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2017.05.21

【観戦記】17年第12節:浦和 3-3 清水 ~ 《取扱上のご注意》プラスチック製のザルはとにかく熱に弱い

前節既に死体と化している新潟相手にすら終盤なぜか殴り合いを演じてしまった浦和。そりゃ生きている清水相手に殴り合いになってしまうのは当然でしょう。

・しかも最高気温は30℃に達し、湿度こそ高くなかったものの陽射しが非常にきつい中でのデーゲーム。こんな中で90分間動き回れるはずがなく、だからこそ2点リードした時点での試合運びなり消耗した選手の交代が重要なのにミシャは特段手を打つ様子はなく、逆に小林監督が放ったデューク投入が見事に奏功してあれよあれよという間に3失点。興梠のハットトリックでなんとか同点に追いついたものの、試合終了間際にCKから絶体絶命の大ピンチがあり、結果的には「負けなくて良かった」という展開に。

・前節に続いて森脇が出場停止で、右CBには宇賀神を起用。高さがない宇賀神をテセに徹底的に狙われてやられたのならまだ諦めも付きます。ところが3失点とも宇賀神はほとんど関与していないというのが実に皮肉。また1失点目と3失点目は相手のスーパーゴールを褒めたほうが良いのかもしれませんが、素早いリスタートから喫した2失点目はどうにも許しがたい。しかもその前に一度同じような形でピンチを招いていたにも関わらず、何の反省もない。

・たとえ相手が死んでいても手を抜かずに殴り続けるというミシャのスタンスはそれはそれで結構。しかし、それは「常に総員前がかり」とイコールではないはず。運動量が落ちてきたところで「前に出ざるを得なくなった相手に引いて守って駿足FWのカウンターにすべてを託す」というやり方もあるはずで、現にちょっと前までの広島は終盤5-4-1で引いて守って浅野頼みのカウンターで大量点を取っていました。この日はカウンターに最適なラファエルが故障で欠場していましたが、それでも高木なりズラタンなりカウンターに向いた選手がいます。

・状況に応じて試合運びを変えられない。選手のコンディションが万全ならそのまま押し切れるが、ちょっとコンディションが崩れるとそこを相手に付け込まれてぐだぐだの殴り合いに持ち込まれてしまう。要するに浦和って攻撃パターンは多彩だが、それはあくまでも狭い戦術レベルの話で、もうちょっと広い戦術レベル(戦略レベルとは言わないまでも)では極めて一本調子なのが弱点なのでしょう。

003

・前半の出来はほぼ完璧だったと思います。小林監督は特段浦和対策は立てずに普段の4-4-2でリトリート主体に守っているので、浦和はこれまた4-4-2崩しの基本パターンを繰り出し、両WBを軸にピッチをワイドに使って攻撃を仕掛けました。試合開始早々に関根のクロスを契機に武藤→李→興梠シュートがポストを叩く場面があった後はなかなか決定機を掴めませんでしたが、24分関根シュートのこぼれ玉を興梠がバイシクルで叩き込んで先制。

・浦和の攻撃はサイド偏重というほどでもなく、清水の柏木への対処が甘いことも助けとなって縦パスもそれなりに入っていましたが、残念ながらこの日は中央でのコンビネーションプレーの精度が低くて全て不発に終わりました。また縦ポンで裏狙いも何度か試みましたが、これまたすべて不発。またCKで槙野に2度絶好機がありましたが、共に枠にすら飛ばず。

・押している割には追加点が取れず、さらにずっと日向にいる関根は40分くらいで大消耗して早々に動けなくなってしまいましたが、それでもクソ暑い中で高い位置でのボール奪回はそれなりに出来ており、ひやっとしたのは15分ドリブルで持ち上がろうとした遠藤のボールロストから白崎にミドルシュートを撃たれた場面くらい。

・ところが後半は浦和の運動量がガタ落ちになって高い位置でのボール奪回ができなくなり、清水のサイド攻撃を許す場面が増え始めました。それでも57分駒井クロス→興梠ヘッドで追加点を取り、暑くてしんどいのはお互い様なので浦和の優位は間違いないと思ったのですが、ここからあれよあれよという間に3失点。

・最初の失点はテセが槙野と駒井を交わして角度のないところからミドルシュート。槙野&駒井の対応もどうかと思いますし、西川は撃ってくること自体想定してなかった気もしますが、それ以前に興梠のボールロストが酷い。しかも失ってもすぐに追いかけない。この怠慢プレーをやらかしたのが李だったらボロクソ言われてるでしょうに。

・2失点目はこの日最大の失態。素早いリスタートで最前線でフリーのチアゴアウベスに展開されてしまったのが極めて拙かった。チアゴを監視すべき位置にいた関根はヘロヘロで使い物にならず、チアゴに対峙した槙野はいとも簡単に交わされてチアゴは楽々デュークへパス。デュークのシュートはポストを叩いたものの、こぼれ玉にテセが詰めていました。

・しかも素早いリスタートでやられたのはこれが最初ではありません。59分にも素早いリスタートから枝村にどフリーでクロスを入れられ、宇賀神のクリアで難を逃れる場面がありました。小林監督はFK時の浦和の切り替えが緩慢なのを狙っていたのでしょう。

・3失点目は白崎→チアゴの大きな展開から。この時間帯にはもう前からの守備もへったくれもなくなっており、高精度のロングボールを入れられてしまうのも当然。どフリーでボールを受けたチアゴは槙野も遠藤もいないも同然のごとく、ミドルシュートを巻いてゴールに突き刺しました。こんなゴールなんてACLの中国勢の反則外国人じゃないとなかなかお目にかかれません。ただ前節鳥栖戦を見ていればチアゴはあそこから狙っているのは判るはずで、槙野も遠藤も何をしているのか・・・

・たった7分間でまさかの大逆転を喰らってミシャは錯乱したのか、なぜか疲弊した選手を代えずにポジションを大きく変更して反撃。具体的には阿部を右CB、宇賀神左WB、関根右WB、駒井ボランチと4名ものポジション変更。前半ずっと日向にいて疲弊しきったはずの関根を再び日向に出すかね、フツー・・・

・ただ清水の守備もいい加減なもので、73分には興梠クロス→武藤ヘッドの絶好機(→GK六反セーブ)。さらに74分駒井→興梠スルー→関根→興梠と鮮やかに中央突破が決まって浦和難なく同点。

・小林監督が凄いところはここで無理に勝ちにいくのを諦めたこと。具体的にはテセを下げてドン引きの守備ブロックを作り、六反は露骨に時間稼ぎを始めだしました。さすが残留のプロ。浦和戦で色気を出して勝ちに行って大失敗した吉田監督@甲府とはこの辺が全然違う。しかも無理に勝ちにいかないだけで、浦和の凡ミスにしっかり付け込むだけの刃は残していました。83分にはハイボールでデュークが遠藤に競り勝ったのを契機に北川に決定機。試合終了間際にもCKから北川に決定機。共に西川の好セーブで得点ならず。

・一方ミシャは憔悴した関根をようやく諦めたかと思えば、なぜかズタランを投入して再び駒井を右WBに出して柏木アンカーの3-1-4-2みたいな格好にシフト。さらに柏木を諦めて矢島を投入しましたが、ほとんど機能せず。普段練習してるのかな、この形は???「禁断のパワープレー」然り、ビハインドに陥ると往々にしてやり慣れないことをやって盛大に自爆するのはミシャの悪癖。

・ACLラウンド16済州戦へ向けて選手を温存するどころか派手に消耗を強いられてしまい、中3日で迎える1stレグのスタメン構成が極めて難しくなってしまいましたが、果たしてどうなることやら。スコアレスドロー、あるいはアウェーゴール付きの1点ビハインドくらいは許容範囲だと思いますが。

002

-----興梠-----
--武藤-----李--
関根-阿部--柏木-駒井
-槙野--遠藤-宇賀神-
-----西川-----

(得点)
24分 興梠
57分 興梠
74分 興梠

(交代)
68分 李→高木
80分 関根→ズラタン
84分 柏木→矢島

(最終形)
---興梠--ズラタン--
宇賀神-高木-武藤-駒井
-----矢島-----
-槙野--遠藤--阿部-
-----西川-----

・新潟戦で小破したラファエルに代えて李がリーグ戦久々のスタメン。ところが前述のようにこの日はKLMらしいコンビネーションの良さはほとんど見られずじまい。もっともサイド攻撃を助けるための中央でのパス回しは出来ているので全くダメだったわけではありませんが。

・ミシャはKLMの不出来を見て、1点取られた時点で李に代えて高木を投入。高木のドリブルなりミドルシュートなりに賭けたのかもしれませんが、残念ながら高木の出来がさっぱりで何の役にも立たず。復帰戦となったソウル戦同様、ブレイク以前の高木に戻ってしまったかのよう。ただ高木の出来以前に最初に代えるのは疲弊著しい関根だろうと思いますが、この辺は結果論かも。

・ミシャは90分持たない柏木を諦めて、84分矢島を投入。矢島が投入されるとしたらこんな苦しい局面しかなかろうと思いましたが、矢島は投入直後にズラタンの裏抜けを演出したのが目を惹いただけ。もっとも矢島本人の問題というより、ほとんど見たことがない3-1-4-2の”1”をやらされた難しさに起因する気がしますが。

・出番はありませんでしたが、梅崎がついにベンチに復帰。梅崎不在の間に成果を出せなかった菊池が厳しい立場に。

001

---チョンテセ--アウベス--
白崎--------枝村
---竹内--六平---
松原-二見--角田-鎌田
-----六反-----

(得点)
64分 チョンテセ
69分 チョンテセ
71分 チアゴ アウベス

(交代)
HT 二見→フレイレ(負傷交代)
62分 枝村→デューク
81分 チョンテセ→北川

・ミシャの選手交代が不発だったのに対し、小林監督のデューク投入は見事に奏功。浦和が前からプレッシャーがかけられなくなり、中盤もスカスカになってロングボール蹴り放題になると肉弾戦に強いデュークが効いてくる。デュークは今年リーグ戦では終盤に短時間起用されるだけで、まとまった時間使われたのは浦和戦が初めてですが、まさに適材適所だったのでしょう。

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