【観戦記】18年第11節:浦和 0-1 湘南 ~ ミシャはオリヴェイラより一枚上だった(選手交代の枚数が)
・試合終了後、感極まってピッチに突っ伏している選手もいれば、抱き合っている選手もいる。湘南サポは優勝したかのような大騒ぎ。当然ながら河野外務大臣は早速祝電を打つお祭り。湘南が浦和に勝ったのは1997年7月以来実に21年ぶり(といっても当の湘南がエレベータークラブの典型ゆえ、対戦自体が少ないのですが)なので、そうなってしまうのも無理からぬかと思います。ただ肝心のチョウ・キジェ元構成員いや監督が今の浦和に勝つのが難しいとは思っていなかったでしょうなぁ、たぶん。遠藤・菊池・直輝・武富と四人も手塩にかけた教え子がいるチームに勝ったという感慨はあるかもしれませんけど。
・前節と違って相手チームに山ほど決定機を与えたわけではなく、直輝が前半の決定機を決めていれば結果は逆になっていたかもと思えるくらい内容は僅差の試合でした。しかし浦和がこの1年で4人目の監督を迎え、その過程で連続性がなんら感じられないサッカーをやり、おまけに選手構成も超アンバランスになるという大迷走の過程にあるのに対し、湘南はキジェが率いて7年目という積み上げの差は大きく、結局のところそれが勝敗を分けたような気もしました。オリヴェイラ監督が「短期間で水をワインに変えるようなことはできません。時間が必要だと思います。」と語るのも道理でしょう。もっとも中村GMがそれを是とするかどうか判りませんが(もちろん是としないのであれば、浦和の大迷走は一層混迷を深めるだけでしょうけど)。
・浦和は札幌戦同様猛攻を仕掛けながら結局1点も取れず。一方的にボールを支配して相手を押し込むところまでは行くが、相手が割り切って引いてしまうと崩せない。この辺が「ミシャの思い出」に縋るだけの今の浦和の限界で、日頃から練習を積み重ねていないものだから結局のところらバイタルエリアで同じようなテンポでのパス交換に終始してしまい、相手守備陣を崩しきれない。サイドに展開しても関根や駒井のような強引に敵陣を切り崩すタレントはいないので、高さのないFWにクロスを入れるだけに終わってしまう。
・大槻体制の時もカウンター気味に縦に速い攻めが嵌ったときかセットプレーでしか点は取れていません。おまけにミシャ式紛いをやるにはあまりにもWBが人材不足。従ってオリヴェイラが早々に3-4-2-1に見切りをつけてもなんら不思議はありません。実際大槻体制下でもルヴァン杯では4-4-2でやっており、無得点での連敗を受けてオリヴェイラが大英断を下してもおかしくはないと思います。ただそれをやるには次節は川崎と相手が悪すぎて、守備が決定的に破綻しかねないというアンビバレント。うーん、実に苦しい。
・とはいえ、負けたとはいえこの試合そんなに悪いとも思えないような。まず今季の浦和お約束の「終盤大失速」という展開にはなりませんでした。また堀体制でありがちだった「先制点を取られたら最後、そのままなすすべなく土俵を割る」という試合でもありませんでした。さらにオリヴェイラ監督の放った選手交代が全部当たっており、「この監督は只者ではない」という期待感を持たせてくれました。ついでに言えば、これまで周囲と噛み合わずほぼ「オージーポポ」になっていたナバウトが徐々にチームに馴染み出したのもでかいと思います。
・もっとも負け試合になんとか光明を見出そうとするのは「負け慣れ」以外の何物でもないかもしれず、J1残留を争う可能性が高い昇格組にホームで負けちゃいかんわなぁと言われればぐうの音も出ませんが。
---武藤--興梠---
-----柏木-----
菊池-直輝--阿部-橋岡
-槙野--マウリシオ--遠藤-
-----西川-----
(交代)
HT 直輝→長澤
58分 菊池→ナバウト(武藤が左WB、ナバウトがFWへ)
58分 橋岡→宇賀神
・前節柏戦から中2日だったのを考慮して、オリヴェイラ監督は長澤→直輝、宇賀神→菊池、岩波→阿部と3名入れ替え。
・湘南は前節柏と比べると敵陣まで積極的にプレッシャーをかけては来ず、自陣かなり高い位置に5-3-2の守備ブロックを敷いて、そこにボールが入ったところで厳しくプレッシャーをかけるような構え。浦和は阿部が最終ラインに下がってビルドアップこそ難渋しませんでしたが、前にボールが入ったところで何も起こらず。前半は橋岡を軸に右サイドからの攻めが目立ちましたが、残念ながら現状では橋岡に多くは期待できず。
・よって前半の浦和の決定機はカウンターによる縦に速い攻めだけ。15分柏木→興梠は枠外、そしてこの試合最大の決定機18分直輝→興梠→直輝はGK正面。リーグ戦初スタメンの直輝がこれを決めていれば直輝本人はもちろん、直輝を起用した監督の評価も一変したでしょうが、この絶好機以外は良くも悪くも直輝らしい中盤で所在なく浮遊するだけの存在になってしまい、結局前半だけでお役御免。前半の柏木の出来が非常に悪かったのに後半一変したことを考え合わせると、直輝と柏木は「まぜるな危険」なのかも。
・一方湘南は最初の決定機をモノに。自陣での柏木のボールロストを機にスルーパス一本で菊池がミキッチに裏を取られ、ミキッチ→石川であっさり失点。スルーパスを出されるまでかなり時間があったのにミキッチをしっかり掴むでもなく、パスコースを切るでもない謎のポジションにいた、実に菊池あるあるな光景・・・ミキッチ老師もこれが今季初スタメンらしいのですが、ここぞというところで大仕事をやってのける辺りは平川とそっくり。
・失点後から後半のWB2枚替えまでがこの試合浦和が最も不出来だった時間帯だったかと。湘南が前からの圧力を一気に強めてきたこともあって浦和はビルドアップすらままならなくなりパスミス連発。槙野が苛立ちを露わにする場面も。
・そこでオリヴェイラ監督は58分疲労困憊の橋岡と、前半から何の役にも立っていない菊池に代えて宇賀神とナバウトと投入。この交代は大当たりで、後半頭から投入した長澤が自分でボールをかなり持ち上がれる故に縦への推進力を生んでいるのと相まって、湘南守備陣を自陣深くに釘付けに。そして59分長澤クロス→宇賀神、67分槙野クロス→宇賀神と良い形を作りだしました。
・ナバウトも78分秋元が弾いたボールを撃ち返したのを契機にそれなりに活躍。80分柏木→興梠&ナバウトのパス交換から興梠に決定機、さらに81分には遠藤→ナバウトに決定機。先述のようにナバウトがチーム内で好機にからめるようになった、言い換えれば焦って無理目のシュートを連発する場面がなくなったのは良い傾向ですが、シュートが枠に飛ばないのが残念。
・そして浦和最後の決定機83分武藤クロス→興梠ヘッドもやや力がなくて決まらず。最後はマウリシオだけを上げてのパワープレーになりましたが何の効果もなく試合終了。柏戦と違って相手を今一歩のところまで追いつめていただけに不慣れなパワープレーを試行したのは勿体ない気がしましたが、監督はその「今一歩」に見切りをつけただけなのでしょう。
・つまり会見での「形を作っても点を取ることができませんでした。力強さやエネルギーが欠けていたと思います」との言葉通りで、これはもはや「今一歩」の連続でしかなく、時間の経過とともに薄れつつある「ミシャの思い出」との決別宣言なのかもしれません。皮肉なことに失点の契機は「ミシャの思い出」の象徴たる柏木の「謎のフリック」でしたし。
--アレン----ジョンヒョプ-
--菊地----石川--
高橋---秋野---ミキッチ
-杉岡--坂---山根-
-----秋元-----
(得点)
30分 石川
(交代)
51分 ステバノヴィッチ→松田
65分 ミキッチ→高山
87分 松田→梅崎
・いやはや湘南がこんなに粘り強く守れるようになるとは! もちろん浦和が拙攻すぎると言われればそれまでですが、終盤自陣深くに押し込まれ、しかも全然見覚えのない面子だらけのCBで虎の子の一点を守りきるとは!
・昇格・降格を繰り返しているうちに湘南は「イケイケ」一本槍でもなんでもなくなり、好機における思い切りの良さに象徴されるようなある程度の興行的な面白さは保ちつつも確実に勝ち点を掠め取るような闘い方に変化している。そんな気がしました。ただ過密日程なのに相変わらず良く走る。それが湘南の、キジェの変わらない「スタイル」なのでしょう。
・試合終了後は今オフに完全移籍した梅崎が場内を一周して挨拶回り。こういうのが絵になる選手、やっても嫌味には受け取られない選手はなかなかいないもの。
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