【観戦記】18年ルヴァン杯第3戦:広島 0-0 浦和 ~ 控え組が築いたかもしれない浦和反撃の橋頭堡
・堀監督が更迭されて大槻新監督に与えられた準備機会はわずか2日&遠距離移動付き。しかも週末にはこれまた中2日でリーグ戦仙台戦が控えているという難しい状況。浦和は開幕から5試合でわずか勝ち点2しか上げられず、早くも残留争い行きがちらつき始めたため、大槻新監督がルヴァン広島戦を「捨て試合」扱いしても誰にも文句は言われなかったと思います。
・実際大槻監督はスタメンを磐田戦から全員入れ替えただけでなく、これまでのレギュラー陣で広島遠征に帯同させたのが柏木・マウリシオ・長澤のみという極めて思い切った手を打ちました。1軍半仕様で臨んだルヴァン杯G大阪戦ですらボコボコにやられたのに、ここまで極端に入れ替えてしまうと試合にならなくてもなんら不思議はなく、それもより重要な仙台戦へ向けての準備と割り切ったのだろうと思ったのですが、意外にも浦和は善戦して存外の勝ち点1を確保しました。
・広島も大幅な駒落ちだったのに助けられた側面があるのは否めませんが、監督交代の効果がてきめんなのか控え組のモチベーションが著しく高いように見えただけでなく、実にのびのびとサッカーをやっているように見受けられました。しかも最後まで失速せず、集中も切れず。これが最大の収穫でしょう。「野心を持った選手を使いたい」「僕はいい選手の基準というのは、チームに貢献できる選手だ」というコメントに象徴されるように、大槻監督は選手のモチベーションを上げるのが巧く、控え組が監督の期待に見事に応えたといっても差し支えありません。
・浦和の決定機らしい決定機は前半29分李→ナバウトが単騎突入した場面だけだと思いますが、前後半ともクロスがわずかに中で合わないという場面がやたら多く、決定機には至らないものの手詰まり感はあまり感じませんでした。守っては左サイドが終始怪しいだけでなく、往々にしてバイタルエリアに大穴が開いてしまう傾向があって広島に3、4回決定機を与えてしまいましたが、それでも攻守の切り替えは概して早く、危ない場面ではしっかり中を固めて防ぎに防ぎ、GK福島の奮戦も手伝って今季初めての無失点を記録。
・リーグ戦はまた面子が大幅に入れ替わるでしょうから、この試合だけで大槻監督がやりたいこと=今後の基本戦術みたいなものを推し量るのは難しく、ましてや大槻監督の力量を云々するのは時期尚早でしょう。それよりも今日の試合の意義は、開幕から何一つ良いことがなくて心がささくれがちだった赤者に「前向いて行こうぜ!」という勇気を与えたことに尽きると思います。これまで出番がなかった選手達が精一杯頑張って勝ち点1を掴んでくれた。その頑張りを見て、次のリーグ戦かつホームゲームでレギュラー陣もサポも頑張らんといかんやろうと、超前向きな転機を与えてくれた試合でした。
---ナバウト--李----
荻原-------マルティノス
---柴戸--直輝---
菊池-橋岡--岩波-森脇
-----福島-----
(交代)
58分 荻原→長澤
77分 李→武富
85分 柴戸→ズラタン(ナバウトは左SH、長澤がボランチに下がる)
・前述のように浦和は週末のアウェー磐田戦からスタメンを総入れ替え。柴戸・福島・橋岡は今季初出場。故障明けの森脇も試運転開始。
・フォーメーションは堀前監督の基本だった4-1-4-1ないし4-1-2-3をあっさり放棄して、堀最末期の4-4-2を継続。もっとも堀式はSHが中に絞り勝ちだったのに対して、大槻式はSHは専らサイドに張っていました。そのせいか、堀式と比べて心なしがパスレンジが広くなったように伺え、サンドチェンジも時折交えていました。
・控え組だらけかつ練習機会がほとんどないので致し方ありませんが、攻撃は超シンプル。前半は17分ナバウトからスルーパス→李裏抜け、29分ハイボールに競り勝った李→ナバウト単騎突入という場面に見られるように、2トップの片割れが中盤に下がって相方が裏を狙う場面が目立ち、かつ効果的でした。ほとんど練習をしていないのにナバウトと李のコンビネーションが時間の経過と良くなってゆく辺りは両者ともさすが。
・事前に好プレー集みたいな動画を見て、ナバウトは何の脈絡もなくミドルレンジからシュートを撃ちまくる「豪州産ポポ」じゃないかと邪推していましたが、良い意味でその予想はハズレ。ちゃんと回りが見える選手でパスも出せるし、クロスも入れられるし、守備も一切手抜きなし(ぽっかり空いたバイタルをナバウトが全速力で駆け戻って埋めてる場面も!)。しかもそれだけ走り回っても最後までバテない。これでスピードがあったら即欧州行きだわなぁ・・・良い買い物であることを予感させるに十分な出来だったと思います。
・一方久しぶりに出場のマルティノスは42分や53分に李へのクロスがわずかに合わなかった場面に見られるように良い仕事もしており、ナバウト共々右サイドからのクロスが浦和の攻め手になっていました。しかし、複数人で囲まれるとわざわざ狭いところへドリブルで仕掛けて潰され、広島のカウンターの基点になってしまう場面も少なくありませんでした。いかにマルティノスに良い形でボールを渡すかが今後の課題でしょう。この日は左サイドが攻守ともさっぱりなので、左で細かく繋いで右のマルティノスに大きく振るような形を作れなかったので、終始マルティノスが窮屈な闘いを強いられてしまいました。
・直輝は14分柴戸縦パスに反応して裏抜けした場面など、柴戸を御守り役に積極的に前に出る場面が目立ち、それはそれで浦和の攻め手を増やすためには悪くないのですが、残された柴戸だけでバイタルエリアを守るのは相当無理があり、カウンターを喰らって川辺が中へ入って来た時には目も当てられない惨状に。バイタルエリアぽっかりで28分馬渡(柴戸がクリア!)、77分フェリペ・シウバにシュートを撃たれて絶体絶命の大ピンチ。ゆえに直輝をこのポジションで使うのはビハインドで終盤を迎えた時だけかな?
・左サイドは荻原・菊池とナフサが2つ並んでいるようなものなので致し方ありませんが、菊池は高めの位置にいる馬渡30cmの出刃包丁が気になるのか自分も妙に高い位置に出てその裏を渡や川辺にやられるとか、馬渡と一対一で対峙して簡単にやられるとか、やはりSBとしては厳しく、宇賀神復帰までリーグ戦は槙野左SB転用で凌ぐしかなさそう。
・橋岡は53分カウンターを喰らってハイボールをヘッドでクリアしようとしたら空振りして工藤に入れ替わられるという切れ味鋭いコントを披露した他、概して渡のスピードに苦戦。ビルドアップが怪しいのを含めてまだまだ修行が必要かな?
・岩波は28分に前に出ては見たもののティーラインと潰せずにフリックを許し、川辺に右サイド突破を許した場面だけがヤバかっただけで、橋岡共々広島の攻撃を中で淡々と跳ね返し続けました。槙野SB転用の間はリーグ戦での出場機会が増えるでしょうから今後に期待。
・福島は53分大きく飛び出して工藤の独走を防いだ場面を筆頭に好セーブを連発して上々の浦和デビュー戦。ハイボールへの対応なり、パンチングなり改善の余地も見受けられましたが、これならしばらくルヴァン杯で起用され続けても不思議はありません。
--ティーラシン---渡---
シウバ--------川辺
---松本--森島---
川井-吉野--丹羽-馬渡
-----中林-----
(交代)
HT ティーラシン→工藤
70分 森島→野上(野上がCB、吉野がボランチに上がる)
78分 フェリペ・シウバ→稲垣
・この日の出来はどう見ても渡>>ティーラインで、なんで渡がリーグ戦にほとんど出ていないのかさっぱり判りませんでしたが、パトリックとの相性なのかな? 馬渡共々徳島からの移籍組がJFK政権下で冷や飯を食っていますが、徳島から来たのに阿波踊りの出来が拙くてJFKには耐えがたいのかも・・・
・なんでこの試合に川辺が出てくるのかも謎でしたが。
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