【観戦記】16年2nd第2節:浦和 2-0 柏 ~ 帰って来たぞ、帰って来たぞ、アベッカム!
・前節福岡戦同様、序盤から運動量で圧倒され、往々にして出足で負け、玉際で負けて苦しい展開。しかも福岡と違って柏は足元が上手いチームなので、浦和が前からボールを奪いに行ってもなかなかボールが取れない。よってボール支配率で相手が上回るという浦和には珍しい試合展開になってしまいました。
・従ってミシャが「私は今日のチームの出来には満足していません。特に前半、我々の強さである後ろからの組み立ての部分がうまくできていませんでした。ボールをつなぐことを恐れ、長いボールを多用してしまった前半でした。」と嘆くのも判らなくもありません。
・しかしそれは毎度毎度故障や出場停止など止むに止まれぬ事情がない限り同じ面子で闘い続けたことによる副作用(=コンディション不良)であり、半ば自業自得。ゆえに選手が相手の出方を見て、かつ自分たちの置かれている状況を見て、無理に繋がずロングボールを多用して柏最終ライン裏を狙ったり、WBを走らせたりしたのは特に悪いこととは思えません。立ち上がったばかりのチームならともかく、既に5年目に突入したチームが状況に応じて監督の基本方針に反するオプションを繰り出すのは許容範囲でしょう。
・柏にボールを支配され、クリスティアーノや伊東に際どい一発を浴びながらもなんとか無失点で耐えた浦和。そしてその悪い流れを見事に断ち切ったのが阿部のFK。GK中村は柏木が蹴るものと思い込んでわずかに反応が遅れたのかもしれませんが、阿部は実に良いコースに見事に蹴り込んでくれました。
・千葉時代は「アベッカム」と恐れられていた阿部のFKですが、浦和に来てからはなぜかFKを蹴る機会が激減。どうしてそうなってしまったのかさっぱり判らないのですが、阿部が「俺が俺が」という性格ではないのが一因なんでしょうなぁ・・・でもこの試合のFKを見る限り、どう見ても「俺が俺が」の塊みたいな槙野のずどーん系FKよりは良質。よって今後は少なくとも柏木と並んでGKを惑わせるくらいの働きはして然るべきかと。
・苦しい展開ながらセットプレー一発で先制したは後半カウンター狙いに徹し、2回目の決定機を李が決めて追加点。その後は浦和らしいパス回し、特にピッチをワイドに使うパス回しが効き、ボールを追いかける柏を見事に文字通りの「無駄走り」に追い込んで逃げ切り勝ち。
・この試合で真に反省しなければならないのは、2点目以降も何度かあったカウンターの好機を生かせなかったことと、2点もリードしているにも関わらず縦パス一本で2回もオリヴェイラの裏抜けを許した場面でしょう。特に後者は福岡戦でPKを与えた場面と同じで、那須をリベロに使った際にありがちな弊害と目されるだけに早急な対応が必要です。
・ビジターがそれなりに見込める柏戦にも関わらず、観客数は3万人を大きく下回る(27,875人)惨状。今年も成績・試合内容とも悪くはないだけにこの数字はショック。この日は朝から雨で、しかも夕方~夜に大雨との予報だった上、次週さいたまダービーに積極的な営業を仕掛けた反動があったのかもしれません。
・しかし前回ホームゲーム神戸戦でも3万人を下回ったことを考え合わせると、浦和の伝統=とにかくプレーを見せることが全てで、それ以外の集客施策には極めてストイックなスタイルが曲がり角に来ている(=そのようなスタイルを是としてついて来た客層が高齢化とともに来なくなったとか)ことを認めざるを得ないように思います。
-----興梠-----
--武藤-----李--
宇賀神-阿部-柏木-関根
-森脇--那須--遠藤-
-----西川-----
得点:32分 阿部、50分 李
78分 李→青木(3ボランチ気味に)
78分 宇賀神→梅崎
85分 興梠→石原
・興梠とのパス交換から無理な体勢だったにも関わらずボールをゴールにねじ込みにいった李。実に見事でストライカーらしい執念が感じられるゴールでしたが、前半のカウンターからの絶好機逸(=興梠からのクロスを胸トラップする余裕すらあったのにシュートがまさかの枠外)には脱力。興梠共々、難しいのは決めるがイージーなのは決まらないタイプなのか???
・この試合不思議だったのは興梠が珍しく「俺が俺が」だったこと。後半カウンターで3対2の絶好機があり、中央を走る興梠が左右どちらへ出してもフリーだったのに、そのまま突進してDFにサンドされてしまうという、いつもの興梠らしからぬ大失態。うーん、どうした興梠。
・前節亀川にボコボコにされた関根はこの試合では久しぶりに積極的に仕掛ける姿勢が復活。
・槙野の出場停止でまたしても「禁断の左CB」に回った森脇。スピードがある伊東には前回対戦時に随分苦しめられたのでどうなることかと思いましたが、意外にも無難に対応。今回は柏がボールを支配して浦和を押し込む時間帯が長くなったのがかえって伊東にとって仇になり、伊東を生かすスペースを消す結果になったかと。狭い局面でのバトルならスピードに難がある森脇もなんとか対応。もちろん宇賀神もしっかりサポート。
--オリベイラ--中川---
クリスティアーノ------伊東
---栗野--秋野---
輪湖-中山--中谷-湯澤
-----中村-----
58分 栗澤→小林祐
71分 オリヴェイラ→ドゥドゥ(クリスティアーノがFWへ)
86分 中川→大島
・柏はいったん綺麗な4-4-2を敷いてから前に厳しくプレッシャーをかけにゆくような守備スタイル。FW中川なんて前から追い掛け回すことだけがタスクじゃないかと思われるくらい。下平監督は「力のある浦和さんに対して、なるべく主導権を握って、前からボールを奪いに行くパワーを持って今日のゲームに臨みました。」と語っていますが、浦和対策として特殊なことはやらず、普段通りのやり方でガチンコ対決を挑んだのでしょう。そして序盤はこの策が見事に奏功。
・ただボールを支配し、浦和を押し込む時間こそ長かったけれどもシュート数は多くはなく、決定機でもシュート精度を欠いて完封負け。特に後半2回あったGKとの一対一を決められなかったオリヴェイラには浦和からすれば感謝感謝。SBを盛んに攻撃参加させてSHとの連携でサイドで数的有利を作ってから局面打開を図る攻め手が多く見受けられましたが、終盤はただのクロス攻撃に堕してしまったような。
・なんだかんだといっても一番怖いのがクリスティアーノの一発で、この試合でも後半宇賀神が足を投げ出してかろうじてシュートブロックする極めて危ない場面が。ただ柏に復帰してまだ2試合目ゆえか、下平監督がクリスティアーノを生かしきる最適解を模索している最中のようにも見受けられました。ユース上がり中心で出来ているチームゆえ、そこに強烈すぎる異文化を組み込むのには(昨年まで在籍していたとはいえ)何試合か試行錯誤を要するのかも。
・先制されたものの悪くない試合内容で折り返したのに、後半頭に2点目を取られると柏は大失速。この出来不出来の激しさは非常に若いチームゆえなのかも。特にビルドアップでパスミスが続出しだしたのには苦笑を禁じ得ませんでした。また後半は浦和のワイドな展開で守備ブロックが左右に振り回された挙句、先に消耗に追い込まれてしまいました。これは前節福岡と同じ傾向。
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