【観戦記】ACL2019・GS第6節:浦和 3-0 北京 ~ THIS IS URAWA !!
・勝てば文句なく、スコアレスドローでもグループステージ突破が決まる一戦とはいえ、相手はアウェーゲームでボコボコにされかけた上にこちらはシュートを1本も撃てなかったほどの強敵。万が一先制点を許すようなことがあれば、ただでさえ得点力に乏しい浦和は2点以上が必要となっていきなり窮地に立たされるという難しい立場ゆえ、試合の入り方及びその後の試合運びが終始気になって仕方ありませんでしたが、終わってみればケチのつけようがないパーフェクトゲームでした。
・この3試合クソまみれの試合内容で3連敗を喫しただけでなく、そもそもホームゲームでほとんど勝てないという今年の惨状からすれば俄かには信じ難いほどの素晴らしい試合内容で見事北京国安を粉砕し、オリヴェイラ監督にとって最低限のタスクというべきグループステージ突破を果たしました。
・AFCのサイトによれば、ボールは7割弱も北京に支配されたもののシュート数は12本ずつと互角。ただその内容に大差があって、北京は枠内シュートを2本しか撃てておらず(浦和は6)、おまけに半分はシュートブロックされているので、北京はボールを支配していた割にはたいして決定機が作れていなかったのはスタッツからも明らか。セットプレーも一回危ないのがあっただけで、空中戦で優勢だったのも浦和完勝の一因でしょう。クリアの多さが浦和の「ご安全に!!」な姿勢を物語っていますが(苦笑)
・それにしてもオリヴェイラ監督はここ一番という試合に本当に強い。湘南戦を半ば捨てたと言われても仕方ないほどの大胆なターンオーバーを仕掛けて、しかもよりによって浦和を形作る分厚い「暗黒史」に刻まれそうな内容で大逆転負け。そうまでして臨んだこの一戦でグループステージ突破に失敗しようものなら、即座にオリヴェイラ監督の首が吹き飛んでもなんらおかしくはなかったでしょう(即刻クビが正しいとは全く思えませんが)。
・ところがあのターンオーバーを経た主力選手達は見違えるように動きが良くなっており、あの賭けが大成功だったことを実証。おまけに柏木負傷退場というアクシデントすら代わって投入された長澤が大活躍という形で良い目に出る辺りは賭けに強い者、勝負運を持っている者なればこそ。
・それにしても無事グループステージ突破を決めただけでなく、長澤投入後のメンバー及びその闘い方が今後の浦和のベース、あるいはあるべき姿になりそうな、そんな期待が持てるナイスゲームでした。豊田で惨敗した直後は「この世の終わり」みたいな気がしたばかりですが、そんな気分の浮き沈みの激しさもまたフットボール観戦を趣味とするものの宿命みたいなもんでしょう(苦笑)。
・逆に北京のシュミット監督にしてみれば、浦和がホームでこんなに変貌するとは夢にも思わなかったでしょうなぁ。分析担当が今年の浦和の試合をいくら見返しても塩試合だらけで、良いところを探すほうが難しい。ゆえにある意味対策が立てづらく、自然体でいっても簡単に押し切れると思い込んだのかもしれません。でもここは「魔境埼スタ」でした。
・浦和はごっそりメンバーを入れ替えた湘南戦を挟んで、小破していたマウリシオも含めて主力が続々とスタメン復帰していつものメンバー、いつもの布陣に。湘南戦から続けて出場したのは西川・鈴木・柏木の3名のみ。
・一方北京は前回対戦時にスタメンだったDFリー・レイが出場停止の他、同じくスタメンだったMFピャオ・チェン、MFチャン・シーチェが不在。
・前述のように浦和は「スコアレスドローはOKだが、北京に先制されると一気に苦しくなる」という難しい立場だったので、いつも通りに「塩試合志向」でゲームに入るものと予想しましたが、意外や意外、浦和の試合の入り方は非常に積極的で、開始2分にして早くも山中のクロスのこぼれ玉を拾った森脇が自らカットイン&際どいシュート!! 早くも前回対戦時のシュート数を抜きましたよ、奥さん!!
・ところが、好事魔多しというかなんというか、試合開始直後に柏木と6番(チー・ジョングオ)の膝どうしがぶつかって痛むアクシデントが発生。共にしばらくプレーしていましたが、結局柏木は13分に長澤と交代、6番も18分に9番(ジャン・ユンニン)と交代せざるを得なくなり、そして終わってみればこの「リアル両者痛み分け」がこの試合の行方を大きく左右することになりました。
・最初に大きく動いたのは北京。当初の布陣は6番アンカー、21番(ビエラ)トップ下の4-3-1-2でしたが、6番を下げて9番をCFに据えた4-2-1-3に布陣を変更。これにより中盤の深い位置にいる5番(アウグスト)はもちろん、下がり目からのビエラから前線への配球が容易になり、浦和は30分くらいまで自陣に釘付け状態に陥ってしまいました。
・22分には北京CKからの流れでアウグストからクロス→17番(バカンブ)ヘッド(幸い西川の正面)、そして23分にはビエラのスルーパスでバカンプの裏抜けを許すという最もやられてはいけない形で大ピンチを迎えましたが、ここは前に出た西川が辛うじて左足に当ててセーブ。これが決まっていれば浦和はいきなり窮地に追い込まれていただけに、価値あるセーブでした。しかし、33分にはアウグスト一人にスカスカの中盤を蹂躙された挙句にシュートまで持って行かれるトホホな場面も。
・浦和はいつもの5-4-1の守備陣形ながら最終ラインを高い位置に保とうという意図は伺えたものの、その割にはアウグストやビエラを掴まえているとは言い難く、またなんとか最終ラインで北京の攻勢を防いでも単に蹴りだすだけに終わってしまい、セカンドボールも拾えないという厳しい時間帯が続いていただけに、先制したのが浦和だったというのはこれまた超意外。
・34分青木の縦パスをバイタルエリアでどフリーで受けた武藤が易々と前を向いて、アーク付近にいた長澤にパス。長澤は3人くらいに囲まれながらもボールを失わずに単騎ボックス内に突入してゴール!! 今年の浦和には珍しい中央突破ですが、北京のあんまりなバイタルエリアの守備を見るともともと主力クラスのMFを2人欠いている上に、6番を失った影響で中盤の強度が失われていたのかもしれません。
・ただ浦和は先制したところでたいした意味はない。北京に1点取られたら苦しい状況に追い込まれることに変わりない。否が応でもあの苦い思い出がフラッシュバックする形となり、ある意味より一層試合運びが難しくなった気さえしましたが、それだけに41分の追加点は実に有意義でした。
・自陣でのこぼれ玉、アウグストとの競り合いに勝ち、左サイドで体勢を立て直して独走する長澤(アウグスト追わないんかwww)。カットインした長澤に北京DF陣がゾロゾロ引き付けられてしまい(どこの浦和やねんw)、なんと武藤がどフリーに。武藤のシュートはDFに当たって軌道が変わったのも幸いしてゴーーーール!! この追加点で浦和は「1点取られたら終わり」というプレッシャーから解放され、逆に北京は残り50分程度で2点取らないといけないという窮地に立たされました。
・後半になってもなおも浦和攻勢。47分には山中クロス→武藤ヘッドの決定機(但しGK正面)。しかし、55分に長い距離を走ったのが祟ったか、その後山中の消耗が顕著になり、浦和がカウンターで反撃に転じようとも山中がブレーキになってしまう場面が目立ち始めて試合はややオープンな展開に。
・ところが、ここで頑張ったのが浦和の両FWであり両IHの守備。あれで青木以下の守備陣は随分助けられたと思います。北京は相変わらずアウグストやビエラが盛んに縦パスを入れてくるものの、前半からよりも明らかに浦和攻撃陣のプレスバックが強化されて両選手に自由を与えず。
・しかも3トップにボールが入ったところで、そこから先が恐ろしいほどなにもない。裏へ抜けようとしても鈴木や槙野が付いてくる。たまにバカンブにボールが渡ってもシュートは明後日の方向へ。ピッチ上でアウグストがいら立ちを顕わにする場面も見られはじめ、試合は完全に浦和ペースに。それにしても北京の3トップの使えないこと(笑) バカンブに95億円ってどんだけ金余ってんねん・・・
・前回対戦時にはスピードがある右SBの38番(ワン・ガン)に宇賀神がボコボコにされましたが、この試合では全く見せ場なし。山中が頑張ってこのサイドで主導権を握り、また山中がばてた後も前でボールが収まらないのでワン・ガンは上がるに上がれなかったのかもしれません。あるいは3トップにした結果、ワン・ガンが上がるスペースを自分で消してしまったのかもしれませんが。
・浦和は焦る北京に対してリスクをかけず、ボールを蹴りだして時間を進めながらも適宜カウンターで反撃。山中の消耗でなかなか決定機が作れませんでしたが、73分森脇クロス→興梠ヘッドの決定機(わずかに枠外)があり、さらに81分西川ゴールキックから興梠→武藤→山中→武藤→興梠と楽々繋がり、興梠のゴールが決まって事実上勝負あり。この時間帯になると北京はもう守備に戻る体力も気力も失われていたのか、笑っちゃうほど中盤がスカスカでした。
・終わってしまえば北京の歯応えの無さにはびっくり。中国スーパーリーグで10戦全勝、しかも総失点わずか3だそうですが、どう見ても上海上港2017とか、広州恒大2013と比べると格段に弱い。広島に負ける今の広州恒大のテイタラクを見ると、ひょっとして中国スーパーリーグのレベルってガタ落ちしているのではないかという気もチラホラ。
・ただ滅茶苦茶強かった上港2017&広州恒大2013ですら埼スタでは浦和に負けているというのがいかにもACL。だからこそアウェーでは「良い試合だったが勝ち点ゼロに終わった」よりは「試合内容ではクソミソにやられたが勝ち点1をもぎ取った」ほうがはるかにマシなことを改めて実感した今年のグループステージでした。
---興梠--武藤---
---柏木--エヴェル---
山中---青木---森脇
-槙野--マウリシオ--鈴木-
-----西川-----
(得点)
34分 長澤
41分 武藤
81分 興梠
(交代)
13分 柏木→長澤(負傷による交代)
87分 興梠→ファブリシオ
90+2分 武藤→汰木
・青島ビール賞は文句なしに長澤。柏木の故障に伴う、何の準備もしていない状態からの急遽登板でしたが、攻守両面で大活躍。もっとも次第に存在感が増し、チームに馴染んでゆくエヴェルトンの相方としてはオリヴェイラ監督以外誰もがエヴェルトンと役割が被りがちな柏木より耐久力&推進力がある長澤のほうが上だろうと思っていただけに、長澤の活躍は世評の正しさを裏付けたに過ぎず、オリヴェイラ監督もちょっと立場がないというかなんというか。
・そしてオリヴェイラ監督流にやり辛さを感じていることを公言してしまった柏木のメンタルやいかに・・・幸い大怪我ではなさそうですが。
・くねくねエヴェルトンも日に日に良い感じ。長澤がガツンと当たって失わない系なら、エヴェルトンは柔よく剛を制す系の失わなさ。ここで変にボールを失わないから青木以下が随分楽に。
・「魔境埼スタ」にやって来たのは22,885人。シーズン序盤の最大の山場であり、「狂気の25000」は間違いないと思い込んでいただけに意外に少な目でした。前売り券の売れ行きは約26000枚という報道もあっただけに、シーチケ組のノーショウが相当あった模様。昼過ぎまで暴風雨でしたし、アクセスの良くない埼スタゆえ19時キックオフがきついのかもしれません。あるいはここ3試合のアレっぷりが影響したのかも。しかし、ファン・サポーターは少な目でも狂乱に十分値する試合内容でした。
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