【展望】16年2nd第9節川崎戦
(川﨑の現状)
・年間勝ち点57(17勝6分2敗)の堂々1位。1stステージは勝ち点38の2位、2ndも現在勝ち点19の2位と安定して勝ち点を稼いでおり、2ndになって劇的に失速している鹿島とは対照的。これだけの好成績を上げながら、中村が欠場した第16節福岡戦で引き分けたのが響いて鹿島に出し抜かれて1stステージ制覇を許してしまうあたりが実に「無冠帝」らしい。
・今年の川崎が恐ろしいのは失点が劇的に減っていること。年間総失点21は浦和と並んでJ1最小で、「ザル」の面影は微塵もなし。一方凄まじい攻撃力は相変わらずで年間総得点51はJ1首位。弱い相手から容赦なく3点、4点と固め取りして得失点差を稼いでいます。
(戦力)
・好成績を反映してか、夏の移籍期間中に目立った補強はなく、また昨年のレナトのように突然中国なり中東なりに選手をぶっこ抜かれる悲劇も今のところはなし。
・ただ怪我人が多い。CB奈良、MF登里、SB小宮山、FW森本が長期離脱中。さらに前節鳥栖戦ではSB車屋が肉離れでベンチ外になり、MF田坂もここ2試合ベンチ外なので何らかの問題を抱えているのかもしれません。CBエドゥアルドは故障から戻ってきましたがベンチスタート止まり。
・さらに五輪関係でMF大島&原川がちょろちょろ離脱する(原川はそもそも川崎の戦力になってないのでどうでもいいのですが)ため選手のやりくりが大変だったはずですが、今年の川崎はどういうわけか選手層が実に分厚い。
・徹底してショートパスを繋ぐ戦術が特異なため選手によって「合う合わない」が非常にはっきりしており、補強した選手が全然合わずにあっという間に放り出される例が少なくない一方、過去の実績がぱっとしなくても合う選手には合う。今年はMF橋本やMF大塚がその好例で、大塚なんて北九州との契約満了後にトライアウトで拾った選手で、そんな選手が2ndステージで主力になっているんだから恐れ入ります。
・昨年までの川崎はベストメンバーを組めないとチーム力がガタ落ちになる印象が強かったのですが、今年は大久保・小林・中村が揃って出ていれば、あとはどうにでもなるレベルなのかも。
(戦術)
・最近のフォーメーションは一貫して大久保1トップの4-2-3-1。前回対戦時は4-4-2でスタートして浦和に押し込まれたので、後半から3-4-3に変えてきましたが、今回も初手からは奇策を採っては来ないと思います。
・なお大島不在時は中村がボランチに下がっていましたが、大島がスタメンに戻ると中村が2列目に上がる可能性大。もっとも大島はインフルエンザにかかって浦和戦の出場が微妙とのこと。
・相手を押し込んで一方的にボールを支配し、かつ細かくパスを繋いで相手ゴールを陥れる。もちろん徹底してショートパスというわけでなく、クロスに大久保や小林が突っ込んでくることもあれば、セットプレーでも点が取れる。実に強い。
・当然ながら最終ラインは極めて高い。ボール支配率は浦和を若干下回るようですが、浦和は相手に食いつかせるのを企図して最終ラインでゆっくりとボールを回す時間が非常に長いのに対し、川崎のボール回しはずっとアグレッシブ。
・ただボールを失った後の回収が非常に早い。超高い位置にコンパクトな守備陣を敷いていて、しかも相互の連携が良く取れているせいか、そんなに走らなくてもボールが回収できる。実際川崎の走行距離はJ1全体でもかなり少ないほうで、スカパーが走行距離を推しまくっているのをあざ笑うが如し。また高い位置でのボール回収にあたり新加入のエドゥアルド・ネットの寄与が大きい模様。
・それゆえ、そもそも最終ラインがいきなり脅かされること自体が少なく、レギュラーCBを2枚とも欠いてもなんとかなっているのでしょう。高い位置でのボール奪取が効かなくなると最終ラインでやっとこさ凌ぐ場面が増える浦和とは対照的。
・また昨オフに補強した韓国代表GKチョン・ソンリョンが大当たり。ルックスはどう見ても「にわかせんべい」にしか見えず、韓国で「自動ドア」「透明人間」と酷評する向きもあったそうですが、その悪評に反して決定的なピンチを止めまくり。高い最終ラインを思い切りのいい飛び出しでカバーするくらい守備範囲が広いイメージこそあまりありませんが、G大阪同様まともなGKを補強していきなり成績が向上する好例に。
・川崎相手に引いて守るのはほぼ自殺行為。DFの間に入り込んで、ちょっとしたスペースでボールを繋いで前を向くのが非常に上手いので、引いて守るDFなんてカラーコーンと同じようなもの。甲府が今年2試合とも4点取られているのがその傍証。
・逆に湘南のように積極的に前に出てくる相手には案外苦戦を強いられており、前節鳥栖は積極的な守備が見事に奏功。極力高い位置でボールを奪って川崎の最終ラインを脅かし続けました。
(浦和の対応)
・前回対戦ではコンディション面で不利(浦和はシドニーからの遠征帰りかつ中3日で、川崎は事実上丸1週間空き)だったにも関わらず、相手のキーマン中村にプレッシャーをかけ続けたのが奏功してスコア以上の完勝。興梠が決定機を外しまくりさえしなければもうちょっと点差が付いていた試合内容でした。川崎のシュートはわずか6本で枠内ゼロ、CKにいたっては1本しか取れませんでした。
・よって浦和がとりたてて変わったことをやる必要はありません。主力に怪我人らしい怪我人はおらず、五輪から興梠&遠藤が戻って来て、日程も川崎と同一。双方正面からがっぷり四つに組むことになるでしょう。
・双方とも五輪で主力選手が不在だった期間内の戦績が悪くないので、戻ってきた面子をいきなりスタメンで出すべきかどうかが案外悩ましい。興梠&遠藤はコンディションが良くないならベンチスタートでもなんら不思議はないと思います。特に那須の出来が非常に良かっただけに、遠藤はコンディションが戻っていたとしてもベンチスタートになる可能性すらあるかと。
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<前節:鳥栖 1-0 川崎>
-----大久保----
橋本---長谷川--小林
---ネット---中村---
武岡-谷口--井川-エウシ-
-----ソンリョン-----
HT 橋本→大塚
54分 長谷川→エドゥアルド
79分 武岡→三好(※5分後にラフプレーで一発退場(笑))
・長谷川は大卒新人でリーグ戦初出場。
・故障の車屋に代わって左SBに入った武岡は本来右SB。
<前回:川崎 0-1 浦和>
--大久保--小林---
登里--------田坂
---中村--大島---
谷口-エドゥ--奈良-エウシ-
-----ソンリョン-----
HT 田坂→車屋(3バックに変更し、車屋が左WB、エウシーニョが右WB)
68分 登里→森谷
86分 奈良→中野(負傷交代)
・浦和はシドニーからの遠征帰りかつ中3日。一方川崎は事実上丸1週間空いていてコンディション面で圧倒的に有利。ただでさえ苦手なアウェー川崎戦なだけにこの試合は勝ち点1でも御の字と思いながら見ていましたが、終わってみれば勝ち点1どころか内容的にスコア以上の完勝で勝ち点3をゲット。
・残念ながらこの日は興梠の日ではなさすぎて、一発のある相手に最後の最後まで気が抜けない試合になってしまいましたが、川崎の決定機は結局前半の田坂だけ。今年の浦和の守備の強さが光った試合といってもいいでしょう。無論それは最終ラインや西川だけが奮闘しているからではなく、前線の選手も一切手を抜かずに相手のキーマン(この試合では中村)にプレッシャーをかけ続けているからこそ。川崎のシュートは6本止まりで枠内ゼロ、CKにいたっては1本しか取れず。
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