【DAZN観戦記】20年第5節:FC東京 2-0 浦和 ~ 似たもの同士の闘いはぐうの音も出ない完敗に終わる
《スタメン》
・浦和は前節鹿島戦からレオナルド→杉本、エヴェルトン→青木、デン→マウリシオとスタメン3枚入れ替え。
・デンは今週の練習で別メニューだったという話もあり、大事を取ったものと思われます。デンに代えてマウリシオがベンチからスタメンに繰り上がり、代わりに槙野がベンチ入りしたのが目を惹いただけで、それ以外の面子はスタメン&ベンチトータルで見ると中断明け3試合と変わり映えしませんでした。
・瓦斯は前節故障した田川に代えてレアンドロがスタメン入りした他、A・シルバ→安部、中村→小川とスタメン3枚入れ替え。長谷川監督はG大阪時代からこまめにローテーションをかけてくるタイプなのでスタメンが読みづらいのですが、入れ替えた面子は想定の範囲内。ただ基本フォーメーションは前節の4-4-2ではなく、今季から取り組んでいる4-1-2-3でした。
---杉本--興梠---
汰木--------長澤
---柴戸--青木---
山中-岩波--マウリシオ-橋岡
-----西川-----
(交代)
HT 汰木→関根
57分 杉本→レオナルド
57分 長澤→マルティノス
68分 橋岡→エヴェルトン(柴戸が右SB、エヴェルトンがCHへ)
レアンドロ--永井--オリヴェイラ
--安部----東---
-----橋本-----
小川-森重--渡辺-室屋
-----林------
(得点)
45分 D・オリヴェイラ
66分 アダイウトン
(交代)
61分 永井→アダイウトン
82分 小川→中村(足が攣ったため)
82分 東→A・シルバ
89分 安部→髙萩
89分 D・オリヴェイラ→紺野
《試合展開》
・ボールを持たされると持ち味が出ないチーム同士の闘いらしく、よく言えば共に慎重な戦いぶりで、前半は「一瞬でも隙を見せたら負け」と言わんばかりの睨み合いに終始。共に攻撃に変にリスクをかけないので、ボールを持ったところで共に全く何も起こらないまま時間だけが流れてゆきました。悪く言えば戦前予想通りの塩試合でしたが、とはいえゲームが動くまでは浦和にとっては(F東京にとっても?)そんなに悪い内容ではなかったと思います。
・浦和は全くと言っていいほど前からプレッシャーをかけず、自陣に4-4-2の守備ブロックを形成。F東京は橋岡の裏、ないし橋岡とマウリシオの間を狙っている様子が伺われましたが、18分レアンドロ→オリヴェイラ→小川の細かいパス交換で小川のボックス内侵入を許したくらし。しかも角度がなくてシュートは枠外。
・一方F東京は浦和よりは前から追ってくるものの、浦和の貧弱な攻撃を基本的には4-5-1の守備ブロックで迎撃。浦和はロングボールを多用してシンプルな攻撃を仕掛けるものの、12分岩波が大きく右サイドへ展開→橋岡がボックス内侵入&シュート、23分マウリシオ縦ポン→興梠ポスト→杉本ミドルシュートが形になったくらい。
・浦和得意の左サイド攻撃は17分興梠がアーク付近でボールキープして汰木へ展開→汰木クロス→橋岡ヘッドがあったくらいでしょうか? 41分汰木カットイン&クロス→興梠ヘッドは惜しくもオフサイド。
・決定機らしい決定機はほとんど作れていないとはいえ、仙台戦のように自爆、あるいは攻めきれずにカウンターを食らう場面もなく、このまま前半終了でもなんら問題はなかったのですが、45分に突如ゲームが動きました。
・ノープレッシャーのCB森重が浦和左サイドへ大きく展開→山中は一応右SB室屋に対峙しましたがあっさりクロスを入れられ、しかもその先でGK西川がやや被った格好に。しかも西川がわずかに触ったのが却ってよくなかったのか、橋岡がヘッドでクリアできずにその裏にいたオリヴェイラの胸で押し込まれてしまいました。
・31分に浦和守備陣が右より中央に固まったところでレアンドロから浦和右サイドでぽっかり浮いていた室屋に展開される場面があり(室屋がボールコントロールできずに好機逸)、やられるとしたらこの形な?と思っていたのですが、先制点を取られた場面はその再現といっても良いのかも。
・浦和も失点直後に興梠アーク付近でキープして汰木へ展開→山中クロス→杉本ヘッドと得意の左サイドからの攻撃でようやく決定機を作ったものの、杉本のヘッドはバーのはるか上。終わってみればこの前半終了間際の攻防が勝敗の分かれ目になってしまいました。
・1点ビハインドでの折り返しになってしまったため、大槻監督はいきなり後半頭から汰木→関根の勝負手。ところが投入直後に杉本左サイドへ展開→関根持ち上がってクロス→杉本とワイドな展開で形を作ったくらい(しかもクロスは杉本に合わず)で、その後の関根は全く鳴かず飛ばず。
・さらに大槻監督は57分杉本→レオナルド、長澤→マルティノスと2枚替えを敢行しましたが、結果的にこれが傷口を広げることに。特にスペースのない相手に対してマルティノスを投入したのは謎で、ボールを持ったマルティノスは案の定左SB小川に縦を切られて長考に沈んだ挙句、2人に囲まれてボールロスト=F東京のカウンターの基点になるの繰り返し。
・興梠もこの試合はボールを収められない場面が案外目立ち、しかもフィニッシュには全く絡めず。ボールの収めどころとしては興梠よりは機能していた杉本を下げたのは逆効果だったように見受けられました。そして57分の2枚替えは単に攻守のバランスが悪くなっただけで、ゲームは完全にF東京ペースに。
・大槻監督が選手交代で自ら傷口を広げたのに対し、長谷川監督が放った一手=61分永井に代えて投入されたアダイウトンが大当たり。62分浦和左サイド深い位置でのスローインからオリヴェイラが山中&岩波を蹂躙してボックス内突入→アダイウトンに決定機(ラストパスが速すぎてアダイウトンは合わせきれず)。
・さらに66分センターサークル付近でボールコントロールに失敗した青木にアダイウトンが絡んでそのまま独走。アダイウトンの前に岩波&マウリシオがいたのですが、アダイウトンはあっさり両CBの間をぶち抜いて、そのままゴール。この場面、青木もさることながら決定機阻止でレッドカードを食らう可能性はなかったにも関わらず岩波の寄せがいかにも軽く、またマウリシオの弱点=スピードの無さが露呈した場面でもあり、なんともやるせない失点でした。
・大槻監督はさらに68分橋岡→エヴェルトンと代えて柴戸を右SBに配する奇策を繰り出すもますます傷口は広がるばかり。給水タイム明けの73分にはいきなり森重縦ポン→オリヴェイラがマウリシオに競り勝って背中(笑)でポスト→アダイウトンに決定機(西川がセーブ)。76分には浦和CKからF東京のカウンターが発動し、安部のフィニッシュで終わる場面がありましたが、この決定機もアダイウトンがエヴェルトンから強引にボールを奪ったのが契機。
・浦和は終盤何度も両サイドからクロスを放り込み、CKも随分得ましたが、杉本を下げたがためにターゲットらしいターゲットもいないせいか、悉く瓦斯守備陣に跳ね返されて、決定機らしい決定機は全く作れず。一方長谷川監督は疲労を考慮して終盤4選手を順次入れ替えて楽々逃げ切りに成功。
《総評》
・たとえ浦和が不調にあえぎ、残留争いに両足までどっぷり浸かっている時でさえ、なぜか必ず最低勝ち点1をくれ、あまつさえ浦和復調の契機さえ与えてくれた心優しいF東京。浦和戦の成績は極端に悪く、特にホーム味スタでは2004年9月23日2ndステージ第6節(1-0)以降勝ちがなかったそうですが、とうとうその不名誉な記録もストップ。
・というか、浦和がF東京に負けるときはこんなものと思えるくらい、終わってみればぐうの音も出ないくらいの完敗でした。まあ、浦和はここまでなぜか勝ち点10も積み上げていますが、試合内容は西川のビッグセーブ連発に救われてスコアレスドローに終わった横浜M戦が一番マシで、勝った3試合はいずれもさほど良い内容とは思えなかっただけに、妥当と言えば妥当な敗戦だたと思います。鹿島戦勝利で「強者の佇まい」なんて掲げていた記事もあったようですが、この試合にはその欠片も見当たりませんでした。
・「試合展開」でも記した通り、先制点を取られるまでの試合内容は仙台戦はもちろん、鹿島戦と比べても悪いとは思いませんでしたが、先制点を取られた後はほぼ一方的な内容であっさり俵を割る格好に。失点直後の決定機を杉本が決めていれば試合展開は全く変わっていたと思いますが、シュートは枠にすら飛んでいなかった以上、事実上「たられば」の土俵にすら乗っていないかと。
・守備重視のチーム同士の一戦ゆえ「両者そんなに多くはないであろう決定機を先に決めた者勝ち」という判りやすい試合展開で、先制点を取られた浦和は終始F東京のカウンターに晒され続けながら、おっかなびっくり、しかも可能性が微塵も感じられない攻撃を繰り返すしかありませんでした。
・DAZNのスタッツだと浦和のボール支配率は54%、パス数は100本以上F東京を上回っていますが、これは浦和がボールを持たせられる羽目になるという典型的な負けパターン。試合後には「年間を通して先制される試合は必ずあるはずなので、その点はこれからの課題ということか?」と少々意地悪な質問が投げかけられていましたが、まさにその通りで、この調子ではいったん先制点を取られたら最後、そのまま試合終了という見どころも何もない試合がしばらく続くかもしれません。
・ビハインドに陥った際に監督に期待したいのはなんと言っても戦術変更であり、選手交代。だが残念ながら大槻監督にそのどちらも多くを期待できないのは昨年実証済みで、出来ることと言えば恫喝、いや一喝くらい。
・この試合で言えば「試合展開」でも記した通り、先制した相手はスペースを与えてくれないと判り切っている局面でのマルティノスの投入が最大の謎でした。しかもそんな局面でSHで多少なりとも可能性を与えてくれそうな替え駒がベンチにいないというありさま。
・中断明けの横浜M戦で関根&マルティノスが終盤の切り札として嵌まって以降、それが定番化していますが、残念ながらその効果は試合を経る毎に薄れているようです。
・先の3連戦を終えた後に大槻監督は「この3試合に出場した選手だけではうまく乗り切れない」と語っていたので、ベンチ入りメンバーに変化があるかと思ったのですが、この試合も結局コンディション不良のデンに代えて槙野が久しぶりにベンチ入りしただけで攻撃陣の顔ぶれは全く変わり映えしませんでしたが、狭い局面でもそれなりにSHに使えそうな武藤・荻原・武田はまたもベンチ入りできず、メンバー構成の時点で既に少し負けていたような気も。
・一方後半途中から登場のアダイウトンは磐田時代から攻撃能力は極めて高いもののスタミナがなく、しかも「非常に癖が強い」という意味でマルティノスと似た感じがプンプンする選手(但しむやみに痛がらない)ですが、長谷川監督はそのアダイウトンを適材適所としか言いようがないタイミング&ポジションに投入し、かつアダイウトンの仕様通りの形で追加点を取ってしまうのだから恐れ入りました。先制点もさることながらベンチワークの差もでかく、まさに完敗でした。
《選手評等》
・正直良いところなく負けた試合だったので、個人的には「敢闘賞」もなし。強いて言えば柴戸。この試合を最後にロストフへ移籍する橋本と比べても遜色ないくらい。でも柴戸&青木のセットだとビハインドに陥った時の攻撃力不足というかアイデア不足が露呈がちなのもまた明白な訳で。
・個人的なMOMは明らかにD・オリヴェイラ。先制点以上に最終ライン近くまで激走して守備に積極的に加わっている様に感服しました。
※写真は試合とは全く関係がありません。
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