【観戦記】20年第6節:浦和 0-4 柏 ~ やられたらまたやられる。倍やられだ!!
《スタメン》
・浦和は汰木→関根、青木→エヴェルトン、長澤→ファブリシオ、興梠→武藤、杉本→レオナルドと柴戸の相方と前目を総入れ替え。武藤はこれが今季初スタメン。FC東京戦が完敗に終わり、かつ中3日での3連戦なのでありうべき選択だと思いましたが、CBデンが今節も間に合わなかったのは誤算かも。ベンチも岩武が久しぶり、そして伊藤が初のベンチ入りと顔ぶれに変化を付けてきたが、控えは前目の選手だらけでCBの控えゼロというバランスの悪さ・・・
・柏はなんと前節と全く同じ!! 相手に応じてメンバーどころかフォーメーションを代えてくる傾向が強いネルシーニョ監督だけに、これは超意外でした。
《試合展開》
・試合開始と共にスタジアムは豪雨に見舞われましたが、そんな中でも序盤の浦和は上々の出来。
・3分岩波のボールカットからいきなりレオナルドへ縦パス→レオナルドがヒールパスで武藤へ繋ぎ、武藤がCB大南を交わしてボックス内に侵入するもシュートは枠外。6分柴戸→武藤→レオナルドのロングカウンターはCB高橋がシュートブロック。8分センターライン手前から柴戸がスルーパス→武藤が裏抜けするもシュートは大南がブロック。14分高い位置でのレオナルドのボール奪取を機に武藤がシュート(枠外)。いずれも浦和らしい縦に速い攻めが出来ています。
・柏は守備時4-5-1というより江坂が前残り気味の4-4-1-1っぽい守備ブロックを敷いていましたが、攻めに転じてCFオルンガへのロングボールを多用したところで、肝心のオルンガがマウリシオ等に封殺されてボールを落ち着けられずに浦和のカウンターを浴び、なかなか守備ブロックを整えきれない印象を受けました。また浦和がFC東京戦とは打って変わってかなり前目からプレッシャーをかけに行ったのも柏の攻撃を無力化するのに一定の効果があったような気も。
・柏の決定機らしい決定機は18分山中の緩い横パスをカットされてカウンターを食らい、オルンガのミドルシュートを許した場面のみ。逆に浦和は珍しく遅攻でビッグチャンスを作り、22分橋岡のスローインから武藤→レオナルド→ファブリシオと右から左へ繋いだものの、ボックス内でフリーだったファブリシオのシュートは中村がセーブ。
・ところが完全に浦和ペースで進んでいた試合をぶち壊したのが32分GK西川のパスミス。岩波とパス交換した後、緩い縦パスを柴戸に出したところをヒシャルジソンにカットされて、ヒシャルジソン自らボックス内に持ち運んでゴール!!
・前節に続いて自らのミスが敗戦に直結してしまったGK西川。クロスに対して被り気味になってしまった前節の失態はともかく、この試合の失態、まるでミシャ初期に起こりがちなミスというのは不思議過ぎました。自陣から細かく丁寧に繋ぐサッカーなんてもう全然やってないのに、なんであそこで繋ごうとしたのでしょうか?
・先制点を取られたものの、前節FC東京戦とは異なってそのまま成すすべなくあっさり俵を割るような試合展開にはならず、35分には仲間を振り切った橋岡のクロスからの混戦でこぼれ玉を拾ったレオナルドが決定的なシュートを放つものの、ゴールカバーに入っていた大南がブロック!! 45分にはエヴェルトン縦パス→左サイドでレオナルド→ファブリシオと被りながら(笑)カットインした山中がボックス内突入→折り返しを関根シュートという絶好機を作りましたが、ここも中村が好セーブ。そして終わってみればこれが浦和の攻勢の終末点でした。
・ネルシーニョ監督はイエローカードをもらったヒシャルジソンを前半だけでお役御免として三原を投入。これにより直ちに戦況が一変したわけでもなんでもありませんが、51分浦和お約束の失点場面が再現。浦和右サイドから江坂が逆サイドへ大きく展開→右SB古賀が楽々クロス→ファーでオルンガのループ気味ヘッドが炸裂!! まぁ山中の寄せも甘ければ、ファーで橋岡はボールを見送るだけでオルンガに競ってすらいないというオルンガじゃなくてもやられるだろうという、既視感ありすぎる失点でした。
・2失点目を喫したことで大槻監督はファブリシオに代えて汰木を投入しましたが、残念なながらこの日の汰木は最悪の出来。ファブリシオは特に悪くはなかっただけに、終わってみればこの交代で浦和は傷口を広げた感も。
・そして56分にはまたまたお約束の形で致命的な3点目を取られてしまいました。橋岡がタッチ際でマークを受けて窮屈になっている関根に無理に繋いだのがケチのつけはじめ。関根のボールロストでカウンターを食らい、橋岡のいない浦和右サイドで江坂の縦パスを受けた左SB三丸がどフリーでクロス→ファーで神谷がヘッドで折り返し、仲間が中でどフリーでヘッドで詰めるという、これまた既視感ありすぎる失点でした。別に相手FWの個の力でやられたわけではない、実にロジカルな失点の数々・・・ ネルシーニョ監督からすれば、この浦和殺しの形に持ち込むために、前半単調な攻撃に終始したチームを後半きっちり修正し、慌てずにボールを繋いだということなのでしょう。
・大槻監督は珍しく3枚替えを敢行しましたが、すっかり自陣に引いてコンパクトな布陣というか、中央を固める柏守備陣の周辺でぐるぐるボールを回すだけに終始。興梠と杉本のコンビで良い形を作りかかっても杉本のシュートはいずれも力がなく、78分山中の縦パスをアーク付近で受けた伊藤が興梠からの浮き球折り返しを受けてボックス内突入した場面が惜しかっただけ(シュートは中村正面)。
・浦和は両SBが高い位置を取ってほぼ2バック状態。しかも中央を固める柏守備陣に呼応するかのように人数をかけた浦和攻撃陣も前線で固まっている有り様なので、敵陣は絶えず大渋滞。柏守備陣の網目を広げる工夫が全く感じられず。
・当然カウンターには極めて脆く、74分エヴェルトンへの縦パスを大谷にカットされたところからカウンターを食らって最後は大谷が枠内ミドル。81分岩波がヘッドで縦に繋ごうとしたところをカットされてカウンターを浴びて神谷に決定機。いずれもシュートは西川の正面で事なきを得ましたが、89分最後に投入された長澤へ山中が無理に縦パスを付けたところで長澤がボールロスト→こぼれ玉を拾った神谷がそのまま持ち運んでゴール!! シュートが岩波の足に当たって軌道が変化した不運もありますが、総じて起こり得べくして起こった失点で感慨の沸きようもありませんでした。
・普段の埼スタであれば試合終了と共に野次が怒号が響き渡っていたであろう、いや3失点目でダンマクが片付けられていてもおかしくないお粗末な試合内容でしたが、コロナ禍を受けて幸か不幸か「冷たい拍手」に包まれるしかなかった選手達や監督の心境や如何に。
《総評》
・DAZNのスタッツだとシュート数は17対10、枠内シュート9対8、CK5対1というDAZNのスタッツを見る限り、「0-4」で終わった試合だとは信じられない数値がずらずらと並んでいます。ただ浦和のシュートは前半に集中しており、スコアの経過通り、そしてスタッツの示す通り尻すぼみの試合内容だったのは否めません。
・そしてその結果が浦和のボール支配率56%。前半はともかく後半は明らかにボールを持たされた格好になり、前節FC東京戦に続いて浦和の負けパターンに嵌まってしまいました。先制点を取られて相手に引かれてしまうとどうにもならず、無理に攻めに出たところでカウンターの餌食になるばかり。
・何より辛いのは浦和の失点が既視感ありありのものだらけなこと。サイドからファーへのクロスには実に弱い。単に放り込んでくるだけでも弱いのにサイドチェンジを交えた後のクロス攻撃に対してはもうメロメロ。相手の監督にしてみればこんなに判りやすい失点パターンを持っているチームなんて組みしやすいでしょうなぁ。
・CBが競り負けた、付き切れなかった、うっかりマークを外してしまったといった個人の問題に還元できる失点ではなく、もう浦和の守備のやり方を完全に見切られてシステマティックにやられているようなので、デンが出ていればどうにかなったという話でもないかと。
・点の取られ方があまりにも悪く、しかも点差も点差なので気分は最悪、ついつい凹みがちになってしまいますが、完敗に終わったFC東京戦に比べれば前半の決定機を決めていれば浦和が快勝した可能性が高かった試合で、その分はマシかなと思います。仙台戦が序盤カウンターから大ピンチの連続で、先制されていればそのまま負けていた可能性が高かった試合だったことのちょうど裏返しで、長いリーグ戦の中での星勘定のつり合いは取れているのかも。
・ただ仙台の失点は共に浦和の強力FW陣の個の力にやられるというほぼ諦めがつくものだったのに対し、浦和の失点は再現性が極めて高く、どんな相手でもやられる可能性があるという意味でより始末が悪い。開幕から似たような失点を繰り返しているのに全然修正できないって、大槻監督の仕込み、大槻監督の練習って何なんだろう?
《選手評等》
・クソすぎる大敗なので、殊勲賞も敢闘賞も無し。強いて言えばスタジアムDJ岩沢さんまさかの体調不良による欠場を受けて急遽選手紹介等をこなす羽目になった朝井さん。それだけに浦和のゴールシーンが無かったのは残念。MOMは文句なくGK中村。まあ浦和のシュートはいずれも中村の正面でシュートコースが甘すぎたのかも知れませんが。
・西川は前節に続いて細かいキックミスも散見されましたが、全試合ずっとスタメンなので心身ともお疲れなのか、あるいは慣れないキャプテンを任されて心労が募っているのか、些かどころかかなり心配です。ルヴァン杯C大阪戦を待たずにGKが代わっても不思議はありません。
・前目の選手&柴戸の相方をがらっと入れ替えて試合に臨みましたが、スタメンに抜擢された選手個々人はよくやっていたと思います。まぁファブリシオ&山中のコンビだとコンビネーションプレーによる崩しなんてなくて(ファブリシオが中へ入りたがる選手なので仕方ない)、強烈な個が代わる代わる現れるだけという気がしましたが、それでも右SHで起用された仙台戦よりはかなりマシ。
・エヴェルトンがいるとボールが前に運べる上に、ボックス近くでの頭数が明らかに増える。関根が右SHに入ると左右の攻撃のバランスが良くなる等々。強いていえば武藤は試合勘がないのか、シュート精度がいつも以上に低かったような。
・ところが、残念過ぎる失点を契機に浦和のパフォーマンスは急激に落ち、あとは選手を代えれば代えるほど悪くなるという、これまた大槻監督にありがちなコースに。途中投入の伊藤はあの決定機を決めていれば一皮むけたのかもしれませんが、そんなに出場機会が多くは巡ってこない選手だからこそその決定機を決めないと次がない。この世界は厳しい。
・クソみたいな失点×4。最初の失点時はともかく、その後も失点の度に拍手しかない、拍手しか出来ないスタジアムの雰囲気というのは個人的にはかなりキツい、かなり無理がありました。毎試合大がかりなビジュアルを整えてくださるスタッフの苦労に対しては最大限労いたいのですが、やむを得ない事情とはいえ強烈な統制下に置かれたスタジアムへはしばらく足が向きそうにありません。
---レオナルド-武藤---
ファブリシオ-------関根
---柴戸--エヴェルトン--
山中-岩波--マウリシオ-橋岡
-----西川-----
(交代)
54分 ファブリシオ→汰木
59分 関根→伊藤
59分 レオナルド→興梠
59分 武藤→杉本
88分 橋岡→長澤(長澤がCH、柴戸が右SBへ)
-----オルンガ-----
仲間---江坂---神谷
---大谷--ヒシャル---
三丸-大南-高橋祐-古賀
-----中村-----
(得点)
32分 ヒシャルジソン
51分 オルンガ
56分 仲間
89分 神谷
(交代)
HT ヒシャルジソン→三原
79分 仲間→瀬川
79分 江坂→山田
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