【DAZN観戦記】19年第22節:札幌 1-1 浦和 ~ モエレ沼からドロー沼へ
・3試合連続の引き分け。前2試合が「試合終盤に辛うじて追いついての引き分け」だったのに対し、この試合は「追いつかれての引き分け」で気分的にはより悪かろうと思います。また試合内容も札幌ペースで進んでいた時間帯が長く、この3試合の中では最も悪かったという印象が残りました。
・この試合の特徴はミシャがはっきりと「浦和にボールを持たせる」道を選択したこと。前節名古屋戦も名古屋が2点リードしてから浦和がボールを持たされる展開になり、これは名古屋が下手に守りに入ったものと解釈できるとしても、今節の札幌は明らかにより意図的。本来ボールを持って試合を進めるのが持ち味のチームがあえて浦和にボールを持たせ、浦和を困らせる。そしてこの策は見事に嵌まり、31分鈴木が西川との1対1の決定機を決めていれば札幌楽勝だったような気がします。
・また関根が浦和の攻撃の最大のキーマンになっているのも復帰4試合目ともなるともうバレバレ。ミシャにばっちり関根対策を立てられて関根は何もできないどころか、むしろ関根が攻めに出た裏を突かれてしまう始末。
・しかし、前半劣勢だった浦和もやられっぱなしではなく、後半に入って立て続けに決定機を作り、最近では珍しくセットプレーで先制。当然ながら一転して攻勢に転じた札幌に対していったん試合を落ち着かせるなり、あるいは試合を壊してぐだぐだにしてしまうなり、芳しくない試合内容でもなんとか勝ちに行く策を講じるべきだったでしょうに、浦和は馬鹿正直に札幌にお付き合いするかのようにオープンな展開にしてしまい、札幌の反撃を許してしまいました。まるでミシャが取り憑いたかのような試合展開。
・しかも同点に追いつかれて放った交代策が全部不発。75分カウンターからの絶好機を途中投入のファブリシオが決められなかったのがケチのつけ始め。杉本に至っては全く何もできないまま、いやむしろチームが杉本に何を期待し、何をやらせようとしているのか判らないまま試合終了。
・ミシャが試合後に「今日の試合の内容を見れば、我々が運動量で、球際で、そしてコンビネーション、チャンスの数で、相手を上回れていたと私は思います。」「ただ最後のところのシュート、あるいはラストパス、そうした精度の部分というのは、なかなかトレーニングで改善できるものではないのは確かです」と語っている通りの試合内容。
・第2節で札幌にホームで事実上虐殺されたことを思えば、このドローゲームは半歩前進と評価していいのかもしれません。ただ札幌と比べるとチームの練度ははるかに及ばないことを再確認させられた試合といってもいいでしょう。しかもその差は一朝一夕には追いつかない。ミシャ更迭からほぼ2年。その間浦和の監督は目まぐるしく変わっただけでなく、チームのスタイルまでコロコロ変わり、ビッグタイトルと引き換えに失われた時間の長さを痛感させられた試合でした。
・浦和は前節名古屋戦から小破離脱していたマウリシオが鈴木に代わってスタメンに復帰した他、ファブリシオ→長澤、橋岡→宇賀神、柴戸→エヴェルトンと4名入れ替え。柴戸・橋岡・汰木がベンチ外で、阿部・マルティノス・森脇がベンチ入りしたのが目を惹きましたが、これは優先順位が入れ替わったのではなく、中3日で天皇杯3回戦(vs水戸)が控えており、そこでのスタメン構成を考えた結果でしょう。ただ橋岡は攻撃面であんまりすぎて、レギュラーから外れたのかもしれません。
・この試合の印象が良くないのは、またしても試合開始早々にセットプレーで決定機を許してしまったことにあるのかも。1分福森CKのこぼれ玉をほぼフリーの鈴木が拾ってシュート。幸い角度もあまりなく、かつ西川の正面で事なきを得ましたが、何なんだろうな、この試合の入りの悪さは。
・札幌は立ち上がりこそ前から追ってきましたが、その後は前述のように自陣に5-4-1のブロックを敷いてのリトリート主体の守備を徹底。自然浦和がボールを持つ時間は長くなり、前半は6割以上浦和がボールを支配していましたが、単にボールを持たされてる印象が強く、急所に縦パスを入れることも出来ず、ミラーゲームゆえにフリーなWBに展開することも出来ず。「困った時の関根頼み」もままならず。
・札幌と比べると浦和はパススピードも判断も実に遅くて(自社従来製品比ではこれでも速くなっているとはいえ)、実に各駅停車的というか「指差し確認、出発進行」的な印象で絶えずボールの出しどころに常に困っている印象。ビルドアップに呻吟して興梠までボールが運べず。前半の浦和の決定機は37分札幌自陣でのスローインを奪ってからエヴェルトン→ボックス内で長澤枠内シュートくらいでしょうか。
・札幌は浦和が無理に縦パスを入れてくるところでボールを奪って縦に早いカウンター。浦和は例によって前からボールを奪回にかかりますが、札幌はロングボールを多用して浦和の前ハメを回避。そしてそのロングボールのターゲットとして無類の強さを見せたのがジェイ。
・高さ&強さを誇るジェイにボールが収まると、その背後でくねくねチャナティップとスピードがある武蔵が躍動。彼らの連携の良さ、動き出しの速さが浦和とは段違い。また札幌の前3人はそれぞれ全く特徴が違っているためか、浦和CB陣は大苦戦を強いられ、特にスピードに難があるマウリシオはチャナティップや鈴木に裏抜けされそうになったところで悉くファウルを取られてしまいました。
・31分鈴木の決定機は札幌の狙い通りのカウンターが嵌まったもの。縦パスを受けたジェイがマウリシオを吹き飛ばして鈴木をスルーパス。鈴木は西川と1対1になりましたが、前に出た西川が上手くシュートコースを消しているのか、シュートは枠を捉えられず。
・前半劣勢だった浦和もそのままやられっぱなしになったわけではなく、後半に入って54分槙野が高い位置でボールを奪回してからのショートカウンターから興梠シュート(やや力なくGK正面)、56分にも敵陣でボールを奪ってからのカウンターで武藤マイナスの低いクロス→エヴェルトン反転シュートの決定機。
・そしてその決定機から得たCKから57分エヴェルトンがヘッドで決めて浦和先制。マウリシオの折り返しが相手に当たって軌道が変わった後に運良くフリーのエヴェルトンに渡ったようなものですが、一点は一点。浦和はなんと大槻体制になって以降、これがセットプレーによる初めての得点なんだとか。柏木がずっと戦列を離れており、山中もスタメン起用の目途が立たず、プレースキッカーの人材難が祟っているのでしょうけど。
・先制された札幌が一転して前に出てくるのは当然ですが、残念だったのが先制後の浦和の試合運び。先述のように浦和は変に札幌にお付き合いして、リードしているのにオープンな展開にしてしまいました。
・もっとも試合後大槻監督は「ただあそこで1-0で我慢するのではなく、2点目を取りにいこうということは、選手と僕で一致した考えだったと思いますし、あそこで前に出ていくことは悪いことではない」と語っており、ゲームコントロールに失敗したわけではなく、あえてどつき合いの道を選んだ模様。オリヴェイラなら間違いなく「グダグダコース」を選んだと思いますが、この辺はもう哲学の問題なんでしょう。
・しかし、この選択は完全に裏目に。66分荒野縦パスを契機とする札幌の決定機こそチャナティップのシュートは西川の正面で事なきを得ましたが、68分札幌のロングカウンターで白井のクロスに反応したジェイになんとマウリシオと岩波の2人もが潰されてしまい、こぼれ玉を難なく鈴木が蹴りこんで同点。このカウンターはクロスのターゲットとしてジェイをフル活用した意味でも、関根が攻めに出た裏を突かれているという意味でも、札幌の算段通り。
・同点に追いつかれたことで大槻監督は71分長澤に代えてファブリシオを投入。しかし、75分西川のロングキックからのカウンター、興梠→ファブリシオの決定機を決められず、その後のファブリシオは守備の緩慢さが目立つばかり。札幌GKの位置を見てロングシュートを放つ辺りには研究の成果も可能性も感じられましたが。
・さらに81分に武藤に代えて杉本を投入するが、杉本の役割期待が判然とせず、これまたボールロストを繰り返すばかり。現状杉本は「山中千本ノックシステム」以外の使い道がないようですが、大槻監督が最後に投入したのは山中ではなく森脇でした。負けを避けようとすればその選択なのでしょう。
-----興梠-----
--武藤----長澤--
関根-エヴェ-青木-宇賀神
-槙野--マウリシオ--岩波-
-----西川-----
(得点)
57分 エヴェルトン
(交代)
71分 長澤→ファブリシオ
81分 武藤→杉本
89分 宇賀神→森脇
-----ジェイ-----
--チャナティップ--鈴木--
菅--荒野--宮澤-白井
-福森--キムミンテ--進藤-
-----クソンユン-----
(得点)
68分 鈴木
(交代)
61分 菅→ルーカス
88分 宮澤→深井
90+1分 ジェイ→中野
・札幌は前節出場停止の荒野がスタメンに復帰して、深井と入れ替え。
・駒井はいったん怪我から復帰したものの、また怪我をして浦和戦出場はお預け。リーグ戦序盤活躍したアンデルソン・ロペスのベンチ外が続いている理由は不明。
※写真は試合とは全く関係がありません。
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