【観戦記】16年1st第9節:浦和 4-1 名古屋
・吹きすさぶ強風。特に埼スタ周辺は依然として荒野が広がっているためか、一段と風が強くて試合観戦以上に往来で難儀させられました。
・もちろんその風は試合そのものにも大きく影響。浦和は前半風上でロングボールが効果的に使えずに苦戦を強いられたものの、風下に回った後半は一転していつものリズムを取り戻して名古屋を圧倒。もっとも苦戦していた前半ですら名古屋には何もさせていませんでしたから、スコアは両チームの力の差を如実に表したもの、いや力量差ほど点差は付かなかったといって差し支えないかと。
・リーグ戦9試合を終えましたが、この日の名古屋ほど攻守とも何もできなかったチームはなかったのではないかと。1点取りはしましたが、これは半ば偶然半ば西川の油断の産物で、得意とする攻撃パターン(右サイドからシモビッチへの放り込みとか、永井を活かしたショートカウンターとか)は全くと言っていいほど生み出せず。守っては後半浦和に言いようにボールを回された挙句、エリア内でフリーの選手を作る始末。
・名古屋は楢崎が故障中。おまけに守備が計算できるイ・スンヒが出場停止で、その代役の小川の出来が見るも無残だったという言い訳はあるかもしれませんが、そもそも守備組織が体をなしておらず、おまけにどの試合も判で押したように終盤失速しますから、楢崎やイ・スンヒがいようがいまいが大差はなかったような気がします。小倉監督は試合後「自分たちのサッカー」という言葉を繰り返していましたが、そんなものが存在しているのかどうか、極めて疑わしかったかと。
・浦和も浦和で、この日は相手がしょぼすぎてボロは出ませんでしたが、前半の出来は強風に悩まされたことを割り引いたとしても芳しくはありませんでした。名古屋は4-4-2の布陣で高い位置にブロックを作ってショートカウンターを狙っているのが明々白々。一方浦和はなんだかんだと言ってお疲れなのか(特に阿部のミスも少なくはなかったかと)、序盤縦パスの折返しをロストしてカウンターを喰らいかかるなど、名古屋の狙いに嵌りかかる場面が散見されました。
・ただショートカウンターを喰らいかかった際に最も怖い永井の位置が概して低くくて大助かり。浦和の最終ラインは慌てて飛び込まずにディレイさえうまくやっていれば、前目の選手が戻って来てボールホルダーを挟み撃ちできる余裕がありました。
・またシモビッチ目がけてのロングボール攻撃には悩まされましたが、シモビッチが競り勝ってボールを落とした先に名古屋の選手がいないケースがほとんどなので、浦和はセカンドボールの回収に専念していれば問題なし。ゴールに近い位置にいるシモビッチにクロスを放り込まれると面倒でしたが、浦和は終始最終ラインを高く保てていたので、これまた問題なし。
・前半芳しくなかったのは攻撃面。立ち上がりに2度ロングボール一本で武藤が名古屋の高い最終ライン裏に飛び出した場面がありましたが、それ以降はほとんどロングボールを効果的に使えずに苦戦。相手4バックの空いているサイドにいるWBへ最終ラインから大きく展開するのが浦和の常套手段ですが、これが強風で流されて思うように通らない。またサイドへ持ち出してもそこからのクロスが風に流されて誰にも合わずに転々と。
・こういう日はショートパスを繋ぐしかなく(といってもそれだけだと相手の守備網を広げられないので難儀ですが)、武藤が倒されて得たFKを素早くリスタートし、李→梅崎→柏木と繋ぎ、シュートがGKの手をはじいてゴール。
・この場面、普段なかなかシュートを撃たない柏木がシュートを選択したのが珍しければ、柏木が右脚で撃ったというのも珍しい。おまけにさして鋭いとは思えない柏木の反転を名古屋守備陣が棒立ちで眺めているのもこれまたJ1では珍しい(苦笑)。荒天の下での試合は偶然で勝負が決まってしまうことがままあるだけに、この先制点は実に貴重でした。
・その後、李→梅崎のミドルシュートがバーを叩いたのはともかく、李のスルーパスを受けて名古屋最終ライン裏に飛び出した興梠がGKまで交わし、戻ってきたDFまで交わしながらシュートを撃てないのは全く持っていただけない。川崎戦でも決定機を外しまくりましたが、今の興梠は「点を取ること以外は完璧」と評された柳沢並みで、これじゃコロギ沢。そりゃミシャも興梠を叱るわなぁ・・・
・ほぼ自爆といって差し支えない形でチャンスをフイにしていると、恐れていた「偶然」が炸裂。浦和左サイドにいたシモビッチが思い切って振りぬいたシュートが西川の頭上をぶち抜いてゴール!!! 向かい風を受けてボールが上手く落ちた「偶然」が半ば、撃ってくるとは全く予想していなかった西川の油断が半ばといった感じのゴールでしたが強風の試合はこういうのがあるから怖い。名古屋にほとんど攻め手を与えていなかったのに痛恨の失点で、またしても文化シヤツター様が怒りのあまり自社製品を蹴り上げる展開に。
・といっても名古屋の見せ場はこれが最初で最後。後半風下に回った浦和はパス回しが前半よりスムーズに。特にボールが風で戻され勝ちなほうがまだましなのか、WBへのワイドな展開が効きはじめました。後半立ち上がりの関根からのクロスは興梠に合わず、武藤も撃ちきれず。しかし駒井投入で左に回った関根からのクロスを李がダイレクトボレーで叩き込んで2点目。ここは浦和らしいワイドな攻撃が結実。
・この場面、こぼれ玉を拾った森脇がなぜかそのまま左サイドに流れ、関根とのパス交換で関根が矢野をぶち抜いているのに大笑い。また李は得意のダイレクトボレーを鮮やかに決めて、昨今の好調ぶりが本物であることを改めて実証。
・さらに浦和は攻勢を強め、カウンターから興梠が一人で名古屋最終ラインをぶち抜いて追加点。カウンターのチャンスでいったんボールを奪われながらも、柏木が素早く攻守を切り返してエリア付近でボールを奪い返したのが興梠のゴールに繋がった格好。そして最初にボールを失ったのが小川で、致命的なところでまたボールを奪われたのも小川と(苦笑)
・早々に足が止まりがちになった名古屋の守備の弱さはどうにもならず、浦和右サイドで細かくボールを繋がれてもただ見守るだけ。そしていとも簡単に興梠→どフリーの武藤へと渡ってダメ押しの4点目。
・その後も興梠、武藤、李に決定機がありましたが、追加点ならず。李の2回目のダイレクトボレーは1回目よりイージーだと思ったのですが。
・後半名古屋のチャンスは全くなく、西川がひやっとしたのは浦和右サイドからのクロスが流れて枠内を襲った場面だけ。永井のミドルシュートは西川の正面で、余裕で弾いておしまい。シモビッチは心が折れやすいタイプなのか、最後はハイボールに競ることすら止めて遠藤や槙野にいいようにやられていました。
・佐藤主審は論外の出来。李や駒井に対するPKを取らなかったのはまだしも、アドバンテージを取らずに浦和のビッグチャンスを潰してしまうのには参りました。前節のPKを全然取らない岡部主審にも参りましたが。
-----興梠-----
--武藤-----李--
梅崎-阿部--柏木-関根
-槙野--遠藤--森脇-
-----西川-----
得点:25分 柏木、56分 李、62分 興梠、65分 武藤
53分 梅崎→駒井
73分 柏木→伊藤
83分 興梠→青木
・シドニー遠征に帯同せず、前節川崎戦も途中で代えられて、レギュラー陣の中では比較的楽な日程の宇賀神がベンチ外なのにはびっくりしましたが、本人のブログによると右脚故障とのこと。代わって梅崎がスタメン入りしましたが、後半早い時間に代えられたのはWBの駒が減ったので梅崎を使い潰すわけにはいかなくなったからかと。
・宇賀神故障の余波で、浦和で初めて長い出場時間を得た駒井。森脇との連携は良くなり、細かいパス交換での崩しには加われましたが、まだ最大の武器であるドリブル突破をミシャのスタイルの中にどう落とし込んでゆくのか悩んでいる感じで、決定的な仕事はできず。関根と違ってプロキャリアが長いのが悪いほうに作用してか、関根ほど思い切りがないのも気になりましたが、チャンスを与えられているうちに何かを掴んでくれれば。
・驚愕したのが高卒新人伊藤のプロデビュー。3点差付いた気楽な場面での起用でしたが、起用されたポジションはなんと柏木に代わってのボランチ。諦めムード漂う名古屋が厳しく寄せてこないのに助けられてか、最終ラインなり阿部なりからわざわざ伊藤にボールを預ける親心も垣間見られ、ほとんど「はじめてのおつかい」状態。そして伊藤のワイドな展開でいきなり走らされる関根(笑)。
・ただ気楽な場面とはいえ守備が甘すぎるのはさすがに考え物でしたし、ボール捌きにしても判断が遅いのは明らか。いくら3点差があるとはいえ、ミシャもさすがに堪えきれずに伊藤ボランチは10分くらいで断念し、青木を入れて伊藤はシャドーへ。デビュー戦は前目で思い切りよくやらせるほうが良かったかと。
・とはいえリーグ戦、しかもホーム埼スタでピッチに立てて伊藤は嬉しいだろうなぁ。リーグ戦に出場機会が得られないまま浦和を去らざるをえなかった先輩も少なくないだけに。
---和泉--シモビッチ--
永井--------古林
---田口--小川---
高橋-竹内--大武-矢野
-----楢崎-----
得点:39分 シモビッチ
66分 和泉→松田
72分 古林→小屋松
77分 小川→矢田
・名古屋がショートカウンターを狙ってるのは明白でしたが、プレッシャーのかけ方がいかにも稚拙。一人でボールを追いかけまわしていた和泉は途中で虚しくならなかったか? そして名古屋のプレスはたいして奏功することなく、単に体力の消耗を招くだけに終わって、お約束の後半の大失速へ。
・カウンター狙いなのに永井を2トップの一角ではなくSHで使うのも不可解。終始得意ではない守備に忙殺されて、肝心な時には前にいない有り様。
・また名古屋がシモビッチを上手く使ってビルドアップしようとしないのも謎。ケネディがいた時期だとケネディが引いて叩いて、また最前線でフィニッシュに絡むような流れが出来ていましたが、今の名古屋だとシモビッチが引いて受けても何も起こらず。
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