・シドニー戦に続いて内容は今一つながら、中2日の厳しい日程をなんとか乗り切ってアウェーで勝ち点3をゲットし、Jリーグ開幕戦勝利。結果は万々歳ですが、今後浦項戦・磐田戦と中3日での連戦が控える中で課題が多かった試合だったと思います。
・明らかにコンビネーションに難がある柏に対して前から前から相手を嵌めに行く守備が機能している時間帯に2点、3点と取れていれば楽勝だったはずですが、誤審にも苦しめられて1点しか取れず。60分くらいから前でボールが奪えなくなって幾度かカウンターを喰らって案の定失点。こういう試合展開は今後もしばしば見受けられることでしょう。
・ただ「立て続けに失点」という最悪の事態は免れ(大津→秋野シュートがバーを直撃するという極めて危険な場面がありましたが)、那須&駒井と守備立て直しと思しき選手交代で悪い流れを凌ぎながら、セットプレーで1点もぎ取って逃げ切り。柏のセットプレーの守備の拙さはこの試合でも存分なく披露され、ズラタン投入はそこを突く意味では大当たりでした。
・思うように縦パスが入らず、攻撃はサイド一辺倒。守備は60分くらいでガス欠。おまけに誤審でゴールは認められず、GKへのバックパスは不問とされ、大津の阿部へのひじ打ちにはファウルすら取ってもらえずと審判団に随分苦しめられましたが、それでも勝ち点3をもぎ取るとは真に浦和らしからぬ勝負強さ。昨年の1stステージ同様、冴えない内容ながら勝ち点を拾い続ける試合がしばらく続くのかもしれません。
-----興梠-----
--武藤-----李--
宇賀神-阿部-柏木-関根
-森脇--槙野--遠藤-
-----西川-----
得点:52分 武藤、84分 ズラタン
62分 李→ズラタン
73分 柏木→那須
80分 関根→駒井
・ミシャは中2日の厳しい日程を踏まえて、シドニー戦から一部スタメンを変更。スタメンからズラタン・梅崎・青木・永田が外れて、興梠・李・柏木・遠藤を起用。おまけに梅崎と永田は完全休養で、代わりに高木及びなんと新人の伊藤がベンチ入り。
・遠藤が永田の代わりにCB中央に入るなら大過は無かったと思いますが、ミシャは遠藤を右、槙野が中央、そして森脇が左というキャンプで試行した形で臨み、これが60分以降の浦和の守備の不安定さを加速させたような気がします。
・槙野はつまらないところで手を使ってイエローをもらった場面を除けば守備はほぼ完璧な出来で、攻撃面でも宇賀神へのロングフィードも披露し、CB中央で十分使えることを実証。
・遠藤は積極的な守備&素早い攻守の切り替えで縦にフィードorサイド攻撃、そして1対1の強さを見せるなどこれまた上々の出来。2回ビルドアップにミスがあって柏のカウンターを誘発してしまいましたが、初スタメンと思えないほどの適応力を見せてくれただけでこの試合は十分でしょう。
・問題は左CBに入った森脇。早くもお疲れなのか、早い時間帯に秋野に抜け出されそうになってイエローをもらったのを皮切りに守備で脆さを見せる場面が目立ち、失点場面ではオリベイラにあっさり抜け出されるなど散々。攻撃面では周囲、特に宇賀神との連携に明らかに難があって森脇の攻撃参加自体が少なく、しかも効果的でなく、リスクだけが増える有り様。
・従って、現状は槙野リベロ自体はありだが、代わりの左CBに適任がいない現状では弊害のほうが大きいように思います。キャンプでは橋本が左CBとして試行されていましたが、次戦以降橋本の起用があるのかどうか。あるいは数々の失態に目を瞑りながら森脇を我慢して使うのか。
・また机上の計算ではこの日のローテーションは理に適っているのですが、残念ながら柏木はコンディションが依然良くないようで、終始体が重たそう。プレースキッカーとしての仕事以外は何をやっているのかさっぱり判らない状態で、攻撃面では柏木の不振がビルドアップ、特に縦パスの入らなさに拍車をかけていたような気も。柏は4-4-1-1っぽい布陣で自陣に構えて徹底したショートカウンター狙い。しかも中央を締めているので、浦和は安易に縦パスを入れてカウンターを喰らう愚を避けたかったのかもしれませんが。
・柏木の不振に加え李の出来もイマイチでボールが収まらず、興梠に至ってはほとんどボールが回ってこない惨状。武藤一人がやたら切れ味鋭く動いている感じで、この日も李のシュートのこぼれ玉にいち早く反応して先制点。ただ先制した場面では李が増嶋を背負って粘りながら反転シュートまで持って行ったところで半ば勝負ありで、ここは李のフィジカルの強さが活きました。
・柏の守備ブロックの両サイドは空いているので、縦パスでの揺さぶりを織り交ぜなくても浦和両WBによるサイド攻撃はそれなりに形になり、関根→武藤 & 宇賀神→李と決定機。しかし胸で押し込んだ武藤のゴールはなぜか認められず、李のゴールはハンドの判定。そして60分くらいから守備が機能しなくなり、かつ両WBの疲労が顕著になって浦和のサイド攻撃はフェードアウト。失点場面は宇賀神の無謀すぎるタックルが交わされた場面から。
・よってミシャが出来の悪い李、柏木、そして疲労困憊の関根を順次下げたのは粘り強い闘う意味で全て妥当。特に立て続けにカウンターを浴びた時間帯に柏木を諦めたのはミシャらしからぬ手堅い選手交代だと思います。
・ただズラタンの出来も良くはなく、興梠との連携も元の壊滅状態に戻った感すらありましたが、そのズラタンがしんどい時間帯にヘッドを決めてくれました。出場時間が短い割にはやたら点を取るズラタンの勝負強さが今年も健在だと良いのですが。
・ATに突入しようという時間帯に阿部が大津のひじ打ちを喰らって口から出血。阿部が口元を包帯でぐるぐる巻きにして、さるぐつわにしか見えない状態でプレー。どこから沸いてきたのか6分もあったATを凌ぎきってなんとか逃げ切り勝ち。
-----オリベイラ----
大津---茨田--エデルソン
---大谷--秋野---
輪湖-中谷--増嶋-伊東
-----中村-----
得点:64分 大谷
59分 エデルソン→田中
65分 茨田→山中
73分 オリべイラ→武富
・柏の攻撃はいたってシンプルで、縦に速いカウンターのみ。序盤は浦和の高い位置での速い潰しに苦しめられて全く何もできませんでしたが、35分くらいから徐々にカウンターを様になりはじめ、浦和の寄せが甘くなった60分くらいからついに何度かカウンター炸裂。
・得点場面は田中投入後右SHにオリベイラが回ったのが結果的に奏功。さらにいえば、伊東のドリブル突進が効果的で、浦和の脆弱な左サイドを見事にぶち破りました。またボールが持てるオリベイラが逆サイドへ大きく展開してカウンター攻撃を導いた場面もあり、コンビネーションが確立して来れば厄介な存在になりそう。
・逆にそれまで右SHにいたエデルソンは全く何もできず。この日はなぜかゲームキャプテンを務めていましたが、この出来ではスタメンから外れる日は近いのでは?
・ただカウンターの形は出来でもコンビネーションが出来ていないので確実にフィニッシュにまで持って行けず。またオリベイラが足を攣って交代を余儀なくされてからは次第に手数も減少。浦和が2点目を取って引いてしまうと反撃らしい反撃も出来ずに試合終了。
・新監督を迎えて、攻撃面でやりたいことが一応出来たのは収穫だったのかもしれませんが、吉田監督の色はほとんど残っておらず、残り香すらないという更地からの積み上げには時間がかかるでしょう。ほとんどポゼッションに拘る様子はなく、前半浦和のプレッシャーを受けて簡単に縦にロングボールを蹴りだしてしまうのには驚きました。
・さらにちばぎんカップで露呈したセットプレーの守備の拙さはなんら改善されておらず。マンツーマンで守るものの、増嶋が槙野に、中谷がズタランに負けて何度も決定機を与えていれば、そりゃ1回は決められるでしょうに。