【観戦記】19年第16節:浦和 1-1 鹿島 ~ 勝てたようでもあり負けなくて良かったようでもあり
・ACLの影響で先送りになっていた第16節。なんで他のJ1の試合がなかった先週末の開催ではなく、わざわざ水曜日開催なのか不思議でなりませんが、日程的な条件は相手も同じなので文句の言いっこはなし。もっとも相手鹿島とはルヴァン杯準々決勝での対戦も決まり、下手をするとACL準決勝や天皇杯を含めて短期間のうちに7度対戦する羽目になるかもしれないというのが難儀と言えば難儀。
・それ以上に難儀だったのは酷暑。夜になっても30度超(公式記録の気温は31.2度)。しかも湿度64%というのが相当きついのか、ナイトゲームにも関わらず前後半とも途中で給水タイムが設けられたくらい。必然的に両チームとも消耗が酷く、前半からオープンな展開になりがちに。
・浦和が前半に数多あった決定機を一つでも決めていれば勝てた試合と思う方も多いかもしれません。しかし、浦和が優勢な時間帯に決定機を一つも決められず、逆にミスを突かれて先制されてしまうというのは典型的な鹿島戦の負けパターン。ゆえに、この試合は良くぞ同点に追いついた、負けなくて良かったと思う方もいらっしゃるかもしれません。私は後者です。シュート数は11対12、決定機の数も似たようなものでスタッツから見てもドローが妥当な結果かもしれません。
・負けが混んだせいかすっかり志が低くなってしまってアレですが、逐一指差し確認しながらでないとボールを前に運べず、ほとんど点が入る気がしなかったオリヴェイラ末期の惨状を考えると、鹿島相手にサクサクボールを前に運べ、しかも複数の形、再現性のある形で決定機を作れるようになったというのはもうそれだけで感涙もの。大槻体制になってわずか2ヶ月でここまでできるようになったかと思えば、この試合を前向きに評価して差し支えないと思います。
・またこの試合、左右のWBが目まぐるしく変わりましたが、関根と山中という持ち味が全く違うWBが共にその持ち味を存分に活かす形で決定機を演出したことも先々明るい材料だと思います。もっとも様々なWBの組み合わせの中で山中&関根という組み合わせだけは慎重に避けた辺りがミシャと大槻監督の違いなのでしょうが(苦笑)。
・闘い方が一貫しているせいか、人の心を失った選手が大幅に入れ替わってもそんなにチーム力は落ちない鹿島っちゅーのは、腹立たしいくらいに羨ましい。一方全部監督任せの浦和はその王道を歩みようがないという辛さ。選手の入れ替わりは少ないほうだが、チーム力の維持・向上にはどうしても時間がかかります。その割にはよくやったと言ってもいいでしょう。ただ「賽の河原」はずっと続くんでしょうなぁ、残念なことに。
・浦和のスタメンは前節から出場停止の柴戸に代わって故障明けのエヴェルトンが入ったのみ。鹿島も前節からFW伊藤→土居、GK曽ケ端→クォン・スンテと2名代えたのみで、レオシルバはなぜかベンチ外。
・鹿島は立ち上がりなど時折2トップ+白崎で浦和最終ラインにプレッシャーをかけてくる時もありましたが、基本的には4-4-2の守備ブロックで待ち構えてのカウンター狙い。その鹿島に対して浦和は序盤立て続けに決定機。3分カウンターから左サイドをスペースを疾走する関根→オーバーラップした武藤クロス→興梠(シュートを打ち損じて枠外)、さらに5分長澤スルーパス→左サイドから関根クロス→中央でエヴェルトン宇宙開発事業団(つД`)
・5分の決定機は4-4-2で守る相手に対してフリーになりやすいWBを軸にした再現性のある攻撃で、これが出来るようになっただけでもたいしたもの。それだけにこの決定機でせめてシュートを枠内に撃たないと・・・ 復帰初戦だった磐田戦に続いてこの試合でも関根のドリブルの切れ味は抜群で、対面のSB永木ではどうにもならず。
・またWBを軸としたサイド攻撃だけではなく、縦パスでの裏狙いも散見され、39分武藤スルーパスで興梠が裏抜けに成功するもボックス内からのシュートはGKが片手で辛うじてセーブ。さらにATには青木の浮き球パスで興梠が再度裏抜けに成功するも、追いすがるCB犬飼を制しながらのシュートはわずかに枠の外。
・浦和は決定機を数多作った一方で、守備はなんとも微妙。磐田戦同様、浦和は興梠+シャドー1名で鹿島の両CBに前から強くプレッシャーをかけて鹿島のビルドアップを制限しに行きましたが、体力の消耗に見合うだけの効果があったようには思えず。というか、酷暑下の試合でなくても「前から行くべき時は行く、しっかり後ろで守備ブロックを作るべきときは作る」というメリハリがあって然るべきなのに、この試合は後者の時間帯があまり見受けられず、終始ドタバタした挙句に先に消耗してしまった印象が強く残りました。
・そして33分には最も恐れていたミスからの大ピンチが。エヴェルトンへのバックパスを相手に拾われてカウンターを食らい、最後はボックス内でレアンドロ→セルジーニョと?がれてしまいましたが、駆け戻った岩波が辛うじてシュートを撃たせず。
・またそれ以上にヒヤリとさせられたのは鹿島のCK。2分にはセルジーニョのヘッドがバーを叩き、34分には犬飼ヘッドがわずかに枠外。
・やや優勢と思われた前半に決定機を逃しに逃して試合を折り返したところで、大槻監督はなんとマウリシオに代えて宇賀神を投入し、宇賀神が左WB、関根が右WB、橋岡が右CB、岩波が中CBへと動く旧国鉄の車両配転を想起させるような大規模な玉突き移動を敢行。これは前半高い位置で頻繁にボールが回ってくる割には仕様通り攻撃面で何もできなかった橋岡の出来に業を煮やした一策と思いきや、何のことはないマウリシオの小破に対応したものだったことが試合後判明。
・こういう大規模配転はミシャがビハインドに陥った際によくやっていて、しかも碌な結果にならなかったような記憶が残っていますが、やむを得ない事情とはいえ、今回もやはりその例に漏れなかったようで、浦和の攻勢は後半明らかに失速。50分武藤FK→ファーでどフリーの岩波がうまくミート出来なかったのと、55分右サイドに流れた長澤クロス→中で武藤ヘッド(力なくGKのもとへ)が惜しかった以降浦和の攻勢は尻すぼみとなり、試合の流れは次第に鹿島へ。
・57分猛然と突っ込んできた犬飼と交錯したエヴェルトンが自陣でボールを失ってショートカウンターを食らってヒヤリ(セルジーニョのシュートは西川の正面)。64分鹿島が伊藤を投入してよりカウンター狙いの意図を強めてきた直後、鹿島のリスタート時に浦和守備陣の集中力が切れたのか、白崎への対応も緩慢なら、クロスを上げた先の伊藤もどフリーという大惨事に(HSは幸い西川の正面)。
・浦和は68分関根右サイドからクロス→ニアで武藤が潰れて中に長澤が突っ込む好機も決められず、とうとう鹿島が良い流れの時間帯に先制。77分後ろを向いた長澤がなぜか長考に沈んだ末に相手に囲まれて自陣でボールロスト。これ自体は致命傷にはなりませんでしたが、その後鹿島の波状攻撃を食らい、ボックス内に侵入した悪相葉土居のクロス→ファーで伊藤ヘッドという鹿島らしい左右の揺さぶりが効いた形で先制。
・65分の決定機に続き、この場面でも伊藤のマークが完全に外れていましたが、こういうのは大規模配転で最終ラインを大きく弄ったせいかのかどうか。
・ここまでは完全に浦和の負けパターン。しかし、ビハインドに陥った直後に大槻監督は最後の切り札杉本を投入。これで先に関根に代わって投入された山中の「千本ノックシステム」が活きる形となり、杉本は投入直後に山中クロスからニアに飛びこんでのヘッドで決定機。これで鹿島守備陣がびびったのか、88分山中クロスに対して鹿島両CBが中で待ち構える杉本に付いてしまい、ファーでフリーの興梠が楽々ヘッドでゴール!!
・しかし疲労困憊の浦和は同点に追いつくのが精一杯。試合終了間際には途中投入の遠藤の枠内シュートを浴びてしまいましたが、シュートに力がないのが幸いして西川が難なくキャッチして試合終了。
・平日にも関わらず埼スタには37000人強もの観客が集結(ビジターの入りが良かったせいもありますが)。またしてもホームで勝てなかったのは残念ですが、酷暑下でも双方省エネモードというかだらけた試合ににはならず、それどころかファイティングスピリッツに溢れた試合だったのは確か。これぞ鹿島戦というべき試合内容でした。夏休み初のホームゲームのせいか、いつもより家族連れが目立った気がしましたが、これなら次のホームゲームを見に行く動機づけには十分だったのではないでしょうか?
・なお試合後審判団へのブーイングが巻き起こっていましたが、個人的にはすっかり志というか審判団への期待値が低くなっているせいか、今日の審判団には特に不満は感じず。あれはもはや森脇へのブーイングみたいなもんなんでしょうな、たぶん。現地では伊藤のゴールは西川が辛うじて空中で掻き出したようにも見えましたが、DAZNで確認したら先っぽどころか思いのほかずっぽり入っており、湘南戦や横浜M戦の審判団のようなヘマはなし。
-----興梠-----
--武藤----長澤--
関根-エヴェ--青木-橋岡
-槙野--マウリシオ--岩波-
-----西川-----
(得点)
88分 興梠
(交代)
HT マウリシオ→宇賀神(宇賀神が左WB、関根が右WB、橋岡が右CB、岩波が中CBへ)
73分 関根→山中(山中が左WB、宇賀神が右WBへ)
78分 エヴェルトン→杉本(杉本1トップ、興梠がシャドー、長澤がボランチへ)
・興梠は古巣鹿島相手だと空回り気味に終わるのが通例でしたが、今日はほぼ普段通りの出来で、4度あった決定機のうちの一つをなんとか決めてくれました。鹿島もあれだけメンバーが変わってしまうと、それこそ興梠にとって旧知なのは曽ケ端くらいしかおらず、ローストチキン屋まで出して浦和に骨を埋める決意をした今となっては古巣意識も次第に薄れているもかもしれませんが。
・出場停止の柴戸に代わってスタメン起用されたのは前節磐田戦で試運転済の柏木ではなく、なんと仙台に壊されたエヴェルトン。予想よりやや早めの復帰は嬉しいのですが、この日の出来はイマイチ。中盤でのボール奪取に多くは期待できず、広範囲の配球も得意ではないので、前に出た時くらいは頑張ってほしいのですが・・・ しかし磐田戦の柏木もただ出ただけの出来だったので、ここの人選は悩ましいところ。
・ゆえに青木のバックアップ共々、この夏浦和最大の補強ポイントだと思うのですが、度重なる監督交代に伴う違約金地獄&マルティノスを筆頭とする再三の無駄遣いが祟って浦和はもう金がないんでしょうなぁ。これといったパイプも眼力もない中村GMは金がないとただの置物であり、金があったらあったで、単にドブを詰まらせるだけに終わる。いやはや何とも・・・
---土居--セルジーニョ--
白崎-------レアンドロ
---三竿--名古---
小池-町田--大塚-永木
-----クォンスンテ----
(得点)
77分 伊藤
(交代)
64分 レアンドロ→伊藤(伊藤がFW、セルジーニョが右SHへ)
85分 セルジーニョ→遠藤
89分 土居→上田
・勝てた試合を引き分けに持ち込まれたのに、メルカリ様ご一行が試合後えらく喜んでいたのが不思議でした。
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