【観戦記】19年第15節:浦和 2-1 鳥栖 ~ 塩抜き作業は捗らずとも、最後はマルプンデ!!
・大槻監督再登板後初めてのホームゲームは朝から大雨。荒天が祟ってか客入りは28000人ちょっとと寂しいものに。また残念ながら試合内容もパッとせず、スタジアムが沸き返る場面も多くはありませんでしたが、前節に続いて試合終了間際にゴールが決まる劇的なものに。しかも前節は敗色濃厚だった試合をなんとか引き分けに持ち込み、今節は引き分け濃厚だった試合を勝ち切ると結果も少し前進。
・今季既に6敗を喫してとうとう負けが先行し、しかもホームゲームで1勝1分4敗と悲惨な結果に終わってオリヴェイラ監督のクビが飛んでしまった状況下ゆえ、新監督を迎えた直後のホームゲームでの勝利はどんな形であっても嬉しいものです。
・今般暫定の立場ではなく正式の監督として招聘されたとはいえ、シーズンの真っ最中での就任ゆえチーム再建へ向けての準備期間はあまりないことに変わりはなく、しかも時期的に選手補強が出来ない以上、監督交代でチームが劇的に良くなることを期待するのはかなり無理がありましょう。
・また開幕時であれば「結果は出なかったがチーム再建へ向けての灯りが見えたからまあええか」と「良かった探し」で満足できたかもしれませんが、もはやシーズンも折り返し時点を迎えようとする中ではそこまでの余裕はなく、多少不格好とはいえ勝ち点を積み上げたことで良しとすべきかと。稼いだ勝ち点がチーム再建の余裕をもたらす。勝ち点が伸びないと目先の勝ち点欲しさに試行錯誤を繰り返す羽目に陥る。シーズン途中で監督に就任したものの宿命とはいえ、辛い仕事です。
・大槻監督は川崎戦に続いて3-4-2-1のフォーメーションを採用。試合前の会見で大槻監督は「選手を見て、そういう特性がある選手がいるので。他の形ももう少し時間が経ったらやりたいんですけど、今はそれがいいのかなと。」と語っており、これが当面の基本フォーメーションとなるのでしょう。
・また川崎戦ではさほど明確ではありませんでしたが、鳥栖戦の闘い方はどこからどう見てもミシャ式っぽい「ミシャの残り香システム」。昨年の暫定監督就任時同様、手っ取り早くチームを再建する手段として選んだのか、あるいは少なくとも今季一杯はこれを軸にするつもりなのかは判りませんが、傍目からはやろうとしていることはよく判る試合内容でした。良い試合ではなかったが、先々面白くなりそうな予感はする。あたかもオリヴェイラ流から「塩抜き」を始めたかのように。
・31分の岩武クロス→興梠&武藤が鳥栖DF陣を惹きつけながらスルー→ファーでどフリーの宇賀神が狙いすました形でゴールなんて往年のミシャ式そのものですし、26分相手を押し込んだ状態から槙野が突っ込んでシュート、あるいは47分・50分と右サイド深い位置から高い位置でフリーの宇賀神へ展開するあたりにもミシャの残り香が感じられました。
・しかし、堀監督が突如4-1-4-1をやり始め、ミシャ式を放棄してからの2年弱の月日はあまりにも長かった。その間にミシャ式に慣れた選手は少なからずチームを去り、残った選手達もミシャ式とは真逆の「ホッカー」、そしてボールポゼッションには全く拘らないオリヴェイラ流と戦術が変遷する中ですっかりミシャの残り香が薄らいでしまって、攻守とも四苦八苦。正直相手が鳥栖だったからなんとかなったものの、相手が格段に強くなる蔚山相手にはとても通用しそうもない出来でした。
・だいたいミシャ式の真骨頂であるGKからのビルドアップがもうズタボロ。鳥栖は4-4-2で2トップが厳しく浦和最終ラインにプレッシャーをかけてくるとはいえ、浦和は3バックのまま、かつ西川を使って本来は安定的にボールを回せるはずですが、これがもう安定感もへったくれもなし。
・むしろ鳥栖のほうがGK高岳を上手く使って安定的にビルドアップしているように見えるくらい。浦和は川崎戦同様前からハメたかったのでしょうが、鳥栖のボール回しのほうが一段上なのか、浦和の追い回しに連動性が乏しいのか浦和のプレスはたいして奏功せず、浦和苦戦の主因となっているように思えました。
・鳥栖も成績不振でシーズン序盤にして監督を代える羽目になりましたが、こちらも肉弾戦をいとわず「ロングボールからセカンドボールを拾って展開」というかつてのユン・ジョンファンスタイルっぽい形に回帰し、監督が代わって試合を重ねている分浦和より熟成度が上だったかもしれません。
・しかもユン時代のようにいきなりFWへ放り込んでくるわけではなく、謎のユン監督更迭後の数年を経て築き上げたビルドアップ技術を活かしているようにも見受けられましたし。18分の先制点=左サイドで作ってファーへクロスを入れる形はいかにも得意パターンとして磨き上げられた風。
・また大槻監督は「ミシャの残り香システム」を続ける限り、ミシャ政権下でもなかなか適任者がいなかったシャドーの人選に苦労しそう。ナバウトは7分に興梠へのスルーパスで見せ場を作った以外は全くと言っていいほど噛み合っておらず、51分に早々とお役御免。ところが代わって投入された長澤の出来も芳しくないどころか、56分・68分と反撃に転じようとしたところでボールを失って鳥栖の逆襲を許す契機となってしまう惨状。
・相手を押し込んだところで攻めきれずにカウンターを食らいがちという、悪い意味での「ミシャの残り香」は健在。11分に食らったカウンターはナバウトのシュートをブロックされたところからで、ナバウトの積極性が裏目に出るという「ナバウトあるある」でしたが、その後の対応がお粗末すぎてクラクラ。安易に飛び込んで趙にあっさり交わされるマウリシオとか、ボックス内に守備の人数はいるのになぜか小野がどフリーとか。浦和にも何度かカウンターのチャンスがありましたが、概してカウンター時の攻守の切り替えの早さや迫力は鳥栖のほうが上。
・2年近く閉めていた店を再オープンしたばかりなので、あれこれ上手く行かない面が露呈するのは致し方ありません。そして試合を決めたのは「ミシャの残り香」とは一切関係がないパルプンデならぬマルプンデ。「ミシャの残り香システム」の中では全くと言っていいほど使い道がなく、試合終盤オープンな展開にならないと使いようがない。しかも使ったところで吉と出るか凶と出るかさっぱり判らないという「パルプンデ」的な性格が強いマルティノス投入が試合を決める契機となりました。
・原川のボックス内ハンドを執拗に主張してイエローをもらう辺りはマルプンデの凶の側面。しかしAT+3分に見せた自陣深い位置からの持ち上がりはマルティノスの真骨頂。福田を振り切り、対峙する小林を交わして上げたクロスが原川に当たって変に浮いたのが吉と出る辺りまで含めてのマルプンデ。クロスに反応した三丸が被ってしまって、ボールは見事に興梠の足元へ渡り、興梠は冷静にシュートコースを見極めてゴール!!
・出来は芳しくなくてもとにかく勝ち点を積み上げるのは大事。勝ち点がチームに余裕をもたらす。内容を云々するのはまだ先で良いでしょう。
-----興梠-----
--武藤----ナバウト--
宇賀神-青木-柴戸-岩武
-槙野--マウリシオ--岩波-
-----西川-----
(得点)
31分 宇賀神
90+3分 興梠
(交代)
51分 ナバウト→長澤
70分 岩武→森脇
80分 柴戸→マルティノス(マルがシャドー、長澤がボランチへ)
・大槻監督はレギュラーを固定せず、練習の様子を見て良さげな選手を使うことを公言しています。今節は前節川崎戦から丸2週間空き、さらに中3日後にACL蔚山戦が控えているためスタメン予想が難しいかったのですが、蓋を開けてみたところなんと前節からマルティノス→ナバウトの入替のみ。マルティノスはACL・ラウンド16ではまだ登録外。しかも第1戦は長澤が出場停止なので、マルティノスはともかく長澤がベンチスタートなのには驚きました。
・また岩武を引き続きスタメン起用したことや、エヴェルトンや汰木が怪我でもないのに引き続きベンチ外になった辺りには良くも悪くの監督交代の色が滲み出ています。故障明けの橋岡を無理使いしなかったのはACLを睨んだためかもしれません。
・見事な同点ゴールを決めた宇賀神はさほど喜ぶ様子無し。むしろ先制点を取られた場面で安に前に入られた失態を深々と反省している風。川崎戦でもダミアンをフリーにしてしまう失態を犯したばかりですし、監督が代わって山中より優先的に使われる立場になったとはいえ、ゴールで喜んでいる場合ではないのでしょう。これぞ厳しいポジション争いが生む良い緊張感。
・56分鳥栖の決定機を防いだのは西川ではなく、なんと岩波のシュートブロック!! 岩波も監督交代を契機に鈴木からポジションを奪回した立場で、宇賀神へのロングフィードを含めて攻撃への寄与度の高さを再評価されていると思っていただけに、決定的な場面でCBの本業を全うして頂いて頼もしい限り。ここもポジション争いが良い緊張感をもたらしているのでしょう。
・柴戸が90分持たず、最後はヘロヘロになって思わず後ろから手で相手を止めてしまいイエローを頂戴。「ミシャの残り香システム」だと故障離脱中の柏木が俄然輝きを増すのは必定なので、柴戸は精進が必要かと。
---趙---金崎---
小野---------安
---原川--福田---
三丸-高秀--高祐-小林
-----高丘-----
(得点)
18分 安庸佑
(交代)
67分 趙東建→トーレス
80分 小野→安在
88分 安庸佑→石井
・鳥栖はなんと豊田とクエンカがベンチ外。豊田の故障欠場を予想した向きもあったようですが、クエンカの欠場は全くの謎。この両名がスタメンで出ていたらフツーに負けていたかも。それくらい試合内容は鳥栖のほうが良く、今後最下位に沈んだままでいるような感じは全くしませんでした。逆に言えば、就任後全く点が取れなかったカレーライス監督ってどんだけ大ハズレだったのか・・・
| 固定リンク