・興梠が立ち上がりの決定機を決められず、その後は引いて守る相手に一方的にボールを支配しながらなかなか決定機は掴めず。点が入らないどころか30分にはカウンターからポスト直撃のシュートを浴び、長崎戦・鳥栖戦と似た、決して良いとは言い難い流れで前半終了。しかし、後半になってファブリシオが磐田ゴールをこじ開けた途端、一気にカウンター得意の浦和ペースとなり、終盤は磐田の集中も切れて怒涛の4得点&ファブリシオハットトリックのおまけつき。ついに引いた相手から勝ち点3をもぎ取った点で意義深い試合となりました。
・マウリシオ出場停止の穴は阿部、そして疲労困憊の橋岡に代えて森脇とベテラン2名が久しぶりにスタメンに名を連ねましたが、共にブランクを感じさせない上々の出来。しかもオリヴェイラ監督は先制後これまで出番が少なかった選手を積極的に起用するという「親心」すら見せました。もちろん過密日程を考慮しての試運転の意味合いもあったでしょうが、これまた荻原がいきなりアシストを記録するなど上手く嵌りました。中断明け後交代選手も含めて固定メンバーでやってきて、ともすれば淀みがちなチームを上手く再活性化できた点でも有意義な試合だったと思います。
・今春の対戦では誰が見ても「このチームはとうとうぶっ壊れた」と判る醜態を晒したにも拘らず、そこからたった4ヶ月で浦和のチーム状態は磐田に圧勝するまでに回復。そう考えると感慨深い勝利だったともいえるでしょう。春の時点では2点取られてはっきりと戦意を喪失したのが浦和だったのに、夏になると2点取られて集中を切らせてしまったのは磐田のほう。3点目、いとも簡単に槙野を見失ってしまったのがよりによってキャプテンだというのがいやはやなんとも・・・

・この試合の磐田の基本フォーメーションは3-4-2-1。名波監督は相手に応じて割と頻繁にフォーメーションを弄るタイプのようで、前節の4-1-4-1から一変させて来ましたが、名波監督の性向は広く知られていてサプライズはなし。ただレギュラーCB新里の故障離脱に伴い、今季ほとんど試合に出ていない森下を左ストッパーに起用せざるを得なかったのは痛手。わざわざミラーゲームに持ち込んだのに、両サイド、特に森下のいる磐田左サイドが終始劣勢に陥ってしまっては磐田の苦戦は免れませんでした。
・また磐田はハナからドン引きというわけではなく、最初は高めの位置に5-3-2っぽい構えを敷いていましたが、長崎のように前から積極的にプレッシャーをかけてくるわけでもないので、浦和に簡単にボールを繋がれて結果的に押し込まれて深い位置で5-4-1で耐えざるを得なかった風。磐田の立ち上がりは良くなかっただけに開始5分のカウンター(柏木縦ポン→興梠が大井を交わしてシュート)は是非とも決めて欲しかったのですが・・・
・14分の決定機は森脇をWBに起用した効果がてきめんに表れたもの。槙野→森脇と大きく振って、武藤がサイド進出&森脇が中へ入ることで磐田のマークを簡単に剥がし、森脇から逆サイドでフリーの宇賀神に振るところまでは完璧な崩し。ただ決定機で宇賀神がある意味宇賀神らしくH2Bロケットをドッカーン!!
・24分には阿部の縦パスを柏木が相手の食いつきを逆用してスルーでファブリシオに繋ぐという、これまであまり見られなかった妙技を披露。
・しかし最初の決定機を外したのが祟って、次第に浦和はただボールを支配しているだけというここ2戦と同じような形になってしまいました。今の浦和は柏木の位置がかなり前目で基本3-4-2-1というより、3-3-3-1、あるいは3-1-4-2に近い形。引いた相手に対して柏木が積極的に前に出て、時には最前線に飛び出していますが、その代償として青木の周りがスカスカになりがちで実に気持ち悪く、その弊害が前半顕著だったように思います。広範囲をカバーせざるを得ない青木は当然ながら早々にヘロヘロに。
・30分には川又のポストプレーから小川大のクロスこそ阿部がクリアしたものの、そのこぼれ玉を山田に拾われてポスト直撃のシュートを浴びる大ピンチ。続く33分には縦パスを受けた松浦にバイタルエリアで簡単に前を向かれてシュートに持ち込まれてしまいました。試合後オリヴェイラ監督が「私たちが行った修正は、中盤の枚数を増やす、ということでした。」と語っているのはその弊害を修正したものでしょう。

・決して良いとは言い難い流れを一変させたのが55分のファブリシオのゴール。青木のミドルシュートをカミンスキーが辛うじて弾き、そのこぼれ玉をファブリシオが叩き込んだものですが、これがボールの落ち際を冷静に見定めてボレーで叩き込むという絶品もの!
・ただこのゴールも元はといえば森脇→興梠と斜めにパスを入れたところから始まっていて地味に森脇効果。そのせいかどうかは知りませんが、ゴール後はファブリシオを差し置いて森脇が強引にカメラにフレームイン(笑)
・先制さえしてしまえば、あとはカウンター得意の浦和ペース。オリヴェイラ監督は先制直後、前半イエローをもらい、かつ脚の状態も万全ではなく、またおそらく連戦をも考慮して柏木を下げて故障明けの長澤を投入。長澤は柏木とは役どころが全く違い、青木とほぼ同一平面上の位置取りで相手の中盤にしつこく絡んで守備を引き締めるのに一役。
・61分の追加点は青木→武藤が森下を交わしてバイタルエリアで前を向いたところで半ば勝負ありと言っても良いでしょうが、非常に不可解なのは磐田最終ライン上でファブリシオがどフリーだったこと。森下が釣りだされた穴を上手く突かれたと言ってしまえばそれまでですが、わざわざミラーゲームに持ち込んだ名波監督の企図がこのゴールで完全に崩壊。
・ゲームプランが土崩瓦解した磐田は66分一気に2枚替え。これまで攻撃は川又頼みだったように見受けられたのに、そのキーマンを代えて大久保を入れたのは傍目には不可思議でしたが、大久保は悪い意味で大久保らしさを存分に発揮。すぐに苛立ちを露にして中盤まで下がってボールを貰いたがり、しかもボールを貰ったところで何が起こるわけでもなく、果てはファウルを受けたのなんの猿芝居を披露する始末。これじゃ「大久保厄寄せ大師」としか言いようがありません。後半の磐田の決定機は68分CK→田口ヘッドだけかな?
・浦和も73分足を攣った森脇に代えて菊池を投入したものの、磐田に合わせるかのようにミスが相次いでしばし双方グダグダに。しかし「大久保厄寄せ大師」の霊験あらたか、磐田の運動量の落ちよう、そして集中力の切れようはハンパなく、85分武藤CK→槙野ヘッドでダメ押しの3点目。槙野には大井が付いていたはずですが、槙野が動き出すと同時にボールしか見ていない大井が簡単に槙野を放してしまったのには大笑い。
・オリヴェイラ監督はさらに86分興梠に代えて荻原を投入。そしてその荻原が90分カウンターの好機で長い距離を走ってファブリシオのゴールを見事アシスト!
・浦和は、というかミシャが鋭利なカウンターを有する磐田をやや苦手としていたためか、ホーム埼スタで磐田に勝ったのはなんと2013年以来(もっとも2014~15年は磐田がJ2降格)。言い換えれば名波監督就任以降ホーム初勝利。
・「浦和相手なら楽勝だろう!」と意気込んでか、お暑い中ビジターが大勢押しかけて来ましたが、結果は彼らが思ってもみなかったであろう惨敗。勝ち点3に加えてチケットお買い上げ誠にありがとうございました。
・また平日開催とはいえお盆休みを取っている方が多いためか、埼スタは子供連れが目立ち、先述のようにビジターが多かったことも相まって観客は平日開催にしてはかなり多めの34000人弱。勝ち味は少々遅くなりましたが、浦和のゴールがこれだけてんこ盛りなら子供たちも「また埼スタに来たい!」と思ってくれたかな??

-----興梠-----
-ファブリシオ----武藤--
宇賀神-青木-柏木-森脇
-槙野--阿部--岩波-
-----西川-----
(得点)
55分 ファブリシオ
61分 ファブリシオ
85分 槙野
90分 ファブリシオ
(交代)
59分 柏木→長澤
73分 森脇→菊池
86分 興梠→荻原(ファブリシオが1トップへ)
・MOMは文句なくハットトリックのファブリシオ。ファブリシオ本人は典型的なストライカーではなくて、どちらかといえばセカンドタイプっぽいのですが、シュート精度というかシュートを撃つ瞬間の落ち着きはJリーグレベルから突き抜けていました。1点目のボレーもさることながら、2点目は小さくフェイントを入れてGKをコケさしてますし、3点目はAT突入直前のしんどい時間帯なのに狭いシュートコースを正確にぶち抜いて見せました。
・影の主役は森脇。今年は怪我勝ちでコンディションがなかなか上がらず、残念ながら90分持ちませんでしたが、やはり攻撃能力は橋岡と段違い。森脇が独力でサイドを突破こそしないものの、クロスあり、縦パスあり、カットインあり、そして武藤と森脇がポジションを相互に入れ替られるのが何よりでかい。特に武藤がサイドに出て、森脇が中へ入って縦に走るのがめっちゃ効きました。相手がサイドに寄せてきたら、一気に逆サイドの宇賀神へ展開。ああ、なんてミシャっぽい攻撃!!CBが上がってこないので「それなりにリスクコントロールされているミシャ式」という夢物語が現実に!!
・2アシストの武藤。今年は武藤が点を取る形になっておらず、それどころかファブリシオの守備負担まで武藤が背負っている恰好だから「がってん寿司」はちょっとがっかりかもし・・・・数字にはなりにくいが、武藤が攻守にわたってめっちゃ活躍しているのは一目瞭然です。
・監督の親心でほんのちょっとだけ出場時間もらって、その短い出場時間の中で一発でほぼ100点満点の結果を出した荻原。若手、しかも、前目の選手に必要な何かを間違いなく荻原は持っています。荻原本人はやっぱり自分で撃ちたかったようですが、DF二人に寄せられていましたから、どフリーのファブリシオに出すのが正解。武藤同様、自分の得点ではなくてもいい仕事をしたことは万人が認めているはず。

-----川又-----
--山田----松浦--
小川大-田口-山本-櫻内
-森下--大井--高橋-
-----カミンスキー----
(交代)
66分 山本→上原
66分 川又→大久保
81分 小川大→荒木
・今年の磐田はとにかく主力に怪我人が続出。アダイウトン、ムサエフ、中村と主力が長期離脱中な上に、新里、宮崎、小川航も故障。特にアダイウトンを失った影響がでかいのか、かつてのよな怒涛の前プレ&ショートカウンターの切れ味がすっかり失われてしまったように見受けられました。