【展望】16年2nd第16節磐田戦
(磐田の現状)
・勝ち点33(7勝12分13敗)で年間13位。1stステージは勝ち点23の8位で終えたものの2ndステージの失速が著しく、2ndはわずか勝ち点10(1勝7分7敗)と降格が決まった福岡&湘南よりわずかにマシといったテイタラク。そのため磐田も残留争いに巻き込まれてしまい、降格圏にいる16位名古屋との勝ち点差はわずかに3。
・残留争いの渦中にある4チーム(磐田・甲府・新潟・名古屋)には失点が多い共通点がありますが、磐田はこの中では比較的点が取れるチーム。ただそれも1stで稼いだ分が多く、2ndは得点力に大差がなくなった反面失点の多さが目立っています。
・2ndステージ総得点15のうち8つがジェイ。1stステージのジェイは故障がちだったにも関わらず6ゴールを上げており、判りやすすぎる「ジェイ頼みの○サッカー」を演じています。J2ではそれが猛威を振るったわけですが、J1ではそんな単純なやり方では時間の経過と共に勝てなくなってしまうという、これまた判りやすい経緯を辿っている模様。J2でも上位チームの中では失点が多いほうで、その欠点が徐々に顕わに。
(戦力)
・磐田との前回対戦は何分ホーム開幕戦(第2節)だったので、磐田の主力も若干異動が見られます。
・伊野波を放出したため駒不足に陥っていたCBに、5月になってパパパパフィーパパドプーロスを獲得。元ギリシャ代表なのにオーストラリア国籍を持っていてアジア枠で登録でき、しかも無所属だったのでタダ。こりゃええわ!と思ったのですが、どうも名波流に合わないのかしょっちゅうイエローをもらっています。さらに直近故障した模様で前節名古屋戦はベンチスタート。
・1stステージは昇格組にしては好成績だったためか、夏の移籍期間の補強はなし。8月にMF小林祐希がオランダ1部ヘーレンフェインへ移籍したものの、その穴埋めもせず、それまでボランチだった川辺をトップ下に配転。ボランチにはそれまでサブ組だった上田を起用。
・一時GKカミンスキーやCB大井が故障した苦しい時期もありましたが、現在は主力に目立った怪我人はなし。
(戦術)
・2ndステージ途中で3-4-1-2を試行したものの結果が出なかったためか、第13節から再び元の4-2-3-1に回帰。もっとも4バックに戻したのが大井とパパドプーロスが共に不在だった時期と重なっているので、戦術上の理由ではなく窮余の一策なのかもしれません。右SBに本来SHの山本康を起用している羽目に陥っている辺りもいかにも苦しげ。
・磐田の攻撃は両サイドからジェイ、あるいはせいぜい左サイドから走りこんでくるアダイウトン目がけての放り込み一辺倒。流れの中からはほぼそれしかないと言っていいほど徹底しており、時間が経過して戦局が煮詰まってくると両サイドはもろにクロスマシーン化。ゆえにジェイが封じられれば磐田は手も足も出ませんが、それでも何とかしてしまうのがジェイの恐ろしいところ。当然ながらセットプレーでもジェイの高さは脅威。
・一方守備はそのジェイの存在が重荷に。なにせ守備をほとんどしない。それゆえ最終ラインは裏を取られるのが怖くて思い切って押し上げられず、必然的に陣形は間延びしがち。中盤のスペースを選手たちが駆けずり回って対処できるうちはいいものの、終盤はガス欠してどうにもならず。磐田の総失点49のうち12失点が75分以降に生じているのは偶然ではないでしょう。また前回対戦時に磐田がコンパクトな布陣を維持できたのはジェイが後半途中からの出場だったというのもその傍証になるかと。
(浦和の対応)
・前回対戦はホーム開幕戦で1-2の敗戦。最終ラインの構成に試行錯誤していた時期で、「森脇-槙野-遠藤」と並べてみたものの森脇左CBが大失敗に終わり、自爆で試合をわざわざ難しくての敗戦。ACLを睨みながら選手をローテーションしたものの、これまた上手く行かず、さらに選手交代も全く機能しないと負ける要素てんこ盛りでした。
・今の浦和はその時期とは置かれている状況が全く違って基本メンバー構成は安定しており、しかも選手を少々入れ替えても何の問題もありませんから、前回対戦は全くと言っていいほど参考にならないでしょう。
・ただルヴァン杯優勝の代償は殊の外大きく、前節は宇賀神が負傷欠場。柏木もベンチスタートになって出番なしに終わり、さらに関根は右足つま先を負傷したまま無理やり出場している状態。また新潟戦の出来を見ると森脇や武藤の調子が明らかに下降線に入った模様。
・従って磐田戦も故障者の状況、選手のコンディション如何で多少メンバーの入れ替えがあるでしょう。宇賀神が復帰できず、関根も無理となるとかなりメンバー構成が苦しくなります。またジェイ対策として那須をCB中央に据えるかもしれません。
・駒井の裏をアダイウトンに徹底的に突かれると非常に厄介ですが、逆にアダイウトンは前目に残りがちで守備が緩慢なので駒井が磐田左サイドを蹂躙しまくる可能性も十二分にあり、このサイドの攻防が見どころ。また前述のようにジェイが守備をしないため、磐田が不用意に最終ラインを上げて来たところで遠藤なり阿部なりの縦パス一本で興梠に裏を取らせるのも有効でしょう。
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<前節:名古屋 1-1 磐田>
-----ジェイ-----
アダイウトン--川辺---太田
---上田--宮崎---
中村-大井--藤田-山本
-----カミンスキー----
得点:47分 ジェイ
70分 宮崎→松浦
79分 アダイウトン→齊藤
90分 ジェイ→森島
※CB森下が出場停止
<前回:浦和 1-2 磐田>
-----齊藤-----
アダイウトン--小林---太田
---宮崎--上田---
中村-森下--大井-櫻内
-----カミンスキー----
得点:30分 太田、82分 ジェイ
69分 アダイウトン →ジェイ(齊藤が左SHへ)
81分 齊藤→松浦
90+3分 小林→山本康
・磐田は高い位置に4-4-2の守備ブロックを形成。積極的にショートカウンターを狙うほど浦和最終ラインなりGKへプレッシャーは厳しくかけないけれども、浦和のビルドアップを阻害する程度にはしっかりかけてきました。自陣深くボールを運ばれても守備ブロックを崩さず、特に慌てて飛び込んで交わされる愚を犯さないように粘り強く対応。ずっとそんな感じで浦和の大チョンボをひたすら待って、それが見事に奏功。
・ジェイはコンディションが万全でなく、後半半ばからの出場。限られた時間ながら槙野を抑え込んで、不格好ながらもいきなりゴール。またハイボールで永田に競り勝ってこぼれ玉を拾わせてカウンターを仕掛ける場面もありました。
・で、そのジェイが出てくるまでなんとかスコアレスで耐えるというのが名波監督の作戦。しかも浦和の自爆でリードした状態でジェイを投入できたのだから、名波的には万々歳。
・ただ悪く言えば磐田は守備は完璧だったけれどもジェイが出てくるまで攻撃は全くといいていいほど何もできず、頼みのアダイウトンすらずっと守備に追われっぱなし。それゆえ浦和は自爆さえしなければ負ける相手ではなかったと思うのですが、そこで自爆するのが浦和。そして上手く自爆するように森脇に太田をけしかけた磐田が良かったといえばそれまでですが。
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