【TV観戦記】ACL2019・決勝第1戦:アルヒラル 1-0 浦和 ~ ぐうの音も出ない完敗。1失点で済んだのは天祐。
・いやはや、試合内容では完膚なきまでにボコボコにされました。AFC公式サイトでは7割近くボールを支配された挙句、シュート数で2対22。うち枠内1対6と大差を付けられました。またアルヒラルは遠目からやたらシュートを放ったわけではなく、ボックス内から13本も放っています。序盤から防戦一方に陥った浦和は鈴木や槙野の奮戦、青木の渾身のカバー、そして2度にわたるGK福島のスーパーセーブで失点を最小に留めるだけで精一杯でした。
・浦和の決定機は17分ファブリシオ→関根の一回こっきりしかなく、そもそも90分を通じて決定機どころかシュートへ持って行く形すらほとんど出来なかったのですから、この試合に関しては全く勝ち目がありませんでした。むしろこれだけボコボコにされても1失点で済み、第2戦での逆転が現実的なスコアに留めたことを最大限ポジティブに評価すべき試合だと思います。逆に言えばアルヒラルは先制後に明らかに緩んでしまい、積極的に2点目を取りに行かなかったことを後々悔やむ羽目になるかもしれません。
・とはいえ、試合内容でアルヒラルに圧倒されたことに目を背けるわけにもいきません。アルヒラルはきっちりボールを繋いで相手を自陣に押し込み、両SBを高く押し上げ、さらに時折サイドを変えながら相手の隙を伺ってきました。そしてバイタルエリアなりボックス内にボールが入るとパス回しが急激にスピードアップ。「要するに最後は超強力外国人がズドン」という中国勢とは対照的な、実にJリーグっぽい攻め方をしてくるチームでした。攻撃面に関しては好調時の鹿島に似た感じでしょうか。
・そして、そんなJリーグ仕様っぽい相手と闘うとなると、今年の浦和は実に弱い。早々と自陣に5-4-1の守備ブロックを敷いて耐える展開になりましたが、今年の浦和は相手にボールを支配されてしまう試合で良かった試しがありません。そして残念ながらこの試合もその例に漏れませんでした。
・もっとも浦和は前からハメに行こうにもコンディション的に無理だったのでしょう。浦和はACL準決勝第2戦以降、Jリーグで中2日・中3日の連戦また連戦という超過密日程をこなした後の長々距離移動を伴うアウェーゲーム(しかもこれまた中3日)で、途中選手を大幅に入れ替えたとはいえ選手達のコンディションが良かろうはずがなく、この試合随所で走り負け、当たり負けが目立ちました。従って守備ブロックを敷いて耐えるのはやむを得ない選択だったのだと思います。
・ただ誤算だったのは浦和左サイド、特に関根の裏というか、関根と槙野の間が狙い撃ちにあって早々に炎上したこと。アルヒラルの布陣は4-2-3-1でしたが、右SHカリージョのスピードが驚異的、かつフィジカルも強いのが難儀で、後方から加勢してくる右SBへの対応も相まって、浦和の左サイドは鎮火に追われどおしになってしまいました。
・14分青木のボールロストで食らったカウンターで浦和左サイドを疾走するカリージョが関根と対峙しながら中へ折り返し→アーク付近からジョビンコシュート(バーの上)がアルヒラル最初の決定機。18分カリージョがカットイン→ボックス内でフリーのジョビンコが折り返し→アルダウサリが枠内シュート(力なくGK正面)とこの辺りで浦和左サイドは既に怪しげに。
・間抜けなことに29分には浦和CKからカウンターを食らう大失態。ここもジョビンコが放ったシュートをゴールライン上で青木が辛うじてクリア。さらに33分CK→カリージョヘッドはこれまた福島がスーパーセーブ!!
・そして37分にはアルヒラルのゴールキックからカリージョ一人に関根、槙野、そして青木と良いようにやられ、折り返しをジョビンコに撃たれる絶対絶命の大ピンチ(福島スーパーセーブ!)。この辺りになると浦和左サイドの劣勢は誰の目にも明らかに。
・ただこれだけボコボコにやられながらも、ゴミスやジョビンコは中国勢の反則級ブラジル人ほどの怖さもなければ決定力もないのが浦和に幸いしました。この試合個人レベルでクソ面倒だったのはとにかくカリージョだけ。
・とはいえ、浦和が大苦戦を強いられたのは何もカリージョ一人に原因があるわけではなく、むしろ攻撃がほとんど成り立たなかったことに主因を求めるべきでしょう。浦和がボールを奪う位置は概して低く、しかも質・量ともに運動量で勝るアルヒラルの超素早い攻→守の切り替えに圧倒されてビルドアップはままならず。なんとか攻めに転じても簡単にボールを失って、アルヒラルに殴られ続けった恰好。
・またロングボールを蹴って興梠に預けようとも、アルヒラルCBが興梠に背後からガツンと当たりに当たって、興梠のボールキープを許さず。興梠対策はアルヒラルの浦和対策の賜物でしょう。後半になると興梠どころか両シャドーにすらボールが入らなくなってしまいました。また関根は守備だけで手一杯ですし、橋岡は高さはともかく、スピードで対面のSBに勝てず。興梠&両WBが沈黙を余儀なくされては、浦和のシュートがたった2本に終わるのも道理。
・後半になってもなんら戦局は変わることなく浦和劣勢。58分にも浦和左サイドから中へ細かく、速くボールを動かされてボックス内からアルダウサリがシュート(わずかに枠外)。しかし、浦和が耐えられたのはここまで。60分ジョビンコが右へ展開→右SBアルブライクがクロス→カリージョヘッドでとうとう失点を喫してしまいました。右SBにファブリシオが付き切れず、福島はクロスに被ってしまい、中央へポジションを移したカリージョを誰も掴まえてないとなると、失点しないほうが不思議。
・一方的な試合内容からすれば余勢をかってそのままアルヒラルが攻めに攻め、第2戦を待たずに事実上決勝を終わらせにかかっても不思議はなかったのですが、先制したアルヒラルはその後急激にペースダウン。それでも72分すっかりスカスカになった浦和の最終ラインと中盤の間を突き、カリージョ、ゴミス、アルダウサリの華麗なパス交換で浦和守備陣をズタズタに切り裂いて追加点と思われた場面がありましたが、謎のオフサイド判定で得点ならず。
・浦和は失点後も全くペースが上がらず。74分不振の長澤に代えて杉本を入れても、毎度毎度のことながらなんら得点の匂いがしないまま時間が徒過。試合終了直後のインタビューで興梠が「点を取るのは難しいので、失点後に0-1で終えてホームで勝負しようと皆に伝えた」と語っていましたが、その割にはヘロヘロの関根を85分まで放置したり、交代枠を一つ余らせて試合を終えるなど、チームの意図と打った手が整合しないような気がしてなりませんでした。
・ともあれ、これだけやられにやられて1失点で済んだのは天祐としか言いようがありません。特に先制後のアルヒラルの消極姿勢は浦和にとって勿怪の幸い。今日の試合内容からすれば楽観視はできませんが、ラウンド16蔚山戦での大逆転劇(ホーム:1-2 → アウェー:3-0)に比べれば難易度は甚だ低く、中国勢が全く勝てないホーム埼スタの魔力(但しACL限定(苦笑))をもってすれば、十分逆転可能な範囲です。
・久しぶりに試合間隔が開くのでコンディションもかなり回復するでしょうし、浦和の選手達を底力を信じてとにかく応援しましょう。個人的には第1戦出場しなかった(あえて隠した?)柏木が逆転のカギを握っているような気がします。
-----興梠-----
--ファブリシオ---長澤--
関根-青木--エヴェ-橋岡
-槙野--鈴木--岩波-
-----福島-----
(得点)
60分 カリージョ(アルヒラル)
(交代)
74分 長澤→杉本(杉本1トップ、興梠がシャドーへ)
85分 関根→宇賀神
・イエロー累積で出場停止のGK西川に代わって出場の福島。失点場面が残念だっただけで、ACL初出場がいきなり決勝になってしまったという状況を考えれば上々の出来でしょう。2度のスーパーセーブで瀕死の浦和をなんとか救いました。、
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