくある光景。リーグ戦なら大きな問題はないのですが、残念ながらこの試合は延長戦がありました。
・選手交代は奏功したといえるかどうか微妙だったけれどもなんとかセットプレーからの流れで追いつき、そのまま勝ち越せれば良かったのですが、ATに2度あったビッグチャンスを決められず、早目に全弾撃ち尽くした浦和は延長戦に入ると余力なし。特に前半ほぼ唯一の攻め手だったと言って差し支えないほど酷使され、ATにも決定機を演出した関根が動けなくなった時点で浦和の勝ち目はPK戦しかなくなったと思います。
・G大阪が「よりしょーもないミス」を犯して敗れ去る目があったのが丹羽のバックパスが東口の頭上を越えてポストを叩いた場面。あれで試合が決まっていたらJリーグ史上に残るお笑い草で、それまでの好ゲームもへったくれもなく、世が世なら「珍プレー集」で繰り返し流されたことでしょう。
・そしてG大阪はポストで掴んだ運をしっかりと活かしきった。東口の素早いフィードからのカウンター。浦和は攻め込まれてカウンターを喰らったわけでもなんでもないはずですが、なすすべなく最前線までボールを運ばれてしまった時点でほぼアウト。そして120分間体力が持った藤春が長い距離を駆けあがって仕上げ。
・浦和の守備は前からのプレッシャーが嵌っている時間帯こそ悪くないものの、時間の経過と共にプレスがかからなくなってカウンターを喰らいがち。最近の試合では川崎戦が典型で、それゆえに先に点を取らないと苦しくなる。この試合は悪いことに先制点を取られてしまいましたから燃料を使い切るのも早く、藤春のゴールの前にもカウンターで決定機を作られてしまいました。
・先制点を取られた後も浦和はそれなりに決定機を作っており、ミシャらしいサッカーを存分に披露。そのスタイルを堅持しつつ後半ATに武藤のヘッドが決まって浦和逆転勝ちという目はあったので「浦和敗戦は必然だった」とまで言い切るのはいくらなんでも結果論すぎるでしょう。しかし、失点場面が今年良く見た光景なのも確かで、浦和の敗戦は決して運がなかったわけではなく、起こりうる有力シナリオの一つが現実化したに過ぎないと思います。
-----李------
--武藤----梅崎--
宇賀神-阿部-柏木-関根
-槙野--那須--森脇-
-----西川-----
得点:72分 ズラタン
63分 梅崎→ズラタン(李がシャドーへ)
63分 那須→青木(阿部がCB中央へ)
75分 宇賀神→平川
・興梠は首の故障が癒えずにベンチ外。昨年に続いて大事な試合に興梠が故障するあたりは不運なのかもしれません。しかし、代わって出場した李の出来は悪くなく、しかもこの日の浦和の攻撃はほぼサイドからに限られており、クロスのターゲットとしてはズラタンなり李のほうが使いやすいので、興梠の欠場は試合結果に大きな影響はなかったと思います。
・試合結果に影響を与えたとすれば那須が故障明けだったこと。ビハインドになって早い時間帯に交代を命ぜられたのはコンディションが万全でなかったゆえでしょうし、さらにいえば失点を惹起した不用意な縦パスも試合勘がないゆえだったのかもしれません。那須を無理使いせざるを得ないCBのバックアップ要員不足は今シーズン終始悩まされたもの。
・宇賀神アウトも同様。橋本がとうとう最後までフィットせず、大ベテランの平川が90分持たないので消耗が激しいWBの人材難に悩まされたツケが最後の最後で噴出。おまけに梅崎をシャドーでスタメンで使った挙句、早々とベンチに下げてしまいましたから勝ちきりたい時のサイドの駒不足はどうにもなりませんでした。
・投入された側では点を取りたい時の青木の力不足が顕著。この試合では前に出て、あるいは縦パスで勝負に出るどころか致命傷になりかねないボールロストも見受けられました。啓太を失ったボランチのバックアップ不足もこれまた最後までどうにもならず。
・要は前三人の代えはなんとかなるが、WBより後ろはどうにもならないという今年の浦和の問題がものの見事にこの試合に凝縮されたわけで、根本的には選手編成のミス。これこそ不運で片づけてはいけないものだと思います。
----パトリック-----
大森--宇佐美---阿部
---遠藤--今野---
藤春-丹羽--西野--金
-----東口-----
得点:47分 今野、118分 藤春、120+1分 パトリック
72分 宇佐美→倉田
81分 阿部→米倉
91分 大森→井手口
・G大阪はカウンター狙いを貫徹して見事浦和を粉砕。4-4-2でリトリート主体ながらも、要所要所で浦和の最終ラインにFW&SHで圧力をかけ、そのうちの一つが大森のボール奪取からの先制点に結実。浦和も西川を使ってG大阪の最終ラインへのプレスを楽々交わし、ビルドアップに困っている風ではなかったのですが、前三人への縦パスを封じ、サイド攻撃一辺倒に追い込んだだけでもG大阪の前プレは意味があったのかも。ただそのあおりで宇佐美は守備でへろへろになって何もしないままお役御免。
・とはいえ、前半右サイド偏重だった浦和が後半両サイドを広く使い出してからはG大阪も浦和のサイド攻撃を防ぎきれず、槙野→梅崎、森脇→柏木、関根→ズラタン、そして最後に森脇→武藤と決定機を作られまくったのですが、そこで浦和に立ちはだかったのが東口。MOMは文句なしに東口。いやはや恐れ入りました。
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