【観戦記】19年第32節:浦和 0-2 川崎 ~ プレーオフ圏転落までは容認すると腹を括ったか?
・酷い試合でした。浦和のシュートはたった5本。しかも決定機は49分マルティノスのシュートがポストの内側を叩いた場面だけ。前後半を通じてフィニッシュに持って行く段取りみたいなものがまるで窺えず、事故でも起こらない限りおよそ点が入りそうにありませんでした。
・川崎も中2日と日程が苦しいせいか出来は芳しくありませんでしたが、カテゴリーが下といっても差し支えない陣容の相手に早い時間帯に先制点を取って「ジャイキリ」の芽を摘み、終盤に追加点を取って試合を終わらせるという、川崎目線からすれば盤石の試合運び。
・傍目にはそんな酷い試合内容だったにも関わらず、「内容は良かったと思いますけど、チャンスを決めることができませんでした。」なんてのたまう選手もいてびっくり!! せいぜい柏木が語る「そんなにやられた感はありませんが、自分たちもチャンスを作れなかったというところもあります。」という試合だったと思いますが、この認識の差はどこから来るのかなぁ???
・浦和はアウェー広州恒大戦から中3日でアウェー広島、中2日でアウェー鹿島、中3日でこの試合、さらに中3日でアウェーアルヒラル戦が待ち構えるというと超過密日程を強いられているので、否応なしに選手を大幅に入れ替えながら戦わざるを得ません。そして今年最大かつ唯一のミッション=ACL優勝へ向けて、この連戦最後のアウェーアルヒラル戦に照準を合わせ、その一戦にベストメンバーで臨もうとするクラブの意図はよく判ります。
・一方、浦和は依然残留争いにどっぷり浸かったままという残念過ぎる一面もあって、超過密日程の中でもちょっとずつでも勝ち点を積み上げて行かねばならない過酷なタスクを背負っています。試合前は16位湘南とは勝ち点5、17位松本とは6差。ゆえにこの試合で勝ち点1でも積み上げられれば消化試合が2試合多い湘南や松本が2試合共勝っても浦和に追いつけないという形となり、残留争いのプレッシャーは幾分緩くなったはず。
・ゆえに、この試合は前節鹿島戦でスタメン起用しなかった選手(興梠・長澤・阿部・鈴木・西川)をこの試合でスタメン起用し、使い詰めになっているファブリシオ・エヴェルトン・関根・橋岡・槙野・岩波を休ませながら勝ち点1を拾いにゆくのが妥当な線だろうと個人的には考えていました。
・ところが、大槻監督の考えは極端なACLシフト!! もう「天皇杯2回戦か!」と思えるくらい極端に面子を落としてきました。Honda相手ですら良いところなく完敗したのに、この面子で川﨑相手に勝ち点をもぎ取れるなんてさすがに大槻監督も微塵も思っていなかったでしょうし、ほぼこの試合は捨て試合。
・勝ち点ゼロで終わって残留争いは一段と苦しくなるが、「中途半端にレギュラー組を入れて勝ち点を取れず、ACL決勝にも万全のコンディションで臨めない」という虻蜂取らず、二兎を追って一兎も得られないという最悪の結果に終わるよりは、「とりあえず目先のACL決勝に全力を注ぎ、リーグ戦はプレーオフ圏転落までは許容範囲」と割り切ったものと推察されます。そしてこの割り切り、この腹の括りようはリスキーながらもそれなりに支持し得るものです。
・ただ、何とも不可解だったのはなぜか青木がスタメンに名を連ねていたこと。青木は「右足関節内遊離体で10月17日に手術&全治は約3週間の見込み」と報じられていたのでこの連戦は丸々使えず、ACL決勝第2戦(11/24)で復帰するものと予想していただけに、ここでまさかの試運転! 捨て試合で無理に使うこともなかろうにと思いましたが、捨て試合だからこそ試運転に相応しいと思ったのかも。58分に青木試運転を無事終えて早々に阿部を投入。
・試合は当然のように序盤から川崎ペース。浦和の布陣は形骸化著しいというか、もはやそれ自体が自己目的化しているとしか思えない3-4-2-1で、しかもマルティノス1トップ。「相手が前に出てきたところをカウンターで、サイドバックの背後をついていきたい」という上野コーチが語る意図は判らなくもないのですが、その意図を実現するにはマルティノス1トップという、誰がどう見ても不適材不適所としか思えない解しかなかったのかどうか。
・レギュラー組が揃って、というか興梠がいてこそ辛うじて機能しているに過ぎない3-4-2-1にこの面子で拘る意味は全くないはずなのに、過密日程で練習時間が取れないせいか、他の策を打ち出せないままズルズルと継続。興梠不在の上に、出ているのが普段のベンチメンバーだらけとあっては90分を通じてほとんど攻撃の形を作れなかったのも当然でしょう。
・何せ選手間に共通理解があるように見受けられず、連携難も手伝ってボールを動かしたところで攻めきれない、それ以前にボールを奪ってからの出しどころに困るという場面が非常に多く見受けられ、川崎のカウンターを食らうことしばしば。「共通理解はあるが、普段のベンチメンバーなので精度が伴わずに決定機が作れない」なら擁護のしようもあるのですが、共通理解があるように見えないとは日頃の練習がががが・・・柏木がボールの出しどころに困った挙句に相手に囲まれてしまうってなんなん??
・前半こそ右から左へ大きく展開して、フリーの山中のクロスに賭けるという、興梠なり杉本なりがいたら得点の可能性があった形が再三見られました。しかし1トップはマルティノスですし、シャドーも汰木&柏木とクロスに飛び込める選手は皆無なので、そのクロスで何をしようとしたのか全く意味不明。とはいえ、形にはなっているので、鬼木監督は後半頭から守田を右SBに配転して手当。これで後半の山中は窒息。
・一方、川崎も中2日でメンバーを大幅に入れ替えたのが祟ってか、こちらも出来はイマイチ。ボール支配率は前半ですら6割程度で、再三浦和がやらかしているミスに乗じたカウンターも不発に終わり、28分バイタルエリアから脇坂の枠内ミドルが最初の決定機。これは西川がなんとか防ぎましたが、35分バイタルエリアで柴戸を簡単に交わして前を向いた脇坂が低い弾道のシュートを叩きこんで先制。
・先制点を取られて「運よくスコアレスドローで終えられれば万々歳」という浦和の微かな願いも雲散霧消。後半になると中盤でボールを奪取して、浦和がボールを持つ時間こそ長くなりましたが、川崎守備陣を崩す形はほとんど見受けられずに時間が徒過。
・そんな中、この試合唯一かつ最大の決定機が49分柏木の縦パスをマルティノスがボックス内で受けて、DFを背に反転シュートを放った場面。シュートはポストの内側を叩いたのになぜかゴールに入らないという不運極まりないものでしたが、これこそ上野コーチが狙っていたもの。
・試合後の会見を見ると「後半は良くなった」という認識を持っている方が多くてびっくりしましたが、良かったのはこの決定機一回こっきりで、むしろ後半は下手に浦和がボールを持ってしまったがためにマルティノスを活かせるスペースがなくなって却って攻めづらくなったというのが個人的な印象。前述のように後半は山中クロスという事故を起こせる要素すらなくなってしまったわけですし。
・とはいえ、浦和にボールを握られてしまうという試合展開は川崎も不本意のはず。そこで鬼木監督は67分好機に爆笑プレー連発だったダミアンを下げて切り札小林を投入。そしてその小林が78分守田のクロスをヘッドで叩き込んで起用に応えるのですから、恐れ入ります。この場面、脇坂&家長とのパス交換を経てサイドからボランチの位置に入った守田を浦和守備陣が誰も見ていない時点でアウト。小林に前に飛び込まれてしまった森脇はまぁあんなもんでしょう、残念ながら。
・この失点を食らう直前に関根を投入して、絶望的な戦況ながらもなんとか同点に追いつこうとしたのは判らなくもありません。しかしどうしても解せないのは2点目を取られてからの興梠投入。おいおい、この試合は捨て試合と割り切ったのではなかったのか??? なんでこんな局面でよりによって興梠を投入するのか??? この日は大槻監督が前節鹿島戦での愚行を受けて出場停止処分を食らい、上野コーチが指揮に当たっていましたが、ルヴァン杯でも見受けられたこの中途半端な姿勢、中途半端な覚悟は大槻監督と寸分変わっておらず、残念至極。
・当然ながら興梠を投入したところで、そこまでボールを運ぶ手立てなんてまるで出来ておらず、あろうことか興梠がボールを運ぼうとし、しかもそのボールはどこへ何のために運ぼうとしているのか皆目見当が付かないという惨状。ATには2万ちょっととただでさえ少ない観客がゾロゾロ帰り始めましたが、それも道理でしょう。
・試合終了後は野次もブーイングもなく、「ACLガンバレ!!!」との掛け声が力なく響くばかり。まぁどんなにしょーもない試合内容であろうとももはやブーイングすべき時期ではないと思いますが、試合後の埼スタが積極的に選手を後押しするような雰囲気でもなくなっているのはさすがに気になりました。選手もファン・サポーターも真剣に降格危機と向き合っていないんだろうなぁ、たぶん。
-----マルティノス----
--汰木----柏木--
山中-青木--柴戸-岩武
-宇賀神-マウリシオ--森脇-
-----西川-----
(交代)
58分 青木→阿部
75分 岩武→関根
79分 山中→興梠(興梠1トップ、マルがシャドー、汰木左WB)
・マルティノス1トップはどう考えても不適材不適所なんだからそういう使い方をする監督がアホで、マルティノスをあんまり責める気は起こらず。というかマルティノスにしても山中にしても仕様通りにチャレンジして、仕様通りに失敗しているんだから今日出ていたメンバーの中ではまだマシだったほう。むしろ失敗を怖がって何もせん選手、何もチャレンジせん選手のほうが腹立ちました。たぶんそういう選手は来年レンタルに出されると思いますが、当の選手にそういう自覚があったのかなぁ?
・選手紹介で埼スタ初登場の上野コーチはなんと動画無しで静止画像のみ。こんなところでも中3日が祟ったか・・・
-----ダミアン-----
齊藤---脇坂---家長
---田中--守田---
車屋-谷口-山村-マギーニョ
-----新井-----
(得点)
35分 脇坂
78分 小林
(交代)
HT マギーニョ→大島(大島がボランチ、守田が右SBへ)
67分 ダミアン→小林
89分 脇坂→阿部
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