【観戦記】ル杯2019準々決勝第1戦:浦和 2-3 鹿島 ~ 一応試合の形になったが割に合わない
・前半だけで0-3。ハーフタイムで帰ってしまう人すら見受けられた惨状から、興梠投入後2点奪い返して一応試合の形にはなった、第2戦で逆転可能なところまで持ってはいきましたが、それに要した機会費用なりリスクなりを思えば全く割に合わなかったと思います。
・なんなんだろうな、この2試合の「割り切り」の無さは。湘南戦では明らかに続くルヴァン杯に色気を残したと見られても仕方ないスタメン選考、具体的には宇賀神をベンチ外にして山中をスタメン起用する挙に出て、これがものの見事に失敗。
・湘南戦がドローに終わっていよいよ残留争いの深みに嵌まったのは明白なのに、この試合では武藤を中2日で連闘させ、既に使い詰めの関根もスタメン起用。あんまりな前半を受けて、後半はテストに専念するのかと思いきや、なんと興梠を投入する暴挙に出ました。今のチームは興梠が故障したら一巻の終わりなのは明々白々なのに、ルヴァン杯でわざわざ興梠を使うかね・・・ しかも試合後の選手インタビューでは興梠は「もともと使うつもりがなかった」ことが判明。
・使うつもりがなかったならベンチに置くべきではないでしょう!!やることなすこと全てが中途半端。その帰結としてどの試合も結果が出ていない。その挙句若手育成の余裕すら失ってしまいました。残留争いに片足突っ込んでしまった以上、どう見ても優先順位は「リーグ戦>ACL>>>>>>>天皇杯>>>>>>ルヴァン杯」であって然るべきなのに、ルヴァン杯ですら中途半端に勝ちに行って、しかも失敗(いや第2戦に一応可能性は残っていますが)。
・その点昨年のオリヴェイラ監督の割り切りっぷりは凄かった。ACL出場権獲得を必達タスクとして与えられ、そのタスク達成のために最も現実的な天皇杯優勝に早いうちから最優先で取り組んだ末に見事タスク達成。その過程でルヴァン杯でJ2甲府に惨敗するという目も当てられない出来事もありましたし、もうちょっと長い目で見れば戦術的な積み上げはないに等しく、今年早々と行き詰まってしまったわけですが、それでもあの割り切りは評価されて然るべき、限られた資源でタイトルを獲るコツを持っていた監督だったと思います。
・成績不振のオリヴェイラ監督を更迭して、なんだかよく判らない理由で後任に据えた大槻監督はトップチームでの経験がないに等しい新米監督なのに、タスクの優先順位をつけるどころか「若手育成」までタスクに加えたフロントは、何もかもが中途半端に終わっている現状をどう考えているのか? 大槻監督のタスクを減らして楽にしてやる心積もりはないのか?? あんまりな試合内容で前半だけで0-3になったこと以上に腹立たしい問題だと思いました。
・両チームとも直前のリーグ戦から中2日という厳しい日程。浦和はGK&CB陣こそ岩波→鈴木の入れ替えだけに留めましたが、3列目より前はほぼ総入れ替え。ただ武藤を連闘させたことと、すでに使い詰めで、湘南戦でも後半頭から投入を余儀なくされた関根をスタメンで使ったことは、この試合の重要性からすれば疑問手だと思います。なお、先月Jリーグ特別指定選手に承認されたばかりの大久保がベンチ入りしたのが目を惹きました。
・鹿島も前節清水戦から7名入れ替えましたが、こちらは浦和同様ACL→リーグ戦→ルヴァン杯の連戦の過程でリーグ戦のメンバーを落とした(具体的には白崎、レオシルバ、土居、伊藤がスタメン落ちorベンチ外)結果なので、CBチョン・スンヒョン以外はほぼフルメンバーといって良い陣容。もっとも今年の鹿島は新戦力の台頭が著しく、誰が出ても全然駒落ちの感じがしませんが。
・前半の試合内容は悲惨としか言いようがありませんでした。序盤の浦和はセンターサークル付近くらいからプレッシャーをかけにいったように見受けられましたが、試合後複数の選手から指摘されているように、これが鹿島のビルドアップに対して何の制約にもなっていませんでした。汰木&ファブリシオを併用するとこうなるのは戦前から予想できそうなものですが、この「中途半端」さがなかなか解消されないのは大槻監督の責任でしょう。
・当然ながら浦和は高い位置では全くボールが奪えないので最終ラインで跳ね返すだけになってしまい、なんとか最終ラインでボールを奪っても4-1-5っぽい「ちょいミシャ」仕様の「1」に入る柴戸に展開力が無さすぎて、往々にしてパスミスで終わってしまい、ビルドアップに四苦八苦。また前で何とかボールを収められるのは武藤だけで、その武藤をファウルで潰されると浦和の攻撃は詰んだも同然。せいぜい関根の独力突破に一縷の望みを託すだけに。
・25分くらいから浦和の攻め手のなさを逆手に取られてカウンターを浴びがちになり、汰木が自陣深い位置で名古を引っかけてファウルを取られたのを契機に、35分永木FK→ブエノヘッドでとうとう失点。ブエノにほぼどフリーで飛び込まれるとは・・・
・不格好ながらなんとか耐えていた浦和守備陣。全く点が入る気がしないので1点ビハインドでもきついのに先制点を取られたことで早々と守備陣の心が折れてしまったのか、この失点から大決壊。
・38分の失点はマウリシオの「バンザイ突撃」が契機。この日はなぜか3バックの中央ではなく、右に起用されましたが、どう見てもこれが大失敗。失点場面ではなぜか前に出て白崎を潰そうとしてあっさり交わされ、しかも転ばされてしまう大失態。そこでぽっかり空いたスペースをレオシルバに蹂躙されてボックス内に入られ、ファーへのクロスを土居が楽々関根に競り勝ってゴール。
・マウリシオの「バンザイ突撃」はその後何度も繰り返されたにも関わらず、大槻監督は鈴木とポジションを入れ替えず、森脇と代えようともしなかったのもこの試合の謎でした。
・43分の3失点目に至ってはもう「総員バンザイ突撃」みたいなもので、各々が何の考えもなしにバラバラにボールを追うものの、それではボールを奪えないのは道理で、逆にスカスカになった中盤を好き放題に鹿島に使われた時点でもうアウト。白崎のスルーパスで宇賀神の裏へ小池に抜け出され、小池の折り返し→土居シュートこそなんとかブロックしたものの、こぼれ玉をどフリーの名古に拾われてしまいました。
・前半だけで0-3。しかも全く点が入る気はせず、守備も完全に破綻しているのは明らか。もう試合にもなんにもなっておらず、後半は荻原や大久保に経験を積ませる場と大槻監督が割り切っても何の批判になかったでしょうに、なんと大槻監督は勝負を捨てずに52分宇賀神に代えて興梠を投入して、汰木を左WB、関根を右WBに回す「超バンザイ突撃」を敢行。
・興梠投入で前でボールが収まりが良くなったので、浦和の攻撃は急に活性化。しかも「超バンザイ突撃」と開き直ったのが奏功して中途半端過ぎた前プレがかなり解消されて、前ハメの効きが良くなる好循環が生まれました。
・58分マウリシオ縦パス(これが唯一のマウリシオ右CBの成果か?)を小池とブエノの間で受けた武藤がボックス内で前を向いてシュート。そのこぼれ玉を興梠が拾って遅まきながら浦和が反撃開始。さらに60分武藤CK→鈴木ヘッドこそGKが辛うじて阻みましたが、クリアし損ねを槙野が詰めて、前半の惨状を思えば奇跡としか言いようがない、まさかまさかの1点差に迫りました。
・これによりゲームは急激にオープンというか流動化。興梠が前でボールを収めてくれるため、ファブリシオが前を向ける機会が増えたこともあって、74分関根の縦パス→ボックス内で武藤ポスト→ファブリシオの決定機を作りましたが、シュートは枠外。
・ただ1点差に迫って俄然スタジアムは盛り上がりましたが、浦和の攻撃に何か今後に繋がるようなものがあったかとなると甚だ疑問。67分関根がボックス内突入寸前でレオシルバに後方から押されて倒された場面(しかしノーファウルで、関根は審判への露骨すぎる異議でイエロー)に象徴されるように、浦和の「超バンザイ攻撃」って要するにやたらハイテンションになった選手が個人能力でなんとかしようとするだけの、いわば「なんとかに刃物」状態に過ぎないように感じました。
・せめて893の出入りであったとしても、ローストチキン屋の屋台の陰からファブリシオが派手に援護射撃をして、その隙に関根が刃物を持って敵の事務所に乱入するみたいな、多少なりとも組織性が感じられたのであればまだ良いのですが、この試合は単に鉄砲玉が代わる代わる現れているだけに過ぎなかったかと。
・言い方を変えれば、興梠投入で建て直した後半ですら「ちょいミシャ」はもはや雲散霧消し、かといって「ちょいオリヴェイラ」でもなく、強いて言えば個人能力に頼るしかなかった「ちょいゲルト」みたいな試合内容ではなかったかと。その先に何があるのか???
・そんな「なんとかに刃物」状態に陥った相手に、まともに立ち向かうと怪我をするだけだとばかりに我に返った鹿島は77分から順次選手を代えて試合を落ち着かせにかかり、最後は念には念を入れて5バックになって逃げ切り態勢に。
・一方浦和は「超バンザイ攻撃」を成り立たせる可燃物=ハイテンションを保つためにはとにかく元気の良い選手を入れるしかないのに、疲労のためかトラップがやたら大きくなりがちな武藤も、サイドで高い位置を取れなくなった汰木をも変えずに放置。負けているのにこれはないわぁ・・・ ようやく86分に投入された荻原のドリブル突破に多少の可能性を感じたものの、10分足らずでは決定機には至らず。試合終了間際に阿部CK→興梠ヘッドもGK正面。
・この塩梅だと大槻監督は中3日で迎える第2戦で興梠をスタメン起用するどころか、ほぼフルメンバーを揃えて「2-0」の勝ちを目指しに行くんでしょうなぁ・・・ その先にどんな地獄が待ち構えていようとも。
----ファブリシオ-----
--汰木----武藤--
関根-阿部-柴戸-宇賀神
-槙野--鈴木--マウリシオ-
-----西川-----
(得点)
58分 興梠
60分 槙野
(交代)
52分 宇賀神→興梠(興梠1トップ、ファブリシオがシャドー、汰木左WB、関根右WBへ)
86分 武藤→杉本
86分 汰木→荻原
・この試合、Jリーグで初めてVARが採用されましたが、幸か不幸かVARが発動されそうな場面はなし。先述の67分関根へのファウルはそもそもボックス外なのでPKになりようがなく、レオシルバに一発レッドが出る場面でもないので、当然VARはなし。関根がイエローをもらった後に槙野がVARを要求しているように見受けられましたが、あの行為自体がイエローではないかと。
---伊藤--土居---
白崎--------名古
---レオシルバ-永木---
小池-スンヒョン--ブエノ-小泉
-----クォンスンテ----
(得点)
35分 ブエノ
38分 土居
43分 名古
(交代)
77分 小池→三竿(三竿ボランチ、永木左SBへ)
84分 土居→セルジーニョ(負傷による交代)
87分 名古→犬飼(5-4-1へシフト)
| 固定リンク