« 井の庄@練馬 | トップページ | 雲林坊 日本橋室町店@神田 »

2016.06.20

【観戦記】16年1st第16節:広島 4-2 浦和 ~ 流れが変わったところで奇策を手仕舞うどころか、自爆ボタンを押してしまう迷勝負師

・もがけばもがくほど深みに嵌る蟻地獄に陥った浦和レッズ。鉄板のスタメンで負け、大胆なターンオーバーを試みて負け、今度は奇策を弄して負ける。戦術のバリエーションは乏しいが負け方のバリエーションはやたら豊富。選手が頑張っているのは判るだけに実に切ない、やるせない。試合の翌朝広島駅で浦和レッズ御一行を見かけましたが、さすがに選手もスタッフも元気がないというか生気がありませんでした。

・広島戦敗戦の主因はミシャがあまりにも勝負師としての才覚が無さすぎることに求めざるを得ないでしょう。

・ミシャが放った奇策「駒井ボランチ起用」。かなりリスキーな一手ながらも前半はこれが奏功していったん逆転に成功。しかし、リスキーな手であることには変わりはなく、後半興梠が立て続けに決定機を外したのを契機に浦和が自陣に一方的に押し込まれてしまった時点で奇策の撤回=青木投入があって然るべき。ところが、ミシャはなぜか悪化する戦局を傍観。逆に森保監督は満を持して寿人を投入し、沸き返る観客に背中を押されたのかのように広島が一気に逆転。

・浦和は立ち上がりが芳しくなく、ウタカ→柴崎で早々に失点したこともあって前半からフルパワーで反撃。何度も高い位置でのボール奪取&ショートカウンターで好機を作って逆転に成功したところまでは良かったのですが、前半で相当体力を使ってしまったのでしょう。逆転された後は再反撃に出る力が乏しく、数少ないチャンスでもバーに嫌われて得点ならず。

・ミシャが戦局に応じた選手交代がどんでもなく下手なのを今更嘆いても仕方ありません。逆転されてミシャがブチ切れたかのように「狂気の三枚替え」を講じてしまうのもよくあること。ただ小破してベンチスタートになった柏木をピッチに送り出したことだけはどうしても容認できません。

・柏木はボールコントロールがままならず、とてもじゃないが試合に出れる状態ではありませんでした。そして案の定というかなんというか、自陣深い位置での柏木の凡ミス=緩い横パスを寿人にカットされて致命的な4失点目を喫して事実上試合終了。柏木の凡ミスがなくても縦パスを悉くカットされる浦和がカウンターで4失点目を喫するのは時間の問題だったでしょうが、失点の仕方があんまりで少なからずの選手の心がここで折れてしまった気がします。

・ミシャは2014年にも優勝まであと一歩のところまで迫ったG大阪戦で骨折が完治していない興梠を終盤ピッチに送り出す一幕がありました。そしてこの試合を落とした上に興梠の状態が悪化して残り2試合出場不能になり、それがG大阪に優勝を攫われる一因に。浪花節だか何だか知りませんが、どうしてミシャは故障持ちの主力選手の無理使いという愚を繰り返してしまうのか。

005

・チームの力の差が小さくて浮き沈みが激しいJリーグでコンスタントに上位を確保している以上、ミシャは優秀な監督なのは確か。ただその優秀さはかなりの部分日常の教練場でのトレーニングコーチとしての優秀さに留まっていて、戦場での指揮官なり勝負師としての才覚はほぼゼロ。

・また年間を通じて使える駒を厚くしておくという、ややタイムスパンの長い仕事も不得手。この試合でも怪我人だらけでただでさえ苦しい台所な上に、途中で青山が故障する不運にも見舞われながら控え選手をフル活用して勝利を手繰り寄せた森保監督との力量差をまざまざと見せつけられた格好。

・さらにいえばトレーニングコーチとしても操典の内容が著しく偏向していて、得意戦術が嵌らない時の打開策に乏しい。特に極端なまでにセットプレーを軽視するのは致命的で、着々とセットプレーでの得点力を上げている広島との差はここでも顕著に。塩谷が槙野のマークを剥がしてフリーで飛び込んだ2点目なんてそれなりに仕込んだ結果なのでしょうし。

・監督にはなぜか賞味期限というものがあり、チームにもサイクルというものがあって、5年目が一つの区切り。ネルシーニョ柏が好例ですが、過去どんなにタイトルを取りまくったチームでも監督就任5年目くらいから失速してしまう。この3連敗はソウル戦前後からチーム全体のコンディションが急激に崩れていること以上に、浦和5年目となったミシャの限界をまざまざと見せつけられたようなものでもあり、いよいよ来年の「ポスト・ミシャ」が現実味を帯びて来たような気がしてなりません。

015

-----興梠-----
--武藤----梅崎--
宇賀神-阿部-駒井-関根
-槙野--遠藤--森脇-
-----西川-----

得点:26分 関根、40分 宇賀神

73分 梅崎→李
73分 武藤→柏木
73分 関根→ズラタン(駒井が右WBへ、ズラタンがシャドーへ)

・駒井のボランチ起用。練習試合で試行しているので全くのぶっつけ本番ではありませんが、これには驚きました。柏木の小破が伝えられていたので、代わりに青木がスタメン起用されると思い込んでいたところにまさかの駒井。

・青木は攻撃面で物足りないところがあり、特に縦パスを入れるのを躊躇しがち。リーグ戦4試合連続無得点という攻めダルマのミシャにとって屈辱的な状況下で青木という選択肢は脳裏から吹き飛び、駒井という奇策がひらめいたのでしょう。

・そしてその奇策は全くの失敗ではなく、かなり守備面でリスクを背負いながらも攻撃面で奏功。かつてミシャはビハインドに陥った際に柏木をシャドーからボランチに下げる策を多用しました(そして往々にして大失敗)が、ボランチ駒井はあれよりもさらにリスキー。

・駒井は柏木のように後方で淡々とボールを捌くタイプではなく、ある程度ヌルヌルと自分でドリブルで前方にボールを運んでからパスを出すタイプ。よってプレーエリアは概して柏木よりやや前で、殺傷能力は高い分守備に大穴を開けがちという印象でした。前半エリア内でこぼれ玉を拾った駒井がボレーを放つ場面がありましたがこれが良くも悪くもボランチ駒井効果で、柏木ならそもそもあんなに前にはいなかったでしょう。

・ただ後半は奇策の負の面が如実に出てしまいました。前半とは一転して前から圧力を強めて来た広島に対して浦和は自陣に押し込められて防戦一方。後半早々2度あった決定機で興梠がシュートを枠にすら飛ばせなかったことも手伝って戦況は一気に悪化してしまいましたが、ここでミシャが奇策を手仕舞う機を逸したのがこの試合の敗因。

・またボランチ駒井だけでなく、WBができる駒井・梅崎・宇賀神・関根を同時にスタメン起用したのにも驚きました。これは消耗が激しいWBの替え駒がベンチにおらず不測の事態にも対応しづらいこと、さらにいえば中3日で迎える瓦斯戦でWBが左右とも休みなしの連戦になってしまうことを考えればどう考えても愚策。少なくともG大阪戦でもスタメンだった関根をここでスタメンで使う必然性なんて全くなく右WB梅崎で良かったはず。「WB全員集合」は奇策ですらない大愚策。

・奇策&大愚策に加えてターンオーバーも併用。前節お休みの宇賀神&梅崎、途中出場の興梠&武藤をスタメンに戻したのは良いとしても、代えが効かない代表組の出来が低調ではどうにもなりません。遠藤は終始ウタカに苦戦。槙野は塩谷にマークを剥がされ、西川は無理な体勢からのゴールキックが直接塩谷に渡って3失点目の遠因を作る始末。

・この3連戦で決定機のシュートが全て枠にすら飛ばず、3連敗の裏戦犯になってしまった感のある興梠。心身ともお疲れなせいかもしれませんが、こんな絶不調状態で五輪に行くのが興梠にとっても手倉森監督にとっても良いことなのかどうか。

018

-----ウタカ------
--柴崎----浅野--
清水-和幸--青山--柏
-宮原--千葉--塩谷-
-----林------

得点:6分 柴崎、64分 塩谷、69分 塩谷、83分 佐藤

41分 青山→丸谷(負傷による交代)
61分 森崎和→寿人(寿人&ウタカの2トップによる3-3-2-2へ布陣変更)
86分 ウタカ→皆川

|

« 井の庄@練馬 | トップページ | 雲林坊 日本橋室町店@神田 »

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【観戦記】16年1st第16節:広島 4-2 浦和 ~ 流れが変わったところで奇策を手仕舞うどころか、自爆ボタンを押してしまう迷勝負師:

« 井の庄@練馬 | トップページ | 雲林坊 日本橋室町店@神田 »