【観戦記】XEROX杯:川崎 1-0 浦和 ~ 仕上がり状態の差が如実に出たスコア以上の完敗
・シュート数12対1というスタッツが示す通り、スコア以上に試合内容に大差がありました。浦和はまさに手も足も出なかった完敗。53000人弱もの大入りとなったこともあって、AT突入を待たずに家路につく観客が目立ちましたが、それもやむを得ないと思えるほど先制された浦和が同点に追いつく可能性は微塵も感じられませんでした。
・ただ試合内容に大差があったのは単純に両者の実力差ではなく、そもそも両者にこの試合の位置づけ、さらにいえばこの試合に至るまでの取り組み姿勢、トレーニングプロセスにかなりの差があり、それがそのまんま試合内容の差となって表れただけと見るのがより妥当でしょう。
・浦和は沖縄キャンプをほぼ体力づくりに費やして練習試合はわずか1試合のみ。ゆえにこの試合はぶっつけ本番も同然。一方川崎はこれまでカップ戦に実績がないことを気に病んでか、「一発勝負に勝つ」ことを重要視してこの試合までに練習試合を積み重ねてきたようです。
・おまけに川崎は完全無欠のフルメンバーだったのに対し、浦和はファブリシオが依然長期離脱中の上に武藤&青木が故障。特に青木の穴埋めに苦労している状態。
・浦和の攻撃は全く体をなさず、セットプレーに全てを賭けるしかない状態でしたが、そのセットプレーですらこんな試合で手の内を明かすわけにはいかないという、二重三重に縛りがあるような試合でした。
・従って試合内容にウノゼロ以上の大差が生じたのは当たり前で、オリヴェイラ監督も敗戦自体は特に気に病んではいないでしょう。むしろ急仕上げ気味の川崎とほぼぶっつけ本番の浦和が闘ってもウノゼロにしかならなかったと前向きに考えているかもしれません。
・ただオリヴェイラ監督も認めるように昨年ダブルを達成した川崎戦を再現するには武藤&青木の不在はかなりでかく、その穴を埋める新戦力のフィットにはまだまだ時間がかかる感じだったのも明らか。連携難からカウンターを上手く発動できずに逆にカウンターを食らって負けたならともかく、結局のところ守備ブロックをきっちり崩されての敗戦だったのを重く受け止めているかもしれません。
・両チームの差が最も顕著に表れたと感じたのはボールを失ってからの切り替えの速さ。ボールを失った後の川崎のボール奪回へ向けての切り替えの速さ&迫力はとにかく凄まじく、試合勘のない浦和はそれを交わしきれずに試合を終えた印象が強く残りました。よって浦和の攻撃はほとんど形にならず、ナバウト投入後シンプルな裏狙いを試みるもこれまた不発。
・川崎は浦和WBにボールが入った時点で圧力を強めて、苦しい体勢でパス出しを余儀なくされたところでボールを刈り取る狙いをもっていたようで、25分橋岡→長澤ロスト、77分山中→柏木ロストと同じような形でボールを奪って決定機に結びつけています。
・この川崎の策によってモロに標的となった感のあったのが橋岡。右サイドでボールを失って家長にボールが渡ってしまうとなかなかボールを奪い返せず、かといって無理に奪いにいくと自陣深い位置でファウルを犯すのがオチ。
・また新外国人CFレアンドロ・ダミアンの出来は圧巻でした。猛然と浦和最終ライン&GKにプレッシャーをかけるわ、足元への楔のパスは確実に収めるわ、空中戦に強いわ、3人に囲まれてもなんら苦にせずパスを出せるわ、おまけに決定機を一発で決めるわと、どう見てもJリーグでは突き抜けているレベル。ただ勢い余って相手を怪我させかねないプレーも散見され、そんなところだけ早々と川崎風味なのが残念です。
・52分の失点は家長どフリーでふんわりクロス→ボックス内でダミアンどフリーで折り返し→中村はボールコントロールできなかったもののマウリシオのクリアが運悪く橋岡に当たる→こぼれ玉をダミアン!! という格好。自陣深い位置で家長どフリーというのもあんまりなら、ボックス内で槙野がダミアンを見失っているというのもあんまり。失点場面には直接関係ありませんが、マウリシオがダミアンに簡単にポストプレーやらせすぎという気も少々。
・今シーズン序盤は如何せん試合勘のなさ&連携難ゆえにオリヴェイラ監督就任当初と似た「負けにくい試合」を志向せざるを得ないでしょう。セットプレー一発で勝ち点をもぎ取りに行く堅い試合の連続になろうかと思います。ゼロックス杯の様子を見る限り、アンカー青木復帰までは3-3-2-2に拘らず、2ボランチの3-4-2-1に戻すのが「負けない」ためには得策に思えてなりません。どちらにしてもたいして点が入る気がしないでしょうが、エヴェルトンのアンカーは現状ちょっと心もとない印象を受けましたので。
---興梠--杉本---
---柏木--長澤---
宇賀神--エヴェル---橋岡
-槙野--マウリシオ--岩波-
-----西川-----
(交代)
HT エヴェルトン→阿部
HT 杉本→ナバウト
66分 長澤→山中(山中が左WB、宇賀神が右WBへ)
66分 橋岡→柴戸(柴戸がIH)
81分 柏木→マルティノス
・選手交代人数5名。各チーム交代数3回まで(ハーフタイム除く)という練習試合っぽいレギュレーションなので、オリヴェイラ監督も割り切って試合の流れとは何の関係もなく、予定通り的かつお試し風味の強い選手交代を連発。
・この試合でもっとも可能性を感じたのは最後に投入されたマルティノス。昨年の惨状からすればベンチ入りしただけでも驚きで、かつ柏木に代わってIHに投入されたのも驚きでしたが、山中との連携による左サイド攻撃には刮目すべきものがありました。山中が中へ、マルティノスが外に出てサイドを崩す場面もあり、ひょっとすると山中が1年遅れでマルティノスの取り扱い説明書をもって現れたのかも。
・またあえて「良かった探し」をすれば、柴戸が投入直後に強烈にプレッシャーをかけて谷口のイエローカードを誘発したのも良かった。ただ柴戸もアンカーではなくIHのほうが適性ありげ、端的には長澤の代替っぽくて青木の代わりにはなりそうにないのが悩ましい。
・槙野&ナバウトとアジアカップ組はやはりコンディションが良くなさそう。槙野は猛追してくるダミアンを持て余し気味で、ボールとは無関係な位置で進路妨害によるつまらないイエローをもらう始末。
-----ダミアン-----
家長---中村---小林
---大島--守田---
車屋-谷口-奈良-マギーニョ
-----ソンリョン-----
(得点)
52分 ダミアン
(交代)
70分 中村→齋藤
70分 マギーニョ→馬渡
79分 ダミアン→知念
79分 守田→田中
88分 小林→阿部
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