【観戦記】18年第17節:C大阪 1-1 浦和 ~ 内容に前進が感じられた価値あるドロー
・例年だと大阪特有の蒸し暑さに苦しめられる時節ですが、幸か不幸か今年はどこへ行ってもクソ暑くて、多少なりとも風が吹く長居スタジアムは比較的マシと思えるほど。共に前節から中3日の試合ゆえ当然ながら選手達はヘロヘロで、ATはノーガードのどつき合いも同然という心臓に悪い展開となり、一歩間違えれば勝ち点ゼロに終わってもおかしくはありませんでした。しかし、90分を通じてみれば今後に期待が持てる試合内容で、価値あるドローゲームと評して差しつかえないと思います。現時点での勝ち点の差、順位の差ほど両チームに実力差はないのが判ったと言い換えても良いでしょう。
・良かった探しをすれば
☆最悪の立ち上がりで複数失点を喫しても不思議はなかったのに、ハーフタイムを待たずに修正できたこと
☆新戦力ファブリシオが当たりっぽいこと
☆キャンプでのフィジカル強化が実ってか、ユン・ジョンファン監督に鍛えられたチームに対して走り負けないどころか後半は優勢に立ったこと
☆粘り強く闘って、セットプレーに活路を見出す、オリヴェイラ監督の夏のゲームプランがまたしても嵌ったこと
☆カウンター主体ながら流れの中からも得点の気配が漂いだしたこと
といったところでしょうか。
・とはいえ、これだけ「良かった」があったのに勝てなかった主因はやはり「あんまりな試合の入り」に求めざるを得ません。宇賀神がファーストタッチでいきなり豪快な空振りを見せた時点で嫌な予感がしましたが、開始1分でいきなり福満→エリア内で山口クロス→杉本ヘッドという決定機を作られてしまいました(ヘッドはバーの上)。さらに4分ソウザ、7分杉本とバイタルエリアから鋭いシュートを放たれ、8分にCKからとうとう失点。
・失点場面は西川のパンチングが青木に当たってしまい、そのこぼれ玉をよりによって高木に蹴りこまれるというトホホなもの。まぁパンチングを相手選手に当ててゴールされるよりはマシだと思いますが・・・古巣相手の得点時には喜びも控えめという例も少なくないのですが、高木にとって浦和時代はなかったもの同然なのか、目一杯喜びを露にされてどうもありがとうございました。
・その後もしばらく浦和は大苦戦。16分にはロングボールを胸で納めた山村がいきなり反転&遠藤を手玉にとってエリア内侵入からシュートに持ち込まれる場面も。この場面見ると遠藤はやっぱCBとしては残念やなという気が
・浦和苦戦の主因は右サイドの守備。浦和はどうも守備時5-3-2っぽい感じですが、C大阪のSH高木&SB丸橋をWB橋岡が一人で見る羽目になる場面が頻発。慌ててサイドをケアしに行くと今後はバイタルエリアががら空きになる悪循環に陥っているように見受けられました。そこで前半半ばから守備時は5-4-1っぽい形になり、武藤が下がって丸橋を見ることによってなんとか鎮火に成功。「最悪の立ち上がりで複数失点を喫しても不思議はなかったのに、ハーフタイムを待たずに修正できた」と思えたのはこの点。
・そして23分ついに浦和が反撃開始。右サイド深い位置でのボール奪取から柏木縦パス→ファブリシオ→興梠と縦に速い攻めを仕掛けましたが、ここはGKキム・ジンヒョンがセーブ。32分には槙野縦ポン→宇賀神裏抜け&シュート、34分マウリシオ縦ポン→柏木裏抜け&ヘッド、36分ファブリシオがバイタルエリアから鋭い枠内シュートとシンプルな攻めを仕掛けるもいずれも実らず。
・後半も立ち上がりに大ピンチ。攻めきれずにロングカウンターを食らい、高木→福満と大きく振られ、右SB松田クロス→ファーの杉本と絵に描いたような「浦和殺し」を繰り出されたものの、ここはGK西川がビッグセーブ。そしてC大阪の攻勢はこれを最後にATまで沙汰止みとなり、試合はほぼ浦和ペースで進みました。
・といっても相手に守備ブロックをしっかり作られてしまうと全く点が入る気がしないのは相変わらずでボール支配はせいぜい相手の体力を削るくらいの意味しかなく(それはそれで夏場は重要ですが)、浦和のチャンスはもっぱらシンプルな形から。66分に柏木縦パスを受けた橋岡がエリア内に突入する決定機があったものの、ハーフライン付近から激走した後だったためか橋岡のシュートは大きく逸れてしまいました。
・ここが勝負どころと見たのか、オリヴェイラ監督は67分宇賀神→荻原、70分柏木→阿部と相次いで投入。さらに武藤→マルティノスの交代を用意していた矢先、78分伝家の宝刀セットプレーがついに炸裂。武藤CK→ファブリシオがファーで折り返し→興梠振り向きざまシュートという形でしたが、ゾーンで守るC大阪の守備ブロックの外でファブリシオが構えていましたから、これも計算された形=練習の賜物なんでしょう。
・同点に追いついたためオリヴェイラ監督はいったん武藤→マルティノスの交代を取り消すと思ったのですが、なんとそのまま交代と100%勝ちに行く姿勢。マルティノスは左シャドーに入り、守備時は何の役にも立たないのはやむを得ないとしても攻撃時にたいして役に立たないどころか往々にしてC大阪のカウンターの基点になってしまうのは困ったもの。単純なかけっこで蛍を振り切れないのも意外でした。
・マルティノス投入の大失敗が響いてか、その後の浦和は急激に消耗してATにはCKからヨニッチヘッドがバー直撃、こぼれ玉を杉本シュートは西川が辛うじてセーブと冷や汗をかく羽目になり、なんとか敵地でドロー。
・後半浦和が押していたのはともかく、オリヴェイラ監督が試合後「後半は完全に支配することができ、もっと得点すべき内容だったと思います。押し込んでたくさんの決定機をつくりましたけれど、不運なことにそれが得点につながることはありませんでした」と残念がるほど浦和に決定機が山のようにあったとは思えず、ドローは妥当な結果でしょう。
-----興梠-----
-ファブリシオ----武藤--
宇賀神-青木-柏木-橋岡
-槙野--マウリシオ--遠藤-
-----西川-----
(得点)
78分 興梠
(交代)
67分 宇賀神→荻原
70分 柏木→阿部(故障による交代?)
78分 武藤→マルティノス
・新戦力ファブリシオがついに登場。序盤こそポジションは興梠と並ぶ2トップ、あるいは興梠と入れ替わって1トップ気味でしたが、結局シャドーっぽい位置に収まっていました。ボールキープは巧みでDFに寄せられても容易には倒れず、相手を交わしてある程度ドリブルで自分で前に運べ、鋭いミドルシュートも有している。キャンプではコンディション調整に終始したせいか、連携に難があるのは致し方ありませんが、それでも周りはちゃんと見えている様子で、少々猪突猛進系のナバウトとは好対照。連携が深まる今後が楽しみ。
・このクソ暑い中でも攻守に走り回る武藤の献身性には頭が下がりますが、なぜか好機に球離れが悪くなって強引に自分で撃ちに行こうというする場面が目立つのが気になります。今季僅か1得点止まりなのを気に病んでいるのかもしれませんが。
・前半途中から武藤がCKを蹴っていたので、柏木の交代は小破によるものでしょう。柏木不在でもセットプレーで点が取れたのも「良かった探し」に入れていいかも。
・荻原は名古屋戦に続いて1番手で途中投入。宇賀神と違って荻原は積極的に仕掛けられるので、相手DFが体力的に厳しくなる終盤での投入は理にかなっています。ただこの日の荻原は肝心なところでボールコントロールが乱れ、好機でクロスを上げられず、シュートも撃てずと「もうちょっとで最高!」どまり。それでも荻原投入に一定の効果はあり、引き続き起用が見込まれます。
・突如ベルギーのクラブへ移籍が決まった遠藤はこれが浦和でのラストゲーム。この件については稿を改めます。
---杉本--山村---
高木--------福満
---ソウザ--山口---
丸橋-木本--ヨニッチ-松田
-----ジンヒョン----
(得点)
8分 高木
(交代)
88分 福満→水沼
90+2分 木本→山下
・C大阪は鹿島のACL出場の影響で25日(水)にも試合があり、中3日&中2日の連戦。そのためか前節清水戦からスタメンを山下→木本、オスマル→ソウザ、清武→高木、水沼→福満、ヤンドンヒョン→山村と5人入れ替えを余儀なくされました。もっとも前節清水相手に0-3というまさかの大敗を喫した影響があるかもしれませんが。
・後半立ち上がりの決定機を逃した後、ずっと浦和に主導権を握られているにも拘らず選手をなかなか代えなかったのは謎。
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