【観戦記】21年第6節:浦和 0-5 川崎 ~ お前らゼロか?ゼロの人間なのか??
この物語はあるフットボールクラブの荒廃に戦いを挑んだ熱血スペイン人監督の記録である。Jリーグ界において迷走に次ぐ迷走の挙句に著しく弱体化したチームが、荒廃の中から健全な精神を培い、わずか数年でリーグ優勝を成し遂げた奇跡を通じて、その原動力となった信頼と愛をあますところなくドラマ化したものである(たぶん)。
《スタメン》
・共に前節から中3日。
・浦和は前節小破欠場していた宇賀神が幸いにもスタメンに復帰。敦樹もスタメンに戻って阿部と明本がベンチへ。武藤がベンチ外。やはり武藤の評価が著しく低いのが気になります。
・川崎は三笘→長谷川、家長→小林とスタメン2名入れ替え。
《試合展開》
・GK西川こそ逆風を突いてロングボールを多用してましたが、基本的にはリカが本来やりたいこと=相手の速くて厳しい前プレに怯まずにボールを繋ぐサッカーを志向していることがよく判る試合内容で、DAZNのスタッツでは前半浦和がボール試合で川﨑を上回る(54%)という結果に。またボールを失っても素早く奪回にかかり、奪い返せなくてもズルズルと一方的に押し込まれないよう前からプレッシャーをかけ続け、なんとか最終ラインを高く保とうとする意図もよく判りました。
・とにかく自陣深く引き籠っていても守りきれるような相手ではない。相手をいかにボックス内に入れないようにするかが肝要と思っていましたが、浦和は「川崎からボールを取り上げる」策で相手の攻撃機会を与えないことには前半ほぼ成功していました。
・ただボールを支配していても決定機どころかシュートすら少ないのは相変わらず。良い形でボールを奪っても川﨑の帰陣は早く、しかも浦和の一瞬の判断の遅れとパススピードの遅さが仇となって、川崎守備陣に一瞬綻びが見えたとしてもそこにパスが出る頃にはその穴が塞がってしまう。そんな場面だらけだったように伺えました。
・前半最大かつ唯一のの決定機は12分西川ロングキック→杉本ポスト→山中クロス→杉本ダイレクトボレーでしたが、GKチョン・ソンリョンの好守に阻まれて得点ならず。しかもこの形はまるで札幌戦にありがちだったシンプルなものだったというのが皮肉というかなんというか。
・一方ボールを取り上げられた川崎は必然的に攻撃の手数こそ多くはありませんでしたが、その少ないチャンスをきっちりフィニッシュに持ってゆく力が浦和とは段違い。10分には浦和右サイド深くで宇賀神がなんとか繋ごうとした横パスをカットされたのを契機に山根が枠内ミドル。
・そして運命の42分。宇賀神がハーフライン付近からの宇賀神スローインを相手に奪われたところからカウンターを浴び、田中が右へ展開→右山根クロス→小林ヘッドで先制。カウンターの契機もマヌケなら、山根に簡単にクロスを上げさせる山中もマヌケ、しかもボックス付近では浦和が圧倒的に数的有利なのに誰も小林を掴まえられないのが大マヌケ。これだけマヌケを繰り返したらさすがにチャンピオンチームはその隙を見逃してくれません。
・後半開始早々敵陣高い位置で小泉がジェジェウの緩すぎる横パスをカットするという絶好機があったにも関わらず小泉はシュートを撃たず、杉本に浮き球パスを出してこれまた戻ってきたシミッチにカットされる場面がありましたが、これには著しく萎えました。
・一方川崎は49分敦樹の杉本への縦パスをジェジェウにカットされたことを契機にカウンターを食らい、田中→小林の右サイドからクロスをダミアンが胸トラップ&反転ボレーで豪快に決めて追加点。ダミアンには一応岩波が付いていましたが、もういないも同然のようにあしらわれてしまいました。
・最終的にはダミアンの個人能力の前にひれ伏すしかなかった場面ですが、それ以前の浦和の攻→守の切り替えの遅さ、戻りの遅さはもう論外なレベル。縦パスをカットされることはリカのスタイルではありがちなことなだけに、前半だけで体力を使い果たしたかのようなプレーぶりにはがっかりしました。
・この追加点で浦和は早くも集中力が切れたのか、全く守備が体をなさなくなり、51分シミッチ→旗手へのスルーパス一発で呆気なく失点。もう浦和守備陣は一応守備ブロックの形を作っていても長い距離を走っている旗手を眺めているだけだからなぁ・・・まるでカラーコーン状態。
・53分の失点は浦和がなんとか左サイドに相手を追いやってボールを奪おうとしたけれども奪いきれずにがら空きの右サイドへ展開されてしまったところから。ボックス内に侵入した長谷川クロス→ファーでダミアン折り返し→小林が押し込んで4点目。もうプレッシングの強度不足、迫力不足が目に余るというか何というか。そして最後は昨年アホほど見た「浦和殺し」の形で仕上げ。
・立て続けの4失点でリカは試合を諦めたかのように56分に敦樹→阿部、汰木→大久保、関根→武田と交代させましたが、浦和は前半とは一転して川崎の厳しいプレッシャーを受けてボールを全く繋げなくなり、自陣から出られない惨状。これまた昨年アホほど見た光景。
・67分には自陣深い位置でこぼれ玉を拾った大久保が、素早く攻守を切り替えてボールを奪いに来た脇坂に絡まれてボールロスト。その脇坂がこれまた素早く反転してアーク付近から見事なミドルを決めて5点目。これまた球際の弱さが露呈した場面でした。
・川崎は最初にCBを代える余裕すら見せ、浦和は反撃の糸口すら見いだせず、てなんの紛れもなくそのまま試合終了。
《総評》
・三笘や家長をベンチに温存しているとはいえ、それでもJリーグでは群を抜く実力を持つ川崎相手に前半は互角以上の試合内容。ところが、42分の失点を契機にハーフタイムを挟んでわずか10分ちょっとでミッドウェー海戦ばりにあれよあれよという間に大量4失点!! 特にワシントンを髣髴させるダミアンの豪快な一発を食らって以降はもう心が折れてしまったかのような惨状で、その後は攻守とも無気力無抵抗にしか見えないテイタラク。
・ほぼ固定スタメンで過密日程を闘っていましたから選手達には試合前から相当疲労が蓄積されていたでしょうし、さらに今季最高と言っても差し支えない内容で試合を進めていながら強敵に2点先取されてしまったことで、緊張の糸が切れて一気に疲労が顕在化したのかもしれませんが、それにしても後半はお粗末でした。
・ただ横浜M戦も相手に真っ向勝負を挑んだ結果、「よく3失点で済んだな!」と悪い意味で感嘆するほかない試合内容でしたから、横浜Mよりさらに手強い川崎相手にこれまた真っ向勝負を挑んだらこんな結果になってしまうのも道理と言えば道理。札幌戦こそ彼我の実力差とコンディションの差を勘案して「じぶんたちのサッカー」を捨て、あえて勝ち点1を取りに行く現実策に転じましたが、川崎戦ではまた本旨に立ち戻った結果、ものの見事に玉砕。
・それでも昨年末のホーム川崎戦での大敗と比べれば、やりたいことははっきり判り、かつ前半限定とはいえやりたいことをピッチに具現化出来て強敵相手に互角以上の試合を繰り広げられたことを思えば同じ大敗でも全然マシ。儚い夢とはいえ、夢を見られたのだからずっとマシ。前を向いて歩み続けられる大敗だったと思います。
・しかも試合後強風を伴う雨の中を、リカは選手達を庇うかのように先頭に立ってピッチを一周。その姿を見て思わず目頭が熱くなりました。
・ただ内容は良かった前半ですらシュートはほとんど撃てず、決定機は12分の杉本だけだったという現実に目を背けてはいけません。興梠・デン・西が故障中なことを勘案してもCFとCBは明らかに質・量とも不足しており、2列目も現状では得点は期待薄。今後浦和が残留争いにどっぷり浸かる羽目になったとしても、それはどう見ても選手編成の失敗が主因でしょう。
・とにかく監督に責任を押し付けてフロントは頬かむり、知らぬ顔の半兵衛という、過去何度も繰り返されてきた愚を繰り返えさないよう心から願う吉宗であった。
《選手評等》
・金子は2試合連続スタメン出場。金子本人も札幌戦の試合後「佳穂くんなどを見ながら自分が気を使ってポジショニングを取る必要があるなという、反省のほうが多いですね」「立ち位置をうまく取ることが必要だと思いますし、そういうところは身に付けなければいけません。それと、サイドに展開することや縦パスを入れることは、流れを読んでできるようにしていきたいです。」と語っている通り、課題は山積していますが、本人なりにその課題にしっかり向き合っていることはこの試合からも十分伺われました。
・金子が戦力として計算できるようになれば大ベテランの阿部を酷使せずに済むので、長いリーグ戦を闘う上でだいぶ楽になります。
・故障組の中では最も早くピッチに戻ってきた関根はようやくコンディションが整ってきた様子。なんだかんだと言っても今の2列目で一番ゴールに近そうなのは関根だと思えてならないので、これも大敗の中で見出した一筋の光明かも。小泉はこのチームの心臓であり、巧いことは巧いんだが、得点に多くを期待できないことが明らかになりつつあるだけに。いわんや汰木をや。
・一方札幌戦後半途中投入で大いに見せ場を作った大久保は川崎戦では得意のドリブルを披露するスペースも時間もなく、しかも失点に直結する自陣深い位置でのボールロストを犯してしまいました。後半ボールを繋げなくなったのは何も大久保だけではないので、そこを責めても仕方ないのですが、まだまだ使い道は限られるかなぁ?
・終盤には強風でバックスタンド後方まで雨が舞い込んでくるくらいの荒天の中、ただただピッチを見つめ続ける5000人弱。長年のシーチケホルダーだらけで、これよりも遥かに酷い地獄を何度も潜り抜けてきた者しかいないのでもう面構えからして全然違う。これしきの大敗ではびくともしないのであった。
-----杉本-----
汰木---小泉---関根
---敦樹--金子---
山中-槙野--岩波-阿部
-----西川-----
(交代)
56分 伊藤敦→阿部
56分 汰木→大久保
56分 関根→武田
72分 小泉→明本(明本左SH、武田トップ下、大久保右SHへ)
88分 山中→田中
長谷川--ダミアン---小林
--脇坂----田中--
-----シミッチ-----
旗手-谷口-ジェジェ-山根
-----ソンリョン-----
(得点)
42分 小林
49分 ダミアン
51分 旗手
53分 小林
67分 脇坂
(交代)
73分 ジェジエウ→車屋
73分 田中→塚川
81分 ダミアン→知念
81分 長谷川→三笘
90分 脇坂→橘田
| 固定リンク