【観戦記】ACL2019・準決勝第1戦:浦和 2-0 広州恒大 ~ おい、何なんだ、この強さは!!!
・リーグ戦では第20節磐田戦を最後に勝ちがなくて残留争いにどっぷり浸かり、天皇杯ではあろうことかアマチュアクラブに完敗を喫した浦和。正直「ACLに力を入れている場合じゃないだろう!!」と思わないでもないのですが、この日の浦和はまるで別人でした!! 何なんだ、この強さは!!
・今年のとにかくクソ弱いヘナチョコレッズはこの日のための壮大な前振り、チームまるごと「大アジジ作戦」だったとしか思えないくらいの変わり身でした。ずっと試合を見ている者ですらこの日の浦和の強さは信じ難い、率直に受け入れられないのですから、敵将カンナバーロは「聞いてないよ!!!」とばかりに唖然とするしかなかったと思います。
・シュート数12対3。得点は共にスーペルゴラッソでしたが、浦和は両サイドからチャンスを量産してシュートはそのほとんどが決定機に近く、3点、4点と取って第2戦を待たずに事実上勝ち抜けを決められた可能性すらあったのに対し、広州恒大は決定機らしい決定機は一つも作れず。とにかくCB陣が奮闘して広州恒大の誇るブラジル人トリオに文字通り何もやらせませんでした。84分に7番の裏抜けを許す場面がありましたが、審判団協議の末オフサイドの判定で命拾い。
・不思議だったのは普段4バック(4-3-3/4-4-2など多少バリエーションあり)で闘っているはずの広州恒大がなぜかわざわざ3-4-3の布陣を採用して、浦和にミラーゲームを挑んできたこと。試合後の会見によれば、空中戦に強い橋岡を警戒して長身の5番(CBジャン・リンポン)を当てたところからこの布陣に帰着したようですが、これが全く機能せず、わざわざ手当したはずの両サイドで浦和に完敗。
・とにかく両サイドが優位に立っている時の浦和はそれなりに強く、鳥栖戦後半みたいにWBが下がって5バック化しているとロクなことがない。この日は策士策に溺れたカンナバーロに助けられ(?)、WBが押し込まれる場面なんてほとんどありませんでした。たまに守りに回ることがあっても全く破綻なし。特に橋岡は鳥栖戦でクエンカ先生に徹底的にしごいでもらい、結構痛い目にあったのが良い予行演習になった感すらありました。
・こんな試合がコンスタントに出来れば残留争いの深みに嵌まるなんてことは絶対にないのでしょうけれど、往々にして「かいしんのいちげき」に終わってしまうのが悲しい浦和の歴史。この日の完勝を受けてACL決勝進出時の算段をする以前に清水戦・大分戦と続くホームゲームを勝って残留争いから一歩抜け出すのが何より肝要なはずですが、そううまく行くかどうか。毎試合失点を重ねてきた浦和が相手に決定機らしい決定機も与えずに完封勝ちしたというのは清水戦へ向けての一番の好材料だと思いますが。
・鳥栖戦から中3日の浦和は鳥栖戦ベンチ外だった興梠がスタメンに復帰して、武藤がベンチスタートになったのみ。武藤は天皇杯で45分も使って、さらに中2日で鳥栖戦にほぼフルで使ってしまったので、この試合でのスタメンは無理だったのでしょう。
・前述のように広州恒大はなぜか普段の4バックを捨てて3バック、しかも守備時はブラジル人3人が常に前残り気味になって5-2-3っぽい奇怪な布陣を敷いてきました。ところが、ブラジル人3人は前から厳しくプレッシャーをかけてくる訳でもなんでもないので、中盤のスカスカ具合だけが露わになって、ビルドアップが拙い浦和ですら楽々ボールを繋げて序盤は左サイドからやりたい放題。
・9分槙野縦パス→関根が裏抜けしてクロス、17分中盤での小気味よいパス回し(そんなものが今の浦和にあったのか!)から最後は槙野縦パス→関根シュートの決定機。この日の槙野は大きなサイドチェンジはほとんど見受けられなかった一方、効果的な縦パスでチャンスを演出し、守っては対面のタリスカに何もやらせずと文句なしの出来でした。
・そして19分関根のパスをバイタルエリアで受けたファブリシオのミドルが炸裂して浦和先制!! 昨年の好調時を取り戻したかのような鮮やかなミドルでした。結果が出なくても我慢して使っているうちに、ファブリシオのシュート精度が次第に上がっていることだけは判っていたので、どこかで炸裂する日が来るだろうとは思っていましたが、まさかこの大一番で炸裂するとは!! 昨年同様ミドルシュートがバンバン入りだすと多少守備が緩かろうがなんだろうか、十分お釣りが来ます。
・さらに26分興梠→長澤→ボックス内で裏抜けに成功した橋岡がGKすら交わしたもののシュートを撃ち切れずにDFにクリアされる一幕も。橋岡は空中戦に強いだけでなく、対面の5番に対してはスピードでも勝り、クロス精度も目に見えて上がってきているのですが、シュートモーションがでかくてその間に相手DFに詰められてしまうのはどうにもならないかも・・・
・さらに28分青木縦パス→関根クロス→エヴェルトンに決定機があったものの、追加点ならず。
・前半の広州恒大はほとんど攻撃の形を作れず、チャンスらしいチャンスは11分タリスカのワイドな展開からシュートに持っていた場面だけ。縦ポンで何度かエウケソンに裏抜けを狙わせている風でしたが、そこは鈴木が難なく対応。マウリシオの出来が芳しくなく、しばしば瞬間湯沸かし器と化して出場停止を重ねているうちに、鈴木がレギュラーポジションを奪ってしまったようで、ここは競争原理が上手く作用しているようです。
・奇策「3-4-3」が大失敗に終わった以上、カンナバーロは後半なんらかの修正を仕掛けてくるであろうし、相手の出方の変化に対する大槻監督の対応がとにかく遅れがちなのが不安でたまりませんでしたが、意外や意外、カンナバーロは後半に入っても布陣を変えず、選手交代すらなし。
・一応ボールポゼッションを高めて反撃に転じてきましたが、ここで浦和が鳥栖戦後半のように守備ブロックをズルズル下げずに奮戦したのが良かったのか、広州恒大は依然決定機を作れず。55分にロングカウンターでエウケソンへの縦パス&ポストプレーからチャンスになりかかった場面がありましたが、あれが広州恒大が本来やりたかったことだったのかも。
・広州恒大に攻め手がない一方、中盤スカスカ傾向は一向に解消されないので浦和がカウンターで決定機の山。
・61分橋岡ボール奪取からのショートカウンターで興梠→ファブリシオの決定機を逃したところで、大津監督はファブリシオに代えて攻守のバランスが良い武藤を入れて守備力を強化。しかもその武藤が前からの守備に奮闘するだけでなく、やたらチャンスに絡んで67分には岩波縦パス→長澤→橋岡クロス→ボックス内で武藤がどフリーでダイレクトボレー!(GKが好守)。さらに73分には高い位置でのボール奪取に成功した武藤がそのまま自らシュート。
・75分の追加点はその武藤が得たCKから。最初のCKはクリアに逃げられましたが、続くCKで広州恒大のクリアボールをひろった関根がミドルを叩き込んで浦和に待望の追加点!! 目が覚めるようなスーペルゴラッソでしたが、昨年の天皇杯決勝で宇賀神ミドルと似た形であり、それなりに練習を重ねた結果なのだろうと思います。
・広州恒大は65分ガオ・リン投入を皮切りに順次前目に中国人選手を投入してパウリーニョやタリスカを中盤に下げ、さらに途中から布陣を4-3-3変えたものの、やはり決定機は作れず。84分タリスカ縦パス→パウリーニョヒールで流す→7番(ウェイ・シーハオ)裏抜けを許した場面は主審と副審が協議してオフサイドの判定。Jリーグなら副審に確認せずにあっさりゴールを認めてしまうかもしれません(苦笑)。いやはやまたしても安心安定のACLの笛でした。
・大槻監督は86分長澤に代えて阿部(3ボランチ化と思いましたが、エヴェルトンはどう見ても右シャドーの位置)、さらに88分関根に代えて宇賀神と締めるべき選手を投入して楽々逃げ切り。鳥栖戦と違ってこの試合の選手交代は全て納得感がありました。
・リーグ戦・カップ戦を通じて久しぶりに勝っただけでなく、手強い相手にとんでもなく良い内容で勝った、しかもホーム埼玉スタジアムで勝った以上、これで「浮かれるな!!」というのは無理があろうと思います。そして上手く切り替えられずに「期待すると裏切られる!」をくり返してきたのが悲しい浦和の歴史。
・この日の完勝でACL準決勝勝ち抜けが決まったわけではなく、もちろんJ1残留が決まったわけでもありません。ただ長らく勝てずに自信を失っているせいか、1点取られると「また今日もダメか」と言わんばかりにガタガタになってしまいがちな浦和の選手達のメンタルがこの試合を機に少しでも前向きになってくれれば、浦和が苦境から抜け出すのはそう難しいことではないように感じました。それだけのポテンシャルを持っているんです、浦和は!!
-----興梠-----
--ファブリシオ---長澤--
関根-青木--エヴェ-橋岡
-槙野--鈴木--岩波-
-----西川-----
(得点)
19分 ファブリシオ
75分 関根
(交代)
67分 ファブリシオ→武藤
86分 長澤→阿部(阿部がボランチ、エヴェルトンがシャドーに上がる)
88分 関根→宇賀神
・興梠はボールを収めて他に展開する役に徹していて、全くと言っていいほど自分で撃ちにいかなかった(61分のファブリシオに出した場面は好調時なら反転して自分で撃っているでしょうに)ところを見ると、かなり無理して起用したような気がしました。この感じだと清水戦はまた欠場かも・・・でも相手が興梠ばかり警戒するので、ファブリシオや武藤にやたらシュートチャンスが来るという好循環も生まれており、ちょっとだけ「FC興梠」から脱皮しつつあるのかも。
・青島ビール賞は関根。出てきたのは青島ねーちゃんどころか、なんと爺さんで関根(´・ω・`)ショボーン
・ACLだと一対一での不安ありありの岩波が空中戦で奮戦していたのが実に頼もしかった。その前で後輩の橋岡が空中戦で勝ちまくっている以上、岩波も負けてられんわなぁ。これも競争がもたらす好循環です。
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