【DAZN観戦記】20年第21節:鳥栖 0-1 浦和 ~ これがダミーシステムの力なのか・・・
・基本的には双方とも決定機が少ない塩分多めの試合でしたが、その割には西川のPK阻止あり、ATに入ってカウンター炸裂による決勝点ありと無駄に派手な展開に。どんな形であれ勝利は嬉しいものです。
《スタメン》
・久しぶりに週央に試合がなく、中5日の浦和は前節一発レッドで出場停止のデンに代えて岩波を起用した他、杉本→武藤、長澤→柏木とスタメン3人入れ替え。結果的にミシャ以来の古参兵をフル活用(笑)。ベンチには久しぶりに鈴木が戻った他、伊藤に代わって汰木がベンチ入り。柴戸は酷使され続けてとうとう小破した模様で、2試合続けてベンチ外。
・水曜に順延になっていた第10節(G大阪戦)を消化して中2日の鳥栖は原川→大畑、金森→石井、チョ・ドンゴン→レンゾ・ロペスとスタメン3人入れ替え。CH原川がなぜかベンチ外となり、本職SBの内田がCHに入ったのがサプライズ。
・鳥栖はCBエドゥアルドと高橋秀が共に故障離脱中で、超過密日程にも関わらず本職CBが薄いのが悩みの種。
《試合展開》
・鳥栖は前節G大阪戦でのスタイル同様、自ら積極的に細かくボールを動かしながら敵陣に迫るスタイル。よって普段の浦和であれば比較的組みしやすいはずですが、残念ながら柴戸&青木の故障が祟って中盤にボールを狩れる選手がおらず(CHの片方に長澤を起用しなかったのが謎)、高い位置で全然ボールを奪えず、深い位置でボールを奪ってもカウンターは不発と試合の入りは芳しくありませんでした。
・ただ浦和が早々に前プレを諦めてリトリート主体の守備に切り替えたのは、金監督が試合後「背後を取る動きが本当になくて、相手に脅威を与えることができなかったかなと思っています」とボヤいている通り、鳥栖にとっても予想外だった模様。従って試合の入りが相対的に良かった鳥栖も11分内田の縦パスを受けた小屋松が反転シュートを放ったくらいで決定機を掴むどころかシュートもたいして撃てず。
・19分原のGKへのバックパスを興梠がカットして武藤に繋ぐ絶好機がありましたが、武藤のシュートは原にブロックされて得点ならず。興梠が好調なら本職CBではない松岡を交わして自分でシュートを撃っていたと思うのですが、ここで松岡に対して圧倒的な質的優位を示せなかった興梠はちょっと寂しいかも。
・給水タイムを挟んで29分、41分とマルティノスが右サイドを深く抉ってからの折り返し、30分興梠が中盤に下がってボール奪取からのカウンターといずれも決定機には至りませんでしたが浦和らしい攻撃が垣間見られ、42分宇賀神の縦パスを受けて単騎左サイドを突破した関根がそのままボックス内に突入してシュートを放つもバー直撃!
・ただその後の流れで橋岡のクロスに反応した関根が足裏を見せてGKに突っ込む形になってしまい、当然ながらイエローに。それだけならまだしもその直後にアフターチャージで主審に注意される一幕が。チームも関根個人もあまり上手く行かない状況に直面してメンタル的に参っているのかもしれませんが、いくらなんでももう25歳になる選手がこれではいけません。
・そんな関根を大槻監督が前半限りできっぱりと諦めたのは当然と言えば当然ですが、代わって入ったのは汰木ではなくなんと杉本(左SHへ武藤が回る)。鳥栖も後半頭からレンゾロペスに代えて林を投入。試合後の金監督の弁では、浦和が前からプレッシャーをかけに来るとの想定のもとに逃げ場としてレンゾ・ロペスをスタメン起用したようですが、完全にその目算が外れたのでスピードがある林に切り替えたようです。
・46分柏木が素早いリスタートからのロングフィード→興梠が原と競り合いながらループシュートを放つも枠外。48分マルティノスがリャンのコントロールミスを突いて高い位置でボール奪取&自らミドルシュート。55分鳥栖のゴールキックを跳ね返してからのカウンターでマルティノスのクロスを逆サイドから宇賀神が詰めるも撃ち切れず。ただこの55分の攻撃はダイレクトパスの連続で鳥栖の守備陣を掻い潜っており、かつ攻撃にも人数をかけていた点で、ATの一連の攻撃以外ではこの試合の見どころだったと思います。
・ところが58分鳥栖がリャンに代えて高橋義を投入した辺りから試合は一転して鳥栖ペースに。64分浦和左サイド奥深くに侵入した樋口のグラウンダーの低いクロスをボックス内でフリーの林がまさかの空振り。しかしその直後、アーク付近で縦パスを受けた林に対して岩波がスピードで振り切られてボックス内でラグビータックルをかましてしまうような恰好になり、当然ながらPKに。
・いかんせんPKに関してはあまり多くを期待できないGK西川ゆえ大槻監督は早々と失点を覚悟したのか長澤&汰木の投入を準備していましたが、驚いたことに西川なりにキッカー林の情報を持っていたようで、立ち位置が心持ち右側寄り。林との駆け引きが奏功したのか、林のシュートにわずかに指先が触れ、ボールはポスト直撃!! とにかく先制されたら試合終了の今年の浦和にとって意味合いがデカすぎるPK阻止でした。
・ただその直後に興梠→長澤、武藤→汰木と代え、柏木を前目に上げて4-4-2というより4-4-1-1っぽいフォーメーションに変更するも戦況は全く好転せず。柏木を前目で使う形はキャンプで試行していたはずですが、さすがに即座には機能せず。
・むしろ74分鳥栖の小屋松→金森、石井→本田の2枚替えが効いて、浦和は何度も右サイドを金森に脅かされる始末。しかし、そこから決定機を作れないのが鳥栖の悲しさで、惜しかったのは75分金森のクロスが逆サイドの右SB森下に通り、森下が切り込んでシュートを放った場面くらい。
・鳥栖はサイド奥深く侵入するところまでは何度も出来ていたのに、そこから浦和が超苦手とする「ファーへのハイクロス攻撃」を仕掛けずに折り返してグラウンダーでのシュートばかり撃たせていたのが不思議でした。豊田がいたら即死だったような気がしてなりませんが、ハイクロスに対する浦和の守備は往々にしてマークが完全に外れているので、FWに背の高さはあまり必要ないんで・・・
・金監督は試合後「相手に恐怖を与えられたかというとそうでもないですし、相手がどうこうというよりも今日に関しては自分たちに少し迫力がなかったのかなと思います」と語っていますが、浦和の苦手なところを突かなかったからなぁ・・・
・鳥栖は84分最後の切り札チアゴ・アウベスを投入。清水時代にアホほどやられた選手ですが、如何せん故障が多いのが難点。この試合も故障明けで久しぶりの出場でしたが、本調子にはほど遠いようで87分好位置でのFKも場外クラスの特大ホームラン・・・
・鳥栖のしょっぱい攻撃を凌いだ浦和はATに入ってついに反撃開始。AT+1分柏木のボール奪取からのカウンターでは柏木のクロスをエヴェルトンが撃ち切れず。AT+2分西川ゴールキックからの攻撃で汰木クロス→ファーでマルティノス折り返し→どフリーで中央に走りこんだエヴェルトンのシュートは枠を捉えきれず。柏木だのマリティノスだの守備に多くを期待できない選手を抱えた状態で早い時間帯から中盤を走り回らざるを得なかったエヴェルトンにATにシュート精度を求めるのは酷というもの。
・しかし、AT+3分林のシオシオ攻撃をクリアしたボールが最前線の杉本へ。杉本は松岡を背負いながらもボールをキープし、右サイドを激走するマルティノスへ繋ぎ、マルティノスのクロスを逆サイドから汰木が泥臭く蹴りこんでなんとか浦和が先制。
・その後は柏木に代えて山中を入れて5-4-1にシフト。またマルティノスは最後の最後で得意のコケ芸を披露し、しかも倒れたままボールを離さないという鳥栖からすれば滅茶苦茶ムカつくであろう円熟のコケ芸で大見得を切ったところでようやくお役御免。何の紛れもなく浦和が逃げ切りに成功。
《総評》
・浦和が中5日、鳥栖が中2日というだけでなく、コロナ禍を受けて鳥栖は15連戦中の11試合目だったらしく日程面で浦和が超有利。かつ鳥栖には本職のCBがいないにも関わらず、今日も今日とてたいして決定機は作れず、守っても鳥栖のクロス精度やシュート精度の低さ、それ以前の攻撃のアイデアの乏しさに助けられた場面も多々あっての辛勝。65分のPKを決められていればそのまま敗戦といういつものコースにもなりかねなかった辛勝中の辛勝でしたが、どんな形であれ久しぶりの勝利は嬉しいものです。
・前後半ともボールを6割弱鳥栖に支配されましたが、やはりこういう試合展開のほうが浦和は得意で、ATになってついにストロングポイントであるカウンターが炸裂。辛うじてとはいえ、得意の形で勝ったのですから前向きに評価して然るべきなのかもしれません。気分的には高揚感を隠せないのも事実ですが(苦笑)、如何せん相手が相手で、浦和の弱点を全然突いてこないのにはとにかく助けられました。
・今日も今日とて「マルティノス、サイコロの旅」システムは最後の最後でJALで一気に千歳へ飛ぶという「かいしんのいちげき」が飛び出して見事な大団円を迎えました。ただそこに至るまでのマルティノスの守備の怪しさはハンパなく、リトリートして4-4-2の守備ブロックをつくるはずがどう見ても4-4-2にならないとか、相手を追っかけてなぜか逆サイドまで走ってしまうとか、大阪→四国くらいの短距離夜行バスの目を連発していたような気も。強い相手にはその致命的な欠陥を突かれるんだろうなぁ、たぶん。
《選手評等》
・何だかんだと言ってもこの試合のMOMはマルティノス。芳しくない戦況を反映してか80分くらいにはマルティノスの表情は既に虚ろで、てっきり電池切れと思ったのですが、まさかそこからマルティノスが再起動してATに大仕事をやってのけるとは!!これがダミーシステムの力なのか・・・ マルティノスは走りも走ってスプリント回数は両チームでダントツの38回。総走行距離も浦和ではエヴェルトンに次ぐ約11、4km。
・そして汰木はついに浦和で初ゴール(同時にJ1での初ゴール)。何度も出場機会を与えられながらゴールを決められずにいたのを汰木も気に病んでいたようで、ゴール直後にはゴールネットの中で柏木に抱きしめられながら「やっと取れたぁ・・・」とポツリ。降格の恐れがない下位チーム同士の一戦とは思えない、スポ根漫画なのか少女漫画なのかよく判らないけれども妙に派手な一場面でした。
・汰木は左サイドからカットインしてからのシュートが得意の形でしたが残念ながら恐ろしく精度が低く、まるでこの試合に向けてやってきた台風14号の進路のようにカーブを描きながら枠を逸れてしまうのがほとんど。そんな汰木の浦和初ゴールが得意の形で綺麗に撃つものではなく、逆サイドから泥臭く詰める形だったのが個人的には感涙もの。
・綺麗でなくてもいい。チームメイトを信じて懸命に走る。それが結果的にゴールに繋がる。その走る姿こそ私は大好きで、たぶん大方の古参の赤者も求めているものだと思います。おめでとう、汰木。これでようやく汰木も浦和の一員になった気がします。
・鳥栖は大畑・松岡・樋口・石井・本田と下部組織出身の選手がゾロゾロ。今や鳥栖U-18は九州一円から選手を幅広く集められるくらいに評価が高いらしく、今年ついにプレミアリーグに昇格。鳥栖は極端な経営難に見舞われているので下部組織出身の選手を大量に起用せざるを得ないという側面もあるのでしょうが、下部組織でのキャリアが長い金監督が教え子を巧く使いながら、資金が乏しい中で勝ち点をコツコツ拾ってゆく姿は涙が出ます。一方浦(ry
---武藤--興梠---
関根--------マル
--エヴェルトン--柏木---
宇賀神-槙野-岩波-橋岡
-----西川-----
(得点)
90+3分 汰木
(交代)
HT 関根→杉本(武藤が左SHへ)
66分 興梠→長澤(4-4-1-1気味にシフトし、柏木がトップ下へ)
66分 武藤→汰木
90+4分 柏木→山中
90+6分 マルティノス→鈴木大
---ロペス--石井---
小屋松-------樋口
---内田--リャン----
大畑-松岡--原--森下
-----高丘-----
(交代)
HT レンゾ・ロペス→林
58分 梁→高橋義
74分 石井→本田
74分 小屋松→金森
84分 内田→チアゴ・アウベス
※写真は試合に一切関係ありません
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