・前節C大阪に敗れてとうとう15位に転落した浦和。16位鳥栖が勝ち点4差と迫り、今節鳥栖に敗れればいよいよ降格圏入りへ向けてのカウントダウンが始まる一方、勝てば一息つけるという一大決戦、俗にいう「6ポイントマッチ」にも関わらず、浦和の命綱=興梠がなんとベンチにすらいないという非常事態!!
・興梠に何があったのか、試合後も大槻監督は口を閉ざしていますが、やむなく武藤を1トップに据えて前半2-0で折り返すという大善戦を見せたものの、後半は謎の選手交代が仇となってあれよあれよという間に3失点。終盤の浦和は青木のミドルシュートに見せ場があったくらいで決定機は作れていなかったため敗色濃厚でしたが、ATにPKを得てなんとかドローで終了。
・勝てた試合だったのに後半は監督の修正能力の差が如実に出て、敗戦寸前のところまで持って行かれたという点では極めて残念であり、今後にも不安が残る試合でした。しかし、後半の内容はともあれ負けずに勝ち点1を拾った、16位鳥栖とは勝ち点4差のまま1試合消化できたというのは残留争いを闘う上では悪くはない話で、浦和は一応最低限のタスクは果たしたと前向きに評価すべきでしょう。言い換えればドローゲームで相対的に痛手を負ったのは間違いなく現在プレーオフ圏にいる鳥栖のほう。
・浦和は上位との対戦を多数残しており、残留争いの直接対戦に勝てなかったことで将来を不安視する向きもあるようですが、順位ほど力の差がないのがJリーグの常。浦和はどことやっても苦戦を強いられる反面、アウェー神戸戦のように「10回やったら10回とも負ける」と感じられるようなどうにもならない相手を残しているわけでもありませんから過度に悲観する必要はないと思います。
・また残留争いは相手のある話で浦和の状態だけ見ていても仕方がなく、浦和よりもさらに弱いチーム、浦和よりも状態が悪いチームが3つあれば良いだけの話。そう考えると浦和はギリギリセーフなのかな?という気もしてきます。ただ後半の試合運び=謎の選手交代と1点取られるとガタガタと崩れてしまう試合展開は既視感ありありで、この勝ち点1を素直を喜んでいいものかどうか。それもまた正直なところです。
・繰り返しになりますが、この大一番に興梠がベンチにすらいないのは衝撃的すぎました!! 興梠に頑張ってもらうしか点を取る形がない、興梠がいないと前からの守備がどうしても緩慢になる。「FC興梠」と揶揄する向きすらいるくらい興梠への依存度が高いチームなのに、その興梠がいないとは!!
・興梠は一応鳥栖遠征に帯同はしていたようですが、試合当日になってやはり無理ということでベンチ入り見送りとなった模様。最もプライオリティーが低いルヴァン杯で興梠を無駄遣いした挙句に故障してしまい、その後も天皇杯を唯一の例外として無理使いを重ねているうちに大一番に欠場とは・・・
・そして興梠の代わりに武藤が1トップに。武藤は天皇杯で後半フルタイム使って中2日なので、元々はこの大一番でのスタメン起用を想定していなかったと思えてなりませんが、この巡り合わせの悪さというかなんというか・・・
・浦和の立ち上がりの出来は芳しくなく、2分攻めきれずにカウンターを食らい、岩波からボールを奪った小野がドリブル突進→ぽっかり空いた浦和右サイドから金崎シュート、さらに3分またしても攻めきれずにカウンターを食らい、クエンカのパスを受けた金森が橋岡を裏を取ってクロスと危ない形を作られてしまいました。
・ところが先制したのは意外にも浦和。7分西川ゴールキック→橋岡がハイボールをCB高橋秀に競り勝ち、さらにファブリシオもハイボールをCB高橋祐に競り勝ち。鳥栖はCBが二人ともいないも同然の形に陥ってしまい、ファブリシオが落としたボールを武藤がアーク付近でどフリーで拾ってゴール!!武藤はこれがリーグ戦初ゴール。
・浦和先制後も試合は全く落ち着かず、9分に原川の縦パスで金井が橋岡の裏を取ってクロス→小野シュートの危ない形を作られた一方、13分岩波のワイドな展開から左サイドで原と一対一になった関根クロス→中で武藤空振りも、その背後の長澤に絶好機!(GK高丘が片手で辛うじてセーブ)、20分センターサークル付近での青木が松岡からボール奪取→武藤がGKの頭上を狙ってループ気味のロングシュートと試合は攻め合いの様相。
・鳥栖は伝統的にファウルが多く、浦和に傷む選手が続出。浦和はこれといったプレースキッカーがいないのでいくらファウルを犯してもイエローカードさえもらわなければ問題なしと見切られているのかもしれません(そしてその手癖・足癖の悪さが最後の最後で命取りに)が、29分浦和FKから鳥栖クリアボールを鈴木が拾ったところから長澤が右サイドでフリーの橋岡へ展開→橋岡クロス→長澤バイシクル気味のボレーが追加点!!
・39分鳥栖CKからのカウンター。西川のキック一本で武藤、そしてフォローに入ったファブリシオに決定機がありましたが、共にシュートを撃ち切れず。
・浦和は2点リードしたものの、守備面で興梠不在がモロに響いているのか前ハメは全く効いておらず、高い位置でのボール奪回は望み薄なので自然と5-4-1の守備ブロックを敷いて耐える展開に。鳥栖はクロス攻撃に頼るしかなく、しかもいくらサイドから形を作れども中が薄いため、浦和守備陣は難なく跳ね返して前半終了。
・またほとんどの選手が久しぶりにまとまった休みを取って関根を筆頭に身体のキレが戻っている上に、キックオフ直後から曇りがちになって幾分涼しくなったのも助けとなったのか、前半は概して球際でも浦和が優勢を保っていたように感じました。
・鳥栖はサイドから攻撃の形は出来ているがフィニッシュだけがもの足りないという状態だったので、後半頭から豊田を最前線に投入して小野をボランチに下げるという実に意図が判りやすい交代を発動。さらに55分J1では力不足の感は否めない金森一万円を下げて安を投入しサイド攻撃をテコ入れする、これまた判りやすい選手交代。
・一方浦和の最初の選手の交代はなんと60分エヴェルトン→柴戸。試合後大槻監督は「運動量の担保です。真ん中が空いていたので、そこを埋めたかったです。」と説明していますが、残念ながら今の柴戸はやたらボールホルダーに食いついてしまう狂犬と化していて、スペースを埋めるという感覚を持ち合わていないので、監督の意図と駒の性能が全く噛み合っていないかと。本来ここは阿部が適材なのでしょうが、残念ながら阿部はこの試合出場停止。
・むしろ5-4-1の守備ブロックが押し込まれて武藤が孤立し、武藤も中2日が祟ってヘロヘロでボールを収められないので最終ラインも上げるに上げられないという悪循環に陥っているのが問題なので、真っ先に武藤ないしファブリシオを代えて杉本を投入し、杉本にボールキープはたいして期待できないにせよ、裏抜けを狙わせて相手の最終ラインを下げさせるべきじゃないかと思ったのですが・・・
・そして案の定浦和の選手交代は全く効かず、両サイドで劣勢に陥って徐々に豊田にクロスボールが入り出し、69分関根が不用意に豊田を倒したところで得たFKを原川が決めるともう後は失点の匂いムンムン。70分にはボックス内で豊田ともつれ合った槙野があわやPKかという一幕があり、さらにクエンカがサイドからボックス内突入&シュート。
・失点直後の浦和の選手交代=72分ファブリシオ→汰木の交代も大槻監督は「ボールを収めたかった」とのことですが、これまた何の効果もなく、73分浦和右サイドからクエンカクロス→ファーで豊田の危ない形を作られ、さらに74分鳥栖CKから小野浮き球縦ポン→豊田胸でポスト→金崎拾ってゴール!!豊田がオフサイド臭くて揉めましたが、副審に確認の上ゴールを認定。
・ある程度ボールを持て、縦に運べる選手をどんどん外してしまったので、80分遅まきながら武藤を下げて杉本を投入するもなんら戦況に変わりなし。そして82分槙野のパスミスを安に拾われてショートカウンターを食らい、関根の裏へ飛び出した安の折り返しを逆サイドから突っ込んできたクエンカに決められてとうとう逆転されてしまいました。1点取られるとガタガタっと崩れてしまうのはサブ組もレギュラーも大差なし。これが「敗者のメンタリティー」なのでしょう、たぶん。
・何の効果もない選手交代3本立てでどこからどう見ても浦和の敗戦濃厚。AT+3分青木渾身の一撃もGKに防がれて万事休すと思わましたが、そこで得たCKからの流れで思わむドラマが。青木の放り込みに対して、ボックス内で金井が岩波を突き飛ばしてPK。現地では何が起こったのか全く判りませんでしたが、後で映像を確認すると紛うことなきPKでした。
・PKを杉本2980円(増税前税込み)が決めて浦和が九死に一生を得る形に。杉本は天皇杯でPKを失敗、しかもこれ以上ないヘナチョコPKで失敗したばかりのせいか、PKキッカーは本来槙野だったようですが槙野が杉本に譲ってて「ちょい美談」でええのか、それで???
-----武藤-----
--ファブリシオ---長澤--
関根-青木--エヴェ-橋岡
-槙野--鈴木--岩波-
-----西川-----
(得点)
7分 武藤
29分 長澤
90+7分 杉本(PK)
(交代)
60分 エヴェルトン→柴戸
72分 ファブリシオ→汰木(汰木は当初シャドー、途中で関根とポジション交代)
80分 武藤→杉本
---金崎--小野---
クエンカ--------金森
---原川--松岡---
金井-高秀--高祐--原
-----高丘-----
(得点)
69分 原川
74分 金崎
82分 クエンカ
(交代)
HT 松岡→豊田
55分 金森→安
83分 高橋祐→パク・ジョンス(負傷による交代)
・金監督は試合後「ただ一つだけ、こんなに両チームが納得しないジャッジってあるのかなと、やりながら思いました。」と明確に審判団を批判していますが、槙野と違って出場停止処分にはならないんでしょうなぁ、たぶん。