・早々に先制されたものの、前半のうちに逆転に成功し、後半追いつかれ、さらに突き放すという絵に描いたようなシーソーゲームながら浦和が辛勝。しかしながら、決勝ゴールを決めた関根が試合後のインタビューで明言していたように試合内容は芳しくありませんでした。攻撃面ではル杯仙台戦ほど予めデザインされたような形で決定機を作れませんでしたし、守っては仙台戦と全く同じやられ方を繰り返して2失点。
・ゆえに試合後大槻監督が語ったように、内容的には引き分けが妥当だったと思いますし、試合の流れからすれば73分タリクがPKを決めていればそのまま浦和が負けていた可能性は高かったでしょう。
・ただ内容は良くなくても勝ち点を積み上げるのはめっちゃ大事。チームは土台から建て直し中なので、竣工までどうしても時間がかかる。建て直し中なので思うように勝ち点が伸びないとどうしても新たに取り組んでいることに疑念が生じ、方針がブレにブレ、下手をすると旧に復してしまうかもしれない。早々に降格圏を彷徨う羽目になったらなおさら。2018年堀体制がそんな感じでした。
・ある程度余裕をもってチーム再建に取り組めるようにするため、芳しくない試合内容でも勝ち点を稼ぐのは大事。でも目先の勝ち点欲しさに、新たに取り組んでいることからブレまくっては意味がない。
・その点この試合は浦和がやろうとしていることが良くも悪くも反映された末での「芳しくない内容」なので許容範囲であり、しかも勝ち点3を掴み取ったのですから諸手とは言わないまでも片手くらいでバンザイしても良いでしょう。同じやられ方を何度も繰り返し、大槻監督の修正能力に疑問符付きまくりだとしても。むしろ、1点目と3点目は縦に速く攻める意識が結実したものと前向きに捉えてもいいのかもしれません。
・しかも相手は残留争いのライバルと目される湘南からアウェーで勝ち点3を奪取したのですから小躍りしても許されるでしょう。気が早すぎて何ですが、湘南からの勝ち点3が後々効いてくるかも(苦笑)。
・共にル杯から中4日の一戦。スタメン大幅入れ替えを余儀なくされるほどの試合間隔ではないにしても、浦和のスタメンはなんとル杯から杉本に代えて興梠を入れ替えただけ!! しかもル杯でMOM級の活躍を見せた杉本は一気にベンチ外になったのは心底驚きました。一方湘南はル杯から岩崎→石原直、舘→直輝、中川→齊藤、馬渡→鈴木、大野→岡本と5人も入れ替え。
・湘南は立ち上がりから浦和SBの裏へ盛んにロングボールを蹴ってサイド攻撃。7分にはその狙いがハマリ、浦和右サイドから左WB鈴木冬クロス→FW石原直ヘッドで早々と先制。岡本→タリクへのサイドチェンジこそきっちりタリクにマークが付いていたものの、浦和右サイドでタリク→齊藤→直輝→鈴木と回されているうちに鈴木冬がフリーになってしまい、しかも石原直にCB鈴木大とSB山中の間に飛び込まれて万事休す。クロスを上げる鈴木冬もフリーなら、石原直もフリーという目も当てられない形での失点でした。
・早めに先制されたためか、その後の浦和は5-3-2で構える湘南に対してややボールを持たされ気味になり、また湘南の攻守の切り替え浦和以上早くて、仙台戦のような縦に速い攻めはやろうにもやれず。また時折強くプレッシャーをかけてくる相手に浦和のビルドアップは相変わらず怪しく、20分には柴戸がセンターサークル付近でボールロストしてヒヤリ。浦和の反撃は22分柴戸縦パス→汰木のカットイン&ミドルシュートが枠を捉えたくらい。
・逆に27分にはCKからの流れで右からのクロスをFWタリクにフリーでヘッドを撃たれてヒヤリ。この場面は浦和両CBの間をタリクにやられていますが、相手を掴まえていて競り負けたのならまだしも、ポジション取りの時点で「お前はもう死んでいる」というのは何なんだろう???
・浦和はここまでほとんど良いところがありませんでしたが、39分に突如反撃開始。山中縦パス→汰木が右WB石原広の裏に抜け出してクロス→興梠のシュートはいったんGK富居に阻まれたものの、自ら詰めてゴール!! あまりにもあっけない得点だっただけに、その前の直輝のファウルを巡る長々としたVAR判定で湘南の集中が切れていたようにも見受けられましたが、猛然とプレッシャーをかけに来た齊藤の逆を取って縦に大きく蹴った山中の技ありなのかも。
・さらに42分、柏木CKからの流れで湘南の不十分なクリアを浦和が拾いに拾い、山中クロス→ファーでレオナルドが石原広に競り勝ってヘッド!! レオナルドが石原広を押しているように見えなくもないのですが、VARのお咎めはなし。
・劣勢だったはずの浦和が前半のうちに一気に逆転に成功したため、後半は湘南にボールを持たせて浦和がカウンターを狙うという、浦和におあつらえ向きの展開になりかかりましたが、2度あったカウンターのチャンスはいずれもシュートに持ち込めず。レオナルドが前残り気味&杉本が引き気味で受ける両者の関係は抜群だったのに対し、やや性格が被り勝ちなレオナルドと興梠の相性はあまりが良くなかったような気も。
・また仙台戦と違って湘南とはフォーメーションが噛み合わずに随所でミスマッチが生じるせいか、守っては仙台戦ほど食いつかずにリトリート優先で耐えていましたが、良い形でボールを奪える回数は多くはありませんでした。
・そしてクロス攻撃に対する脆さを65分にまたまた披露。引いて受けた石原直から右サイドの鈴木冬へ大きく展開。鈴木冬は外を回る大岩を囮に使ってどフリーでクロス→上げた先ではなんと直輝が鈴木大と山中の間に上手くポジションを取ってヘッド!! マークがずれているので身長差もへったくれもありません。
・さらに70分石原広と競り合いながらボックス内で転倒した鈴木大が手でボールを掻き出したのをVARできっちり見られてPK与。ところがタリクのキックはなんとバーを直撃してPK失敗。結果的にこれが試合の勝敗を左右したように感じました。
・またその後の途中投入の駒の性能差も勝敗の分かれ目だったかも。湘南は齊藤→中川、鈴木冬→岩崎、直輝→指宿と代え、浦和は柏木→青木、汰木→マルティノスと選手を代えましたが、湘南の3選手がノーインパクトだったのに浦和はマルティノスが大仕事。
・85分、自陣深い位置で山中のクリアボールを拾ってからのロングカウンターのチャンス。マルティノスが中川を振り切って左サイドを全力疾走。アーク付近でクロスを受けた関根がボックスに突入し、ドリブルで横に動きながらシュートコースを探しに探してそのまま「一人で出来た!!」。
・試合のインタビューで関根が語っていたように、VARがあるのでボックス内では守備側は無理に飛び込めない。そこを関根が上手く突いたゴールでした。それにしても関根がボールを受けた時点で関根に一番近い位置にいたCB大岩のプレッシャーが甘すぎるようにも思えますが。
・またマルティノスと競り合った中川は気の毒なことにそのプレーで負傷。湘南は早々と3人交代枠を使っていたために1点ビハインドで闘う羽目になったのに対し、浦和は山中に代えて槙野を投入。5バックに切り替えるのかと思いきや、槙野はそのまま左SBに入って何の紛れもなく逃げ切り勝ち。
・昨年から始まった「金J」。昨年浦和はACLの絡みもあってやたら「金J」が組まれましたが、なんと「金J」は7戦全敗。今年もJリーグ開幕戦が「金J」に組まれて何の嫌がらせなのか!!と思いましたが、幸いにも「金Jの呪い」はこれで終了。っちゅーか、昨年は金曜日でなくてもやたら負けていたので「金J」だけ気にしていても意味がなかったような・・・
・試合開始前、ゴール裏から「三連覇、それが浦和の三年計画」というダンマクが掲げられたようですが、何の三連覇なんだろう???
---興梠--レオナルド--
汰木--------関根
---柴戸--柏木---
山中-鈴木--岩波-橋岡
-----西川-----
(得点)
39分 興梠
42分 レオナルド
85分 関根
(交代)
76分 柏木→青木
76分 汰木→マルティノス
89分 山中→槙野
・仙台戦で大活躍の杉本がベンチにもいないのは心底驚きましたが、怪我でなければ中4日で迎えるル杯松本戦へ向けての温存なのでしょう。杉本に代わってキャンプ終盤故障が伝えられた長澤が戻ってきたのは朗報。この日のベンチメンバーはGK彩艶も含めて全員松本戦での出場機会があると思います。
・この試合はリーグ戦で初のVAR導入試合。「湘南vs浦和」という非常に地味な、ただの残留争い組同士の試合をJリーグ開幕戦、しかも唯一の試合に選んだのが不思議でなりませんが、おそらく昨年の浦和vs湘南戦での「世紀の大誤審」がVAR早期導入の引き金になったことを踏まえたものでしょう。
・そして案の定というかなんというか、リーグ戦初の「VAR被害者」はやっぱり初物好き、しかも悪い意味での初物好きな浦和に。もっとも佐藤主審の判定は至極妥当なので「被害者」というのは語弊があり過ぎますが、VARがなかったら見逃していた可能性もあるので。鈴木が転倒した際の「かばい手」ならハンドにならないので一応VARで確認したのでしょうが、どう見てもボールを掻き出しているように見えるのでハンドを取られるのは当然かと。
・大きく逆サイドに楽々蹴らせない、サイドから楽にクロスを入れさせないという工夫をするわけでもなく、サイドはある程度捨てて最終ラインが中で弾き返すわけでもないという、不思議すぎる浦和のクロス攻撃に対する守備。これをどうするのかが今後の見もの。この感じなら、控えに回っている槙野どころかベンチ外のマウリシオにも出場機会がおいおい巡ってくることでしょう。
・そして汰木&山中、マルティノス&山中が左サイドから攻めて、2トップ&関根で仕上げるパターンは何度も出来そうですが、関根&橋岡の右サイドがどうにも機能不全。もっとも成長著しいとはいえ、橋岡の攻撃能力に多くを期待するのがそもそも間違いなので、しばらく「鋼鉄のザル」による左サイド攻撃一辺倒はやむを得ないのかも。
--石原直--タリク----
--直輝---齊藤---
鈴木---福田--石原広
-大岩--坂---岡本-
-----富居-----
(得点)
7分 石原直
65分 直輝
(交代)
74分 齊藤→中川
82分 鈴木→岩崎
84分 直輝→指宿(タリクがIHに下がり、指宿がFWへ)
・湘南のラフプレー三昧は監督が代わっても治らない模様。
※写真は試合とは全く関係ありません。