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2019.07.02

【観戦記】19年第17節:大分 2-0 浦和 ~ コンディション以上に練度が違いすぎて完敗

・浦和はアウェー蔚山戦で難しいミッションを見事完遂して中3日で再び遠距離移動を伴うアウェーゲーム。大分は週央にルヴァン杯もなくて日程面で両チームに大差がありました。また大分ドームはただでさえ通気が悪くて蒸し暑いことで知られるのに、この日は朝から大雨で屋根を閉めざるを得なくなり、公式記録ではなんと湿度89%!! そのため気温は25度にも満たないのに前後半とも給水タイムが設けられました。

・気候面のきつさはもちろんどちらにも重くのしかかりますが、日程が厳しい浦和のほうがよりダメージがでかいと大槻監督は判断したのでしょう。浦和はなんとスタメンを7名も入れ替えてきました(ファブリシオ→杉本、武藤→マルティノス、興梠→ナバウト、エヴェルトン→柴戸、青木→長澤、宇賀神→橋岡、岩波→鈴木)。

・大槻監督は日頃から「レギュラーなんてものはない!」と公言していますし、オリヴェイラ監督がホーム北京戦での快勝後の中4日で迎えたホーム広島戦で疲労感漂うお馴染みのメンバーをゾロゾロスタメン起用して惨敗し、監督のクビが飛ぶ契機となったことを思えば、より条件の厳しいこの一戦でスタメンを大幅に入れ替えたのは納得できます。起用した選手が妥当だったかどうかはともかく。

・しかしメンバーを大幅に入れ替えると当然ながら戦術理解はまちまち、意図が噛み合わない場面は多々出てきます。しかも片野坂監督のもとでJ3時代から3年半の長きにわたって鍛えられた大分とは対照的に、浦和はミシャ長期政権終了後監督が目まぐるしく代わるだけでなく、戦術というかスタイル・志向がブレにブレ、ただいま大槻監督のもとで「ちょいミシャ」に回帰中といったところ。それゆえ「ちょいミシャ」にはどう見ても不向きな選手を複数人抱える羽目に陥っています。

・それゆえ「誰が出ても(精度が下がるかもしれないが)同じようなサッカーができる」という状態にはほど遠く、興梠・武藤・青木といった代えが効かない選手をごっそり抜いてしまうともはやチームとして体をなさなくなってしまいます。しかし、そうはいっても代えの効かない面子を常に出し続けるわけにもいかず、この試合で致し方なく大胆にターンオーバーしたのはやむを得ない判断だったと思います。

ただターンオーバー自体は是としても、所定の作戦を遂行する上でより妥当なメンバーを選んでいたか、あるいは逆にこのメンバーでやる作戦自体が妥当だったか、となるとかなり疑問符がつく印象を受けました。まぁ作戦自体が妥当だったとしても準備時間が極めて限定的なので、そもそもの練度が違いすぎるので結果に大差はなかったかもしれませんが、どうもやろうとしていることと出ている選手の特性が全然噛み合っておらず、対大分作戦としては「最悪手」を放ってしまったと言ってもいいでしょう。

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・大槻監督は前節大分を苦しめた神戸のやり方にヒントと得たのか、序盤は長澤まで最前線に突っ込ませて前からガンガンプレッシャーをかけに行きました。ところが残念ながら今の浦和のプレッシャーの強度、さらには選手間のプレッシングの練度では神戸のように高い位置でボールを奪うには至りませんでした。この日はマルティノスが守備をさぼりがちで、そこが大分のパス回しの脱出口に。言い換えればこの「前プレ」戦術をやるならマルティノスのスタメン起用はありえないでしょうに。こういう実に中途半端な「前プレ」をしてくるチームはカウンターが鋭い大分の格好の餌食。

・もっとも高い位置でボールが奪えずとも、相手にロングボールを蹴らせてそのセカンドボールを拾えれば良いと割り切っていたのかもしれませんが、さほどセカンドボールを拾えているようにも見えず。またボールを奪っても往々にして奪う位置が低いので、今やビルドアップ能力がガタ落ちになってしまった浦和はその後に攻め手に困りがち。ゆえに6分にいきなりパスミスを藤本に拾われ、後藤が長い距離を走って際どいシュートを撃たれてしまいました。

・またマルティノスが守備をさぼりがちなため、左サイドの守備は壊滅状態。15分には大分GKのロングキックから始まるカウンターで、山中は対面のWB松本を見るだけで精一杯。後方から駆け上がる岩田をなぜかマルティノスが途中で放してしまい、岩田クロス→藤本ヒールで流し込みの決定機。大槻監督は途中でマルティノスとナバウトの位置を入れ替えたので、左サイド壊滅状態の主犯は特定していたようですが・・・

・給水タイムを挟んだ辺りから浦和の前プレは減衰して、しかも「行けそうな時だけ行く」という間歇的な感じに。現地では「相手にボールを持たせる」戦術に転換したのかな?と思いましたが、どうもその辺は終盤まであいまいなまま。34分には前プレで大分にロングボールを蹴らせたのにセカンドボールを拾われ、左サイドから松本に鋭いクロスを入れられ、最後は前田に飛び込まれるという、本日の浦和の作戦を全否定されたに等しい決定機を許してしまいました。

・先述のように浦和はビルドアップ能力がガタ落ちな上に、杉本はともかく2シャドーがボールを収められるタイプではないので、「山中千本ノック攻撃」なんて発動しようがなく、杉本にロングボールを放り込むか、マルティノスをスペースに走らせるしか攻め手がありません。それでも39分マルティノスが右サイドに流れてクロス→ファーで杉本の決定機を作るのですから、ある意味恐れ入ります。というか、この面子ではこれしか攻め手がないから、ハナから大分にボールを持たせる戦術を採用するのが妥当でしょうに。

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・大胆なターンオーバーを仕掛けたにも関わらず、前半の「前プレ」が徒労に終わったためか、後半の浦和の運動量は目に見えて落ちてゆきました。49分にはザル状態の左サイドをまたしても岩田に抉られて鋭いクロス。そして51分ついに失点。CF藤本は裏抜けが非常に上手いので、そこへの出し手を潰さなければ行けないのに、ナバウトも柴戸も前を向いた小塚へ全く寄せられないとは!! 青木がいたらここまでぽっかりはなかっただろうなぁ・・・

・先制されてたまらず大槻監督はマルティノスを諦めて武藤と投入するも、そもそも浦和の作戦が破綻している以上選手を一人代えたぐらいではどうにもならず、53分には中途半端に前に出た山中の裏を突かれて3対3のカウンターを食らい、後藤&高山と立て続けにシュートを撃たれる大ピンチ。また61分にもマウリシオのミスを突かれて後藤の独走&シュートを許す一幕も。

・さらに大槻監督は64分鈴木→宇賀神、68分ナバウト→興梠と相次いで選手を代えるものの、浦和は積極的にボールを奪いに行く体力が残っておらず、大分に良いようにボールを回される惨状。そして73分興梠が自陣ハーフライン近くでのボールロストを契機にカウンターをくらい、途中投入の小林がガラガラの中盤を自分で運んでバイタルエリアからズドン!! 

・興梠がボールを失わないことを信じていたのか、柴戸も長澤もえらく前に行ってしまい、中盤スカスカなのには参りましたが、興梠もあのボールを失い方を見ると本来試合に出せる状態ではなかったと思いました。

・とはいえ、ボールを引き出せる興梠&武藤が揃ったために遅まきながら浦和も大分を自陣に押し込めるようになり、「山中千本ノック攻撃」の態勢も整いましたが、決定機らしい決定機は79分の杉本ミドルだけかな?

・またこの試合を通じて浦和のCKはなぜか簡単にボックス内でのファウルを取られて決定機どころか満足にシュートすら撃てず、逆に88分大分CKでこぼれ玉を拾った藤本のポスト直撃弾にヒヤリとさせられる始末。

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・攻めてはほとんど得点の可能性は感じられず、守ってはよく2失点で済んだといって差し支えない文字通りのぐうの音も出ない完敗。やむを得ないとはいえ大胆なターンオーバーは大失敗に終わりました。大槻監督はこの大失敗を受けて、今後ターンオーバーの必要に迫られた際のスタメン選考基準を練り直すことでしょう。また興梠・武藤・青木と代えの効かない選手が何人もいる反面、「ちょいミシャ」にはどう見ても不向きな選手を複数人抱えている(マウリシオ・ファブリシオ以外の外国人選手は全員アウトでしょう。ファブリシオも怪しいけど)現状を中村GMはどう考えているのかも気になります。もうすぐ夏の移籍期間も開くことですし。

・どこからどう見ても今の浦和にはACLとリーグ戦を並行して闘うだけの力はない。頭数の上では2チーム分あるように見えても、目まぐるしい監督交代が祟ってファーストセットですら練度は高いとはいえず、セカンドセットに至ってはチームとして体をなしていない。もうACLとJリーグの2冠だとか、おまけに世代交代だとか、そんな絵空事は止めましょう。そう訴えかけているかのような残念な試合でした。

A022
-----杉本-----
--マル----ナバウト--
山中-柴戸--長澤-橋岡
-槙野--マウリシオ--鈴木-
-----西川-----

(交代)
52分 マルティノス→武藤
64分 鈴木→宇賀神(宇賀神が右WB、橋岡が右CB)
68分 ナバウト→興梠

A025
-----藤本-----
--後藤----小塚--
高山-長谷川-前田-松本
-三竿--鈴木-岩田--
-----高木-----

(得点)
51分 藤本
73分 小林

(交代)
65分 後藤→小林
72分 岩田→庄司(負傷交代)
80分 三竿→島川(島川が右CB、庄司が左CBへ)

・大分は契約上浦和戦には出場できないオナイウを後藤に代えた他、右CB庄司に代えてコパ・アメリカ帰りの岩田、さらに島川→長谷川と3人入れ替え。

 

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