【DAZN観戦記】20年第25節:大分 0-0 浦和 ~ インチキサイコロがただのサイコロに戻り、引き分け御の字の試合内容に
・基本的には前回対戦と同様大分のフィニッシュ精度の低さに助けられただけで、浦和からすれば引き分け御の字と言わざるを得ない試合内容でした。相手に対策を立てられた際のオプションの無さはいかにも構築途上のチームらしい姿。リーグ終盤ですが(苦笑)。
《スタメン》
・今週も週央に試合がなかった浦和は、「勝った試合の後はスタメンを弄らない」の原則(苦笑)に則ったのか前節と全く同じスタメン。前節出場停止の宇賀神がすんなりスタメンに復帰しないのは山中との健全な競争と評価できますが、このところ失態続きの岩波が依然スタメンというのは個人的には疑問。ベンチに彩艶と関根が復帰し、福島と伊藤、岩武がベンチ外に。
・大分は第24節を9/16に前倒しで消化しているため先週は試合がなくほぼ2週間ぶりの公式戦。その割にはムン→高木、星→刀根、伊佐→知念、田中→髙澤とGKも含めて4人も入れ替え。
・試合後の監督コメントでは高木と知念の起用は最近の練習での出来なり戦術理解度の向上によるものらしいのですが、この試合でのサプライズは普段左CBに入る三竿を左WBに上げたこと。この辺りに片野坂監督がこの2週間で練りに練った浦和対策、端的にはマルティノス対策の跡が伺われました。
・なお大分はWB香川、CH前田、MF小林成が故障中。WB高山は故障明け。
《試合展開》
・立ち上がりは相手の前からのプレッシャーがきついこともあって、双方ボールを持たされてもそこからの展開に困るというしょっぱい内容でしたが、10分過ぎから岩田を軸とする左サイドへの大きな展開や知念への縦パスが入り始めて徐々に大分ペースに。
・そして最初に決定機を掴んだのは大分。22分に大分のサイド攻撃をいったん凌いだものの、西川のクリアを相手に拾われて再び攻撃を受け、浦和守備陣が全体に右側に寄っているところを簡単に右から左へ繋がれてWB松本がぽっかり。松本の折り返しを後方から走りこんで来たCH羽田がシュート(西川難なくセーブ)。
・24分には三竿に対して詰めにいった橋岡の裏を三竿→三平スルーパスで高澤にぶち破られる大ピンチがありましたが、高澤のシュートは西川のほぼ正面。こぼれ玉が知念の前に転がったら即死でしたが、そうはならないところまでが西川の妙技かな?
・さらに28分には岩田に詰め寄った汰木があっさりと交わされてしまい、どフリーの岩田から大きなサイドチェンジが三竿へ。三竿のクロスがこれまたアーク付近でどフリーの三平に通る決定機がありましたが、シュートがバーの上。
・コンディションの差なのか、前半を通じてセカンドボールはことごとく大分が回収。また浦和は球際で競り負ける場面が多く、中盤でのボールロストもやたら目立ちました。長澤やエヴェルトンですら後方から大分の選手にプレッシャーをかけられた挙句にボールを失ってしまうのにはびっくり。
・浦和はとにかくビルドアップが全く体をなさないので、ロングボール一本でのカウンターしか攻め手なし。18分エヴェルトンの縦ポン一発でマルティノスを走らせた場面がありましたが、ここも三竿がしつこくまとわりついてシュートまで持ち込ませず。
・しかし、浦和もやられっぱなしではなく、39分山中が汰木を追い越して長い距離を走っての低いクロス→GK高木が弾いたこぼれ玉に長澤が反応するも、シュートはわずかに枠外。さらに44分マルティノスが右サイド深い位置で複数人に囲まれながらも粘って急反転で三竿を交わしてふんわりクロス→ファーの興梠に通るも前で岩田に寄せられてヘッドは枠を捉えられず。
・後半も依然大分ペース。52分深い位置にいた髙澤から高い位置にいた松本へ大きなサイドチェンジ→松本クロスを三平が折り返して知念にわたる良い形を作りましたが、ここは岩波が知念に仕事をさせず。
・ただでさえ苦しい試合展開なのに、すっかり元の木阿弥、ただのサイコロと化してしまったマルティノスが「はかた号」を連発。55分マルティノスが槙野への横パスを三平にカットされたのを契機に知念に際どい一発を浴び、58分マルティノスが自陣深い位置で三竿と競り合っている隙に知念にボールを攫われる大失態。知念に交わされたところでマルティノスは思わず後方から知念を倒してイエロー。
・浦和は70分に武藤→杉本、興梠→レオナルドと代え、78分には汰木→関根、山中→宇賀神と交代。大分は70分長谷川→島川、81分に髙澤→田中、三平→野村、三竿→高山と一気に3選手を交代。
・浦和は70分の交代あたりからようやくボールが前に進むようになって大分を押し込む時間帯が増え始め、相手の強度が落ちたこともあってかセカンドボールもかなり拾えるようになりましたが、それでも決定機は84分西川ロングフィード→杉本ポスト→レオナルドのお膳立てを受けてマルティノスがボックス内中央に侵入した一回のみ。
・大分も88分に松本の縦パスを受けた田中が浦和左サイドを深々と破り(田中に対して安直に飛び込んで交わされた槙野・・・あそこで飛び込む必要はあったのか???)、クロスに野村が飛びこむ決定機がありましたが、シュートはクロスバーを直撃。
・84分の決定機でマルティノスがレオナルドと入れ替わって外から中へ入り込む動きは良かったのですが、マルティノスはここの激走で完全に電池切れ。鳥栖戦のように電池切れと思われたマルティノスが突如ダミーシステムを起動させて大爆発するようなこともなく、そのまま試合終了。
《総評》
・公式記録ではシュート数こそ大分9、浦和7と大差ありませんが、枠内シュートやボックス内からのシュートは完全に大分が上回っており、勝利により近かったのは明らかに大分のほう。試合後選手も監督も勝ちたかったと語るのは至極当然でしょう。ただ決定機はアホほど作っているが決めきれないのが大分の悲しき仕様で、「点を取るには金がかかる」という前回対戦時の感想を片野坂監督は試合後繰り返し繰り返し噛みしめていることでしょう。
・浦和は大きなサイドチェンジを簡単に許し、SBがやたら前に出てくる習性を逆用されてその裏を突かれるなど、何度も似たようなやられ方を許してしまったという点では前回対戦時から大きな進歩は見られず。三竿の左WB起用をはじめ、2週間のブランクをしっかり浦和対策に充ててきた片野坂監督に対し、大槻監督の無為無策ぶりが目についた試合でした。特に前半は。
・大槻監督もこの辺は半ば認めているのか、試合後「準備の段階では相手のメンバーも分かりませんし、どういう形でやってくるかも分からないので、どちらかというとゲームの中でアジャストしていくようなところが必要だったと思います。ハーフタイムとか、そういうところで少し修正できればいいなと思っていました。」と語っています。そして、70分の選手交代辺りから戦況が五分に復したのは監督の言葉と合致しているようです。
・また前半ビルドアップが壊滅的だった点についても「どちらかというと攻撃のところで、ボールの動かし方とか、どこの入り口を使って入る、というところをもう少しやりたかったです。」と準備不足を認めているようです。前3人が厳しくプレッシャーをかけてくるので後方から2トップに当てるのは難しい。その前プレを交わしても相手に5-4-1で構えられてサイドにはスペースがない。前半はずっとそんな感じでした。
・まぁ第17節川崎戦以来たまたまずっと4バック相手、しかも往々にして相手も4-4-2という試合が続き、そういう相手に紆余曲折の末なんとか「サイコロの旅システム」という打開策に辿り着いたところで、久しぶりに3バックの相手を迎えたら、如何せんいかにも準備不足でものの見事に封じられた感じは否めません。もっとも「準備不足」をリーグ終盤で語られるもなあ、というのも正直なところ。
・マルティノスが攻めに出てもスペースがない状態で2人のDFを相手にする場合が多い(それでも44分のように決定を作ってしまうことがあるので「サイコロ中毒」になっちゃうんだろうなぁ)上に、終盤は電池切れも著しくてどうにもならず。おまけにこの試合では致命傷になりかねないミスが多くて「サイコロの旅」の収支はややマイナス。
・しかし、悪目立ちするマルティノスはまだマシで、汰木に至っては終始消えたまま。関根に代えてもその傾向は変わらず、要するに5-4-1で構える相手にここ数試合猛威を振るった両SHが消されると今の浦和にはオプションがないという現状が明るみになった試合だったとも評せましょう。
・70分に投入された杉本の制空能力が圧倒的でポストプレーも非常に効いていたにも関わらず、浦和は最後まで電池切れのマルティノスに固執。これまでの実績が実績なので仕方ないのかもしれませんが、杉本を軸としたオプションが見られなかったのが残念でした。
・とにかく相手に対策を練られた時のオプションがないっちゅーのはいかにも中位で終わるチームにありがちな話です。
《選手評等》
・見所の少ない低調な試合だったので殊勲賞・敢闘賞はなし。
・選手の見間違いが非常に多くて難儀な実況アナ。しかし、後半途中投入の島川が大槻監督をとなぜかグータッチをしていた件について、仙台時代に面識があるのみならず、島川が大怪我をしたために大槻さんが付きっきりで面倒を見ていたという日テレ系の実況にありがちなほっこりエピソードを紹介。浦和目線では低調な試合内容だっただけに、妙に印象に残りました。
---興梠--武藤---
汰木--------マル
--エヴェルトン--長澤---
山中-槙野--岩波-橋岡
-----西川-----
(交代)
70分 武藤→杉本
70分 興梠→レオナルド
78分 汰木→関根
78分 山中→宇賀神
89分 エヴェルトン→青木
-----知念-----
--髙澤----三平--
三竿-長谷川-羽田-松本
-刀根--鈴木--岩田-
-----高木-----
(交代)
70分 長谷川→島川
81分 髙澤→田中
81分 三平→野村
81分 三竿→高山(松本が左WB、高山が右WBへ)
89分 松本→小出(高山が左WB、小出が右WBへ)
※写真は試合と全く関係ありません
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