何度も繰り返される愚行 ~ THIS IS URAWA!!
・5月28日に突如浦和フロントからオズワルド・オリヴェイラ監督との契約解除、同時に大槻毅氏のトップチーム監督就任が公表されました。またその翌日にはトップチームの大幅な刷新、さらにこれまた唐突にフェイエノールトとの戦略的パートナーシップの覚書締結も公表されました。
・「せっせと落とし穴を掘って、自ら進んでハマりに行く」のが浦和の歴史。複数の選択肢がある際には必ずといっていいほど最もダメそうなものを選ぶのが浦和。ババ掴みの天才。今回もその天賦の才能を遺憾なく発揮し、腐臭を放つ「秘伝のタレ」を性懲りもなくかき回したようで、第一報が飛び込んできた際には腹立たしさのあまりつい深酒してしまいました。
・若干日が経って多少メンタルが落ち着いたところで、今回の監督人事について思うところを書き連ねておきます。なおこういう事件のあった後には内部事情に通じているかのような怪しげな記事がわらわら出てきますが、その辺は極力無視してこの場ではクラブから公表されている記事・コメントについてのみ言及します。
(1)オリヴェイラ監督との契約解除自体は妥当だが、予想以上に早かった
・広島戦の観戦記に「オリヴェイラ流の終焉を感じさせる惨敗」というタイトルを付した通り、オリヴェイラ監督の更迭自体はやむを得ないと思います。フロントもあの広島戦の惨敗を見て監督更迭に動いたようです。
・「暑くなればキャンプで鍛えに鍛えたフィジカルの強さがモノを言うぞ!!」と信じていたのに、いつまで経ってもそんな気配は微塵も感じられないどころかとうとう走り負ける始末。守備重視、相手の良さを消してロースコアの闘いに持ち込む手筈だったのに、ボールを動かすのが上手い相手に惨敗を繰り返し、相手の良さは消えるどころか全開に。一方自分の型はないに等しいので攻撃は全く持ってお粗末の限り。しかもホームでリーグ戦の戦績が極端に悪い(1勝1分5敗)となると、そりゃクビも飛ぶだろうと思います。
・また最も時間的余裕があるキャンプで4バック導入を見送ったのに、3月末になって突如4バックを試行。それも横浜Mに粉砕されたのを契機にわずか2試合でお蔵入りと中期的なチーム作りで迷走。さらにオリヴェイラ監督の十八番だった「選手交代による局面打開」も今年は湘南戦を典型例にむしろ傷口を広げるだけに終わるケースが目立ちました。
・なぜ昨年はチーム再建に成功してリーグ戦ではACL圏入りが手に届くところまで勝ち点を積み上げ、さらには天皇杯優勝という形でACL出場権獲得という公約を果たしたオリヴェイラ監督が急にここまでダメになったのか不思議でなりません。「モチベーターとしては超一流だが、戦術家ではないので即効性がある反面賞味期限は短い」という解釈も出来ますし、鹿島で3年持ったオリヴェイラ流がもはや時代遅れで、浦和では1年も持たなかったのかもしれません。
・従ってオリヴェイラ監督更迭自体は妥当で、最も長くて今年限り、最も早くて川崎戦の後の代表ウィーク中に更迭、個人的にはACL・ラウンド16敗退を契機に7月に監督を代えるシナリオだろうと思いましたが、中村GMの決断=社長の承認はびっくりするほど早くてなんと川崎戦を待たずに監督交代。成績は低迷していますが残留争いに片足突っ込んでいるわけでもないという状況なのに、なんでこんなに急いだのでしょうか??
(2)後任がなぜ大槻氏なのか? = 綿々と受け継がれる「Mr.ノーアイデア」の系譜
・個人的には川崎戦後といった超早期の監督交代シナリオの場合は昨年同様何がしか暫定監督を立て、7月くらいに新監督を招聘するのだろうと考えていました。ところが、いきなりオリヴェイラ監督を更迭した後に大槻氏を再招聘、しかも今回は「暫定」ではなく正式の監督として招聘するとの発表には二重、三重の意味で驚愕しました。
・大槻氏は昨年暫定監督としてケチのつけようがない結果を残しましたが、それはあくまでも超短期の結果であり、また暫定だと判っているからこそ出来たことも多分にあっただろうと思われ、監督としての実績はほぼ未知数といっていいでしょう。オリヴェイラ監督招聘時に中村GMは「タイトル獲得経験があること」を招聘理由に掲げていたのに、なぜこんなにブレてしまったのでしょう??
・また大槻氏は今年3月にヘッドコーチから外れて「海外クラブとのネットワーク構築推進プロジェクト」(本件は後述します)の担当になったばかり。その大槻氏を3ヶ月も経たないうちに呼び戻して監督に据えるとは尋常な話ではありません。
・そうまでして中村GMが大槻氏に固執するのはなぜなのか? 中村GMは監督選任を真面目にやらず、なんとなく楽そうな道を歩んでいるだけではないのか?
・前任の山道強化部長はとにかく監督選任について見識がないというか「Mr.ノーアイデア」。ミシャ長期政権後の監督について何も考えておらず、いざミシャがやばくなるといきなり堀コーチを監督に引っ張り出し、その堀監督もやばくなると思考停止に陥るという大失態を重ねてとうとう事実上更迭されましたが、その後任=中村GMも結局のところ同じ穴の狢だったようで。
・そして大槻新監督が経験の浅さを露呈してダメだと判ったら、堀監督同様シーズン途中で弊履の如く捨ててしまうのだろうなぁ・・・
・浦和は強化トップにまともな人材を据えない限りどうにもならない。今回の件で、その思いを新たにしました。
(3)なぜ無理な目標を掲げ続けるのか?
・監督としての手腕は未知数に近い人物を招聘したにも関わらず、ACL&Jリーグの2冠という目標は下ろさない。それどころか大槻新監督には「世代交代」というタスクまで押し付けたとの話には開いた口が塞がりませんでした。
・国内では無敵、リーグ優勝は当たり前というクラブがACLとの2冠を狙うのは十分理解できます。しかし、リーグ優勝はたった一回で、優勝争いの常連というわけでもないレベルのクラブが「2冠」という目標を掲げるなんておこがましいにも程がありましょう。しかもその過大な目標と現実のギャップを埋めるために超大物監督を呼び、超大物選手を複数人補強するわけでもない。
・しかも無理を承知で「2冠」を目指しにいったら、「そこにフォーカスを当てさせすぎた」「実際にフォーカスしたところがそこの優勝、優勝というところが強すぎた」とフロントに不満を持たれてクビになる。そんなアホな話があるか!!
・ACL優勝というい輝かしい実績を残しながらもJリーグでは明らかに限界があった堀監督をなぜか続投させた件に象徴させるように、浦和がACLを重視していることがクラブの方向性をいろいろと歪めているような気がしてなりません。某クラブのようにあからさまにACLに手を抜けとは言いませんが・・・
(4)世代交代を監督に押し付けるのは無理筋では?
・なぜか大槻新監督に押し付けられた「世代交代」というタスク。「世代交代しながら勝つ」なんて「言うは易く行うは難し」の典型でしょう。優勝を義務付けられたトップチームの監督は勝てないと当然クビになりますから勝負を度外視してまで若手を使うなんてことは難しく、せいぜい実力が同じなら若いほうを使うくらいのことしかできません。
・逆に世代交代を重視するなら「今年は賞金圏くらいで可」みたいに目標を下げてシーズン序盤は多少負けが混んでも経験値を上げるための勉強代として大目に見るくらいの心積もりでいるべきでしょう。ところが、浦和フロントは「世代交代しながら勝つ」なんてこれまた無理難題をふっかける。
・そもそも世代交代しようにも、手元にこれといった若手選手がいないとどうにもなりません。ミシャ時代に世代交代を意識して20代半ばの選手を集めたはずですが、それぞれの理由で悉くいなくなってしまいました。今年世代交代がなかなか進まなかったのは別にオリヴェイラ監督が使う選手を固定したからではなく、そもそもベテランを脅かすような中堅・若手選手が少なかっただけの話で、むしろ選手編成の歪さ=フロントの責任が大なのではないか? 監督選任同様、ここでも中村GMの「サボリ」が見え隠れします。
(5)アカデミーをどうするつもりなのか?
・大槻新監督は組閣にあたって、ユースから3名(上野氏・工藤氏・末藤氏)もぶっこ抜き。上野氏は前回暫定監督就任時にもユースコーチからトップチームコーチに引き上げられ、オリヴェイラ監督就任後また育成ダイレクター&ユース監督に戻った経緯がありますが、今回はアカデミーの体制が未定のまま。
・新コーチ陣に名前がない池田氏がアカデミーに回るものと推察されますが、将来の浦和を支える基盤を自分でせっせと掘り崩しておきながら、世代交代もへったくれもなかろうに・・・
(6)海外クラブとのネットワーク構築推進プロジェクトの謎
・今年3月8日に「海外クラブの知見蓄積とネットワークづくり、指導現場における協力関係づくり」を目的とする「海外クラブとのネットワーク構築推進プロジェクト」なるものが突然公表され、その担当者としてなぜかヘッドコーチを務めていた大槻氏が抜擢されたのには心底驚きました。
・大槻氏は一貫して国内の現場畑の人物で、ビジネスや留学といった個人的な経験から海外に豊富な人脈を持っていそうな方ではないのにこのようなプロジェクトを任せたことだけでも十分驚きですが、それ以上に驚きなのはシーズン開幕してまもない時期での任命だったこと。こんな中長期的な視野を持ったプロジェクトをこんな妙な時期に始めますかね。フツー・・・大槻氏とオリヴェイラ監督の折り合いが悪くてやむを得ず、といった匂いがプンプンします。
・唐突に始まっただけに、今般の大槻氏の監督再招聘と共に立ち消えとなると思われたこのプロジェクトですが、なんと「フェイエノールトとの戦略的パートナーシップの覚書締結」という形で結実。しかも大槻氏の監督再招聘の翌日に公表されるという手回しの良さ。オリヴェイラ監督更迭がやたら早く決まったこと、中村GMには大槻氏の再招聘しか念頭になかったこと、そして大槻氏召喚前にフェイエノールトとの一件がまとまっていたことと3点セットで胡散臭さ満点です。
・しかも「海外クラブの知見蓄積とネットワークづくり」とバルセロナ&神戸ないしCFG&横浜Mみたいな関係を想像させるようなどでかいお題目を掲げた割には、相手が近年CLどころかELでもさしたる成績を残していないフェイエノールトだと言うのはなぁ・・・「思てたんとちゃう!!!」感がハンパありません。実際「パートナーシップ概要」を見る限り、中長期的な関係でもなんでもなさそうですし。正直、大槻氏を手ぶらで再招聘するのは大槻氏のキャリアに泥を塗るようなものなので、誰かがチャチャとまとめた感じがしてなりません。
・さらに言えばオリヴェイラ監督更迭&大槻氏再招聘は広島戦よりもかなり早い時期に決まっていて、再招聘を前にプロジェクトの成果づくりを急いだような気さえします。実にサラリーマン的。実に三菱重工。そりゃ船は沈み、飛行機は飛ばないはずですわ・・・
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