【観戦記】19年第18節:浦和 1-0 仙台 ~ ボールを蹴るチームが人を蹴るチームに完勝
・シュート数14対3。ボールも6割以上浦和が支配していたというスタッツほど、浦和が仙台を圧倒していた印象は全くなく、終始膠着した試合内容でした。前半はまさに一進一退の戦況でしたが、仙台守備陣の一瞬の綻びを突いて浦和が先制。先制された仙台は51分に愚かな退場者を出してしまったので、膠着した戦況を自らのイニシアティブで変えるのは難しくなり、後半はほぼ浦和のヘマ待ち状態に。
・浦和も浦和で一人少ない相手に無理に攻めに出なかったので戦況は流動化しようがなく、そのまま試合終了。正直興行的には非常に低調な試合で、終盤浦和が追加点を取る気配もなく、追いつかれる可能性もないという戦況に飽き飽きしてか、バックスタンドで見る限りはAT突入を待たずに家路につく観客も少なくありませんでした。
・この辺はボトムハーフにいて降格ゾーンがチラチラ見え隠れしているのチームの悲しさなのかも。とにかく目先の勝ち点が欲しい。ミシャであれば一人少ない相手に容赦なく攻めかかって4-0、5-0と「死体蹴り」の様相を呈した可能性が高い一方、無意味にオープンな試合になって3-3くらいのスコアで勝ち点を取りこぼすこともままあったかと思います。
・そんなミシャの試合運びを反面教師として、大槻監督は「勝てる試合」をうっかり取りこぼしてしまう可能性を極力排除したかったのでしょう。この辺はオリヴェイラ監督の遺産(=勝負への拘り)なのかもしれません。
・仙台がハモン・ロペスを投入して4-3-2の布陣で乾坤一擲の勝負をかけてきた時間帯にカウンターをお見舞いできれば満点パパでしたが、残念ながら今の浦和は鋭利なカウンターを繰り出せないと判断したのか、大槻監督は阿部を投入してよりはっきりと逃げ切りの道を選択し、何の紛れもなく逃げ切りに成功しました。
・今年はとにかくホームでの戦績が悪く、しかも負け方が非常に悲惨。このダメージは殊の外大きいようで、この日の観客は土曜にも関わらず29000人弱と寂しいものに。試合中あるいは帰宅時間帯には雨が予想され、相手もしょぼいとあっては仕方ないのかもしれません。とにかく「ホームで勝つ」ことに拘った大槻監督のスタンスを強く支持したいと思います。
・浦和も仙台も天皇杯から中2日。浦和のスタメンは天皇杯からの連闘は岩波のみ。というか、リーグ戦前節の大分戦でも大胆なターンオーバーを試みているので、レギュラー陣(という言葉を大槻監督は嫌うでしょうが)のうち半分くらいはアウェー蔚山戦以来久しぶりのスタメン出場という感じ。青木はその間2試合ともお休みですし。布陣はいつもの3-4-2-1。スタメン発表時にはエヴェルトンと長澤のどちらがシャドーなのか判りませんでしたが、長澤が右シャドーへ。
・仙台は前節から右SB蜂須賀→大岩と1名のみ入れ替え。もっともこれは蜂須賀のアクシデントによるもの。
・仙台は立ち上がり2トップが前から激しくプレッシャーをかけてきましたが、浦和は難なくそれを交わしてビルドアップ。浦和は3バックで仙台の2トップに対して数的優位なので簡単にビルドアップ出来て当たり前なのですが、その「当たり前」が今年かなり怪しくなっていただけに、当たり前のことがちゃんとできるようになっただけで浦和の復権が見て取れるような気がしました。
・仙台はあまり意味がない「前プレ」を早々に諦め、高い位置に張り出している右WB橋岡に対峙する格好で左SH関口が最終ラインに下がって5-3-2の格好でリトリート主体の守備に切り替え。浦和はボールを支配するものの粘り強く守る仙台守備陣の前にこれといった決定機は作れず、26分にこぼれ玉を拾った青木が枠内ミドルシュートを放ったのに可能性があったくらい。
・守備ブロックを作って耐える仙台の攻撃は浦和以上に悲惨。昨年の天皇杯決勝に象徴されるような「シュートに繋がらない無意味なポゼッションへの拘り」はすっかり捨ててしまったようで、攻撃はロングボールに頼るというある意味テグラモリ時代に先祖帰りしたような感じに芸風を一変させていました、肝心のターゲット=長沢が浦和CB陣の前に何も出来ず。
・浦和は前から圧力をかけて仙台に高精度のロングボールを蹴らせず、蹴った先ではマウリシオを中心にCB陣が長沢に自由を与えず、こぼれ玉はいち早く回収して仙台の得意パターンを封殺。仙台のチャンスは29分道渕のミドルシュートのみで、しかもこれが前半唯一のシュート。
・スコアレスで前半終了と思われる静かな試合展開でしたが、42分に突如浦和が先制。岩波が武藤に縦パス → 武藤が反転して椎橋&平岡を交わしたところになぜかシマオまで武藤に食いついてしまい、シマオが対峙していたはずの興梠がどフリーに → 武藤のパスを受けた興梠がGKをループシュートで交わしてゴーール!! 最初に関口が岩波に圧力をかけるべく中途半端に前に出たのが守備ブロックが崩れる一因になったのかも。
・前半から攻撃がほとんど成り立っていなかった仙台の苦境に追い打ちをかけたのが51分の椎橋の退場。伝統的に仙台のプレースタイルは荒っぽく、なぜあれが放任されているのか不思議でなりませんが、この日も後方からの危険なファウルが非常に目立ち、19分には長沢の殺人的なファウルを受けたエヴェルトンが負傷退場。
・ところか飯田主審はこの仙台の暴力行為の数々にファウルを取るだけでなぜか45分まで一枚もイエローを出さずに放置。これが何より良くなかった。大槻監督も「前半にもう少しコントロールしていたら、仙台の選手のレッドカードはなかったんじゃないかと思うんです。」と指摘している通り。審判がイエローを出さないことを良いことに、仙台はラフプレー三昧。42分の先制場面でも武藤がシマオにがっつり削られていますが、これも飯田主審は放置。これが遠因となったのか、武藤も58分に早々と交代を余儀なくされました。
・しかし、仙台にとって「いいだのいいふえ」もここまで。45分にようやく椎橋にイエローを出した後は、仙台のご乱行を見るに見かねたようにイエローカードを急に出し始め、相変わらず調子こいでラフプレーを続けた椎橋は当然のように2枚目のイエローをもらって退場。
・一人少なくなった仙台はFWを一枚削って4-4-1(守備時5-3-1)で終盤まで耐える道を選び、浦和は前述のように無理に攻めない方針を徹底したので非常に退屈な試合に。浦和の決定機は60分CKからマウリシオヘッドが枠内を襲った場面だけ。他は66分岩波クロス→途中投入の杉本ヘッドに可能性があったくらい。ファブリシオがポポ状態になって盛んにミドルシュートを放つものの枠は捉えきれず。
・仙台も1-0のままゲームを進め、終盤ハモン・ロペスを投入して4-3-2に布陣を代えて大勝負に出たところまでは計算通りだったのかもしれませんが、結局何もできないまま試合終了。最大の好機=72分槙野の緩すぎるバックパスに道渕が反応した場面ですらシュートに持ち込めず。
・前半の拮抗状態を考えれば仙台に退場者が出なければ浦和完勝にはならなかったかもしれませんが、仙台に退場者が出たのは偶然でも不運でもなくほぼ自業自得。そんなところまで含めて浦和完勝と言って差し支えない試合でした。見どころに乏しかったのは否定できませんが。
-----興梠-----
--武藤----長澤--
宇賀神-エヴェル-青木-橋岡
-槙野--マウリシオ--岩波-
-----西川-----
(得点)
42分 興梠 慎三
(交代)
19分 エヴェルトン→ファブリシオ(負傷による交代。長澤がボランチに下がってファブリシオが左シャドー、武藤が右シャドーへ)
58分 武藤→杉本(負傷による交代。杉本1トップ、興梠が右シャドーへ)
86分 興梠→阿部(阿部がボランチ、長澤が右シャドーへ)
・橋岡は後半盛んに縦に仕掛けてはいましたが、クロスといいカットインからのシュートといい、とても効果的とはいえず。ただゴールキックのターゲットになり、守っては対峙する相手に何もさせずと橋岡なりのいいところも出せていました。といっても右WBは森脇・宇賀神・岩武と競争相手がいたところにさらに関根が加わって橋岡も安穏とできる状態ではありません。
・天皇杯がお寒い内容に終始したのでベンチメンバーの入替は少ないと予想しましたが、なんと阿部が久しぶりにベンチ入りし、しかも終盤にクローザーとして投入。阿部はもはや90分持たないのでスタメン起用は難しいのでしょうが、クローザーとして目途が立ったのあれば大槻監督も一安心。一方、ここ2試合で不振を極めた柴戸はとうとうベンチ外。やむを得ません。
---長沢--石原---
関口--------道渕
---松下--椎橋---
永戸-平岡--シマオ--大岩
-----シュミット-----
(交代)
53分 石原直→富田(椎橋退場のため、富田がボランチに入って4-4-1へ)
67分 関口→石原崇
76分 松下→ハモン・ロペス(4-3-2へ)
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