【観戦記】19年第29節:浦和 0-1 大分 ~ 勝ち点3を欲張って全てを失うの巻
・13分松本のシュートが幸いにもポストを叩いた後、大分の決定機は82分三平カットイン&シュートくらいしかありませんでした。前半は大分、後半は浦和がボールを支配と試合の様相は前後半で随分違いましたが、大分に手も足も出なかった前回対戦と比べれば「相手のやりたいことはさせていなかった」という意味においては悪い試合ではなかったと思います。
・ただ相手の良さを消すのには成功したものの浦和の決定機もこれまた少なく、53分武藤縦パス→興梠ボックス内で反転&シュート(枠外)と90分大分CKからのロングカウンターでファブリシオにあった(シュートはGK直撃)だけ。スタッツではシュート数14対4とびっくりするような差が付いていますが、浦和のシュートはセットプレーやその流れからのミドルシュートが多く、またシュートブロックされたものも多く含まれていると思われ、14本という数値ほど浦和が攻めている印象は受けませんでした。
・従って悪い試合ではなかったが、お世辞にも面白い試合ではなく、試合後の記者会見で「被災者への思いや、サッカーができるありがたさ、ホームで闘う意味というものが感じられない試合だったが?」と半ば辛辣、半ば的外れな質問が出るのも判らなくもありません。
・とはいえ、J1残留へ向けてもがき苦しんでいる浦和はもはや面白さに拘っていられる状況ではなく、何が何でも目先の勝ち点1が大事。前回対戦で惨敗した大分相手に悪くはない試合をして勝ち点1を確保出来たのであれば「最低限の仕事をした」と評価して良いと思いました。
・ところが、最後の最後で勝ち点3の欲が出たのか、敵陣深い位置でのスローインからのリスタートに過ぎないのに選手はやたら前残り。マウリシオのシュートをブロックされたのを契機にロングカウンターを食らって、勝ち点ゼロに終わってしまいました。
・試合後岩波が「勝点3が取れないまでも、勝点を取らなければいけない試合だった。反省しないといけない。3を取るか、1で終わるか。難しい判断ではあった。」と語っていますが、この迷いが結局命取りに。積極的に勝ち点3を取りに行くのなら山中投入はあまりにも遅いように見受けられましたし、方針をはっきり示さなかった監督の責任は追及されて然るべきでしょう。
・松本、そして大分と昇格組にホームで敗戦。しかも共に終盤に決勝点を取られるという心理的にダメージの残る負け方で、普段なら埼玉スタジアムは大いに荒れに荒れたでしょう。しかし、もうホームで負けることに慣れてしまったのか、あるいはこの段階で選手や監督・スタッフに罵声を浴びせたところで何のプラスにもならないと割り切っているのか、試合終了後はパラパラと拍手が起きるくらいでいたって静かなもの。とうとう2万人を割ってしまったファン・サポーターの目は実に冷ややかでした。
・中4日でACL準決勝第2戦=広州恒大とのアウェーゲームを控える浦和はいつもの鉄板スタメンから鈴木・橋岡・青木をベンチ外としてマウリシオ・宇賀神・阿部がスタメン。但し、多少なりともACLを意識したであろうスタメン入れ替えは橋岡(U-22代表のブラジル遠征帰り)だけで鈴木は腰痛、青木は試合3日前から別メニューとアクシデントによるやむを得ない入れ替えだった模様。
・前回対戦時では「中途半端に前からボールを奪いに行く」という対大分戦での最悪手を放って惨敗したのがよほど堪えたのか、前半の浦和は意外にも「前からガーーーっと!」ではなく、リトリート主体の守備で臨みました。大分はボールを回せる、ボールを持てるチームですが、ボールを持ちたがるチームではなく、松本のような「相手にボールを持たせるチーム」が案外苦手なことを踏まえた方針転換なのかな?と現地では思いました。
・ただ当の浦和が「相手にボールを持たせる」のが下手でボールを良い形で奪えず、13分小塚のヒールパスを受けて浦和最終ライン裏へ抜け出した松本にポスト直撃弾を浴びてしまいました。
・もっとも前半のピンチは結局これだけで終わりましたが、浦和もチャンスらしいチャンスは全くと言っていいほど作れず。大分は浦和とは対照的に前から激しくプレッシャーをかけてくるため、浦和はビルドアップに四苦八苦。大分以上に浦和に得点の可能性は感じられず、双方手詰まり感が漂う状態で前半終了。
・試合後の会見を読む限り、前半のリトリート主体の守備はどうも大槻監督の本意ではなかったようで、後半になると一転して浦和がボールを支配し、かつ積極的に前に出て相手をハメに行くようになりました。しかし、それでも粘り強く守る大分相手に決定機はなかなか作れず、53分武藤縦パス→興梠ボックス内で反転&シュートが惜しかっただけ(枠外)。
・不運だったのはその直後のアクシデント。タッチライン際で岩田と競り合った武藤はこけた時の手のつき方が悪かったのか、負傷して病院へ直行。
・前後半を通じて大分の守備は実にしつこく、おまけに運動量も多いので浦和が得意とする大きな展開、左右に相手の守備ブロックを振り回すをさせる余裕は与えてくれませんでした。サイドでの1対1なんて全然作らせてもらえず、絶えず狭い局面での打開を余儀なくされた印象。大分の必死の寄せをエヴェルトンなどが上手く剥がして空回りに終わらせる見せ場は多かったもののやはり決定機には繋がらず。
・不可解だったのは75分に長澤に代えて杉本を投入したこと。武藤が下がった後も浦和の前ハメはそれなりに機能しており、72分には出しどころに困ったGK高木が遅延行為でイエローをもらう殊勲さえ上げていたのに、その原動力となっていた長澤を下げて運動量の少ない杉本を入れた意図は何だったのか? また杉本は興梠に代わって1トップではなく、興梠と並んで2トップ(全体で阿部アンカーの3-3-2-2?)にように見え、なんとか杉本を活かそうという意図は見え隠れしましたが、今日も今日とて2980円(税込)の払い甲斐はありませんでした。
・武藤も長澤も下がってしまったのでプレースキッカーがおらず、やむなく超久しぶりに阿部がCKを蹴りましたが、いきなり失敗・・・
・ここを勝負どころと見たのか、片野坂監督が78分に投入した三平が82分浦和右サイドから単騎カットイン&シュートの見せ場。一方浦和も90分大分CKからのカウンターでファブリシオに決定機、さらにエヴェルトンのミドルシュートが枠内を襲い、終盤は浦和にお誂え向きのオープンな展開に。
・CKを得たところで攻撃面で良さが出せなかった宇賀神を下げて山中を投入。これは「勝ち点3を取りに行け!!」とのサインとも受け取れ、それゆえに浦和の選手達が必要以上に前残りになってしまったのかもしれませんが、結局それが墓穴を掘る形に。マウリシオのシュートがブロックされた後も、ファブリシオのところで蹴り合いになっており、大分のカウンターを止める機会が絶無だったわけではなかっただけに痛すぎる失点、痛すぎる敗戦でした。
-----興梠-----
--武藤----長澤--
宇賀神-阿部-エヴェ-関根
-槙野--マウリシオ--岩波-
-----西川-----
(交代)
56分 武藤→ファブリシオ
75分 長澤→杉本
90+1分 宇賀神→山中
-----後藤-----
--小林成---小塚--
田中-小林祐-長谷-松本
-三竿--鈴木--岩田-
-----高木-----
(得点)
90+3分 後藤
(交代)
70分 小塚→伊佐(伊佐が1トップ、後藤が右シャドーへ)
78分 小林成→三平
90+2分 小林裕→島川
※オナイウと伊藤は契約上出場停できず。MFティティパンが故障離脱中。
| 固定リンク