浦和2018年総括(3) ~ 堀体制の負の遺産に苦しんだオリヴェイラ監督
・4/6に山道本部長に代わって強化部門の事実上のトップに立った中村GMは早速大槻暫定監督の後任探しに着手し、就任後ひと月も経たないうちにオリヴェイラ氏の招聘に成功。しかも第10節アウェー柏戦(4/25)から指揮を執ることが決定。5月下旬のロシアW杯による中断期間突入まで大槻暫定監督が指揮を執ると予想していた向きが多かっただけに、この中村GMの荒業には驚きました。
・オリヴェイラ氏は2007~09年にかけて鹿島で3連覇を達成するなどJリーグでの実績は申し分ありません。ただ残念ながらブラジルに戻ってからのオリヴェイラ氏の成績は芳しくなく、「これじゃセホーンと大差ないんじゃね?」と訝しくなるくらい短期間でクラブを渡り歩く羽目になっていました。また鹿島での大成功も何分10年近く前の話。さらに言えば最近ブラジル人監督はJリーグでも振るいません。
・中村GMは「タイトル獲得経験があること」「日本をよく知っていること」を条件に監督を探した結果オリヴェイラ氏に白羽の矢を立てたようですが、オリヴェイラ監督への個人的な信頼は就任当初「全幅の」とまでは言い切れず、「ギドとか松木とかを連れてこられるよりははるかにマシだろう」と言った程度なのが正直なところでした。
・ただ良い意味で予想外だったのはオリヴェイラ監督がかなり柔軟な思考の持ち主だったこと。オリヴェイラ監督は就任早々の記者会見で「少なくともワールドカップの中断までは、今のやり方に継続性を持たせることが重要」、具体的には「3バックで今までプレーしてきたこの形をまずは継続していきたい」と明言しました。同時に4バックが好みなことも明かしましたが、準備時間もないのに突然自分の好みの形に選手を無理やり嵌めるようなアホなことはしませんでした。
・具体的には監督就任直後のアウェー柏戦では前節札幌戦同様3-4-2-1、第12節アウェー川崎戦以降は3-3-2-2と推移したもののリーグ戦では終始3バックを継続しました。
・しかし、オリヴェイラ監督を悩ませることになったのは堀体制の「負の遺産」。堀監督の冬季キャンプがよほど温かったのか、浦和が後半急激に失速するのは勝っていた大槻体制下ですら顕著で、中断期間まで連戦続きゆえオリヴェイラ監督にはどうすることも出来ませんでした。
・また3バックを採用してとりあえず守備を安定させることに成功したとはいえ、堀体制下でWBが出来る人材を大量に放出したため、WB(特に右)の人材難に直面。大槻暫定監督が本職CBの橋岡を右WBに転用し、オリヴェイラ監督もその策をそのまま受け継ぎましたが、橋岡は如何せんWBとしては攻撃面に難があり、基本フォーメーションと陣容のミスマッチにオリヴェイラ監督は最後まで苦しむことになります。
・さらに攻撃面の火力不足・迫力不足も深刻。大槻体制下以降カウンターが上手く嵌まった時には点が取れ、特にアウェー川崎戦ではカウンターが嵌まって敵地で強敵を破る快挙を成し遂げたものの、持たされる展開になると辛い。3バックに戻して「思い出のミシャ式」にすがろうとしてもその残り香は日に日に薄れ、「惜しい!!」だらけで点が入らない試合が続きました。おまけに火力を補ってくれるはずのナバウトが川崎GKの蛮行で壊される不運にも見舞われました。
・従って中断期間までのオリヴェイラ監督はとにかく負けないこと、勝ち点を相手に与えないことを信条にしぶとく闘い、中断期間後の反撃に賭けていたような塩梅だったと思います。必然的に試合はとにかくしょっぱい。勝ち点は伸びず、勝ち点17の14位で中断期間突入。でもそうするしかなかった。そしてそれを可能にしたのが大槻体制下の「勝ち点10」でした。
・なお大槻暫定監督同様、オリヴェイラ監督もモチベーターとしての奇才の持ち主のようで、熱い言葉を次から次へと繰り出して来ました。選手はどうだか判りませんが、ファン・サポーターの心を掴むのは「前鹿島の監督」という拭い難い暗い過去を背負っている割には早かったと思います。これも塩漬けの日々を我慢するのに一役買ったと思います。
(続く)
| 固定リンク