【TV観戦記】ACL2017・準決勝第1戦:上海上港 1-1 浦和 ~ 耐えに耐えて価値あるアウェーゴール付きドロー
・シュート数21対3。前半はともかく後半はほとんど攻撃の形を作れず、しかも後半半ば過ぎにはすっかり足が止まってボールキープもままならなくなってしまいましたが、浦和守備陣の奮戦に加え終盤上海上港(以下「上海」)の攻撃が雑になったのにも助けられてなんとか追加点を与えず、価値あるアウェーゴール付きドローで第1戦を終えることができました。
・シュート数がたった3本に終わったことを考えれば、アウェーゴールが奪えたのは奇跡と言っても良いくらい。とはいえ、相対的にマシだった前半のうちに浦和らしいというかミシャスタイルの残り香が漂う形でゴールを奪えましたから、奇跡かもしれないが偶然ではありません。ただシュートどころか攻撃で良い形を作れた回数があまりにも少なかったのが残念なだけで。
・この試合で称えるべきなのはどう見ても守備陣というか全体の守備意識の高さ。ラファエルを例外として全員実によく頑張った。攻→守の切り替えが実に早く、前線から懸命に戻って穴を塞ぎ、要所要所で体を張って超強力なブラジル人選手に食らいつく。
・特に目を惹いたのが長澤の奮戦。ACLどころかリーグ戦でもほとんど出番がない長澤ですが、やはり海外経験は伊達ではないようでフィジカルの強い相手に全く当たり負けせず、しかも運動量も豊富。正直今までなんで長澤を使わなかったのか、長澤を使っていればしょーもない失点の数々はなかったのではないかと訝しくなるくらい。
・長澤がやや別格な感すらありましたが、武藤も青木も、そして故障明けの柏木も、とにかく中盤の選手は精力のほとんどを守備に費やしたような気がしました。また今年失態が目立つGK西川も再三の好守で試合を締めました。
・スタメンはWB/SHに相応しいスペシャルなサイドアタッカーが誰もいないという非常に珍妙な形。さすがに専業WBがゼロでは3-4-2-1の敷きようがなく、ふたを開けてみれば左SH武藤、右SHラファエルの4-1-4-1。前節鳥栖戦と比べると故障明けのラファエルと柏木がいきなりスタメン入りし、さらに長澤と青木がスタメンに復帰して高木・矢島・駒井・森脇が外れた格好。鳥栖戦から中3日である程度ローテーションの意味合いがあるのでしょうし、それ以上に矢島と高木はフィジカルが弱くてACLでは使えないという判断だったのかもしれませんが、矢島→長澤の入れ替えは見事に奏功しました。
・しかもこれまた珍妙なことに槙野がほぼ右SHフッキにマンツーマンでマーク。槙野がフッキを止めている間に長澤がプレスバックしてサンドイッチ。当然槙野がフッキに釣りだされて左サイドに穴が開くことがありますが、そこは武藤が懸命に駆け戻って穴埋め。今年一対一で醜態をさらすことの多い槙野ですが、タスクを単純化してやればまだまだ頑張れる模様。35分に槙野が攻撃参加してしっかりカウンターを喰らうという見慣れた光景もありましたが、概してこの策は嵌ったようでフッキは槙野を嫌がってか後半途中から左SHへ。
・「概して上手く行った」といっても完全には防げないのがフッキの恐ろしさ。15分の失点場面は青木がオスカルに釣りだされて左サイドに流れてしまい、バイタルエリアに進出してきたフッキへの槙野の対応が遅れたのが結局命取りに。普段ならまずぶち込まれないはずの距離から恐るべき精度のミドルシュートを決めるフッキを褒めるべきなのでしょうが。
・前半カウンターで20分エウケソン、35分フッキ、39分・44分オスカルと決定機を作りながら追加点が取れなかったのに業を煮やしてか、ビラスボアス監督はラファエルの存在ゆえに守備が相対的に緩い浦和右サイドに目を付け、後半早々に左SBを代えて大攻勢。55分には早速投入したばかりの左SBウー・ハイ(21番)のクロス→アフメドフ(25番)、56分にはサイドへ流れたアフメドフ→オスカルで決定機を作るのに成功しました。
・さらに60分柏木をあっさり交わしてバイタルエリアに侵入したアフメドフが決定機を作り(エリア内に突入したウー・レイ(7番)のオフサイド判定が遅れてややこしくなりましたが)、終わってみればこの「アフメドフ祭り」が浦和にとって最も危険な時間帯でした。68分オスカルFKがポストを直撃した場面も、元はと言えばアフメドフのスルーパスを受けたエウケソンをマウリシオがファウルで止めざるを得なかった場面からですし。言い換えれば、この辺りから守備で奮戦していた柏木&長澤が疲れてアフメドフの前方進出を許しがちになったということなのでしょう。
・後半も半ばを過ぎると浦和の足はすっかり止まり、ほとんどボールを繋げずに前に蹴りだすだけに。しかも疲弊が激しい前目のスタメンに守備が計算できる人材を集中して使ったがために、ベンチメンバーで守備が頑張れそうなのはズラタンくらいしかいないためか、堀監督の選手交代は遅れに遅れて80分になってようやくラファエルを高木を投入。極めて守備がヤバい選手をかなり守備がヤバい選手に代えるという、妥当と言えば妥当、苦し紛れといったほうが近い策を放ったところ案の定88分に高木の緩いバックパスをウー・レイに奪われる大ピンチが!!
・ただなんだかんだと終盤の上海の決定機はこれしかなく、しょーもないパスミスが頻発するなど攻撃が随分雑になって足の止まった浦和をしっかり崩すような仕掛けは見られずじまい。浦和の失速がより目立ってしまいましたが、上海もそれなりに疲れていたのでしょう、たぶん。
・なにぶんシュート数21対3という試合だったので守備陣の奮戦が嫌でも目に付きましたが、アウェーゴールは見事な形。青木がふんわりとした縦パス→興梠裏抜け→折返しを柏木が右脚シュート! 何度も狙っていた興梠の裏抜けが見事に奏功した形といってもいいでしょう。
・ただこういう流麗な崩しが見られる回数は非常に少なかったのも事実。上海の中盤の守備は実にいい加減で、J1ではまず見られないくらいスカスカ。浦和のビルドアップを阻害する様子なんてまるでなく、最終ラインでなんとか弾き返しているだけ。従ってミシャスタイルが機能している時期なら上海守備陣をズタズタにしていた可能性が高いような気がしてなりませんが、今の浦和は攻撃が実にお粗末というか単調というか。ボールを前線まで運んでも前線の選手間で呼吸は合わず、テンポは変わらず。少なくとも攻撃に関してはこの日も4-1-4-1はほとんど機能しなかったかと。
・特に故障明けで無理やりスタメン起用したかもしれないラファエルの右SHは案の定ほとんど機能せず。堀監督はラファエルでカウンターをちらつかせたつもりなのかもしれませんが、唯一の見せ場だった50分上海の緩いバックパスを掻っ攫ってエリア内に突入した場面で決められず。あとはせいぜい57分に右サイドを突破して武藤へクロスを送った場面があったくらいで、むしろカウンターの好機でいつもの持ちすぎ癖を出して好機を潰していた印象。39分にはラファエルのボールロストからオスカルに決定機を与えてしまいました(しかもシュートストップ時に芝がズルっと剥けて西川が体勢を崩すおまけ付き)。
・アウェーゴール付きのドローなので若干有利な形で第2戦を迎えられましたが、第2戦までに浦和がたいして点を取れる形を作れないという問題を解消しないと先制されると一気に苦しくなります。今年のACLに関しては無類の強さを見せるホームゲームですが、果たして結果は如何に。
-----興梠-----
武藤-長澤-柏木--ラファエル
-----青木-----
槙野-マウリシオ--阿部-遠藤
-----西川-----
(得点)
15分 フッキ
28分 柏木
(交代)
80分 ラファエル→高木
89分 興梠→ズラタン
90+3分 柏木→宇賀神
・長澤は後半開始早々ファウルを受けたフッキと何やら談笑する余裕も! もっとも35分にカウンターを喰らった後に阿部もフッキと何やら話しており、阿部も一応海外経験ありとはいえ、共にフッキが片言の日本語をしゃべっていただけじゃないのかという疑惑も少々(苦笑)。
・青島ビール賞は柏木。埼スタには岡野モドキしか来なかったのに、今回は青島ビールの美女軍団に囲まれて柏木も心なしかご満悦。
・オスカルはどういう訳か浦和戦では外しまくる印象。深い切り返しで対面の相手が転んでいるのに外してしまう。ああ、なんてオスカルなの!!!
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