【観戦記】ル杯2019準々決勝第2戦:鹿島 2-2 浦和 ~ 無意味な全力投球で興梠負傷という最悪の結末
・どこからどう考えても最もプライオリティーの低いルヴァン杯にほぼガチメンを送り込みながら、「2点以上取ったうえで勝つ」というタスク達成に失敗した上に、「ガチメン」の中で最重要であり、全く代えが効かない興梠が負傷するというこれ以上ない最悪のシナリオが現実のものに。
・相手の出方の変化に対応できなかった松本戦のあんまりな逆転負けを「大槻監督の終わりの始まり」と評しましたが、ルヴァン杯は「試合にプライオリティーを付けられない」「取り組みがどれもこれも中途半端に終わる」というやや中期的な観点から大槻監督の能力に疑問符を付けざるを得ない結果に終わり、またしても監督解任までのカウントダウンがちょっと進んでしまったような印象を受けました。
・もっとも大槻監督はトップチームでの経験がほとんどない新米監督であり、至らざるところが多々あるのは当たり前。そんな監督をなぜか急遽招聘して案の定さしたる結果は出ず、おまけに今年獲得した選手はどれもこれも給料なり移籍金なりに全く見合わない残念な出来に終わるという惨状をもたらした中村GMは、大槻監督の去就とか関係なく「さいたま市中引き回しの上、打ち首獄門」に処して然るべきでしょう。とはいえ、立花社長がその惨状及びのその主因をどこまで認識しているのか、かなり怪しいのですが・・・
・浦和は大幅にメンバーを落とした第1戦からファブリシオ→興梠、宇賀神→長澤、阿部→エヴェルトン、柴戸→青木、鈴木→岩波スタメンを大きく入れ替えて、汰木以外は現有のベストメンバーで第2戦に臨みました。少なくとも2点取らないといけないせいか、第1戦の後半途中で試行した「WBでの汰木&関根の併用」という「超バンザイ攻撃」を採用したのが目を惹きました。
・第1戦、前半だけで「0-3」という非常に厳しい状況だったにも関わらず、何の躊躇もなく興梠を投入したくらいなので、第2戦はほぼガチメンで臨むだろうと予想していましたが、予想以上にガチメンでした。
・鹿島は第1戦からスンヒョン→犬飼、永木→三竿、名古→セルジーニョ、土居→遠藤と4名入れ替え。こちらも浦和同様この後リーグ戦・ACL・天皇杯と次ぐ厳しい日程ですが、若手有望選手を海外にボコボコ引き抜かれてもなお戦力に格落ち感が出ない分厚い選手層のもとで「ご利用は計画的に」とばかりに上手くターンオーバーをこなしています。
・「少なくとも2点取らないといけない」とやるべきことがはっきりしているせいか、浦和の選手達の動きは非常に良く、大槻監督就任以来最高の出来と評してもいいくらい。敵将ですら「相手は試合前の状況でアグレッシブに来ることを想定していましたけれども、あれほどハイインテンシティーで入ってくることは少し予想外でした。」と驚いたほど。
・前3人への縦パスがズバズバ入り、時に最終ライン裏を狙わせるなどして相手守備陣を中央に寄せたところで、高い位置で空いているWB、特に汰木へ大きく展開してサイドから攻めまくりました。岩波から汰木へのワイドな展開なんて形としては垂涎もの。「ちょいミシャ」の4-4-2に対する攻撃手法としてはまさに教科書通りでした。
・また超前がかりな姿勢が良い目に転んでボールを失いそうになっても球際に強く、セカンドボールの回収も早く、ボールを失っても高い位置で奪回出来てと言うことなし。下がってボールを引き出して、いったん叩いては相手の最終ラインの裏を狙い、ボールを失ったら素早く切り替えて守備に回る武藤の消耗はハンパないだろうとは思いましたが。
・8分サイドに流れた興梠クロス→武藤ヘッド(緩い上にGK正面)、16分汰木クロス→興梠ヘッド(わずかに合わず)、21分汰木の縦パスを受けた武藤が左サイドを深く抉ってシュート(角度なくGKセーブ)ると良い形を作りました。
・ただ残念ながら汰木が何度も一対一での勝負の機会を与えたにも関わらず、ドリブルで対面の相手を突破できないという「J1での実力不足ぶり」が祟ってしまい、左サイドは次第に汰木がタメを作って武藤を走らせるだけに。前半浦和の得意な形に持ち込み、圧倒的に押していた割には1点どまりに終わったのは汰木の力不足が主因でしょう。これなら宇賀神の牙城は崩れそうにありません。
・そして28分の先制点は意外な形から。鹿島のクリアボールをバイタルエリアで回収した青木から興梠への縦パスはちょっとずれたものの、興梠がボックス内右サイドで拾ってクロス→長澤&エヴェルトンと二人飛び込んで、エヴェルトンがゴール!! エヴェルトンは38分にも際どいミドルシュートを放ってGKクォン・スンテに冷や汗をかかせる見せ場があり、総じて「ちょいミシャ」攻撃時の4-1-5の「1」のはまり役になりつつあるという好印象を受けました。
・鹿島の前半唯一の決定機は41分、遠藤からのスルーパス一発で白崎が関根の裏を取り、折り返しを伊藤がシュート。絶体絶命の大ピンチでしたが、ここは西川がビッグセーブ。
・1点どまりだったとはいえ、この大ピンチ以外は鹿島に何もやらせず、上々の出来で折り返しましたが、残念ながら後半早々に興梠が負傷して試合は一気に暗転。46分長澤→興梠のカウンターのチャンスで、興梠のシュートをブエノがブロックした後に興梠と交錯。興梠はいったんピッチに戻ったもののやはりダメで50分にファブリシオ投入を余儀なくされました。
・このブエノのプレーは悪質でもなんでもないのですが、「興梠には厳しく行く」姿勢は鹿島守備陣に徹底されており、興梠も半ば以上それを承知の上でプレーしているとはいえ、何もこんな試合にわざわざ虎の子を出して案の定負傷退場という最悪の結果を招くかね??? 得られるものに対するリスクが全く見合っていません。
・そして興梠退場と同時に、あれだけ見事だった「ちょいミシャ」はいとも簡単に雲散霧消して、攻撃どころかボール保持すらままならなくなってしまい、試合は59分土居を投入して「本気」を出し始めた鹿島のペースに。大槻監督も完全に行き詰まった汰木を早々と諦めて62分に荻原を投入したものの、劣勢を覆せないまま66分とうとう失点。
・失点は第1戦に続いてセットプレーから。小池低いFK→ニアで土居フリックがファブリシオに当たり、そのこぼれ玉を犬飼にいち早く拾われてしまうというやや不運な形でした。しかし、その後もセットプレーで最後は鹿島のシュートで終わり、単に枠に飛ばなかったから大過なかっただけという場面が目立ち、この失点は不運では片付けられないでしょう。
・浦和は残り30分弱で2点取らないといけない羽目に陥りましたが、大槻監督は73分なぜかエヴェルトンを下げて杉本を投入。エヴェルトンは自分が代えられるとは全く思っていなかったのか、しばらく交代を渋っていましたが、この交代は悪手でしょう。
・ファブリシオといい杉本といい、興梠とは特性が全く違うFWなのになぜか3-4-2-1の1トップに据えて興梠と同じようなことをやらせようとする。しかも正しい使い方をされているとは思えないFWをなぜか併用する。興梠不在時のプランBというかコンティンジェンシープランみたいなものの無さには心底がっかりさせられ、「ちょいミシャ」の影も形もなく、ただただ選手達が無秩序・無原則にに走り回っているだけという「ちょいゲルト」的な地獄絵がまたしても目の前に。
・しかし、77分縦パスで杉本をスペースに走らせるという杉本の正しい使い方の萌芽が見られたのを契機に、荻原クロス→ファーに逆サイドから関根が突っ込んでヘッド!!という見事な形で浦和2点目!
・これで「あと1点で勝ち抜け!」という形になったので浦和サポの士気は一気に上がりましたが、ピッチ上で繰り広げられているのは「ちょいゲルト」なことになんら変わりがないので浦和劣勢に変わりなし。
・87分マウリシオが無理に関根に縦パスを入れたのが仇となり、関根はボールを失うどころか大きくバウンドしたボールがセンターサークルにいた伊藤に繋がってしまう大惨事となって鹿島のショートカウンターが発動。土居→セルジーニョ→伊藤と繋がって鹿島2点目。
・もっとも鹿島の2点目は浦和にとってあまり痛手ではなく、もう1点取れれば延長戦に持ち込める可能性が残っていましたが、そんな状況下で90分に起こったのが「VARシカト事件」。長澤のスルーパスを受けた杉本がボックス内でブエノに倒されているように見えるのですがPKはなく、しかもVARと交信を取っている姿が確認できたにも関わらず、佐藤主審はVARを確認しようともせずに流してしまいました。
・この試合、得点の都度佐藤主審は逐一VARと交信してなかなかキックオフさせようとしない不思議なほど慎重な姿勢を取っていただけに、最もVARで確認し欲しい場面でVARを活用しなかったのは謎過ぎました。
・もっとも浦和の劣勢は隠しようもなく、77分に奇跡的に良い形が出来ただけで、むしろ鹿島に3点目、4点目を取られてもおかしくない試合内容だったので、杉本のPKを取っていたとしても延長戦で逆転できた可能性は薄かったと思います。
・負傷退場した興梠はそのままベンチに座っていたので、大事を取って無理しなかっただけなのかもしれませんが、中4日で迎えるC大阪戦、それどころかその次の上海上港戦をも欠場となると一大事です。
・結局興梠がいないとどうにもならないことをまたしても確認しただけに終わったルヴァン杯ですが、その中で数少ない収穫はビハインド時に荻原がWBで使える目途が立ったことでしょうか。少なくとも大槻監督が評価していたであろう汰木よりは可能性大。気性難で、いれこみすぎる嫌いがあるのがリスキーでスタメンにはまだまだと思いますが、ビハインド時は汰木どころか山中よりも優先して投入するに値する出来だったかと。
-----興梠-----
--武藤----長澤--
汰木-青木--エヴェ-関根
-槙野--マウリシオ--岩波-
-----西川-----
(得点)
28分 エヴェルトン
77分 関根
(交代)
50分 興梠→ファブリシオ
62分 汰木→荻原
73分 エヴェルトン→杉本(杉本が1トップ、長澤がボランチへ)
---伊藤--土居---
白崎-------セルジーニョ
---レオシルバ-三竿---
小池-犬飼--ブエノ-小泉
-----クォンスンテ----
(得点)
66分 犬飼
87分 伊藤
(交代)
59分 遠藤→土居
80分 小池→永木
90+1分 小泉→チョン・スンヒョン(5バック化)
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