【観戦記】16年1st第5節:浦和 2-1 甲府
・いつも通り自陣深く引きこもる甲府を攻め倦んだものの、興梠と李のコンビネーションプレーが冴えわたってようやく甲府の堅陣をこじ開け、さらに森脇のビューティフルゴールも飛び出すというおまけ付き。
・これで試合が終わっていれば、興行的魅力は著しく乏しいながらもそれなりに楽しい気分で家路に着けたものを、最後の最後で明らかに守備に緩みが出てやらずもがなの失点。監督はもちろん、選手もこのくだらなすぎる失点を猛省しているようですが、こんなことではまたしても僅差でタイトルを逃してしまうのではないかと。頼みのクリティアーノを下げて攻め手がほとんどない甲府になんで失点を喫するのか?
・浦和は広島やG大阪と比べて明らかに弱いわけではない。それでもわずかにタイトルに届かないのは、時折顔を覗かせるほんの些細な緩みから来ているような気がしてなりません。何度も反省していながら、この緩みが全然なくならない。来る日も来る日も画竜点睛を欠きまくった挙句に悔しい思いをしてきた浦和。もうこういうのは最後にしてほしいものですが、やっぱりなくならないんだろうなぁ・・・
・最後の最後で水を差されたというか、泥水を浴びせかけられたのは残念ですが、試合そのものは自陣深く引きこもる甲府相手にやるべきことはやり、しかも力攻めではなく、いかにも浦和らしい綺麗なパスワークで先制点が取れたので、決して悪い試合ではなかったと思います。
・甲府は例によって例のごとく、5-4-1の布陣で自陣深くに引きこもり。1トップのクリスティアーノすら自陣に下がっての専守防衛。浦和は10分過ぎくらいから縦パスが入りだし、何度も中央突破が決まりかかるもののこれといった決定機を掴めないまま時間が経過するというこれまたいつもの甲府戦ならではのシオシオな展開。
・幸か不幸か甲府のDFリーダー山本がイエロー2枚で31分に早々と退場。甲府が引きこもりの度合いを一層強めてしまい、浦和にとって難しい試合に。山本を失った甲府は新井を最終ラインに下げて、5-3-1で引きこもり継続。
・業を煮やしたミシャは武藤に代えてズラタンを投入し、ハイクロスに対するターゲットを最前線に追加。これはそれなりに効果があり、甲府がズラタン対策で畑尾を投入してクリスティアーノを下げてなんと6-3-0で守りに守りを固めて来たところで、ようやく李&興梠のコンビネーションによる中央突破が炸裂。
・先制点の場面では、きっちり好機をものにした興梠もさることながら、李が好調を維持し、縦パスの受け手=前線での橋頭保として十二分に機能しているのが実に大きい。一昨年、昨年と何度となくチャンスをもらいながらしょーもないボールロストを繰り返し、格好の野次の対象になっていたのは何だったのかと訝しくなるくらい。
・そして李のボールキープや簡単な叩きをあてにできるからこそ興梠は思い切ってDFラインの裏を狙える好循環。また守る側も興梠への縦パスだけ封じていれば良いわけではなくなるので、何かと混乱しがち。
・クリスティアーノを下げてしまった甲府は全く攻め手がなく、かなり気楽になったところでミシャは両WBを交代。宇賀神も梅崎も1対1で対面の相手をぶち抜けず、遠藤や阿部が左右にボールを回しに回して3ボランチを振り回してサイドで1対1の局面を作っても悉く無駄になったので、仕掛けが効く高木&関根を入れたのは理にかなった措置。もちろん中3日で迎える広州恒大戦に備えて宇賀神&梅崎を休ませる意味合いのほうが強いのでしょうが。
・ただ追加点はサイドからではなく、なんと森脇のミドルシュートから。甲府のクリアボールを拾った森脇のミドルシュートはドライブがかかって綺麗な弧を描き、バーを叩いてゴール!とりあえず撃っとけじゃなくて、森脇なりに狙っているのが凄い。ああいう曲線的なシュートが撃てる選手がいると、ドン引きしすぎてバイタルエリアを開けてしまいがちなチームはしんどい。森脇、文句なしのGJでした。
・これで終わっていれば「つまらない試合だったがややこしい相手に勝ったし、森脇祭りも見れたし、まぁええか」になったでしょうに、最後の最後でくだらなすぎる失点。左サイドから簡単に橋爪にクロスを入れられ、吉野にフリーで飛び込まれ、西川が弾いたところを稲垣に詰められる。阿部がバックパスを奪われそうになった辺りから浦和の守備に緩みが見え隠れしていましたが、最後は人数はいるのに誰も何の役にもやっていないという「浦和あるある」で勝利に泥を塗る始末。真に残念無念。
-----興梠-----
--武藤-----李--
宇賀神-阿部-柏木-梅崎
-槙野--遠藤--森脇-
-----西川-----
得点:68分 興梠、81分 森脇
62分 武藤→ズラタン
71分 宇賀神→関根
71分 梅崎→高木
・スタメンは前節湘南戦から関根に代えて梅崎を入れただけ。前日練習では阿部や森脇がコンディション調整で別メニューという話も出ていましたし、遠藤と関根は長距離遠征帰りなので多少メンバーを入れ替えるかと思いましたが、結局代わったのは関根だけ。
・遠藤の出来は秀逸。甲府みたいな相手だと後方からバシバシパスを出せる遠藤が最後尾に控えるのは実にありがたい。興梠のゴールも基点は遠藤。言い換えれば永田はともかく、那須はスタメンで使いづらい相手だったのは確か。守っても遠藤は1トップが苦手なクリスティアーノ程度なら楽々完封。ただ遠藤があんまり便利過ぎてついつい使いすぎてしまうのはさすがにどうよって思うけど。
・甲府の最終ラインに高さがないので、本来ならズラタンをスタメン起用しての力攻めが甲府攻略の早道。しかし、広州恒大戦に備えてあえてズラタンをベンチスタートにし、勝負どころで投入して見事に結果に結び付けた辺りはミシャらしからぬ上策。逆にある程度スペースがないと活きない武藤は損な役回りでした。
・この日残念だったのは高木の不出来。全くいいところなかった浦項戦以来久々に出番をもらったのに、この日もチャンスを生かせず。1-0とはいえ甲府は攻め手がなく、割と気楽な局面での起用だったにも関わらず、へろへろのはずの対面を1対1で抜けず、お膳立てしてもらった絶好機はシュートをGKにぶち当て。おまけに最後は自分がマークすべき橋爪を放置してジョギング。これではしばらくチャンスをもらえなくても致し方なし。
・攻撃面ではサイド攻撃がイマイチだったのに加え、セットプレーの好機を活かせなかったのがこの日の反省点。甲府は浦和の急激にテンポアップするパス回しについてゆけずに自陣深い位置でファウルしてしまう場面が頻発したのでFKで点が取れていれば楽だったのですが、槙野・柏木・阿部・高木といずれも決まらず。CKも序盤の槙野ヘッドが惜しかっただけ。甲府相手にセットプレーで点を取りまくっていた川崎とは対照的。
----クリスティアーノ----
--河本---稲垣---
田中-ビリー--新井-橋爪
-松橋--山本--津田-
-----河田-----
得点:90+2分 稲垣
35分 河本→保坂
65分 クリスティアーノ→畑尾
71分 津田→吉野
・毎度毎度のこととはいえ、甲府の徹底したドン引き守備には恐れ入るばかり。アウェーはもちろんホームであってもドン引きドン引きで勝ち点1に拘り続け、この方針でJ1残留という結果を出し続けてきました。昨年樋口監督が攻めに色気を出して死にかかった反省からか、より一層守備指向になった様子。相手を怪我させかねないファウルを繰り返すダーティーなチームと違って、悪く言われる筋合いは全くないと思います。
・ただあまりにも攻め手がない。この日佐久間監督はとうとうニウソンを諦めてクリスティアーノを1トップに据えましたが、クリスティアーノが1トップに不向きなのは城福時代に嫌ほど見ていたはず。地上戦はもちろん、ハイボールですら遠藤に勝てず、イライラが昂じて序盤から味方に声を荒げるテイタラク。城福が得点を全く期待されない捨て駒的1トップ盛田を編み出したように、クリスティアーノに前を向かせる手を打たないと点が取れそうな気がしません。
・また今のところ「なりふり構わず、何が何でもとにかく残留すること」でチームもサポーターも一致団結しているのでしょうから、こんな極端に守備的なサッカーをやっていてもどこからも文句は出ないのでしょうが、甲府戦を見るのはとにかく辛い。塩また塩、まさに塩山を行くが如し。そして甲府の思惑通り勝ち点1を得られればまだしも、負ければ甲府に残るものは全く何もない。(特に前目の)選手がぶちきれるのが先か、サポーターがぶちきれるのが先か、という気がしてなりませんが。
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