【TV観戦記】ACL2019・ラウンド16第2戦:蔚山 0-3 浦和 ~ 完璧じゃないか、我が軍は。令和の虎退治!!
・第1戦のホームゲームを1-2と、1点差ながらアウェーゴールを2つも献上する形で敗れた浦和。ラウンド16勝ち抜けのためには第2戦敵地で2-0、あるいは3点以上取って勝たなければいけないという、不可能というほどではないがかなり難しいミッションをこなす必要に迫られました。
・しかし、敗れたとはいえ第1戦で大槻監督なりに「これは勝てる!!」という手応えを得たのでしょう。ACLでは珍しく、第1戦との間に全く試合がなくて空いた1週間をフル活用して蔚山を徹底的に分析し、その弱点の突き方=サイドからのクロス攻撃を仕込みに仕込んで堂々の逆転勝ち!!
・しかも前半のうちに先制して相手をそのまま守りきるのか、一転して攻めに出るのか難しい心理状態に追い込み、蔚山が反撃に転じるには残り時間が少なくなったところで2点目を取ってトータルスコアで一気に逆転。さらにその残り少ない時間でダメを押して相手の息の根を止めるというこれ以上ない完璧な試合運び。いやはや、久しぶりに強い浦和を堪能させていただきました。
・AFC公式サイトによるとシュート数は16対4、うち枠内5対1と蔚山を圧倒。そして浦和が24本ものクロスを放り込んでいるのが目を惹きました。
・第1戦の非常にバランスの悪いスタメン構成&謎過ぎる選手交代を見て、「大槻監督はACLを選手の適性の見極めの場として割り切ったのかもしれません。」と記しましたが、第2戦の完勝を見るとその観測はあながち間違ってはいなかったけれども「ACLを捨てる」という意味での割り切りではなく、「180分で勝てばいいので、最初の90分は蔚山相手に通用する選手を見極めるために使う」という意味での割り切りだったと考えれば合点が行きます。宇賀神の右WB起用&杉本の途中投入が当たったのは、第1戦を受けての成果でしょう。
・また蔚山には公式ツアーだけで約700人、さらに個人手配で約300人、合計1000人もの赤者が駆け付けたんだとか。大雨に祟られたせいもあってか観客はわずか3000人ちょっとなので、ほぼ1/3が赤者。しかも平日に敢然と渡海する精鋭中の精鋭だらけ。従ってG+で見ている限りは赤者の声量が完全にスタジアムを支配し、客がいることに不慣れなせいか、集音マイクがしょっちゅう音割れするわ、ノイズ音を出すわというテイタラク。これまた浦和の完勝に一役買ったのでしょう。現地組の皆様、誠にお疲れさまでした!!
--------------------------------
・大槻監督は第1戦から杉本→ファブリシオ、森脇→宇賀神、鈴木→マウリシオとスタメンを3名入れ替え。長澤・橋岡がベンチ入りした一方、荻原・岩武・汰木・鈴木はベンチ外と、ベンチ入りメンバーまで含めて大槻監督らしくダイナミックに選手を入れ替えてきました。故障明けのファブリシオをいきなりスタメン起用したのは少々驚きで、しかもファブリシオの位置は1トップではなく左シャドー。
・蔚山はイ・グノがベンチ外だったり、キム・ボギョンがベンチスタートだったり、さらに最終ラインをなぜか2名も入れ替えるなど、こちらもスタメンを弄ってきましたが、試合の入り方はほぼ第1戦と同じ。基本4-1-4-1ながら、守備時は浦和WBと対峙したSHが最終ラインに吸収される格好で5-4-1っぽい守備ブロックを形成しての判りやすいカウンター狙い。しかもあまり前から追ってこないところまで第1戦の前半と同じでした。
・浦和は必然的にボールを持たされる展開となり、相手守備ブロックの前でボールをぐるぐる回す羽目になり、中央を固めている相手に縦パスがなかなか入れられないところまで第1戦と同じでしたが、ここで大槻監督が仕込んだ作戦はざっくり言えば2通り。一つ目が「ファブリシオ撃て撃て作戦」。
・マウリシオも含めて蔚山守備ブロックの前からミドルシュートを放つ場面が何度か見受けられました。ファブリシオはオリヴェイラ監督末期に無理やり出場させられた時期よりはコンディションは良さげに見えましたが、ボールを欲しがって下がってくる場面が目立ち、シュートレンジが広いとはいえそのシュートレンジで前を向く機会が少なく、「ファブリシオ撃て撃て作戦」はせいぜい相手を威嚇するだけであまり奏功したとはいえず。
・そこで大槻監督が軸に据えたのがサイドからのクロス攻撃。しかも「山中千本ノック攻撃」ではなく、大きくサイドチェンジしてからの右サイドからのクロス攻撃。8分右サイドからボックス内に侵入した武藤がクロス、9分宇賀神のクロスのこぼれ玉をなぜかクリアミスしてあわやオウンゴールという場面、17分槙野が武藤へ大きく展開→宇賀神クロスと意図は見て取れましたが、これもなかなか決定機には至らず。
・18分山中CK→槙野どフリーでヘッドの絶好機ではポストに嫌われ、逆に36分縦パスに反応して抜け出しかかった19番(パク・ヨンウ)へのマウリシオの対応が軽率で一気にボックス内に侵入される大ピンチがありましたが、相手がシュートを撃つのかパスを出すのか迷ったのが幸いして岩波が戻って来たので、シュートは力なく西川のもとへ。
・ここまでは「とにかく点を取られなければいい。あわよくばカウンターで追加点狙い」という蔚山の思惑通りの試合展開でしたが、41分ついに浦和の狙いが結実。岩波の縦パスを受けた宇賀神が対面の7番相手に縦に勝負を仕掛けてクロス→興梠がボックス内中央で上手くCBのマークを外してヘッド!! 右WBの宇賀神は左ほど攻撃に多くを期待できないと思っていただけに、ここで見せたクロス精度にはびっくり。
--------------------------------
・先制された蔚山はキム・ボギョンをFWに投入して4-4-2気味にフォーメーション変更。それ自体は第1戦の後半と同じですが、第1戦と違って依然として前から追って来ず、依然として守備的な構え。蔚山はアウェーゴール差でリードしているとはいえ1点取られると逆に窮地に追い込まれるという難しい立場。浦和はどっちみちもう1点必要で、蔚山に1点取られても大きなダメージにはならないというある意味気楽な立場ゆえ、60分あたりから大攻勢。
・60分には武藤→山中と大きく振って、山中のクロスに後方からなんと岩波が突っ込む良い形。64分には槙野の縦パスから武藤→興梠→武藤の決定機。この辺が勝負時と判断したのか大槻監督は65分にファブリシオに代えて杉本を投入し(ファブリシオが故障明けなので予定通りの交代かもしれませんが)、さらに75分には岩波に代えて長澤を投入して長澤トップ下の4-3-3、あるいは4-2-4にすら見える超前がかりの布陣に変更して大勝負に。
・この時間帯になると蔚山も汚いファウルを繰り出すわ、傷んだふりをして倒れる選手が続出するわと、なんとか試合をぐだぐだ模様にしようとすっかり鹿島ばりの劇団員に成り下がる始末。そしてなぜか無実の罪を帰せられてイエローをもらうマウリシオ。
・しかし、第1戦で蔚山相手にバリバリ通用することが証明済みの杉本投入の効果は絶大。79分マウリシオ→宇賀神クロス→杉本ヘッドで折り返し→興梠の決定機は枠を捉えられなかったが、80分右サイドに進出したマウリシオのクロス→ファーから侵入した興梠ヘッドでついに2点目をゲット!! ゴールを叩きこんだ興梠もさることながら、この2回の決定機で杉本がDFを2人も引き付けているのがでかい!! ついに浦和で居場所を見出した杉本。ありがとう!!
・合計スコアで逆転したところで大槻監督はすがさず宇賀神に代えて森脇を投入し、フォーメーションを3-4-2-1に復して逃げ切り体勢に。蔚山の後半の選手交代はどれもこれも不発で、おまけに猿芝居で時間を浪費したのが結果的に自分で自分の首を絞める格好に。そんな蔚山を尻目に87分浦和のカウンターが炸裂。山中クロス→ファーで杉本折り返し→武藤と一緒にボックス内に突入していたエヴェルトンが詰めてダメ押し。
・蔚山は昨年も水原相手に第1戦の優位を第2戦でひっくり返されたようですが、今回は日本のクラブ相手にホームで大差を付けられての大逆転負けと屈辱的な要素がてんこ盛り。キム・ドフン監督は前日の記者会見で「浦和レッズには警戒する選手がいない」みたいなことを言い放っていたようですが、この結果を受けてクビが飛ぶどころか日本海に身投げを求められるのではないかと(笑)
・そしてホーム側サイドスタンド上段に掲げられていたあの虎の置物は豪雨とこの結果を受けてどうなったのだろうか・・・
-----興梠-----
--ファブリシオ---武藤--
山中-エヴェル-青木-宇賀神
-槙野--マウリシオ--岩波-
-----西川-----
(得点)
41分 興梠
80分 興梠
87分 エヴェルトン
(交代)
66分 ファブリシオ →杉本(杉本が1トップ、興梠がシャドーへ)
75分 岩波→長澤(長澤トップ下の4-3-3)
83分 宇賀神→森脇(3-4-2-1に戻って、長澤右WB、森脇右CB)
| 固定リンク